個人事業主の接待交際費とは?範囲や注意点、仕訳例などを解説
監修者: 小林祐士(税理士法人フォース)
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個人事業主に認められている経費の1つに「接待交際費」があります。事業と関わりのある企業や人物に対して接待目的で支出した費用が接待交際費に該当しますが、どのような範囲までが経費として認められるのか、金額に上限があるのか、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、個人事業主の接待交際費について、経費として認められる範囲や注意点、具体的な仕訳例などを解説します。
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個人事業主の接待交際費とは、事業に関連する相手への接待や贈答にかかる費用のこと
個人事業主の接待交際費とは、事業に関係する企業や取引先への接待や贈答などにかかった費用を指します。個人事業主は、業務上必要な出費を経費として計上できますが、単に接待費用を支払っただけで経費として認められるわけではありません。接待の相手や目的が明確であり、事業遂行に必要であることが説明できる場合に限って、必要経費として認められます。
個人事業主の場合、接待交際費に上限は設けられていません。その一方で、売上に対して接待交際費が過大に計上されていた場合、所得隠しや不適切な計上と判断され、税務調査の際に問題視される可能性があります。税務調査において不審点が見つかった場合、当該費用が経費として認められないことがあるため、接待交際費を計上する際には証拠を明確に残しておくことが大切です。
なお、適切に会計処理をしていても接待交際費が多額になるケースにおいては、支出そのものを見直す必要があるでしょう。売上に対して接待交際費が占める割合が高すぎるのは、事業者として好ましい状態ではありません。そのため、税理士などの専門家に相談し、支出の改善に取り組むのも1つの方法です。
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法人の接待交際費は、資本金額に応じて計上できる金額に上限がある
接待交際費の扱いは、個人事業主と法人で異なります。法人の接待交際費は税法上、原則として全額が損金不算入とされているからです。したがって、法人に関しては会計上では接待交際費を経費として計上できても、税務上では損金として認められません。
ただし、この損金不算入の原則には特例が設けられています。この特例は、法人規模に応じて一定額まで接待交際費を損金に算入できる制度です。
法人の接待交際費については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
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経費として認められる個人事業主の接待交際費の範囲
個人事業主の必要経費については、所得税法において次のように定められています。
「…必要経費に算入すべき金額は、…その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。」(所得税法第37条第1項一部抜粋)
ここでは、個人事業主に多く見られるケースを中心に、経費として認められる接待交際費の例を紹介します。
取引先との会食費用
取引先や仕入先など、業務に直接関わりのある相手との会食にかかった費用は接待交際費に該当します。
あくまでも事業に関わりのある支出であることが要件である点に注意しましょう。例えば、取引先の担当者と信頼関係を築くために会食の場を設けたり、業務に関する打ち合わせや相談のために喫茶店などで話をしたりするようなケースが想定されます。いずれも事業との関わりが明確な支出であるため、経費として計上可能です。
なお、経費として計上する際には、領収書を保管する必要があります。個人事業主自身の飲食や家族とのプライベートな飲食とを明確に区別するためにも、領収書・レシートに会食の目的や参加者などを明確に記載することが重要です。
取引先への贈答品
取引先へ贈るお中元やお歳暮などにかかった費用は、接待交際費として計上できます。
また、取引先で不幸があった際に用意した香典や結婚式に出席する際に渡したご祝儀なども、接待交際費として計上が認められる場合があります。ただし、贈答品や金銭に関しては、常識的な範囲内にとどめることが重要です。あまりにも高額な贈答品の購入費などを経費として計上した場合、税務調査の際に否認されるおそれがあります。社会通念上妥当とされる金額の範囲内に収まるよう、一般的な贈答品の金額などを事前に調べておきましょう。
