副業と兼業はどう違う?注目される背景や行うメリット、注意点を解説
監修者: 齋藤一生(税理士)
公開
近年、副業や兼業に関心を寄せる人が多くなっています。副業・兼業に挑戦してみたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
今回は、副業と兼業の違いや注目される理由、取り組むメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。副業・兼業をする際の注意点もまとめていますので、ぜひ今後の参考にしてください。
副業と兼業に大きな違いはない
結論からお伝えすると、副業と兼業に大きな違いはありません。副業・兼業共に、本業以外に何らかの仕事をしている状態を表しており、法律上の使い分けなど明確な区別は存在しないのが実情です。
一般的な使い分けとして、副業・兼業にはそれぞれ次のような意味合いがあります。
副業と兼業の一般的な使い分け
- 副業:本業(主たる仕事)とは別に仕事を持つこと
- 兼業:本業以外の仕事を1つ以上、同時に掛け持ちしている状態にあること
また、副業はあくまでサブ的な仕事として片手間で行うイメージに対し、兼業は本業と同程度に注力するイメージがあるようです。いずれにしても、副業と兼業はどちらも「本業以外に仕事をしている」というニュアンスで捉えてよいでしょう。
副業や兼業が注目されるようになった背景
副業や兼業が注目されるようになった背景には、政府による副業・兼業の推進、働き方の多様化という2つの要因があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
政府が副業・兼業を推進している
2018年1月、厚生労働省が公表している「モデル就業規則」が改定されました。2023年7月時点でのモデル就業規則には、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」(第14章 副業・兼業)などの記述が見られます※。国が示すモデル就業規則において副業・兼業が認められているように、政府が副業・兼業を推進しているのです。
この流れを受けて、近年では副業・兼業を認める企業は増加傾向にあります。国全体として副業・兼業を推進する方向へと動いていることは、副業や兼業が注目されるようになった大きな要因の1つです。
- ※厚生労働省労働基準局監督課「モデル就業規則 令和5年7月版」
- ※日本経済団体連合会「副業・兼業に関するアンケート調査結果」(2022年10月)
働き方の多様化
近年は働き方の多様化が進み、リモートワークやフレックス制度などを導入する企業も数多く見られるようになりました。パソコンやスマートフォンなどの端末とインターネットへの接続環境さえあれば、場所を選ばず働けるケースが増えています。従来のように本業のみが仕事とは限らなくなり、副業・兼業も含めて多様な働き方を検討する人が増えつつあるのです。
働き方の多様化も、副業・兼業が注目されるようになった要因といえるでしょう。
副業・兼業をするメリット
副業・兼業に取り組むことによって、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主な3つのメリットについて解説します。
スキルアップを図れる
本業以外にも仕事をすることで、新たな経験をしたり、スキルを伸ばしたりできる可能性が高まります。本業では経験できない業務に携わるチャンスも豊富にあることから、キャリア形成の選択肢も増えていくでしょう。
従来は、勤務先において配属先や担当業務を自由に選べないケースも少なくなかった労働者が、より主体的に自身のキャリアを形成しやすくなったという見方もできます。副業・兼業を通してスキルアップを図れることは、大きなメリットの1つです。
収入増および収入源の確保
副業・兼業に取り組むことで、収入が増えるメリットがあります。昇給や転職などで収入増を目指すことも可能ですが、タイミングや本人のスキルによっては早急な実現は難しいケースもあるでしょう。副業・兼業によって総収入が増えることは、将来に備えて貯蓄をしたい、本業だけでは収入が不十分といった場合に大きなメリットになるといえます。
また、副業・兼業によって本業以外にも収入源を確保できることもメリットです。収入源を複数確保しておくことは、万が一本業の経営状態が悪化した場合など不測の事態に備えるうえでも重要な対策といえます。2023年の1年間で倒産した企業数は全国で8,690件(※)と、勤務先の業績悪化や倒産は決して他人事ではありません。収入増および本業以外の収入源確保を実現できることは、副業・兼業に取り組むメリットといえます。
