開業届をe-Taxやオンライン、郵送で出すには?電子申請の方法を解説
監修者:森 健太郎(税理士)
2024/04/17更新
個人事業主として事業を始める際には、税務署に「開業届」を提出する必要があります。開業届を提出するためには、平日の日中に税務署に行かなければいけないと思っている方も多いのではないでしょうか。
開業届は、税務署に行かずにe-Tax(オンライン)や郵送で提出することも可能です。e-Taxや郵送を利用すれば、開業準備で忙しい中、開業届の提出のために税務署まで足を運ぶ必要がありません。
ここでは、e-Taxや郵送での開業届を提出について、準備や作成方法を解説します。さらに、開業届と併せてe-Taxや郵送で提出できる書類などについてもご紹介します。
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開業届は税務署に行かずに提出可能
個人事業主として事業を始めるときには開業届を税務署に提出する必要がありますが、税務署まで行かなくても、オンラインや郵送でも提出が可能です。
開業届を税務署の窓口で直接提出しようとすると、税務署の開庁時間である平日日中に、納税地を所轄する税務署まで出向かなければなりません。開庁時間外は税務署の時間外収受箱に投函することも可能ですが、それでも開業準備で忙しい中、税務署まで行くのは手間がかかります。そのような場合には、オンラインや郵送で開業届を提出すると良いでしょう。
なお、開業届を提出する際は、開業届の控えも受け取りを忘れてはいけません。屋号名義の銀行口座を開設するときや、金融機関に融資の申し込みをするとき、開業日を確認したいときなどに必要になるためです。
窓口や郵送での提出時は開業届のコピーを一緒に提出すると、受領印を押した控えをもらえます。e-Taxで開業届を提出する場合には受領印を押した控えはもらえないため、提出後e-Taxのメッセージボックスに届く受信通知を送信した開業届のデータとともに印刷し、控えとして保管しておいてください。
※ 個人事業主や開業届については以下の記事を併せてご覧ください
開業届は3種類の提出方法がある
開業届を提出する場合、「税務署の窓口での提出」「e-Taxを利用したオンラインでの提出」「郵送での提出」といった3種類の方法があります。それぞれの提出方法を確認しておきましょう。
税務署の窓口で直接提出する
開業届について職員に質問したい方は、税務署に出向いて窓口で提出するとよいでしょう。税務署の開庁時間は、年末年始を除く平日8時30分~17時30分です。所轄の税務署の所在地を調べたい方は、国税庁のWebページ「税務署の所在地などを知りたい方」から検索することができるため、確認してみてください。
オンラインで提出する
開業届は、国税庁のWebページ「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」よりオンラインで提出することもできます。e-Taxなら、自宅のパソコンから24時間(月曜日と土日祝日は8時~24時)開業届の提出が可能です。
郵送で提出する
e-Taxの操作に不安があったり、紙の書類を作成する方が慣れていたりする場合には、郵送にすれば税務署に行かずに開業届を提出可能です。郵送での送付の場合は、税務署に届いた日ではなく、郵便局で発送した日が書類の受領日となります。
また、税務署には開庁時間以外にも書類の提出が可能な時間外収受箱も設置されているので、そこに投函する場合は切手を貼る必要はありません。
開業届をe-Taxを利用して提出する方法
e-Taxとはインターネットを利用して電子申告や納税などの手続きができる国税庁のシステムですが、e-Taxを利用すると、自宅からオンラインで開業届を含むさまざまな書類の提出ができます。
事前準備は必要ですが、一度登録すれば確定申告などもオンラインで行えるようになるため、e-Taxの利用も検討してみましょう。
e-Taxを利用するために用意するもの
e-Taxで開業届を提出するためには、マイナンバーカードと、読み取るためのICカードリーダライタ、またはマイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンが必要です。また、オンライン提出なので、インターネット環境は必須です。
なお、e-Taxでの確定申告はスマートフォンからでも手続きできますが、開業届の提出には基本的にパソコンが必要になります。
