副業をしたら必ず源泉徴収される?源泉徴収の対象や対応方法を解説
監修者: 齋藤一生(税理士)
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副業先から源泉徴収票が送られてきた場合や講演料などの報酬が源泉徴収されて入金された場合、どのように対応すれば良いか迷ったことはありませんか。これから副業を始めようとしている人であれば、本業の勤務先と同様に副業先からも源泉徴収票が発行されるのか知りたいと思うでしょう。
本記事では、副業でも源泉徴収票は発行されるのか、源泉徴収票を受け取った際にどう対応すれば良いのかなどを含めて、源泉徴収対象の業務を解説します。
なお、副業の所得が給与所得ではなくても、行う業務の種類によっては報酬から源泉徴収されて入金されることがあることを認識しておきましょう。
源泉徴収されるのはどのような場合なのかも併せて紹介するので、参考にしてください。
源泉徴収とは?
源泉徴収とは、給与や報酬を支払う事業者が、あらかじめ所得税の相当額を控除(天引き)することです。
源泉徴収を行うことで、納税者と税金を徴収する国の双方が作業負担を軽減できるほか、所得税の納付漏れを防ぐ効果が期待できます。
年末調整との違い
源泉徴収と混同されやすいものとして、年末調整があげられます。
源泉徴収は、給与や報酬を支払う際に事業者が所得税を天引きして国に納付する制度ですが、年末調整は、従業員の所得税の過不足を精算することです。
なお、給与や報酬を支払う際に控除される所得税の金額は、あくまでも支払いの時点で算出されたものです。実際には、1~12月の1年間に源泉徴収した合計金額と、1年間に納めるべき所得税額が一致していることは稀です。そのため、事業者は年末調整を行い、年間の控除額と納税すべき所得税額に差異を確認し、控除された総額と本来の納税額の過不足分が還付または徴収します。
なお、源泉徴収票は年間の総支給額と控除した所得税額を通知する書類です。
源泉徴収票が送られてくる時期
副業がアルバイトなど給与所得の場合は、前年の1~12月に支払った給与及び賞与を確定させてから源泉徴収票を作成するため、源泉徴収票が送られてくる時期は、一般的に年末か年明けの1月頃です。本業の勤務先で年末調整が行われている場合には、年末調整後に源泉徴収票が発行されるのが基本的な流れとなり、12月の給与明細と共に源泉徴収票を受け取るケースが多いでしょう。
なお、収入証明として源泉徴収票が必要な場合は、任意のタイミングで申し出ることにより、勤務先に前年分の源泉徴収票を発行してもらうことができます。
また、勤務先などから既に発行された源泉徴収票を紛失した場合も、申し出ることにより再交付が可能です。
源泉徴収票と支払調書
年間の報酬が記載されている書類には、「支払調書」があります。
源泉徴収票は給与を支払った事業者が源泉徴収をした際に交付が義務付けられているのに対して、報酬が記載されている支払調書は交付義務がない点が大きな違いです。
給与・報酬を支払った事業者 | 給与・報酬を受け取る者 | |
---|---|---|
源泉徴収票 | 源泉徴収した場合は交付義務あり 金額によって税務署への提出義務あり |
給与を受け取っていれば発行される |
支払調書 | 業種や金額によって税務署への提出義務あり 報酬支払先への交付義務なし (※)好意や商慣習で発行することは任意 |
事業者に発行を依頼できる |
- ※報酬を受け取る者から支払調書の要求をされた場合でも、報酬を支払った事業者には交付義務はありません。しかし、業種等により税務署へ支払調書の提出は必要です。
源泉徴収の対象者は給与所得者のみではない
源泉徴収の対象者は給与所得者だけではなく、報酬や料金などの支払いを受ける個人も対象となる場合があります。ただし、すべての取引で源泉徴収が行われるわけではありません。詳細は後述する「源泉徴収が必要な報酬の種類」で紹介します。
なお、副業でアルバイトをしている場合など、本業・副業がいずれも給与所得の場合には注意が必要です。年末調整では2か所以上の勤務先から支払われた給与を合算できないため、基本的には主な収入源である本業で年末調整が行われます。そのため、副業の所得を加えた年間の合計所得額については確定申告する必要があります。ただし、副業の給与収入が20万円以下の場合は確定申告をしないことを選択できます。
源泉徴収される金額は一定の割合が定められている
源泉徴収される金額は、事業者の判断で自由に決められるのではなく、報酬額に応じて一定の割合が定められています。業種によって源泉徴収税額は変わりますが、一般的な控除額は以下のほうほうで計算します。
1回の支払金額が100万円以下の場合 | 支払金額×10.21% |
---|---|
1回の支払金額が100万円を超える場合 | (支払金額-100万円)×20.42%+10万2,100円 |
源泉徴収される際は、所得税と復興特別所得税の合計金額が給与や報酬から差し引かれます。
源泉徴収が必要な報酬の種類
副業の所得が給与所得ではなく、個人が対象業務を行った報酬でも源泉徴収されることがあります。源泉徴収が必要な報酬の種類が決められており、国税庁では、下表の報酬を源泉徴収の対象例としてあげています。
なお、ここにあげている報酬に該当したとしても、必ず源泉徴収されるとは限らないため、報酬の支払時に源泉徴収されるかどうか、事前にクライアントに確認しておくことが大切です。
源泉徴収の対象となる報酬の例 | 職種の例 |