- ※株式会社東京商工リサーチ「倒産件数・負債額推移 1952年(昭和27年)~全国企業倒産状況」
転職や起業などに向けた挑戦ができる
副業・兼業に取り組むことは、本業を続けながら、転職や起業の足掛かりとなる準備を進められるというメリットもあります。将来目指したい方面の仕事を副業・兼業から始めることによって、リスクを抑えつつ将来に向けた準備ができるのです。
本業を退職してまったく新しい事業を始める場合、少なからずリスクが伴います。副業・兼業であれば、仮にうまくいかなかったとしても本業の収入が確保されているため、重大なリスクにはならないでしょう。
副業・兼業を通して得た知識や経験は、いずれ転職や起業に役立つ可能性が十分にあります。リスクを抑えつつ転職や起業に向けた挑戦ができることは、副業・兼業に取り組むメリットの1つです。
副業・兼業をするデメリット
副業・兼業には多くのメリットがあるものの、デメリットもあります。副業・兼業を始める際には、デメリットについても理解しておくことが大切です。
労働時間が増える
副業・兼業に携わることは、本業以外にも労働時間が発生することを意味しています。本来であれば休息に充てていた時間が削られることにより、睡眠不足や体調不良に見舞われるおそれがあるのです。
副業・兼業を始めるにあたって、自身の体調管理に注意するだけでなく、家族の理解を得ることも大切です。本業の帰宅後や休日などに副業・兼業に取り組む時間が必要になる分、家族と過ごす時間が減ってしまう可能性があります。労働時間が増えることは、副業・兼業を始めるデメリットの1つといえるでしょう。
雇用保険等の適用がない場合がある
前提として、雇用保険の二重加入は認められていません。本業の勤務先で雇用保険に加入している場合、副業・兼業の勤務先では雇用保険に加入できないということです。
本業が個人事業主で、副業・兼業が雇用関係にある場合でも、労働時間や勤務日数が雇用保険等への加入要件を満たさない可能性があります。「1週間の所定労働時間が週20時間以上」「31日以上の雇用見込みがある」ことが雇用保険に加入するための条件です。この条件を満たしていない場合、基本的には雇用保険は適用されないと考えてください。
副業・兼業をするうえでの注意点
副業・兼業をするうえで、いくつか注意しておきたい点があります。特に次の2点については、副業・兼業を始める際に必ず押さえておきましょう。
本業の勤務先が副業・兼業OKかを確認する
本業の勤務先において、副業・兼業が認められているか確認しておくことが大切です。就業規則などを確認し、副業・兼業に関する記述がないかチェックしましょう。
従業員の副業・兼業を認めている会社(企業)であっても、事前に届出など必要なルールが定められているケースは少なくありません。副業・兼業が雇用されて働く仕事の場合、本業とそれ以外の労働時間を勤務先が通算して把握しなければならないこともあります。後々トラブルに発展するのを避けるためにも、必要な届出があれば確実に提出し、ルールを守って副業・兼業に取り組んでください。
本業や体調に支障をきたさないよう注意する
副業・兼業の労働時間が加わることにより、オーバーワークに陥らないよう注意してください。あくまでも本業がメインの仕事のため、副業・兼業で体力を使い果たしてしまったり、長時間労働によって体調を崩してしまったりするようでは本末転倒です。
労働時間や業務内容を適切にコントロールし、本業との両立を図っていく必要があります。副業・兼業が原因で本業を休んでしまう・仕事への集中力が低下してしまうといったことのないよう、十分に注意しましょう。
また、労働時間などを自分自身で管理するだけでなく、勤務先への報告も大切になります。企業は、従業員の労働時間について自社と副業・兼業先を通算するなど、適切な労務管理が求められるからです。本業と副業・兼業の勤務先それぞれの労働時間を把握し、各使用者に報告するようにしてください。
副業・兼業の年間所得が20万円超の場合は確定申告を
本業以外の所得が年間20万円を超えた場合、所得税の確定申告を行う必要があります。所得とは、収入から必要経費を差し引いた金額のことです。
例えば、副業・兼業の収入が25万円・必要経費が8万円の場合、所得は17万円のため確定申告はしなくてもかまいません。
多くの場合、副業の所得は雑所得として確定申告を行います。継続的に事業的規模で事業を行っている場合は、副業や兼業でも事業所得として確定申告ができます。雑所得の場合、帳簿付けは必須ではありませんが、事業所得の場合は帳簿付けが必要です。