接待ゴルフ・旅行の費用
得意先の関係者をゴルフや旅行などに招待した場合にかかった費用は、接待交際費に該当します。
ゴルフのプレーそのものにかかった費用をはじめ、ゴルフ場利用税やゴルフ場まで移動するために手配したタクシー料金なども接待交際費に含めることができます。接待した相手分の支出だけでなく、個人事業主本人分の支出も経費として計上可能です。
その際の注意点として、ゴルフや旅行が接待目的であったことが明確に示されている必要があります。事業との関連性が証明できるよう、同行者や目的をしっかりと記録することが大切です。
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経費として認められない個人事業主の接待交際費の範囲
反対に、個人事業主の接待交際費として認められない費用もあります。接待交際費と混同しやすいケースを中心に確認していきましょう。
本人のみが対象の飲食費
個人事業主が1人で飲食をした場合、かかった費用は経費として認められません。
前述のとおり、接待交際費を経費として計上できるのは、事業遂行上必要と認められる支出に限られます。個人事業主本人のみで飲食店などを利用したのであれば、取引先との信頼関係を築くといった事業上の目的がないことから、飲食にかかった費用は必要経費として認められません。
また、青色申告をする個人事業主の家族が専従者として就業している場合も、個人事業主とその家族のみの飲食にかかった費用は基本的に経費計上できないため、注意しましょう。食事中に家族と仕事の話をしていたとしても、業務との関連性を証明するには不十分と判断されます。
なお、取引先や仕事の関係者と食事をしたケースにおいても、個人事業主1人の食事もしくは家族との食事だったのではないかと誤解されないよう注意しなければなりません。会食に参加した相手の氏名や所属先、人数、会食の目的などを領収書・レシートに記載し、事業目的の会食だった事実を証明できる状態にすることが大切です。
プライベートな利用が含まれる支出
支出の中にプライベートな利用が含まれている場合、全額を経費として認めることはできません。
例えば、取引先への贈答品と自宅用の品物をまとめて購入したケースや、取引先との会食に親族が同席していたようなケースが該当します。親族が業務に関わっていなければ、親族分の支出は経費として認められないため注意しましょう。
なお、このようなケースでは、プライベートな利用に該当する部分の費用は、「事業主貸」で処理する必要があります。事業目的の支出と、プライベートの支出を明確に区別するのがポイントです。
親族が含まれる旅行の費用
取引先との接待旅行に個人事業主の親族が同行した場合、事業に携わっていない親族分の支出に関しては経費として計上できません。
親族の旅費については、あくまでもプライベートの旅行にかかった費用と判断されるためです。先に紹介した「プライベートな利用が含まれる支出」と同様、事業目的の支出とプライベートの支出を明確に分ける必要があります。
なお、親族が青色事業専従者として就業している場合も、基本的な考え方は同じです。個人事業主とその親族だけの旅行であれば、業務目的ではなくプライベートでの家族旅行と見なされます。したがって、旅行にかかった費用を接待交際費として計上することはできません。
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個人事業主の接待交際費における注意点
個人事業主が接待交際費を適切に管理するうえで、いくつか注意しておきたいポイントがあります。特に、以下の3点に関しては、接待交際費における注意点として理解しておくことが重要です。
領収書やレシートの保管を徹底する
個人事業主の接待交際費における注意点の1つは、領収書やレシートの保管を徹底することです。
接待交際費を計上するにあたって、支払時に受け取った領収書やレシートは必ず保管しなければなりません。税務調査が行われた際、支出の内容や金額を証明するために領収書やレシートの提示を求められることがあります。領収書やレシートが保管されていなければ、支出そのものが事実であること、支出の内容・金額が正しいことを証明できません。そのため、必ず領収書やレシートを保管するよう徹底しましょう。
なお、領収書やレシートの保管期間は、所得税法に基づいて定められています。具体的な保存期間は、白色申告で所得税を申告する個人事業主の場合は5年、青色申告の場合は7年(前々年分の事業所得及び不動産所得の金額が300万円以下の場合は5年)
です。所得税法に則って証憑を適切に管理するためにも、領収書やレシートの保管方法を決めておく必要があります。