国税庁「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」
- 出典:国税庁「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」
e-Taxを利用するための準備
e-Taxを初めて利用する際には、次のような事前準備が必要です。
- 利用者識別番号を取得する
- e-Taxの利用にあたっては、利用者識別番号(半角16桁の番号)を取得しなければなりません。利用者識別番号を取得するためには、国税庁のWebページ「受付システム ログイン」画面からマイナンバーカードを読み取ってアカウントを登録する方法や、国税庁のWebページ「開始届出(個人の方用) 新規」で開始届出書を作成・送信する方法などがあります。
- 電子証明書を取得する
- e-Taxでデータを送信する際には、そのデータが改ざんされていないことを証明するために、電子署名を行う必要があります。電子証明書の取得は、この電子署名を行うために必要な準備です。
- マイナンバーカードを利用する場合は、ICカードリーダライタ、またはマイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンを利用して、国税庁のWebページ「QRコード認証」より電子証明書の取得が可能です。
- なお、マイナンバーカード以外には、電子署名法の特定認証業務の認定を経たうえで、政府認証基盤(GPKI)のブリッジ認証局と相互認証を行っている認証局が作成した電子証明書等のうち、「e-Taxで利用できる電子証明書」であれば利用できます。
- e-Taxソフトをパソコンにインストールする
- 国税庁のWebページ「e-Taxソフトのダウンロードのコーナー」よりe-Taxソフトをダウンロードして、自分のパソコンにインストールします。その後、e-Taxソフトを起動し、税目プログラムから「所得税」をインストールしてください。
e-TaXで開業届を作成・提出する
e-Taxソフトの申請・申告等一覧から「個人事業の開業・廃業等届出書」を選択し、必要事項を入力します。そして、ICカードリーダライタ、またはマイナンバーカードの読み取りに対応したスマホを使い、電子署名を付与して送信します。これで開業届の提出は完了です。
開業届を郵送で提出する方法
開業届は郵送でも提出が可能です。税務署に行かずに開業届を提出したいけれど、e-Taxの操作に自信がないという場合や、ICカードリーダライタなどの事前準備が面倒というような場合には、郵送での提出が便利です。
郵送するために用意するもの
郵送で開業届を提出する場合は、以下のものを所轄の税務署宛てに送付します。
郵送するために用意するもの
- 開業届
- 開業届の控え
- 切手を貼付した返信用封筒
- マイナンバー確認書類・身元確認書類
- 開業届
- 郵送で提出する場合は、紙の開業届を作成します。開業届の用紙は、国税庁のWebページ「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」よりダウンロードできます。プリントアウトが必要ですが、もし自宅にプリンターがない場合には、コンビニエンスストアのコピー機を利用すればプリントアウトが可能です。
- 開業届の控え
- 郵送する際には、原本と共に開業届の控え(コピー)を忘れずに同封しましょう。開業届の控えと、後述する切手を貼った返信用封筒を同封すると、受領印を押して返送してもらえます。
- 返信用封筒・返信用切手
- 開業届の控えの返送用に、切手を貼った返信用封筒を同封します。封筒には、自宅など返送先の住所と氏名を忘れずに記載しておきましょう。
- マイナンバー確認書類・身元確認書類
- 郵送で開業届を提出する際には、本人確認書類(番号確認書類と身元確認書類)の添付が必要です。マイナンバーカードの場合は、両面のコピー(写し)を添付すれば問題ありません。
- マイナンバーカード以外の場合には、「番号確認書類(マイナンバー通知カードや、マイナンバー記載のある住民票など)」と「身元確認書類(運転免許証やパスポートなど)」の両方のコピーが必要になります。「本人確認書類(写)添付台紙」に貼り付けて提出してください。
開業届を郵送する
開業届をはじめとした提出書類一式を、納税地を所轄する税務署に郵送します。