雑所得でも副業・兼業を始める際には、収入や経費の状況がわかるよう、帳簿付けをすることをおすすめします。帳簿付けは、表計算ソフトで付ける程度でもよいですが、確定申告ソフトを利用すると手間なく行えるため便利です。
なお、副業・兼業の年間所得が20万円以下の場合でも、報酬から源泉徴収をされて支払われている場合は、確定申告をすることで還付を受けられる可能性があり、還付となるなら確定申告をするとよいでしょう。また、医療費控除を受けるなど、副業以外の理由で確定申告をする場合は、副業・兼業の所得が20万円以下の場合でも副業の所得も併せて申告が必要です。
確定申告が不要な場合も、住民税の申告は必要
副業・兼業の年間所得が20万円以下であれば確定申告は必須ではないものの、確定申告をしない場合で1円でも利益があれば住民税に関しては別途申告する必要があります。所得税の確定申告は税務署にて行いますが、住民税の申告は区役所や市役所にて行う点に注意してください。
消費税の申告・納付が必要な場合もある
副業・兼業の販売先や業務内容によっては、適格請求書(インボイス)の発行が求められるケースがあります。この場合、適格請求書(インボイス)発行事業者として登録しなければ適格請求書を発行できません。
適格請求書発行事業者として登録した場合は、課税事業者となるため消費税の申告義務と納税義務が生じます。副業・兼業を始める際には、必要次第で適格請求書発行事業者の登録申請を行うことも視野に入れておく必要があるでしょう。
副業・兼業への取り組みはメリット・デメリットの両方を理解したうえで検討を
副業・兼業に取り組むことで多くのメリットを得られる反面、デメリットもあります。これから副業・兼業を始めようと考えている方は、メリット・デメリットの双方を理解したうえで検討していくことが大切です。
副業・兼業を始めるときは、毎月の売上管理や経費管理もしておくとよいでしょう。
帳簿付けを効率良く、かつ正確に行うには確定申告ソフトを活用するのがおすすめです。弥生のクラウド確定申告ソフト「やよいの白色申告 オンライン」は、初心者や簿記の知識がない方でも、簡単に利用できます。税務署へ出向くことなく簡単に確定申告ができるe-Taxにも対応していますので、ぜひ弥生のクラウド確定申告ソフトをご活用ください。
なお、無料で使える「やよいの白色申告 オンライン」は、事業所得者専用のため雑所得の収支内訳書と所得税の確定申告書は作成できません。副業・兼業が雑所得の場合、「やよいの白色申告 オンライン」で作成した書類を基に国税庁のサイトで確定申告を行うとスムースです。
バックオフィス業務は弥生のクラウドソフトで効率化
事業所得になる副業の確定申告は会計ソフトを使って楽に済ませよう
会社員などが副業をした場合、副業の所得が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。副業の収入や報酬から源泉徴収をされているなら、確定申告をすれば納めすぎた税金が返金される可能性が高いでしょう。ただ、所得税の確定申告をするには、書類の作成や税金の計算など面倒な作業が多いため、負担に感じる方もいるかもしれません。
事業所得になる副業は、帳簿付けが必要です。そんなときにおすすめなのが、弥生のクラウド確定申告ソフト『やよいの白色申告 オンライン』です。『やよいの白色申告 オンライン』はずっと無料で使えて、初心者や簿記知識がない方でも必要書類を効率良く作成することができます。e-Tax(電子申告)にも対応しているので、税務署に行かずに確定申告をスムースに行えます。
副業の所得区分を事業所得・雑所得どちらにするか迷っている場合、まずは帳簿付けをしておきましょう。事業所得で確定申告する場合は帳簿が必要です。雑所得の場合、帳簿付けの義務はありませんが、売上や仕入・経費などの集計に帳簿がある方が便利です。
なお、『やよいの白色申告 オンライン』では、雑所得の収支内訳書と所得税の確定申告書は作成できません。もし、『やよいの白色申告 オンライン』で作成した収支内訳書から確定申告書を作成すると自動で「事業所得」に集計されます。国税庁の確定申告コーナーで、自分で収支内訳書と確定申告書に転記して申告をしてください。
クラウド見積・納品・請求書サービスなら、請求業務をラクにできる
クラウド請求書作成ソフトを使うことで、毎月発生する請求業務をラクにできます。今すぐに始められて、初心者でも簡単に使えるクラウド見積・納品・請求書サービス「Misoca」の主な機能をご紹介します。
「Misoca」は月10枚までの請求書作成ならずっと無料、月11枚以上の請求書作成の有償プランも1年間0円で使用できるため、気軽にお試しすることができます。また会計ソフトとの連携も可能なため、請求業務から会計業務を円滑に行うことができます。