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現物出資とは?認められる財産例やメリット、注意点を解説

監修者:森 健太郎(税理士)

2024/03/04更新

会社を設立するとき、一般的には金銭を出資しますが、このとき、金銭に代えて「モノ」で出資することも可能です。金銭以外の資産を出資することを、現物出資といいます。

現物出資を行うと、手元の金銭以上に資本金を増やすことができます。ただし、現物出資として認められるためには、所定の手続きや書類作成などが必要です。

ここでは、現物出資として認められる財産や、現物出資にかかる要件・規制、現物出資をする際のメリットのほか、注意点についても解説します。

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現物出資は金銭以外の財産を出資すること

現物出資とは、資本金の出資にあたり、金銭以外の財産を出資することです。

会社設立には資本金が必要ですが、金銭の出資をせずに、現物出資だけを用いることもできます。また、会社設立時のほか、増資にあたっても現物出資は可能です。

会社の資本金は金銭で用意されることが一般的ですが、少ない資金で会社を設立する場合や、希望の融資を受けるために資本金を増やしたい場合に、現物出資が利用されることがあります。
そのほか、個人事業主から法人化する場合に、個人事業主時代に事業で使っていた機器や機械、車などを現物出資することもあるので、内容を決める前に確認しておきましょう。

現物出資として認められる財産

現物出資として認められる財産は、譲渡が可能で、貸借対照表に資産として計上できるものです。具体的には次のようなものがあげられるので、参考にしてみてください。

現物出資の対象になる財産

  • 自動車
  • 土地や建物などの不動産
  • 機械設備
  • パソコンなどのOA機器
  • 市場価値のある有価証券
  • 営業権・商標権などの無形固定資産
  • 資本金の決め方については以下の記事を併せてご覧ください

現物出資が認められる要件と規制

現物出資には、金銭出資よりも厳しい要件や規制が設けられています。これは、現物出資は金銭のように簡単に評価ができないため、出資額が過大評価される可能性があるからです。
現物出資を検討する際には、下記の要件や規制をしっかり把握しておくようにしましょう。

現物出資が認められるのは発起人のみ

会社設立にあたって現物出資が認められるのは、発起人のみです。
発起人とは、株式会社の設立を企画し、出資や設立手続きを行う人のことです。
発起人以外の人が現物出資をすることはできません。ただし、会社設立後の増資では、発起人以外でも現物出資ができます。

なお、合同会社には発起人制度がありませんが、設立時には出資者による現物出資が可能です。

会社の設立の際に現物出資が認められるには、定款への記載が必要

会社設立時に現物出資を行う場合は、定款への記載が必要になります
定款に必ず記載しなければならない絶対的記載事項の中には、「設立に際して出資される財産の価額またはその最低額」という事項があります。出資されるのが金銭だけであれば、この事項には資本金の金額を記入するだけです。

しかし、現物出資をする場合は、以下の項目を必ず定款に記載しなければなりません。

定款への記載が必要な項目

  • 現物出資する人の氏名と住所
  • 資産の詳細情報
  • 資産の価額
  • 出資者に割り当てる設立時発行株式の数※株式会社のみ

なお、現物出資の価額は、購入したときの価格ではなく、時価相場で計上されるため注意しましょう。
現物出資された資産の価額が合計500万円を超えると、次にあげる検査役の調査が必要になります。

  • 定款については以下の記事を併せてご覧ください

検査役に財産価値を評価される

現物出資をする際には、原則として裁判所が選任した検査役と呼ばれる専門家の調査を受ける必要があります。検査役は、現物出資した資産の価額が適正か、取得する株式の価値に見合う出資であるかどうかを調査します。

ただし、会社法の規定により、以下の要件のいずれかに該当する場合は、検査役の調査が不要です。

検査役の調査が不要になる要件

  • 現物出資する資産の合計価額が500万円以下
  • 現物出資する資産が市場価格のある有価証券であり、定款に記載された価額が市場価格以下
  • 弁護士や公認会計士、監査法人、税理士などの専門家によって、現物出資財産の価額が相当であると証明を受けている(不動産に関しては不動産鑑定士の鑑定評価が必要)

