返品の会計処理とは?仕訳方法や勘定科目などを解説
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商品を伴う取引では、仕入先への返品や取引先からの返品が発生する場合があります。その際、どのように会計処理を行うべきか迷う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、返品に伴う会計処理の種類や勘定科目、仕訳方法を解説します。返品時の消費税の取り扱いなど、間違いやすいポイントについても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
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返品は会計処理においても正確な仕訳が求められる
返品とは、販売または仕入が完了した商品を、取引先の都合や商品の不良などの理由により、元の取引を取り消す、もしくは修正することを指します。返品処理は取引上の重要な要素であり、会計上も売上や仕入の計上に修正が生じるため、正確な仕訳が求められます。
- 返品におけるポイント
-
- 取引先の都合や商品の不良などさまざまな理由で返品は発生するが、その会計処理は売上、売掛金に影響し、企業の財務状況に直結するため、返品の取り扱いを正しく理解し、適切に処理することが大切
- 返品時に手数料や返送料が発生する場合は、それらも含めて正確に仕訳処理を行う必要がある
- 返品と併せて発生しやすい「値引」や「割戻し」についても、性質が異なるため会計処理上の区別が必要
- 返品処理に誤りがあると、会計データの信頼性が低下するリスクがある
- 不適切な処理は、税務申告や経営判断に悪影響を及ぼす可能性があるため、仕訳は正確に行う必要がある
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返品が発生する主な理由
返品には「取引先に販売した商品が返品される場合」と「自社が仕入れた商品を仕入先に返品する場合」の2つのケースがあります。いずれの場合も会計処理としての返品対応が必要です。返品理由によって処理が異なる場合があるため、返品が発生する背景を把握しておくことで、会計処理の正確性が高まります。
- 主な返品の理由
-
- 商品の不良や破損
- 誤発送や注文ミス(数量・商品違い)
- 商品イメージと異なる
- 検品や梱包ミス
- 誤購入
これらの返品理由は、取引先が商品を返品する場合と、自社が仕入先へ返品する場合のどちらにも該当することがあります。例えば、「商品の不良」や「誤発送」は、取引先からの返品理由であると同時に、自社が仕入先に返品する理由にもなるでしょう。
このように、返品は本来発生しないのが望ましいですが、実務上は避けられない場合もあります。そのため、返品に伴う会計処理についても事前にきちんと理解しておくことが必要です。
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返品の会計処理の種類
返品の会計処理は、大きく「仕入戻し」と「売上戻り」の2つに分類されます。両者は処理方法が異なるため、それぞれの違いを把握しておきましょう。
仕入戻し
仕入戻しとは、自社が購入した商品を仕入先に返品することを指します。
商品の不良や注文ミス、納品ミスなどが原因で発生するケースが多くあり、こうした場合は、返品に伴って仕入取引における会計処理の修正が必要です。
なお、仕入戻しと混同しやすい勘定科目に「仕入値引」があります。仕入戻しは、物理的な返品を指すのに対して、仕入値引は、仕入後に返品はせず、商品の価格だけを下げてもらうなど、金額面での調整を表している点が異なります。両者は帳簿上の処理も異なるため、混同しないよう注意しましょう。
売上戻り
売上戻りとは、自社が販売した商品が取引先から返品された際に行う、売上取引の修正に関する会計処理です。
商品の不良や誤発送、もしくは取引先都合によるキャンセルなど、さまざまな理由によって売上戻りが発生します。このような場合、売上を計上した後に帳簿を訂正する必要があるため、処理内容を正しく把握し、適切に仕訳を行う必要があります。なお、売上戻りが発生すると売上高が減少し、対応する売掛金も取り消す必要があるため、仕訳の漏れがないよう注意しましょう。
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返品の会計処理に用いる勘定科目と仕訳方法
ここでは、返品が発生した場合に使用される勘定科目と仕訳方法について解説します。仕入戻しと売上戻り、それぞれのケースでどのような勘定科目を使うのか、仕訳例と共に紹介します。