---|---|
原稿料・講演料など | ライター、作家、デザイナー、イラストレーター など |
特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金 | 弁護士、公認会計士、司法書士 など |
社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬 | 医師 など |
特定の職業の人に支払う報酬・料金 | プロ野球選手、プロサッカー選手、モデル、外交員 など |
映画、演劇その他芸能、テレビジョン放送などの出演による報酬・料金 | ミュージシャン、漫才師、俳優 など |
客に対して接待などを行うことを業務とする人に支払う報酬・料金 | ホステス、コンパニオン など |
役務の提供を約することにより一時に支払う契約金 | プロ野球選手 など |
広告宣伝のための賞金や競馬の賞金 | 馬主 など |
- ※国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
源泉徴収される代表的な副業
副業としてよく選ばれる仕事のうち、受託業務の中には源泉徴収されるものがあります。
例えば、Webページに掲載する文章を執筆するWebライターが受け取る報酬は「原稿料」に該当して源泉徴収の対象になるのが一般的です。ほかにも、Webデザイナーやグラフィックデザイナーに支払われるデザイン料、イラストレーターに支払われるイラスト制作料なども、基本的には源泉徴収の対象となります。
こうした仕事を副業に選ぶ場合は、クライアントに送付する請求書に源泉徴収額と、報酬額から源泉徴収額を差し引いた振込金額を記載しておくと良いでしょう。
また、初回の請求書を送付する前に、源泉徴収についてクライアントへ確認しておくとスムースです。
株取引の源泉徴収は選択制
副業で株取引をする際は、証券会社で特定口座開設時に源泉徴収の有無を選択できます。源泉徴収ありを選択した場合、証券会社が源泉徴収を行うため確定申告をする必要はありません。ただし、損失が出た場合は損失の繰り越しをすために確定申告をしましょう。
一方、源泉徴収なしを選択した場合は、納めるべき所得税額が計算されていない状態のため、自分で確定申告を行う必要があります。
副業で源泉徴収された際の対応方法
副業で支払われる給与や報酬から源泉徴収されていた場合、どのような対応が必要になるのでしょうか。副業所得の種類別に対応方法を解説します。
副業が給与所得だった場合
副業の給与所得が年間で合計20万円を超える場合は、確定申告をする必要があります。また、下記の人を除いて副業の給与所得は確定申告の義務はありませんが、源泉徴収をされているときは確定申告をしたほうが良いでしょう。
副業の給与所得を確定申告する必要がある人
- 1か所から給与の支払いを受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
- 2か所以上から給与の支払いを受けている人のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得、および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
なお、国税庁が公開している「給与所得の源泉徴収税額表」のうち、本業(給与所得者の扶養控除等申告書を提出した企業)は「甲」欄、副業は「乙」欄に従って算出されるため、本業と副業では源泉徴収額の算出方法が異なります。
例えば、月額給与が10万円のケースでは、本業であれば源泉徴収額は720円(扶養親族などが0人の場合)ですが、副業の源泉徴収額は3,600円です。このように、同じ給与所得でも本業と副業では源泉徴収の計算方法が異なる点に注意してください。
- ※国税庁「給与所得の源泉徴収税額票(月額表)」
副業が雑所得や事業所得の場合
副業が雑所得や事業所得の場合、収入から経費を差し引いた金額(所得)が年間20万円を超えると確定申告が必要です。例えば、売上高が年間25万円であっても、副業で使用するパソコンの購入費が9万円かかった場合は所得が16万円となり、年間所得が20万円以下に該当するため確定申告は不要です。
また、雑所得と事業所得の大きな違いとして、赤字を損益通算できるかどうかという点があげられます。損益通算をすると、本業の給与所得と副業の赤字を差し引きできます。
特に副業を始めたばかりのころは、副業に必要な機器などを購入した結果、経費が売上を上回ってしまうケースが少なくありません。事業所得であれば損益通算ができるため、本業の所得から副業の赤字分を差し引くことにより、納めるべき所得税額を抑えられます。
なお、副業の所得を事業所得として申告するには、帳簿付けをする必要があります。確定申告の際に事業所得として申告することも想定して、副業を始めた当初から帳簿付けを習慣化しておくのがおすすめです。
また、2023年10月から開始されたインボイス制度に対応して、副業の場合でもインボイス登録をしている場合は、インボイス制度の要件に従って、帳簿付けが必要です。
個人事業主向けの「やよいの白色申告 オンライン」を活用することで、帳簿付けが初めての人でも簡単に事業所得の申告ができます。また、e-Taxにも対応しているため、税務署へ出向くことなく自宅で確定申告ができる点も大きなメリットです。副業が給与所得ではなく、業務委託など事業所得として申告する場合には、ぜひご利用ください。