接待交際費の支払時に領収書やレシートをもらえなかった場合は、領収書に代わる記録として出金伝票を作成し、領収書と同様に保管する必要があります。出金伝票には以下の項目を設け、漏れなく記入することが大切です。
出金伝票に記載すべき項目
- 日付:接待交際費を支払った日
- 金額:実際に支払った金額
- 取引先:接待した相手の所属、氏名
- 用途:接待をした目的
- 支払方法:現金、クレジットカードなど
出金伝票についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
支出した際の状況を記録する
接待交際費を支出した際の状況を記録することも、個人事業主の接待交際費における注意点です。
領収書やレシートには、支出した際の詳しい状況を記録する習慣を身につけましょう。接待交際費は、あくまでも事業目的に照らし合わせて必要な支出に限り計上することが認められます。事業とは関係のない個人的な交際にかかった費用は、接待交際費として計上できません。したがって、税務調査時には接待交際費として計上されている支出が事業目的であることを証明する必要があります。支出のあった日付、目的、場所、参加者、人数といった情報を、領収書やレシートの裏面等に明確に記載することが求められます。接待交際費を支出した際の記録例は以下のとおりです。
支出した際の状況の記録例
- 7月20日 新規案件に関する打ち合わせのため会食
- 3名参加:◯◯(本人)、株式会社△△ 営業部□□氏、制作部■■氏
常識の範囲内で計上する
常識の範囲内で計上することも、個人事業主の接待交際費における注意点としてあげられます。
個人事業主には、接待交際費の上限が設けられていないものの、計上する金額は常識の範囲内にとどめなければなりません。社会通念上、妥当とはいえない高額な費用が計上されていると、税務署から指摘を受ける可能性が高くなります。事業に必要な範囲の経費であることについて合理的な説明ができなければ、接待交際費としての計上が否認されることもあるため注意しましょう。
なお、接待交際費として計上していたものが否認された場合、年間の所得金額にも影響をもたらすため、修正申告や追徴課税の対象となる可能性があります。接待交際費は、過大な金額になっていないか、支出の回数が多すぎないか、事業との関連性を明確に説明できるか、といった点を慎重に判断したうえで適切に管理・計上することが大切です。
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個人事業主の接待交際費の仕訳方法
ここでは、個人事業主が接待交際費を計上する際の仕訳方法を紹介します。取引先と会食したときの仕訳例と、事業に関与していない親族を伴って会食した場合の仕訳例をそれぞれ確認しましょう。
取引先と会食したときの仕訳例
取引先の担当者2人を含む3人で会食を行い、飲食代として1人あたり5,000円、計15,000円を現金で支払った場合、会食の目的が事業に関わるものであれば、全額を必要経費として計上可能です。その際、借方の勘定科目は「接待交際費」、貸方は「現金」を使用します。
仕訳例:取引先の担当者と会食したとき
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
接待交際費 | 15,000円 | 現金 | 15,000円 |
事業に携わっていない親族を伴って会食したときの仕訳例
次に、取引先の担当者2人と、事業に携わっていない親族1人を含む計4人で会食し、飲食代として1人あたり5,000円、計20,000円を現金で支払ったケースを見ていきましょう。この場合、親族分の飲食代は事業と関わりがない支出のため、接待交際費として計上できません。したがって、接待交際費とプライベートの支出を明確に区分し記帳する必要があります。事業に関係のない支出については、個人事業主が事業用の現金等を私的に使用したことを表す勘定科目である「事業主貸」を使って処理します。具体的には、事業に関わりのある支出には「接待交際費」、親族分の支出には事業主貸の勘定科目を用いて適切に仕訳処理を行いましょう。
仕訳例:取引先の担当者と、事業に携わっていない親族を含む会食をしたとき
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
接待交際費 | 15,000円 | 現金 | 20,000円 |
事業主貸 | 5,000円 |
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この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)
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