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資本金の平均額はどれくらい?金額の決め方や目安、注意点を解説

監修者:森 健太郎(税理士)

2023/12/04更新

会社を設立する際に準備しなくてはならないのが、資本金です。会社法の改正によって、資本金1円からでも会社を設立することができるようになりましたが、あまりに低い金額ではすぐに事業が立ち行かなくなる危険が伴います。資本金は会社の運転資金となるだけでなく、会社が納める税金にも影響するため、金額設定は重要です。
ここでは、資本金の平均額や金額を決める際のポイントを解説します。

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中小企業の資本金の平均額は300万~500万円

総務省・経済産業省の「令和3年経済センサス‐活動調査 速報集計 企業等に関する集計 新規タブで開く」(2022年9月)によると、2021年時点で全産業の資本金で最も多いのは「300万~500万円未満」で、次いで「1000万~3000万円未満」「500万~1000万円未満」でした。資本金の割合は以下の表のとおりです。

一般的に、店舗や設備などの初期費用や仕入れなどの原価がかかる業種は、資本金が高い傾向があります。業種によって資本金の金額は異なりますが、中小企業の資本金の平均額は300万~500万円といえます。

資本金の階級別の企業数と割合(2021年時点)
資本階級 企業数 割合
300万円未満 20万501社 11.3%
300万~500万円未満 57万8,882社 32.6%
500万~1000万円未満 25万3,148社 14.2%
1000万~3000万円未満 55万5,646社 31.3%
3000万~5000万円未満 7万2,933社 4.1%
5000万~1億円未満 5万2,126社 2.9%
1億~3億円未満 1万7,674社 1.0%
3億~10億円未満 7,337社 0.4%
10億~50億円未満 3,600社 0.2%
50億円以上 2,319社 0.1%

資本金の役割

資本金の役割を知っておくことで、資金調達をしやすくなる場合があります。そのため、資本金の金額を決める前に、資本金にはどのような役割があるのかを知っておくことが大切です。資本金の役割は主に以下の2点です。

事業を運営していくための資金

資本金は事業を運営していくための元手です。創業直後は、事業が軌道に乗るまでに時間がかかるため、会社設立に伴う手続き費用、店舗やオフィスの契約費用の他、設備の購入費用や仕入費用、従業員の給与などは資本金からまかないます。

なお、株式会社なら、株主や投資家から調達した資金も資本金にあたります。ただし、創業時に第三者から出資を受けることは難しい傾向があり、経営者(発起人)が貯えた自己資金を資本金にあてることが一般的です。

会社の体力や信用度を表す

資本金は、会社の体力や信用度を表すため、初めて取引をする会社の与信を確認する際や金融機関から融資を受ける際に、資本金を見る場合があります。

資本金が大きければ、安定した経営を行っていると判断され、小さければ、事業を運営するお金がない、返済能力が低いなどとみなされる可能性があります。資本金は1円から設定できますが、1円で設定すると、取引ができなかったり、融資が受けられなかったりするケースがあるので注意が必要です。

資本金の決め方のポイント

では、会社設立時の資本金は何を目安に決めればいいのでしょうか。ここでは、会社設立時の資本金を決める際の4つのポイントを解説します。

自社の事業に必要な初期費用と運転資金を計算する

資本金を決めるときには、初期費用と当面必要になる運転資金が目安になります。創業後すぐに安定した売上を上げるのは難しいものです。しかし、売上がない間も経費はかかるため、資本金が少なすぎると、すぐに資金がショートしてしまいます。そのような事態を避けるには、初期費用に半年分の運転資金を足した金額程度を資本金として用意しておくといいでしょう。

初期費用と運転資金は、業種や事業規模によって異なります。例えば、ライターやデザイナーなどのクリエイティブ業の場合、自宅で作業するのであれば、必要な設備はパソコンや机、通信環境くらいで、月々にかかる費用も抑えられるため、初期費用も運転資金もさほどかかりません。

一方、製造業や飲食業などの場合、店舗や備品などの初期費用に加えて、毎月かかる材料の仕入れ代、工場や店舗の賃料、場合によっては人件費などが発生します。そのため、資本金を決める際には、自社の業種や事業規模に合わせて、必要な初期費用と運転資金を計算することが大切です。

また、同じ業種の資本金の相場を確認しておくと、想定している金額とのずれがないかをチェックできるでしょう。

税金を考慮する

資本金の金額は、消費税や法人住民税、法人税といった税金に影響します。資本金がそれぞれの税金にどう影響するのかは以下のとおりです。

消費税

資本金が1,000万円以下で設立された会社は、原則として設立1期目と2期目の消費税の納税義務が免除されます。ただし、2期目に関しては、1期目の前半6か月の売上が1,000万円を超え、かつ人件費(役員報酬含む)が1,000万円を超えた場合は、消費税の課税対象となります。

法人住民税

法人住民税には、赤字でも必ず納めなければならない「均等割」があり、その課税額は資本金の額によって変わります。例えば、東京都23区で従業員数が50人以下の法人の場合、資本金が1,000万円以下なら均等割の年額は7万円ですが、資本金が1,000万円を超えると均等割の年額は18万円になります。

法人税

法人税の税率は、資本金が1億円を超えるかどうかで大きく変わります。資本金1億円以下の法人で所得が800万円を超える場合、所得800万円超の部分の税率は23.2%、800万円以下の部分は税率15%となります。一方、所得が800万円以下なら税率は15%で一定です。

