ペーパーカンパニーは違法?実態のないダミー会社を作るリスクを解説

2023/12/04更新

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ペーパーカンパニーとは、「書類上だけ存在する会社」のことを指す言葉です。会社の設立登記はされているものの事業活動の実態がないため、一般的には、「あやしい」「違法」といったイメージを持たれがちです。

ここでは、ペーパーカンパニーの意味と、ペーパーカンパニーが作られる理由、ペーパーカンパニーを作るリスクなどについて解説します。

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ペーパーカンパニーとは登記はあるが実態のない会社のこと

ペーパーカンパニーとは、法人として登記されているものの、実際には事業を行っていない会社のことです。「ペーパーカンパニー」というのは、あくまでも通称としての呼び方で、法律などで明確に定義されているわけではありません。その実体によって、「ダミー会社」「ゴースト会社(幽霊会社)」などと呼ばれることもあります。

ペーパーカンパニーに「グレーゾーン」「悪質」という印象を持つ方もいるかもしれませんが、必ずしも全てが違法であるとは限りません。ただし、中には脱税や犯罪目的で設立されているペーパーカンパニーも存在するため、注意が必要です。

ペーパーカンパニーの種類

ペーパーカンパニーは、設立目的や実態によって、以下のような種類に分けられます。

休眠会社・ゴースト会社

休眠会社やゴースト会社は、法人を設立して登記上では存在しているものの、事実上は放置されている会社のことです。脱税や粉飾決算に悪用される休眠会社やゴースト会社もありますが、事業活動がなくても正しく決算申告を行い、納めるべき税金を納めていれば問題はありません。

事業活動を休止したい場合、税務署などに休眠の届出をしておくと、税負担を抑えることができます。なお、株式会社は最後の登記から12年間登記を一切行っていないと、強制的に解散手続きをされてしまう「みなし解散」の対象となるため、注意しましょう。

ダミー会社

悪徳商法や詐欺集団の隠れみのとして設立されているペーパーカンパニーを、ダミー会社と呼びます。ダミー会社が設立される目的は、事実上の経営者が表に出ないようにすることです。

特別目的会社

特別目的会社は、ある特定の事業のみを行うために設立された会社のことです。タックスヘイブン(租税回避地)などでの金融取引や、特定の資産を保有するためのペーパーカンパニーとして利用されます。タックスヘイブンとは、日本に比べて法人税が低い、またはゼロの国や地域を指します。

虚偽情報を記載した会社

虚偽情報を記載した会社も、ペーパーカンパニーの1つとされます。例えば、本業とは別に社会的イメージの良くない事業を展開する企業が、実際は本業と一体で運営しているにもかかわらず、登記を分けて設立した会社です。このように同じ事業で別の会社を設立すると、悪質な税金逃れとみなされる可能性があります。

ペーパーカンパニーが作られる理由

事業活動のないペーパーカンパニーが作られる理由としては、次のようなものが考えられます。あくまで一例ですが、ペーパーカンパニーの設立を検討している方は参考にしてみてください。

ペーパーカンパニーが作られる理由

  • 節税対策をしたいから
  • 交際費を経費計上できるから
  • 不動産売却損で利益を減額できるから

節税対策をしたいから

ペーパーカンパニーが設立される理由は、複数の会社に利益を分散させることで、納める税金を本来の税額より減少させられるからです。

法人税や法人事業税などの税金は、法人の所得に応じて税額が決まります。ただし、資本金や出資金が1億円以下の中小企業の場合は、所得が一定額以下であれば、法人税などに軽減税率が適用されます。そのため、1社でまとまった利益を計上するよりも、複数の会社に利益を分散させた方が税率は下がり、税額を少なくすることが可能です。

交際費を経費計上できるから

ペーパーカンパニーを作る理由として、会社がより多くの交際費を経費計上できるようになることも挙げられます。

交際費は、原則として経費にはなりません。これを損金不算入といいます。ただし、これには例外があり、資本金や出資金が1億円以下の中小企業の場合は、1社あたり、交際費のうち接待飲食費の50%、または年間800万円までを交際費として経費計上することができます。

