タイムカードの効率的な計算方法とは? 労働時間と賃金の基本的な考え方も解説
監修者: 川口 正倫(社会保険労務士)
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タイムカードから従業員の給与を計算するには、労働時間の正確な把握が重要です。ここでは、労働時間を計算するために覚えておきたい法律の基礎知識や、勤怠管理を行う際の注意点、タイムカードを効率的に計算する方法などについて解説します。また、タイムカードの計算に関するよくある質問も紹介しています。
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タイムカードの効率的な計算方法
タイムカードから給与を計算する場合、手作業なら電卓を使うのがおすすめです。特に60進数用のボタンがあるものを使えば、8時30分を「8.5」と10進数に変換する必要なく、簡単に計算できます。
ただ、電卓での計算はどうしても入力間違いなど人為的なミスが起こる可能性が高くなります。そのため、最近はエクセルなどの表計算ソフトを使って勤務時間を計算するのが一般的です。表計算ソフトなら数値を入力するだけで、関数を用いて労働時間を算出できます。インターネット上には無料で使えるテンプレートもあるので、それを用いて勤怠管理を行えばさらに効率的です。
しかし、エクセルも数値の入力は人が行うため、入力ミスが発生するリスクはあります。加えて、集計や法改正のたびにファイルを追記したり修正したりする手間もかかります。最も効率的なのは、勤怠管理システムや給与計算ソフトを導入することです。
勤怠管理システムを使用すれば、手入力で出勤時間や退勤時間を入力しなくても自動で労働時間を集計できます。さらに給与計算ソフトを用いることで、給与の自動計算も可能です。それにより人為的ミスを減らせるだけでなく、入力やファイル修正などにかかる手間を削減でき、作業効率を大幅に向上できます。
タイムカード管理における労働時間と賃金の基本的な考え方
タイムカードで労働時間を適切に把握するには、法律で定められた労働時間と賃金についての規定を正しく理解している必要があります。覚えておきたい重要事項について詳しく解説します。
着替えや準備時間も労働時間に含まれる
厚生労働省が平成29年に策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、労働時間を以下のように規定しています。
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる
つまり、実際に業務に従事した時間だけでなく、その準備や後片付けに費やした時間も労働時間に当たり、使用者は労働者に賃金を支払う義務があります。具体的には制服などの着替えや、客がいない間の待機、資料作成のための情報収集や機材の後片付け、業務に必要な研修などの時間も労働時間に該当します。
15分や30分単位で切り捨てない
労働基準法第24条では、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」という「全額払いの原則」が定められています。つまり使用者は労働者の労働時間を1分単位で正確に記録・管理し、労働に応じた賃金を支払わなければなりません。
「17時12分で退社したので17時退社とする」といった、15分、30分単位での労働時間の切り捨ては、労働基準法に抵触するので注意しましょう。ただし例外として、1か月の総労働時間を算出する場合は端数処理が可能です。
1か月単位での切り捨て・切り上げはできる
先述したように、時間外労働や深夜労働、休日労働などを1か月単位で算出している場合は、合計時間に1時間未満の端数が生じれば、30分未満の端数は切り捨て、30分を超えた端数がある場合は、1時間に切り上げてもよいとされています。
割増賃金を支払う
労働基準法で定められている法定労働時間は、1日8 時間、1 週間では40時間です。法定労働時間を超えた時間外労働をさせる場合は、使用者は労働者に割増賃金を支払わなければなりません。
割増の割合は、通常の賃金の2割5分以上(月60時間を超過する場合は5割以上)です。もし通常の時給が1,000円なら、時間外労働を行った時間は時給1,250円(1,500円)以上を支払う必要があります。
ただし、法定労働時間には例外もあります。労働者が10人未満の事業場で、商業や映画(映画製作を除く)、演劇、保健衛生や接客娯楽の業種の週法定時間は44時間です。また、時間外労働だけでなく、22~5時の深夜労働や、休日出勤に対しても割増賃金は発生します。休日出勤とは、労働基準法で定められた週1日、または月4日の法定休日に出勤することです。深夜労働の割増賃金は、時間外労働と同じく通常の賃金の2割5分以上です。休日出勤の割増賃金はさらに高く、通常の賃金の3割5分以上と定められています。