検査役の調査には多額の費用がかかるうえ、調査に数か月かかることもあります。検査役の調査なしで現物出資を行いたい場合は、出資する財産の合計価額が500万円以下になるようにすると良いでしょう。

現物出資には不足額担保責任がある

現物出資した資産の価額が、定款に記載された価額よりも著しく低かった場合は、発起人および設立時取締役はその不足額を会社に支払う義務を負います
例えば、定款には400万円と記載されているのに、実際の価額は200万円だった場合、発起人および設立時取締役は、差額の200万円を支払わなければなりません。そのようなことにならないよう、現物出資をする際は適正な価額を定款に記載し、記載価格に問題がないか取締役が調査してから登記申請するようにしましょう。

現物出資するメリット

現物出資を利用すると、会社設立時や設立後に資本金を増やせることに加え、節税対策としてもメリットがあります。実際に行うかを検討する前に、現物出資の主なメリットについて確認しておきましょう。

現物出資するメリット

  • 資本金を増やすことができる
  • 減価償却による節税対策ができる場合もある
  • 資金がなくても発起人になれる
  • 社長借入金を資本金に振り替えできる

資本金を増やすことができる

現物出資するメリットには、資本金を増やせることがあげられます。金銭と現物を併せて出資すれば、その分資本金の額が大きくなるからです。
資本金は会社の体力を表すともいわれ、社会的な信用度にも影響します。初めて取引をする会社の与信を確認する際や金融機関から融資を受ける際に、資本金がチェックされるケースも少なくありません。

そのため、現物出資を利用して資本金を増やすことで会社の信用度が高まり、金融機関から融資を受けやすくなったり、新たな取引先の獲得につながったりする可能性があるので、利用を検討してみましょう。

減価償却による節税対策ができる場合もある

現物出資するメリットには、節税対策ができる場合もあることがあげられます。現物出資された資産は会社の財産となり、取得価額が10万円以上のものなら減価償却が可能になるためです。
減価償却とは、時間の経過や使用によって価値が減少する固定資産の取得価額を、使用可能な期間に費用として配分することです。

売上や売却によって得た利益の額から、売上原価や販売費といった経費を差し引いた金額が会社の所得とされ、法人税の税額を算出するベースになります。つまり、減価償却をして経費計上できる金額が増えることで、結果的に節税につながるといえます。

資金がなくても発起人になれる

現物出資するメリットには、資金がなくても発起人になれることもあげられます。
手元の現金が少なくても、他の資産を出資することができるためです。

株式会社も合同会社も資本金1円から設立可能ですが、資本金は会社の信用にかかわるため、あまりにも資本金が少ないと事業を行ううえで不利になるかもしれません。手元に資金はないけれど会社を設立したいという場合には、現物出資できる資産があれば、それを資本金として会社設立が可能です。

社長借入金を資本金に振り替えできる

現物出資するメリットには、社長借入金(役員借入金)を資本金に振り替えられることもあげられます。
特に、中小企業の場合、社長個人が会社にお金を貸しているケースも多いでしょう。これは、社長個人からすれば貸付金という債権であり、会社から見れば社長借入金という負債です。

このように、社長個人の債権を現物出資することで、社長借入金を資本金に振り替えることを、「デット・エクイティ・スワップ(DES)」といいます。
デット・エクイティ・スワップを実施すると、借入金が減少して資本金が増加し、貸借対照表上の自己資本比率も上げられるため、実施を検討してみましょう。

