過剰在庫はリスクになる!? ネットを活用した売却方法を紹介
執筆者: 柳原つつじ
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過剰在庫とは「需要以上の在庫を保有している状態」のこと。販売目的で製造や仕入れた商品や部品が、必要以上に保管され続けている状態です。しかも、過剰在庫の状態が続くと、さまざまなリスクが発生します。そこで今回は、過剰在庫のリスクや発生原因、売却方法、予防策を含めて解説します。
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POINT
- 「過剰在庫」は、キャッシュフローの悪化につながるので、できるだけ早く売却して、現金化することが大切
- 在庫を売却する手段は、多岐にわたるため、自社商品に合った手段を選ぶ
- 過剰在庫を防止するためには、在庫の管理を徹底し、根拠のある発注や生産を行うことが重要
過剰在庫とはどのような状況?
過剰在庫とは「需要以上の在庫を保有している状態」のことを言います。つまり、販売目的で製造や仕入れた商品や部品が、倉庫などで必要以上に保管され続けているということ。いわゆる「売れ残り」のことで「余剰在庫」「死蔵在庫」とも言います。
過剰在庫を抱えるリスク
過剰在庫には、さまざまなリスクがあります。まずは、在庫として保有しているうちに、品質が低下してしまい、商品としての価値が下がるということ。さらに管理費用もかさみます。
また、在庫が利益を生み出すことはありません。在庫は、販売しなければ収益にひもづかないからです。そのため、できるだけ早く流動性の高い現金に変えて、投資や運用に回さなければ、キャッシュフローは悪化するばかりです。セールの開催など、安く商品を売ることも視野に入れながら、在庫をさばいていかなければなりません。
過剰在庫の発生原因
なぜ、過剰在庫が発生するのでしょうか。それは「商品がなぜ売れ残るのか」を考えれば、明らかです。
まず、在庫量をきちんと把握できていない場合に、過剰在庫は発生します。管理ができていないと、まだたくさん在庫があるにもかかわらず「在庫がない」「在庫が少ない」と思い込んで発注し続け、在庫を余計に抱えてしまいます。また、販売機会の損失を恐れて多めに在庫を抱えてしまうこともあるでしょう。
もう一つ、需要の予想が外れた場合にも、過剰在庫が発生することになります。どれだけ現状の在庫を正確に把握していたとしても、「商品の数がどれだけ売れるか」という予測を見誤ってしまい、思っていたように売れなければ、商品は売れ残ってしまいます。
とはいえ、流行や季節の影響もあれば、販促活動にどれだけ注力できるかによっても、売れ行きは変わります。価格が他の類似商品より高くて、販売不振に陥っていることも考えられるでしょう。
過剰在庫を防ぐには「①在庫を正確に把握して、②的確に需要を予測する」ことが必要ですが、①はともかく②は容易ではありません。
もちろん、予防策はあるので後述しますが、在庫をもって商品を販売するビジネスを行っている限りは、過剰在庫のリスクは常にあるといっても過言ではないでしょう。そのため、過剰在庫を抱えてしまった場合の対策を知っておくことが大切です。
過剰在庫をさばく手段
過剰在庫が発生してしまった場合、在庫をさばくには、
など、いくつか方法があります。それぞれメリットとデメリットがあるので、詳しく解説していきたいと思います。
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過剰在庫の売却方法①セールやアウトレットで売却する
過剰在庫をセールやアウトレットで売る方法もあります。売れない在庫を対象に、セールイベントを開催すれば「お得な値段で商品が買える」と消費者を引きつけることができるでしょう。
メリットとしては、売上アップにつながることや、普段から自社商品を応援してくれている顧客へのサービスになることなどが挙げられます。また、在庫一掃セールを機会に、新商品の認知度も高められるかもしれません。
ただし、業者に売却する場合とは異なり、売れるかどうかはセールを開催してみないことにはわかりません。過剰在庫を確実に売却したいならば、業者に売却したほうがよいでしょう。また値段を下げすぎてしまうと、定価で販売している商品の価値も落ちてしまいます。セールを行う際には「在庫一掃処分セール」など理由を明確にして、かつ「あくまでも今回だけ」と宣伝文などでスペシャル感を出すことも大切です。