また、取引先や取引内容によっては請求書の発行が必要になる場合もありますが、クラウド請求書ソフト「Misoca」を活用すれば、源泉徴収額が自動計算されるため、早く正確に請求書を作成することができます。
年間の売上高や源泉徴収額を自身で把握しておくことにより、支払調書や源泉徴収票が届く前に確定申告の準備を進めることも可能です。適格請求書等保存方式(インボイス制度)や電子帳簿保存法にも対応している「Misoca」を活用して、請求書の発行や確定申告の効率化を図ってみてはいかがでしょうか。
副業の株取引で利益を得た場合
一般口座や源泉徴収なしの特定口座で行われた株取引で得た利益は年末調整ができないため、自分で確定申告をして税金を納める必要があります。その際、ほかの所得とは分けて税金を計算しなければなりません。
具体的に株取引で得た利益にかかる税金は、「譲渡益×20.315%」という計算式を用いて算出します。
20.315%の内訳は「所得税および復興特別所得税15.315%+住民税5%」です。なお、給与所得や雑所得・事業所得とは分けて計算する必要がある点に注意してください。
源泉徴収されていたら確定申告を
副業所得が年間20万円を超えるかどうかにかかわらず、副業の給与や報酬から源泉徴収されていた場合には確定申告をした方が有利なことがあります。
源泉徴収されていた場合は確定申告をした方が良い理由と、確定申告の注意点について確認しておきましょう。
確定申告をすれば源泉徴収されすぎた金額が戻ってくる可能性がある
副業所得が年間20万円を超えているかどうかにかかわらず、確定申告をすると源泉徴収されすぎていた金額が還付される可能性があります。源泉徴収は、給与や報酬が支払われるごとに所定の割合で控除されているため、必要経費は考慮されていません。
雑所得または事業所得として申告する際には、副業に取り組むためにかかった費用は経費として計上でき、その際、実際に支払われた報酬から必要経費を差し引きます。そのため、源泉徴収された金額よりも課税所得を基に算出された所得税額が少なくなるケースがあるのです。
この差額は、確定申告をしなければ還付されないため、還付される場合は確定申告をしましょう。
所得税の不足分が発生した際は忘れずに納税を
確定申告書を作成した結果、納めるべき所得税額が源泉徴収額を上回っている場合には、所得税の不足が発生しています。こうしたケースでは、確定申告書の提出と併せて不足分の納税もしなければなりません。
納めるべき所得税の過不足を自己申告することが確定申告の趣旨であるため、追加で納税が必要な場合には期日までに忘れずに納税することが必要です。
なお、適格請求書(インボイス)の発行事業者として登録している場合には、年間の売上高が1,000万円未満であっても消費税の納税義務があるため、所得税の確定申告とは別に消費税申告も必要になります。
源泉徴収の意味合いを正しく理解して、適切な対応を行おう
源泉徴収は給与所得だけでなく、雑所得や事業所得、株取引で得た利益に関してもかかわってくる可能性があります。源泉徴収の意味合いやしくみを正しく理解し、源泉徴収が必要な取引では請求書を正確に作成すると共に、必要に応じて確定申告を行うなど適切な対応ができるよう、準備を整えておきましょう。
なお、源泉徴収ありの取引では、クラウド請求書ソフト「Misoca」を利用することで源泉徴収額を早く正確に計算できます。また、会計ソフトなど副業の経理業務に必須のツールと「Misoca」を連携させることにより、請求内容を自動で仕訳に反映させたり、確定申告にかかる工数の省力化を図ったりすることも可能です。
適格請求書等保存方式(インボイス制度)や電子帳簿保存法にも対応している「Misoca」を活用して、請求書の発行業務や確定申告の効率化を図ることをおすすめします。
バックオフィス業務は弥生のクラウドソフトで効率化
事業所得になる副業の確定申告は会計ソフトを使って楽に済ませよう
会社員などが副業をした場合、副業の所得が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。副業の収入や報酬から源泉徴収をされているなら、確定申告をすれば納めすぎた税金が返金される可能性が高いでしょう。ただ、所得税の確定申告をするには、書類の作成や税金の計算など面倒な作業が多いため、負担に感じる方もいるかもしれません。
事業所得になる副業は、帳簿付けが必要です。そんなときにおすすめなのが、弥生のクラウド確定申告ソフト『やよいの白色申告 オンライン』です。『やよいの白色申告 オンライン』はずっと無料で使えて、初心者や簿記知識がない方でも必要書類を効率良く作成することができます。e-Tax(電子申告)にも対応しているので、税務署に行かずに確定申告をスムースに行えます。
副業の所得区分を事業所得・雑所得どちらにするか迷っている場合、まずは帳簿付けをしておきましょう。事業所得で確定申告する場合は帳簿が必要です。雑所得の場合、帳簿付けの義務はありませんが、売上や仕入・経費などの集計に帳簿がある方が便利です。
なお、『やよいの白色申告 オンライン』では、雑所得の収支内訳書と所得税の確定申告書は作成できません。もし、『やよいの白色申告 オンライン』で作成した収支内訳書から確定申告書を作成すると自動で「事業所得」に集計されます。国税庁の確定申告コーナーで、自分で収支内訳書と確定申告書に転記して申告をしてください。
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