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副業は就業規則で禁止できる?副業を認めるメリットと注意点を解説

監修者:齋藤一生(税理士)

2024/07/01更新

近年は副業を解禁する流れがあり、2018年1月に厚生労働省の「モデル就業規則新規タブで開く」から「許可なく他の会社などの業務に従事しないこと」の文言が削除されました。とはいえ、副業を認めることでリスクが生じる懸念から、就業規則で副業を禁止できるのか気になる方もいるかもしれません。

そこで本記事では、副業を就業規則で禁止できるのかどうか、企業の視点から従業員の副業を認めるメリットやデメリット、認める場合の就業規則のポイントについて解説します。併せて、労働者(副業をしている人)の視点から副業をするうえでの注意点も紹介しますので参考にしてください。

副業は法律では禁止されていない

憲法では職業選択の自由が保障されており、副業は憲法や労働基準法などで禁止されていません。従業員は、就業時間外は副業を含め自由に活動できるのが原則です。

ただし、公務員は国家公務員法や地方公務員法によって、許可なく副業を行うことが禁止されています。理由は、守秘義務のほか、国や地方自治体、国民のために働くという役割を果たさなければならないからです。

副業を就業規則で全面的に禁止することは難しい

民間企業においては、副業を禁止する法律はないものの、モデル就業規則によると、以下に該当する場合は副業を禁止・制限できるとされています。

副業を禁止・制限できるケース

  • 労務提供上の支障がある場合
  • 企業秘密が漏えいする場合
  • 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
  • 競業により、企業の利益を害する場合

反対に、上記に当てはまらない場合、全面的に副業を禁止するのは難しいといえます。こうしたモデル就業規則も踏まえ、副業に関するルールを明確に定めておく必要があるでしょう。

企業が副業を認めるメリット

では、企業が従業員の副業を認めるメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。主な3点について解説します。

従業員のスキルアップが図れる

副業を認めることで従業員が社内以外でも成長の機会を得ることになり、それが本業にも還元される可能性がある点はメリットといえます。社内だけでは得られなかった知見やノウハウがもたらされることで、社内の活性化や新たなビジネスのきっかけとなるケースもあるでしょう。

優秀な従業員の流出を防止できる

優秀な従業員ほど、さらなる成長の場を求めて転職する可能性が高いと考えられます。その点、副業を会社側が認めることで、成長の機会を自ら作ってもらうことができれば優秀な人材の流出を防げるかもしれません。

人材の確保ができる

自分らしい働き方を求める人材にとっては、副業を解禁している企業は魅力といえます。つまり、副業を解禁することそのものが、自社の魅力アピールにつながる可能性もあるのです。
さらに、社外の副業を希望する人を受け入れることで採用範囲が広がり、人材獲得にもつながる可能性もあります。

企業が副業を認めるデメリット

企業が副業を認めることはメリットがある一方、デメリットもあります。副業について検討するうえでは、デメリットについても十分に理解することが大切です。

機密情報漏えいのリスクがある

まずデメリットとしてあげられるのは、情報漏えいのリスクがあることです。従業員の副業によって本業で取り扱っている機密情報が、外部に漏れてしまうリスクが考えられます。情報漏えいは、企業のブランドや信用を損なう結果につながるおそれもあります。
特に、従業員が同じ業界での副業を行う場合は、リスクが高まるという懸念がぬぐい切れないこともあるでしょう。

過重労働や健康被害のリスクがある

副業は本業の退勤後や休日などプライベートの時間を利用するため、副業をする従業員は、必然的に労働時間が増加します。そのため、十分に休みを取れずに体調を崩したり、パフォーマンスが低下したりするといったリスクが考えられるでしょう。従業員の副業を認める場合は実態を把握できるしくみを作る、副業先の労働時間を自社の労働時間と通算するなど、過重労働や健康被害を防ぐために適切な労務管理が必要です。

転職・独立に利用されることがある

副業によって従業員のスキルアップが図れることは、メリットである反面、結果的に転職・独立へとつながるケースもあります。
さらに、競合他社に該当する企業で副業を行ったり、競合となり得る会社を設立したりする場合、会社の利益の侵害につながる可能性もあるかもしれません。