自社セールが難しい場合は、アウトレットモールに出店するという方法もあります。在庫処分を目的に運営している店舗を「アウトレットストア」といい、売れ残りの商品や傷がついた商品などを安く販売しています。安い商品を求める消費者が集まってくるので、過剰在庫も売れやすいでしょう。
ただし、自社のセールとは異なり、出店するために費用や手間がかかります。セールかアウトレットのどちらの方法が、採算が取れやすそうかは、社内で検討して決めましょう。
過剰在庫の売却方法②ネットを活用する
過剰在庫は、ネットで顧客に直接販売するという方法もあります。メリットとしては、業者に売るよりも、利益が出やすいということ。また、売り先が明らかなため、商品がどこに流れるかわからないという心配も少なくなります。
在庫をいつどれくらい売却できるかが、販売してみないとわからないというデメリットはありますが、新たな顧客の発掘にもつながります。過剰在庫が大量にあり、かつ、急いで売却しなければならないといった事情がなければ、ネットでの販売は在庫の売却方法としては、メリットのほうが多いといえるでしょう。普段からネット販売をしている場合は、他の手段との複合で対策をしてみましょう。
販売サイトを利用する
自社でネット販売をしていない場合、すぐにネット販売の環境を用意できるとは限りません。そのようなときにネットを用いて過剰在庫を売るために、便利な販売サイトがあります。在庫を抱えた生産者や会社と、それを欲しいユーザーとがサイトで直接つながることで、お互いのニーズを満たしてくれます。主な販売サイトをご紹介しましょう。
食べチョク
「食べチョク」は農家や漁師など生産者が直接、買い手に商品を届ける販売サイトです。市場に出回らない珍しい食材や、限定の商品が出品されているなか、「在庫が余っている●●を食べてみませんか?」といったように、注文が減少して在庫となった商品についても、生産者がアピールでき、自由に価格を設定することもできます。ユーザーにとっても、新鮮な商品を、市場より安く手に入れられるため、評判の販売サイトです。
豊洲市場ドットコム
豊洲市場ドットコムは、豊洲市場に入荷する旬のフルーツやマグロ、海鮮品を販売する通販サイトです。ユーザーは、漁港から直送する鮮魚や旬の美味しい野菜を、豊洲市場や産地から直接購入することができます。なかには「ホテルからの注文が減少し、在庫を抱えてしまっている」「時間短縮営業の影響から、在庫過多になっている」「飲食店からの注文が減少し行き先を失った」といった事情が記載されている商品もあります。在庫に悩む生産者と、新鮮で旬な食材を食べたい消費者とをうまくつないでくれる販売サイトです。
ロスオフ@loss_off
もったいないをつなぐ――。そんなコンセプトを掲げているのが、在庫ロス売買プラットフォームが「ロスオフ」です。過剰在庫やB級商品、型落ち品、賞味期限間近品など、さまざまな在庫ロス商品が出品されています。生産者、卸業者、販売者らと直接つながることで、ユーザーは野菜、お肉、お土産などの在庫ロス商品を、特別価格で購入できます。
Let
Let(レット)は、過剰在庫のほか、型落ち品、未使用品が中古品など「訳あり品」を売買できる、パソコンでもスマホでも使用できるアウトレットアプリ。食品だけではなく、洋服、家電、美容用品や日常品なども、出品できるので、いろんな種類のものを販売したときに、活用できそうです。
ジモティー
個人、法人を問わずに、地元情報満載の掲示板で、不要なものを売ることができるのが、ジモティーです。イベントの参加者やメンバーの募集など、モノの売買以外のマッチングも行っています。取引が成立しても手数料などの費用がかからないのが良い点です。
こうしたサイトを活用するためには、過剰在庫になっている商品について、取り扱っている販売サイトを探すことから始めましょう。食品については、市場に一定のニーズがあるため、上記で紹介したように、食品に特化した販売サイトがあります。
サイトが決まれば、出品者として登録する必要があります。出品する際には、過剰在庫になった経緯や商品の特徴、こだわりを余すことなく伝えるようにしましょう。