  • 資本金については以下の記事を併せてご覧ください

現物出資する際の注意点

現物出資する際には、前述した要件や規定のほかに、以下のような注意点があります。現物出資をしてから後悔しないよう、注意点についても把握しておくようにしましょう。

現物出資する際の注意点

  • 書類や定款の作成に時間がかかる
  • 資本金に対して現金の割合が少なくなる
  • 出資者が所得税の課税対象となる
  • 現物出資できる財産は事業で使用するものに限られる

書類や定款の作成に時間がかかる

現物出資する際の注意点には、書類や定款の作成に時間がかかることがあげられます。
現物出資にあたっては、前述した定款の記載に加え、資産の価額を調査した結果をまとめた「調査報告書」や、資産が会社に渡ったことを示す「財産引継書」といった書類を作成する必要があるためです。そのほか、自動車や不動産、有価証券などを現物出資するなら、名義変更の手続きも必要です。

現物出資をする場合は、手続きの手間が増えることを考慮し、時間に余裕を持って会社設立準備を進めると良いでしょう。

資本金に対して現金の割合が少なくなる

現物出資する際の注意点には、資本金に対して現金の割合が少なくなることがあげられます。現物出資で資本金を増やしても、手元のキャッシュが増加するわけではないためです。
資本金のうち現物出資の割合が大きいと、運転資金として使えるお金が不足し、資金のショートを招いてしまう可能性があります。そのため、現物出資で会社を設立する場合は、事業開始後に必要になる資金を予測し、資金計画を立てておくことが重要です。

出資者が所得税の課税対象となる

現物出資する際の注意点には、出資者が所得税の課税対象となることがあげられます。
法人への現物出資は資産の譲渡に当たり、所得税の課税対象とされるからです。出資者が現物出資で取得した株式や出資持分の時価が資産価額より大きい場合には、現物出資により売却益を得たと見なされ、所得税が課税されてしまいます。

また、現物出資した財産が不動産である場合は、会社側にも不動産取得税がかかる点に注意が必要です。

現物出資できる財産は事業で使用するものに限られる

現物出資する際の注意点には、現物出資できる財産は事業で使用できるものに限られることがあげられます。
たとえ自動車や不動産などでも、事業とまったく関係ないもの、事業でまったく使わないものは、現物出資の対象として認められない可能性が高いためです。

現物出資をする際には、出資するものが事業と関係するものかどうかも、考慮するようにしましょう。

現物出資をはじめとした会社の設立手続きを手軽に行う方法

現物出資による会社設立を行う場合には、調査報告書や財産引継書、資本金の額の計上に関する証明書を作成しなければなりません。そういった会社設立に必要な手続きを手軽に行いたい場合におすすめなのが、「弥生の設立お任せサービス」です。

「弥生の設立お任せサービス」は、弥生の提携先である起業に強い専門家に、会社設立手続きを丸ごと代行してもらえるサービスです。専門家を探す手間を省けるほか、電子定款や設立登記書類の作成、公証役場への定款認証などの各種手続きを依頼でき、確実かつスピーディな会社設立が可能です。

会社設立後、専門家とご相談のうえ、会計事務所との税務顧問契約を結ぶと割引が受けられ、サービス利用料金は実質0円になります。定款の認証手数料や登録免許税など行政機関への支払いは別途必要です。

現物出資の注意点を理解したうえで上手に活用しよう

現物出資とは、自動車や不動産、パソコンといった、金銭以外の資産を出資することです。現物出資を利用すると、手元の金銭以上に資本金を増やすことができ、会社の信頼度向上に役立ちます。

ただし、現物出資は書類作成などの手間がかかるうえ、運転資金が不足してしまうリスクもあります。現物出資をする際には、要件や規定、注意点などを把握したうえで、慎重に検討するようにしましょう。

また、現物出資に必要な書類作成など会社の設立手続きをスムースに行うには、起業に強い専門家に会社設立手続きを依頼できる「弥生の設立お任せサービス」のご利用も、ぜひご検討ください。

この記事の監修者森 健太郎(税理士)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。

URL:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_mori/新規タブで開く

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