副業を認める場合の就業規則のポイント

ここからは、副業を認める場合の就業規則に関するポイントをご紹介します。前提として、企業と労働者が共に納得感を持てることが大切です。

許可制ではなく届出制が望ましい

前述のとおり、副業を全面的に禁止することは難しく、認める方向が望ましいといえます。そのため、副業は原則禁止の許可制ではなく、届出制として規程を検討するのが1つのポイントです。

届出制とする際は、届出のフォーマットも作成しておきましょう。フォーマットに記載する内容としては以下があげられます。

副業の届出に記載する内容例

  • 副業の契約形態(雇用・非雇用)
  • 副業先の事業内容
  • 副業先との労働契約締結日
  • 副業先との労働契約期間
  • 副業先での所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻
  • 副業先での所定労働時間外労働の見込み時間数
  • 副業の内容に変更等があった場合の対応
  • 副業に関する事項について確認を行う頻度

副業の禁止・制限に関する規程を明確にする

企業にとって副業のデメリットをカバーするためにも、事前に副業の禁止・制限に関する規程は明確にしておかなければなりません。このとき、モデル就業規則の内容を参考にするとよいでしょう。

なお、就業規則を変更する場合は、「就業規則変更届」「労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見書」「変更後の就業規則」の3つを管轄の労働基準監督署長に提出する必要があります。特に労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見を聞くことは法律で定められているため、話し合いの場を設けるなどの対応が必要です。

副業の労働時間と通算して管理する

従業員の副業を認める場合、長時間労働にならないよう管理することが大切です。また、従業員が他の企業で雇用契約を結ぶ副業の形式を認める場合、自社と副業先の労働時間を通算して考えなければなりません。通算した労働時間が、1日8時間または週40時間を超える場合は、時間外労働に関する協定の締結や、割増賃金の支払いが必要です。

適切に労務管理を行うためには、前述したように副業を届出制にするなど、実態を把握するしくみを作ることが求められるでしょう。

副業の労働時間についてはこちらの記事でも解説していますので、参考にしてください。

従業員が就業規則に反した場合の対応を決めておく

従業員が無断で副業を行ったり、禁止・制限理由に該当する副業を行ったりした場合の対応を事前に決めておくとよいでしょう。このとき、副業による会社への影響度によっては、懲戒処分となる可能性があることも記載しておきたいところです。

懲戒処分とは、労働契約上の義務に違反した従業員に対し、会社側が何かしらの制裁を加えること。口頭での注意で済むような軽いものから、減給、出勤停止、降格や解雇処分といった重いものまであります。

懲戒処分の対象となる主なケースとしては以下のとおりです。

本業に悪影響をもたらした場合
本業の業務時間中にも副業をしたり睡眠不足で遅刻が多くなったりすると、企業にとっては不利益となるため「職務専念義務違反」に相当するケースがあると考えられます。
情報漏えいなど会社の損失につながる場合
従業員の副業によって本業で取り扱っている顧客情報や技術情報といった機密情報が外部に漏れてしまうことは、「秘密保持義務違反」に該当します。企業の信用にもかかわり、懲戒処分の対象と考えられるでしょう。
競合他社での副業や、競合会社の設立
従業員が競合他社に該当する企業で副業を行ったり、競合となり得る会社を設立したりする場合も、会社の不利益となることが考えられます。「競業避止義務違反」として懲戒処分の対象となる可能性があるでしょう。

労働者が副業をするうえでの注意点

最後に、副業を考えている方に向けて注意点を解説します。本業の勤め先とのトラブルを避け、安心して副業を行うためにもポイントを押さえておきましょう。

本業の勤め先の就業規則をきちんと確認しておく

会社によっては、さまざまな理由から就業規則で副業を禁止しているケースもあります。また、副業が禁止されていなかったとしても、事前申請が必要な会社もあります。そのため、副業を始める前に会社の就業規則を確認しておきましょう。

副業と合算した労働時間の管理を行う

副業を始める場合、自ずとこれまで以上に労働時間が増えると考えられます。副業に時間を割きすぎると、本業のパフォーマンスが落ちたり、プライベートの充実が図れなくなったりする可能性があるため、副業に充てる時間をしっかり管理することが大切です。

特に、アルバイトやパートなど雇用契約を結ぶ副業の場合、本業と副業の労働時間を合算して考えなければなりません。企業が適切な労務管理を行えるよう、副業の業務内容や業務量などを報告することも有効です。業務委託など雇用契約ではない副業の場合も、過重労働にならないよう十分に注意しましょう。