一般的に「過剰在庫」にはマイナスのイメージもありますが、こうした販売サイトの場合は、商品の品質自体に問題はないことを示すためにも、過剰在庫になった背景をありのままに説明したほうが、ユーザーは安心して購入できます。生産者の商品への思い入れも、ユーザーにとっては購入動機につながることを頭に置いておきましょう。
販売サイトの利用に向いているのは、そうした商品への思いや過剰在庫の状況をありのままに発信することに、抵抗のない人が望ましいでしょう。また、言うまでもないことですが、最低限ネット環境は必要となります。
SNSで支援を訴える
過剰在庫で困っている場合、SNSで支援を呼びかける方法もあります。SNSで支援を訴えるために必要な準備としては、まずは写真撮影です。商品が余ってしまっている状態が伝わるように写真を撮ること。その際に、商品の魅力が伝わるような写真を撮影できるとベストです。
そのうえで、テキストを作成します。なぜ、過剰在庫になったのか。その経緯と商品への思いをわかりやすい文で発信しましょう。SNSで発信する際には、「#食べて応援」「#フードロス」「#衣服ロス」といったタグを活用すると、見つけてもらいやすいはずです。もし、無事に解決した場合は、その報告も怠らずに。
SNSには、TwitterやFacebook、Instagramなどがあり、それぞれ特徴やユーザー層が異なります。すでにいずれかでアカウントを作成しているならば、一番フォロワー数の多いものをメインに呼びかけるとよいでしょう。
もし、いずれのSNSのアカウントも作成していない、もしくは、アカウントはあるものの、ほとんど使用していないのであれば、拡散力があるTwitterをおすすめします。
またFacebookについては、Twitterに比べると拡散されにくいですが、在庫過多で困っている人が直接書き込めるグループがあります。そういう場所があるほうが、書き込みやすいという人は、検討してみてもよいでしょう。
最後に、SNSで呼びかけてユーザーに商品を買ってもらうには、ネット上で商品を販売する手段を用意しておかねばなりません。すでにオンラインショップがあれば、問題ありませんが、そうでなければ、ネット上で決済できるページをあらかじめ作成したうえで、支援を呼びかけてください。
商工会議所の支援を利用する
過剰在庫をネットで販売したいけれども、ネットに不慣れで踏み切れない人もいることでしょう。そんなときは、商工会議所の支援を利用して、過剰在庫をネットで販売する方法もあります。
商工会議所とは、商工業者によって構成される公共経済団体のこと。いわば、地域商工業者のアドバイザー的存在で、全国で515商工会議所がそれぞれの地域で活動しています。
横須賀商工会議所がYahoo! JAPANと連携して、PayPayモールに開店したネットショップ 「おもてなしギフト」は、全国の商工会議所と連携しています。商工会議所会員企業のみが出店可能で、構築や運営に手間がかかりません。
おもてなしギフト
利用手順としては、登録店規約および販売規約を確認の上、エクセルの出店申込書に記入し、押印をして、日南商工会議所までに提出。打ち合わせを行ってから、コーディネーターが店舗ページや商品ページを作成してくれるので、内容を確認。その後、開店という流れになります。
そのほか商工会議所では、ホームページ作成の支援を行ったり、ECサイトで集客するコツのセミナーを開催したりと、会員向けにさまざまなサポートを行っています。入会を希望する場合は、地域の商工会議所のウェブサイトにアクセスして、インターネットで申し込みを行うか、あるいは、資料請求をするとよいでしょう。
とくに、過剰在庫をネットで販売するといったようなときに、ネットに慣れていないと、実践するのが難しくなります。身近なパートナーとして、商工会議所の入会を検討してみてください。
過剰在庫の売却方法③買取業者に依頼する
過剰在庫を売るには「買取業者に依頼する」という方法があります。買取業者へ依頼するメリットは、すぐに現金化できるという点です。一括してさまざまなジャンルの在庫を買収してくれる業者が多いので、複数社に依頼せずに済みます。
また過剰在庫とは別に「滞留在庫」と呼ばれる在庫があります。滞留在庫とは、今後も売れる見込みがない商品のことを指します。売れ残りの商品のうち、売れる可能性があるがものは「過剰在庫」、売れる可能性がないものは「滞留在庫」に分類されます。