また時間外労働が深夜労働になる、または休日出勤が深夜労働になるなどの場合は、割増賃金は重複して支払わなければなりません。例えば、深夜の時間外労働なら、2割5分の割増が2つなので、合計5割以上の割増賃金を支払う義務があります。ただし、法定休日には法定労働時間が定められていないため、休日出勤に時間外労働が発生しないことは覚えておきましょう。また、割増賃金計算における端数処理が認められる計算方法もあります。
参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
従業員の勤怠情報は5年間保管する必要がある
タイムカードをはじめとした従業員の勤怠情報の保管については、労働基準法第109条及び143条で「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない」と定められています。
勤怠情報を保管しておかなければ、給与支給ミスなどで再計算が必要になった場合、正確な給与計算ができません。また、労働基準監督署が労働時間について調査に来た場合も、勤怠情報の提出を求められる可能性があります。他にも第三者から開示を求められる場合もあるので、原本は決められた期間は大切に保管しておきましょう。タイムカードの保管対象になるのは、正社員だけではありません。派遣社員や準正社員、アルバイトやパートも対象となります。
勤怠管理を行う際の注意点
勤怠管理は正確さが求められる
勤怠管理は従業員の労働状況を把握するために非常に重要です。法令や就業規則に即した勤務状況であるか、過度な残業時間や休日出勤がないかを確認することで、従業員の働き方にも配慮できます。またワークライフバランスの整った職場環境づくりは、企業の評価を高めることにもつながります。そのためには、各従業員の勤怠管理を正確に行わなければなりません。集計作業でもできるだけ入力ミスや計算ミスを少なくするための工夫が必要です。
勤怠管理を怠ると信頼性低下などのリスクがある
労働基準法第108条には、勤怠管理について以下のように記載されています。
使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない
賃金計算の基礎となる事項とは、労働時間や労働日数、休日出勤・時間外労働の有無などを指します。賃金台帳によって正しく勤怠管理を行うことは企業の義務であり、それを怠れば労働基準法違反に当たります。
また労働安全衛生法第66条の8では、事業者は労働時間が厚生労働省令で定める時間を超える者に対しては、医師の面接指導を受けさせる必要があるとしています。しかし、勤怠管理が適切に行われていなければ、医師の面談が必要か否かの判断も困難です。勤怠管理を怠り、医師の面接など必要な措置を講じなければ、従業員のエンゲージメント(企業への信頼や貢献意欲)が低下し、退職の増加や業績の悪化を招く可能性があります。
タイムカードの計算に関するよくある質問
タイムカードは30分単位で計算していい?
労働基準法では勤務時間を1分単位で算出することを定めており、1日の勤務時間について30分単位で切り捨てることは違法です。ただし、1か月単位の労働時間や時間外労働を算出する際、1時間に満たない端数が出た場合は、30分未満の端数については切り捨て、30分以上1時間未満の場合は1時間に切り上げることが可能です。
タイムカードは15分単位で計算していい?
1日の労働時間を15分単位で切り捨てることは違法です。例えば、本来18時退社のところ18時7分にタイムカードを打刻した場合でも、原則として1分単位で管理するため7分の残業代は支払わなければなりません。もし切り捨てて計算した場合、労働基準法違反となり、30万円以下の罰金か6ヶ月以下の懲役が科されるおそれがあります。また、労働者には3年間、未払いの賃金を請求する権利があるため、後で切り捨てていたことが発覚した場合、労働者から支払いを請求される可能性もあります。
給与計算の効率化にはシステムを導入しよう
的確な勤怠管理により労働時間に見合った給与を支払うことは、企業利益のためにも重要です。労働時間を間違いなく算出するには、タイムカードの計算を適正に行う必要がありますが、電卓やエクセルでは人為的ミスが発生するおそれもあります。
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この記事の監修者川口 正倫(社会保険労務士)
社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ所属社労士。
総務・人事の分野で零細企業から上場企業まで勤務後、社会保険労務士に転身。平成19年社会保険労務士試験合格、その後平成31年に特定社会保険労務士の付記登録。『労務事情令和4年3月15日号』(産労総合研究所)に「年4回賞与の取扱いについて」を記事寄稿・『年金復活プランがよくわかる本』(Kindle本)を出版。
