取締役とは?会社法上の役割や任期・責任をわかりやすく解説
監修者:森 健太郎(税理士)
2023/12/04更新
「取締役」は、会社において業務執行の意思決定を担う役員です。中でも、会社の代表者、一般的には社長のことを「代表取締役」と呼びますが、代表取締役とその他の取締役には、どのような違いがあるのでしょうか。
ここでは、取締役の役割や任期、責任範囲などの他、代表取締役や執行役員との違い、取締役を選任する際のポイントなどについても解説します。
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取締役は業務執行の意思決定者
取締役は、会社法で定められた役職の1つです。株式会社では、必ず1名以上(取締役会を設置する場合は3名以上)の取締役を置かなければなりません。
取締役の主な役割は、会社の業務執行に関する意思決定を行うことです。会社法第348条では、「取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く)の業務を執行する」と定めています。
取締役の任期
取締役の任期は原則として2年ですが、株式譲渡制限会社では最長10年まで延長することができます。取締役の任期が満了したときには、たとえ同じ方が再び選任されたとしても、重任登記(任期満了した役員を引き続き就任させること)の手続きをしなければなりません。
なお、取締役は任期満了による退任の他、任期途中での解任や辞任も可能です。取締役を解任するには、原則として、株主総会で議決権の過半数の賛成による解任決議が必要です。
取締役の選任要件
取締役は、株主総会の決議で選任されます。会社法第331条により、以下の要件にあてはまらない方であれば、誰でも取締役に選ぶことができます。
取締役に選任できない要件
-
1.
法人
-
2.
会社法など一定以上の罪を犯し、刑の執行が終わり、またはその執行を受けることがなくなった日から2年を経過していない者
-
3.
上記の2.以外の罪を犯して禁錮刑以上の刑に処せられ、その執行が終わるまで、または刑を受けることがなくなるまでの者(執行猶予中の者は除外)
取締役と他の役員との違い
取締役と付く役職には、「代表取締役」「社外取締役」や「常務取締役」、「専務取締役」など、さまざまな種類があります。また、取締役と混同されやすい役職名に、「執行役員」というものがあります。それぞれ名称は似通っていても、取締役とは役割や選定方法などが異なるので注意が必要です。
取締役と代表取締役との違い
取締役は、会社の業務執行に関する意思決定を行う役職です。一方、代表取締役は、会社法上で定められた会社の最高責任者です。代表取締役は取締役の中から選定されますが、必ずしも1名であるとは限りません。また、取締役が1名の会社の場合は、その取締役が代表取締役になります。
取締役と社外取締役との違い
取締役というと、一般的には、社内で昇格して取締役に就任した社内取締役を指します。それに対して、社外取締役は、取引や資本関係のない社外から迎える取締役のことです。社外取締役は、その会社での業務経験はないので、社内の利害関係や人間関係にとらわれずに業務を遂行することができます。
企業経営を管理監督するコーポレート・ガバナンスの観点から、2021年3月施行の改正会社法によって、上場企業は社外取締役の設置が義務化されました。
取締役と常務取締役や専務取締役との違い
常務取締役や専務取締役は、取締役の中の役職の1つです。取締役は会社法で定められた役職ですが、常務取締役や専務取締役は会社法で定められている役職ではありません。常務取締役も専務取締役も、登記上は単に取締役となります。
大企業など、取締役を多く選任している会社では、取締役の中で序列をつけることが一般的です。序列は、代表取締役、専務取締役、常務取締役、役のない取締役(平取締役)という順番になります。
取締役と執行役員との違い
執行役員は役員と付いているものの、会社法上の役員には含まれません。会社法上の役員とは、取締役・会計参与・監査役の3つを指します。執行役員というのは会社が任意で定めている役職名で、取締役が決定した事業方針に従い、業務を遂行する立場にあります。
また、取締役は会社と任期や報酬などが記載された契約書を交わす委任契約を結びますが、執行役員は一般社員と同じ雇用契約を締結します。取締役とは異なり、登記も必要ありません。
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取締役として求められる役割
取締役は、決定・執行・監督・監査といった、会社の経営における4つの役割があります。また、その役割は取締役会を設置するかどうかによっても変わってくるため、取締役会を設置している場合としていない場合に分けて解説します。
取締役会を設置している場合
取締役会を設置している場合、取締役は取締役会に参加し、業務遂行に関する意思決定を行う必要があります。さらに、代表取締役または業務執行の委任を受けた取締役が、その意思決定にもとづいて会社の運営を行います。
取締役会を設置していない場合