開業届は重要な書類なので、簡易書留やレターパックなど追跡可能な方法で送ると安心です。なお、開業届は「信書」にあたるため、宅配便での発送は法律によって禁止されていることに注意が必要です。
開業届と併せてe-Taxや郵送で提出可能な書類
事業を始める際、ケースによっては、開業届の他にも税務署に提出が必要な書類があります。これらの書類も、税務署に行かずにe-Taxや郵送で提出が可能です。それぞれの書類には提出期限があるため、該当する場合は、開業届と併せて提出しておくと忘れずに済みます。
開業届と併せてe-Taxや郵送で提出可能な書類
- 所得税の青色申告承認申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
所得税の青色申告承認申請書
「所得税の青色申告承認申請書」は、確定申告を青色申告でしたいときに提出が必要な書類です。開業した年から青色申告の承認を受けたい場合は、開業日が1月1日~1月15日なら3月15日まで、1月16日以後の開業なら開業日から2か月以内に提出しなければいけません。提出期限を過ぎると、その年は青色申告ができずに白色申告となり、さまざまな節税メリットを受けられなくなってしまうので注意しましょう。
青色申告で複式簿記は大変だと感じる方もいるかもしれませんが、「やよいの青色申告 オンライン」などの確定申告ソフトを使えば、簿記の知識がなくてもスマホやパソコンで、自動での複式簿記による帳簿の作成が可能です。
給与支払事務所等の開設届出書
従業員を雇用する場合は、1か月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」の提出が必要です。この届出書を提出することで、従業員の給与から源泉徴収した所得税を納付書などが送付されます。なお、開業届の「給与等の支払の状況」欄を記載している場合には、提出不要です。
※ 給与支払事務所等の開設届出書については以下の記事を併せてご覧ください
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」は、給与の支払いをする従業員が常時10人未満の場合に提出できる書類です。
従業員の給与から源泉徴収した所得税は、原則として、支払った月の翌月10日までに税務署に納付しなければなりません。しかし、この申請書を提出すれば、源泉徴収した所得税の納付を半年に1回にすることができます。従業員の人数が10人未満の場合は、事務負担を軽減するためにも提出しておくとよいでしょう。
開業届や確定申告を手軽に行う方法
各種書類を手書きで作成しようとすると、ひな形をあちこちから集めたり、何度も氏名や住所を書いたりする必要がありますが、「弥生のかんたん開業届」を利用すると、ひな形を集める手間が省けるうえ、一度入力した内容は自動的にすべての書類に転記されるので、忙しい開業時期の手間が大幅に削減できます
現時点ではe-Taxでのオンライン提出に対応していませんが、郵送での提出には対応しています。パソコンでもスマホでも操作できるのも便利なポイントのひとつです。開業届をはじめ、青色申告承認申請書や給与支払事務所等の開設届出書なども、スムースに作成することができます。
また、開業後は、日々の帳簿付けや毎年の確定申告が必要になります。クラウド確定申告ソフト「やよいの青色申告 オンライン」を使えば、簿記や会計の知識がなくても、最大65万円の青色申告特別控除の要件を満たした青色申告の必要書類をかんたんに作成できます。
事業が本格的に動き出してから慌てることのないように、開業のタイミングで会計ソフトや確定申告ソフトを導入しておくとよいでしょう。
自分に合った方法で開業届を提出しよう
開業届は、税務署に行かなくてもe-Taxや郵送で提出できます。ただ、e-Taxでの提出は事前準備が必要なこともあり、利用されるケースはそれほど多くないのが現状です。
オンラインでの開業届の提出に不安がある場合には、郵送や直接窓口での提出を選ぶ方が安心といえます。開業届といっしょに提出できる書類についても確認し、自分に合った方法で忘れずに提出するようにしてください。
また、開業届や確定申告を作成する際は、「弥生のかんたん開業届」や「やよいの青色申告 オンライン」などを利用すると、効率的に進めることができるでしょう。ぜひ、利用をご検討ください。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。