資本金が大きいと、それだけ納める税金も高くなります。なお、課税される税金の額を知りたい場合は、事業の売上や経費、希望年収などを入力するだけで概算の税金額がわかる「かんたん税金計算シミュレーション」をご活用ください。

許認可の要件を確認する

事業を行う前に許認可の申請が必要な業種があります。許認可の要件の中には、資本金の金額が含まれていることがありますので、資本金を決める前に確認が必要です。

例えば、一般建設業の場合、許認可の要件として資本金500万円以上であることが定められています。資本金の金額が要件を満たさないと許認可がおりず、事業が行えなくなってしまうので、ご注意ください。

  • 許認可の申請については以下の記事を併せてご覧ください

融資の要件を満たす資本金の金額にする

金融機関などから融資を受ける場合、資本金の金額が融資の要件に入っていることがあります。
資本金があまりにも少ないと、希望する額の融資が受けられなくなったり、融資自体が受けられなくなったりしますので、注意しましょう。

なお、資本金の決め方はこちらの動画で解説しているため、資本金の決め方を知りたい人は参考にしてみてください。

資本金が足りなくなったら?

実際に事業をスタートしてみると、思っていたよりも運転資金が必要になり、資金が足りなくなってしまうことがあります。そのような場合に中小企業でよく行われるのが、社長個人のお金を会社に貸し付ける「社長借入金」です。

社長のお金でも、会社にとっては他人からお金を借りていることになります。社長借入金は多くなるほど自己資本比率が悪くなり、債務超過になる危険性があります。また、金融機関では、社長借入金を自己資本の一部とみなすこともありますが、会社の評価が下がって融資が受けにくくなる可能性があるので、金額が大きくなった場合に注意が必要です。社長借入金が大きくなってきたら、登記の変更手続きを行い、資本金に変更した方がいいでしょう。

なお、金融機関からの借入金だけでなく、家族や親族、友人などから借り入れたお金を資本金にすることはできません。手元の資金が足りないから、すぐに返金するからといって借入金を資本金にすると、資本金と見せかけたお金(見せ金)として、場合によっては詐欺とみなされることもあります。

社長借入金はじめ、会社のお金は税金に影響しますので、変更方法や影響する税金については税理士に相談しておくと安心です。

資本金と混同しやすい資本準備金とは?

資本金も資本準備金も、株主から出資を受けたお金のことですが、資本準備金は資本金として計上しない残りのお金のことを指します。資本準備金の特徴は以下のとおりです。

資本金の2分の1の金額まで資本準備金として計上できる

資本準備金として計上できるのは、「資本金の2分の1を超えない金額」です。例えば、設立時の資金が1,500万円あったとすると、最大750万円まで資本準備金として計上できます。仕訳例は以下のようになります。

資本準備金として計上できる場合の出資金と資本金、資本準備金の仕訳例(出資金1,500万円)
借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
普通預金 15,000,000円 資本金 7,500,000円
資本準備金 7,500,000円
借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
普通預金 15,000,000円 資本金 10,000,000円
資本準備金 5,000,000円
資本準備金として計上できない場合の出資金と資本金、資本準備金の仕訳例(出資金1,500万円)
借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
普通預金 15,000,000円 資本金 5,000,000円
資本準備金 10,000,000円
  • 資本準備金は資本金の2分の1を超える額は計上できないため、この場合は750万円以下での計上が必須

資本準備金を活用すれば、資本金の額を減らせる

資本金が1,000万円以上の場合、会社設立1期目から消費税の納税義務が発生する他、法人住民税などの負担が大きくなります。しかし、自社に必要な運転資金を考えると、資本金を1,000万円以上にしたいということもあるかもしれません。

そのような場合に、資本金の2分の1の金額を資本準備金として計上します。上記の仕訳例のように、1,500万円をそのまま資本金にするよりも、半分の750万円を資本準備金にした方が、税負担は抑えられます。

また、資本金も資本準備金も貸借対照表(バランスシート)上では、「純資産の部」の資本剰余金にあたります。資本準備金は自己資本なので、社長借入金のように貸借対照表の自己資本比率が悪くなることもありません。

創業間もなくは売上が安定しないことも考慮して、少しでも会社の負担を抑える上で、資本金と資本準備金を適切に設定することはとても大切です。

資本金の設定に悩んだら税理士に相談する

資本金は、会社設立後の資金繰りや税金にも大きく影響します。特に税金については、税務の専門家である税理士に相談すると安心です。起業にあたって専門家に相談したいと思っても、自力で税理士を探そうとすると、手間や時間がかかります。そのような場合は、弥生株式会社の「税理士紹介ナビ 新規タブで開く」がおすすめです。

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  • 税理士に相談する内容については以下の記事を併せてご覧ください

会社設立時の手続きを手軽に行う方法

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資本金の設定は重要だからこそ専門家の力も借りよう

資本金は会社の体力や信用度を表します。資本金は1円からでも会社を設立することは可能ですが、あまりに小さすぎると、運転資金が足りなくなったり、希望どおりの融資が受けられなくなったりするリスクがあります。また、資本金は税金にも影響があるため、さまざまな角度から検討して設定することが大切です。

資本金をいくらにするか迷ったら、税理士などの専門家に相談するのも1つの方法です。「税理士紹介ナビ 新規タブで開く」のようなサービスを活用すれば、自分に合った税理士を無料で手軽に探すことができます。事業を始めてから慌てることのないように、専門家の力も借りてスムースに事業を始めましょう。

この記事の監修者森 健太郎(税理士)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。

URL:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_mori/新規タブで開く

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