業者に依頼すると、過剰在庫だけではなく、滞留在庫もまとめて処分することができることもあります。在庫の処分を急いでいる場合は、業者に頼むのがよいでしょう。
一方、業者に売却するデメリットは、顧客に直接売るわけではないので、引き取ってもらった在庫商品をどこに流されるかわからないということ。取扱商品によっては、転売されてブランドイメージが下がる危険性もあります。また、自社のセールなどで販売するのと比べて、利益が少なくなるのも、業者に売却するデメリットといえるでしょう。
買取業者に依頼する場合は、まず見積もりを依頼してください。必ず複数社にアプローチして、できるだけ高く買ってもらえるようにしましょう。一方で、信頼できる業者かどうかも大切です。やりとりはスムーズか、コミュニケーションに問題はないか。あとで「言った、言わない」のトラブルになることのないように、買取価格と合わせて、誠実な対応をしてくれそうかどうかも、売却業者を選ぶ際の基準にするとよいでしょう。
過剰在庫の売却方法④取引先や競合他社、知人などに売却する
業者でも消費者でもなく、取引先や競合他社、知人などに過重在庫を売却する方法もあります。メリットとしては、クローズドな空間での売却なので、どれだけ値下げしても、消費者のブランドイメージが悪化することはありません。一方で、売上アップにはつながりにくいので、あくまでも迅速に売却したいときの手段だと、とらえておくとよいと思います。
過剰在庫を増やさないためにできることは?
リスクの高い過剰在庫の解消法について解説してきましたが、在庫を抱えすぎないためには、普段からどんなことに気をつければよいのでしょうか。
まずは、在庫を可視化させることです。どれくらい在庫が残っているのかをしっかり管理して、在庫が過剰になっている場合は、いち早く把握して対処することが大切です。
次に、正確に需要を予測すること。担当者が感覚に頼って発注するのではなく、販売データに基づいて、適正な発注量を見極められれば、過剰在庫のリスクは軽減するでしょう。
そして、生産ラインを把握することも、過剰在庫の抑制につながります。どれくらいの商品を生産しているのか、現在の生産数が適正かどうかをしっかり把握しましょう。
これからの対策を確実に行うためには、在庫管理システムの導入が欠かせません。在庫管理システムを活用して、商品別の在庫を一目でわかるようにすれば、定期的に棚卸しをシステム上で行うことも可能になります。また発注の際にも、過去のデータに基づいて自動的に需要を予測できるので、担当者ごとに判断が異なるといったことも防げます。
過剰在庫が発生した場合、自社商品に合った最適な売却手段を選ぼう
需要以上の在庫を抱えてしまう過剰在庫について解説しました。在庫を抱えすぎてしまうと、商品の品質低下につながるばかりか、事業のキャッシュフローの悪化にもつながるため、できるだけ早く、売却して現金に変えることが大切です。
在庫を売却する手段としては、買取業者に売却したり、ネットを通じて顧客に安く販売したりするといった方法があります。便利な販売サイトやSNSでの呼びかけなどを活用することで、よりスムーズに在庫をさばくことができるでしょう。ネットに不慣れな場合は、商工会議所にバックアップしてもらうことも検討してみてください。
そのほか、セールやアウトレットを利用したり、取引業者や知人をあたったりなど、過剰在庫を売却する方法は、多岐にわたります。それぞれのメリット、デメリットを踏まえて、最適な方法で、過剰在庫から脱却しましょう。
過剰在庫が無事にさばけたら、今後は在庫を増やしすぎないために、在庫を常に可視化して、現状を把握するようにしてください。合わせて、販売データに基づいた適正な発注量や生産量を見極めることも大切。在庫管理システムも導入しながら、定期的に棚卸をして、在庫のモニタリングと適切な対応を心がけていきましょう。
photo:Getty Images
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この記事の執筆者柳原つつじ
出版社勤務を経て、フリーエディター、コラムニスト。歴史、伝記・評伝、経営、書評、ITなどを得意ジャンルとして、別名義で著作多数。ここでは、脱サラフリーランスならではの視点で、お役立ち情報をお届けしたいと思います。