そのため、会社を増やしてより多くの交際費を経費計上できるようにする(=節税につながる)、という目的でペーパーカンパニーが設立されることがあります。

不動産売却損で利益を減額できるから

不動産売却損で利益を減額できることも、ペーパーカンパニーが作られる理由の1つです。ペーパーカンパニーに会社の固定資産を売却することで、会社は帳簿上に売却損を計上し、利益と税負担を減らせます。会社が固定資産を売却したときに売却価格が帳簿価額を下回ると、売却損が発生します。

例えば、会社が保有する固定資産のうち、価値が下がった土地などをペーパーカンパニーに売却すると、帳簿上は不動産売却損が計上されます。その売却損を利益から差し引くことで所得を減らし、法人税などの税負担を減らそうとする考え方です。

税金逃れを疑われるリスクがある

「ペーパーカンパニーを設立すると節税対策になる」と、考えている方はいるかもしれません。しかし、本来納めなければいけない税金を不当に減らす目的でペーパーカンパニーを作るのは、節税ではなく「脱税」です。事業を休止しているだけの休眠会社とは、まったく性質が違うので注意しましょう。

一方、法人や個人事業主が事業を続けながら、別の事業で会社を設立するのは合法であり、ペーパーカンパニーとは呼びません。ただし、本業と同じ事業で別会社を設立した場合には、税務調査で税金逃れとみなされる可能性が高いといえます。

過去には、タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立し、租税を回避する資産家や企業も多く存在しました。現在では、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の改正によって、事業実態のない海外子会社を利用した租税回避や配当受け取りなどの規制が厳しくなっています。海外子会社がペーパーカンパニーだった場合には、その利益は日本の親会社の利益と合算され、日本での納税が必要です。

今後も、タックスヘイブンを使った租税回避に対しては、規制や取り締まりの強化が予想されます。節税目的でペーパーカンパニーを作るのは非常にリスクが高いため、おすすめできません。

税金については税理士に相談することが大切

税の知識が曖昧なまま安易に節税対策を行おうとすると、悪意はなくても違法になってしまう可能性があります。脱税などの違法行為によって会社の信用が失われると、再び信頼を取り戻すのは至難の業です。そのような事態を招かないためにも、税金に関する内容は、税務の専門家である税理士に相談することが大切です。

税理士に相談すると、節税対策をはじめ、税金に大きく関わる資本金や役員報酬の金額、事業計画の売上予測などについてもアドバイスが受けられます。また、個人事業主での起業と法人設立のどちらがいいか迷った場合も、税金や社会保険料などのバランスなどから、より良い選択肢を提示してもらえるでしょう。
さらに、事業開始後には、経理・会計処理や税務処理の相談はもちろん、決算や確定申告を依頼することもできます。

また、2023年10月からはインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入され、インボイス(適格請求書)の要件を満たす、請求書や領収書の発行が必要になります。特に、適格請求書(税率ごとに区分した消費税等の額などが記載された請求書)の発行事業者になるかどうか判断に迷っているような免税事業者の方も、自分だけで判断せずに税理士に相談することをおすすめします。

  • 税理士に相談するメリットについては以下の記事を併せてご覧ください

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節税目的のペーパーカンパニー設立はリスクが高い

ペーパーカンパニーとは、登記はされているものの事業活動の実態のない会社のことです。ペーパーカンパニーの中には一時的に事業を休止している休眠会社もあり、存在自体が違法なわけではありません。
しかし、ペーパーカンパニーを利用して、税金を不当に減らすことは脱税になります。「ペーパーカンパニーは節税対策になる」という情報をうのみにして安易に設立してしまうと、知らず知らずのうちに違法行為をしていることになり、会社の信用を失わせることになりかねません。

法に触れることなく適切な節税対策を行うには、税務の専門家である税理士のアドバイスを受けられる「税理士紹介ナビ新規タブで開く」の利用をおすすめします。同時に、新たに取引を開始する場合や初めてサービスを利用する場合などは、その会社がペーパーカンパニーではないかどうかを確認することも大切です。

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この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。

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