返品の会計処理を正確に行うためには、金額の取り消しだけでなく消費税の処理にも注意しましょう。返品金額には消費税が含まれるため、自社が税込処理か税抜処理のどちらを採用しているかを確認し、それに応じた方法で仕訳を行う必要があります。また、返品処理では、取引(仕入・販売)時に計上した消費税も合わせて修正しなければなりません。仕入・販売時と同様の方法で逆仕訳を行い、消費税も含めて正確に処理することで、帳簿と税額の整合性を維持できます。
仕入戻しに使う勘定科目と仕訳例
仕入戻しでは、過去に計上した「仕入」費用を取り消す必要があるため、同じ「仕入」の勘定科目を使ってマイナス処理を行うことが必要です。これにより、費用(仕入れた商品)と負債(支払う予定の買掛金)が減少したことを確認できます。
なお、仕入戻しは在庫管理にも直結します。返品された商品が破損していて再販できない場合や、直接仕入先に返送する場合など、返品処理が行われても実際の在庫数量が変動しないケースもあるでしょう。そのため、帳簿上の在庫と実際の在庫を定期的に照合し、正確な在庫状況を把握することが大切です。
仕訳例:3,300円で仕入れた商品を返品した場合(税込処理)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 3,300円 | 仕入 | 3,300円 |
仕訳例:3,300円で仕入れた商品を返品した場合(税抜処理)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 3,300円 | 仕入 | 3,000円 |
| 仮払消費税 | 300円 | ||
ただし、期をまたいで返品する際には注意が必要で、前期に仕入れて支払を済ませた商品を翌期に返品する場合、以下のように仕訳します。
仕訳例:前期に3,300円で仕入れた商品を翌期に返品した場合
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 3,300円 | 仕入 | 3,300円 |
この場合で、前期に返品を行って、入金だけが翌期にずれ込んだというケースでは、前期に仕入をマイナスして、その分を未収金などで計上しておきます。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 未収金 | 3,300円 | 仕入 | 3,300円 |
売上戻りに使う勘定科目と仕訳例
売上戻りでは、計上済みの売上を取り消すため、使用する勘定科目は「売上」です。返品された商品の代金を帳簿上で減額し、売上高を正確に調整するための処理を行います。売上戻りにより、帳簿上の売掛金残高と売上高が調整され、売上を借方に記帳することで計上済みの収益の一部を取り消す処理となります。
仕訳例:3,300円で販売した商品が返品された場合(税込処理)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売上 | 3,300円 | 売掛金 | 3,300円 |
仕訳例:3,300円で販売した商品が返品された場合(税抜処理)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売上 | 3,000円 | 売掛金 | 3,300円 |
| 仮受消費税 | 300円 | ||
前期に商品を販売し、前期末までに代金が入金されている商品が翌期に返品された場合、以下のように仕訳をします。
仕訳例:前期に3,300円で販売した商品が翌期に返品された場合
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売上 | 3,300円 | 普通預金 | 3,300円 |
この場合で、前期に返品が行われて、返品分の支払いだけが翌期にずれ込んだというケースでは、前期に売上をマイナスして、その分を未払金などで計上しておきます。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売上 | 3,300円 | 未払金 | 3,300円 |
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返品に伴う仕訳は会計ソフトで正確かつ効率的に進めよう
返品に伴う会計処理には、大きく分けて「仕入戻し」と「売上戻り」があり、それぞれに使用する勘定科目が異なります。仕入戻しでは仕入取引の修正処理、売上戻りでは売掛金の取消処理が必要になるため、いずれの場合も正確な仕訳が求められます。
このような仕訳を正確かつ効率的に行うには、会計ソフトの活用が効果的です。勘定科目の判断に迷いやすい返品処理でも、AI学習機能などを備えた会計ソフトを利用すれば、処理をスムーズに進めることができます。返品処理をより正確かつ効率的に行うためにも、会計ソフトの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
photo:Thinkstock / Getty Images
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。