副業の所得が20万円超の場合は確定申告を行う

本業以外の副業の年間所得(副業の収入から必要経費を差し引いた金額)が20万円を1円でも超える場合、所得税の確定申告が必要です。本業以外の副業などの年間所得が20万円以下の場合、確定申告は不要ですが、利益が1円でも出ていれば、住民登録をしている市区町村に対して住民税の申告が必要です。

なお、副業の年間所得が20万円以下であっても、副業の報酬から源泉徴収をされて支払われている場合は、確定申告をすることで還付を受けられる可能性があります。
また、医療費控除を受けるなど、副業以外の理由で確定申告をする場合は、副業の所得も併せて申告しなければなりません。

副業が雑所得の場合、帳簿付けは不要ですが、副業の収入や経費から所得を計算するには、帳簿付けをしておくのがよいでしょう。帳簿を付けておくことで、確定申告が事業所得で行える可能性もでてきます。

また、副業でも販売相手によっては、適格請求書(インボイス)の発行が求められることがあります。適格請求書(インボイス)を発行するためには、適格請求書発行事業者に登録を行う必要があります。
適格請求書発行事業者は、消費税の申告とインボイス制度に則って、帳簿付けと適格請求書(インボイス)の発行と保存が必要です。帳簿付けや所得税・消費税の確定申告の際は、確定申告ソフトを利用するのがおすすめです。弥生のクラウド確定申告ソフト「やよいの白色申告 オンライン」は、初心者の方でも効率良く必要な書類を作成できます。

副業を認めるメリット・デメリットを理解したうえで、適切なルールを定めよう

副業は憲法や労働基準法などで禁止されていません。企業にとって副業を認めるメリット・デメリットを理解したうえで検討し、認める場合はリスクヘッジとして届出制として規程を定めたり、従業員が就業規則に反した場合の対応を明確に定めたりするとよいでしょう。

なお、労働者の方も、副業を検討する場合は企業の就業規則をきちんと確認し、ルールに則って対応することが大切です。

また、本業以外で副業の年間所得が20万円を1円でも超える場合は、所得税の確定申告をしなければなりません。確定申告では帳簿付けなどが発生するケースもあるため、少しでも手間を削減するために確定申告ソフトの導入も検討してみてください。

バックオフィス業務は弥生のクラウドソフトで効率化

事業所得になる副業の確定申告は会計ソフトを使って楽に済ませよう

会社員などが副業をした場合、副業の所得が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。副業の収入や報酬から源泉徴収をされているなら、確定申告をすれば納めすぎた税金が返金される可能性が高いでしょう。ただ、所得税の確定申告をするには、書類の作成や税金の計算など面倒な作業が多いため、負担に感じる方もいるかもしれません。

事業所得になる副業は、帳簿付けが必要です。そんなときにおすすめなのが、弥生のクラウド確定申告ソフト『やよいの白色申告 オンライン』です。『やよいの白色申告 オンライン』はずっと無料で使えて、初心者や簿記知識がない方でも必要書類を効率良く作成することができます。e-Tax(電子申告)にも対応しているので、税務署に行かずに確定申告をスムースに行えます。

副業の所得区分を事業所得・雑所得どちらにするか迷っている場合、まずは帳簿付けをしておきましょう。事業所得で確定申告する場合は帳簿が必要です。雑所得の場合、帳簿付けの義務はありませんが、売上や仕入・経費などの集計に帳簿がある方が便利です。

なお、『やよいの白色申告 オンライン』では、雑所得の収支内訳書と所得税の確定申告書は作成できません。もし、『やよいの白色申告 オンライン』で作成した収支内訳書から確定申告書を作成すると自動で「事業所得」に集計されます。国税庁の確定申告コーナーで、自分で収支内訳書と確定申告書に転記して申告をしてください。

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クラウド請求書作成ソフトを使うことで、毎月発生する請求業務をラクにできます。今すぐに始められて、初心者でも簡単に使えるクラウド見積・納品・請求書サービス「Misoca」の主な機能をご紹介します。

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この記事の監修者齋藤一生(税理士)

東京税理士会渋谷支部所属。1981年、神奈川県厚木市生まれ。明治大学商学部卒。

決算書作成、確定申告から、起業(独立開業・会社設立)、創業融資(制度融資など)、税務調査までサポート。特に副業関連の税務相談を得意としており、副業の確定申告、税金について解説した「副業起業塾 新規タブで開く」も運営しています。

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