取締役会を設置していない会社では、取締役は株主総会での決議事項などにもとづき、取締役が業務執行を担います。また、会社の代表として、積極的に意思決定についての施策を進めていく必要があります。
取締役に期待される仕事内容
取締役は、会社全体の業務について責任を負う立場になります。つまり、個人としての結果だけではなく、会社全体の業績を良くしていくことが取締役の役目です。マネジメントはもちろん、マーケティングや人材教育、採用計画などに関わることもあるでしょう。ここでは、取締役の仕事内容について解説します。
株主総会での対応
株主総会とは、株主が会社に関わる意思決定を行うために、議案を検討・決議する機関です。取締役は株主総会に参加し、前年度の事業内容の説明や次年度の方針などを発表します。
経営健全化を目指す
代表取締役ではない取締役には、経営者への適切な助言を行うという役割もあります。経営者による独断的なワンマン経営は、時としてステークホルダーに不利益を及ぼします。取締役が経営者に意見することで、経営の健全化を目指すことができるでしょう。
顧客との関係性構築
特に重要な案件などでは、取締役が直接顧客とやりとりした方が、スムースな取引につながることも多くあります。そのように、取引先との良好な関係性を構築するのも、取締役の役割の1つです。
取締役を選任する際のポイント
自身が代表として株式会社を設立する場合、「取締役には誰を選べばいいのだろう」「そもそも、自分の他に取締役は必要なのだろうか」と、迷うことがあるかもしれません。取締役を選任するときには、次のようなポイントを意識するようにしてください。
取締役を選任する際の3つのポイント
- 取締役の選任が必要かよく検討する
- 取締役の役割と責任を果たせる方を選任する
- 取締役の任期に注意する
取締役の選任が必要かよく検討する
取締役会を設置しないのであれば、株式会社に最低限必要な取締役の人数は1名です。つまり、自分が代表取締役であれば、取締役の選任は必須ではありません。取締役を選任すると、任期や役員報酬を決め、定款にも記載が必要です。
「気が合うから」「創業メンバーだから」などの理由で、安易に取締役を決めるのは避けた方がいいでしょう。もし、その取締役を目指す方向性の違いなどから解任や降格をさせたいと考えたとしても、さまざまな手続きを経なければならず、無駄な労力を使うことになってしまいます。
取締役の役割と責任を果たせる方を選任する
前述したように、取締役は会社全体の業務に責任を負う立場です。万が一取締役が不祥事を起こすようなことがあると、会社の信用を大きく傷付けてしまいます。場合によっては、業務を停止せざるを得ない事態に追い込まれてしまうかもしれません。取締役を選任するときには、取締役としての役割と責任を果たせる方を選ぶことが大切です。
取締役の任期に注意する
取締役の任期は原則2年ですが、非公開会社では最長10年まで延長が可能です。ただし、「任期満了のたびに登記手続きは面倒だから」と、最初から長い任期を設定すると、任期途中の解任が難しくなる可能性があります。
解任のリスクを避けるためにも、初めのうちは任期を短くしておき、様子を見ながら延ばしていく方が安心でしょう。登記が必要な取締役ではなく、執行役員に選任するのも1つの方法です。
取締役の責任範囲
業務執行に関する意思決定を行う取締役は、経営に対する大きな責任を伴います。その責任範囲は、会社に対する責任とステークホルダーに対する責任に大別されます。
会社への損害賠償
取締役には会社に対する善管注意義務や忠実義務があり、これらの義務に反して会社に損害を与えた場合は、原則として、損害賠償責任を負うことになります。
善管注意義務とは「善良なる管理者の注意義務」の略で、会社から経営の委任を受ける立場として、必要な注意を払いながら業務にあたらなければならないという意味です。また、忠実義務とは、法令や定款、株主総会の決議を守り、会社のために忠実に職務を遂行する義務のことです。
ステークホルダーへの損害賠償
取締役が故意または重大な過失によってステークホルダーに損害を与えた場合、損害賠償責任を追及されます。経営判断に関わる責任を追及する株主代表訴訟など、会社に損害を与えた取締役が責任を追及されることがあるため、危機管理には十分注意する必要があります。
- ※取締役や役員の設置については、こちらの記事を併せてご覧ください。
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取締役の役割や責任を理解して、適切に選任しよう
株式会社には、必ず1名以上の取締役を置かなければなりません。ただし、取締役会を設置しない場合、代表取締役以外に取締役を選任するかどうかは、その会社の任意です。取締役の役割や責任を正しく理解し、選任が必要なのか、また、誰を選任するかをよく検討しましょう。
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この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。