欠勤控除とは?正しい計算方法や注意点などを解説
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給与計算のときに、給与から差し引かれる項目の1つが「欠勤控除」です。欠勤控除とは、従業員が欠勤したときに、働かなかった分を給与から差し引くことです。しかし従業員が仕事を休んだら必ず欠勤控除が適用されるわけではありません。何をもって欠勤控除の対象とするかは、会社によっても異なります。
ここでは、欠勤控除の考え方や適用範囲、欠勤控除の計算方法の他、欠勤控除を適用する際の注意点について解説します。
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欠勤控除とは給与から労働しなかった分の賃金を差し引くこと
欠勤控除は、従業員に元々支払う予定の給与から、欠勤で働かなかった時間分の賃金を差し引くことで、「勤怠控除」とも呼ばれます。欠勤とは、従業員が本来働くべき日に、自己都合で休むことです。例えば、突発的な体調不良や、有給休暇を使わずに私用で仕事を休んだ場合などが欠勤に該当します。
欠勤控除は欠勤だけではなく、遅刻や早退などにも適用されます。終日か数時間かにかかわらず、所定労働日に働かなかった時間分の賃金を差し引きます。
欠勤控除の考え方
欠勤控除は「ノーワーク・ノーペイの原則」にもとづく考え方です。ノーワーク・ノーペイの原則とは「労働者が働いていない場合、会社はその部分について賃金を支払う義務はない」という給与計算の基本的原則です。
従業員が欠勤や遅刻、早退などによって働かなかった時間があるのなら、会社には、その時間に対する賃金の支払い義務はありません。そのため会社は、支払い義務のない欠勤や遅刻、早退分の賃金を、欠勤控除によって、本来支払う予定の給与から差し引きます。
欠勤控除の適用範囲
欠勤控除は、従業員が欠勤や遅刻、早退をしたときに必ず適用されるわけではありません。どのような場合に欠勤控除が適用されるのか、その範囲を確認しておきましょう。
欠勤控除にならないケース
たとえ仕事を休んでも欠勤控除の対象にならないケースがあります。例えば、労働基準法では業種や業態、雇用形態を問わず、一定の要件を満たした従業員には年次有給休暇を与えなければならないと定められています。また、年次有給休暇は原則1日単位であるものの、労使協定の締結により、年5日の範囲内で時間単位での取得が可能です。
有給休暇は欠勤や遅刻、早退に当てはまりませんので、賃金は支払われます。
また、会社によっては、慶弔休暇やリフレッシュ休暇などの休暇制度を設けていることもあります。このような休暇制度を利用した場合も、欠勤控除の対象にはなりません。
従業員都合の「欠勤」ではなく、会社都合の「休業」であった場合も、欠勤控除は適用されません。会社の都合で従業員を休業させたときは、会社側は従業員に所定の休業手当を支払う義務があります。
欠勤控除になるケース
年次有給休暇を使いきってしまって残っていない、または有給休暇を申請しないで休んだ場合は、欠勤控除の対象となります。病気などやむを得ない理由の休みであっても、欠勤の扱いとなります。ただし、有給休暇が残っている場合、多くの会社では後日の申請でも認めていることが多いため、それぞれ会社の就業規則を確認することが大切です。
また、病気やケガのために仕事を4日以上連続して休んだときは、加入する健康保険から傷病手当金が支給される可能性があります。
欠勤控除額の計算方法
欠勤控除額の計算方法は、勤務形態や給与形態によって変わります。ここでは、月給制の正社員の一般的な計算方法を解説します。
月給制における計算方法
欠勤した場合の欠勤控除は、月給額を1か月の所定労働日数で割って1日あたりの給与額を算出し、それに欠勤した日数を乗じて求めます。
計算式は次のとおりです。
欠勤控除額の計算式
欠勤控除額=月の給与額÷月の所定労働日数×欠勤日数
なお、1か月の所定労働日数は、月によって変わることから、欠勤した月によって欠勤控除額が変わるのを防ぐため、月の所定労働日数を「年間の所定労働日数÷12(か月)」として計算します。
遅刻や早退時の計算方法
遅刻や早退をしたときの欠勤控除は、1分単位で計算します。10分単位や15分単位などで控除すると違法となるため注意しましょう。なお、小数点以下は切り捨てです。
控除額の計算は、月給額を1か月の所定労働時間で割り、それに遅刻や早退をした時間数を乗じます。計算式は、下記のとおりです。
遅刻や早退の欠勤控除額の計算式
欠勤控除額=月の給与額÷月の所定労働時間数×遅刻や早退の時間(欠勤時間数)
欠勤控除の注意点
欠勤控除を適用する際には、いくつか確認しておきたい点があります。あらかじめ決めておかないと後々トラブルになることや、最低賃金を下回ってしまうことがあるため、下記の点に注意しましょう。
欠勤控除のルールは就業規則に明記しておく
賃金や有給休暇については労働基準法で定められていますが、欠勤控除は法律で定められたルールではありません。そのため、欠勤控除の対象になるケースや控除される賃金の計算方法などについて、就業規則や給与規程に明記しておく必要があります。
あらかじめ就業規則などに定めておかないと、欠勤控除を適用したときに「勝手に給料が引かれていた」などとトラブルになりかねません。また、慶弔休暇やリフレッシュ休暇など、欠勤控除の対象にならない休暇とその条件についても、就業規則などできちんとルールを決めておくことが大切です。
同時に、就業規則などで定めた内容については、しっかりと社内に周知させましょう。
最低賃金を下回らないようにする
欠勤控除を適用する際には、控除後の賃金が最低賃金を下回らないようにしなければなりません。最低賃金とは、会社が従業員に最低限支払わなければならないと決められている、賃金の下限額です。
最低賃金を下回ってしまうケースとして、「1か月のうち数日だけ出勤して、残りの日は欠勤した」という場合があります。所定労働日数が多い月に、通常どおり欠勤日数に応じて控除額を計算すると、控除後の金額が時給換算で最低賃金より低くなる可能性があります。
このように最低賃金を下回るときには、欠勤日数分を差し引くのではなく、「1日あたりの給与額×出勤日数」の金額を支給するようにするといいでしょう。併せて給与規程に、「一定の日数以上を欠勤したときは、欠勤日数ではなく出勤日数で給与計算する」ことを明記しましょう。
残業代の扱いを明確にしておく
従業員の欠勤の有無にかかわらず、残業代が発生すれば会社には支払い義務が生じます。ただし、「みなし残業」を採用している場合は、残業代の取り扱いに注意が必要です。
みなし残業とは、実際の労働時間にかかわらず毎月一定の残業を行ったとみなして、固定の残業代を給与に含めて支払う制度です。あらかじめ給与規程に定めていれば、みなし残業代についても、欠勤控除の対象とすることは可能です。
しかし、みなし残業代に欠勤控除を適用した場合、控除後のみなし残業代の金額が何時間分にあたるかを計算し、それを実際に残業した時間と比べ、みなし残業代相当分より残業時間が多ければ超過分を支払うという、煩雑な手間が発生します。このように取り扱いが複雑になるため、注意が必要です。
税金の扱いを確認する
欠勤控除を適用する場合は、所得税などの計算を行う前に、元々予定されていた給与額から控除分の金額を差し引きます。所得税は所得額に応じてかかる税金なので、欠勤控除によって給与の支給額が減れば、その分源泉徴収する所得税額も少なくなります。所得税などの計算をしてから欠勤控除を引くと、税額が変わってしまうので注意が必要です。
欠勤控除で違反となる場合
ノーワーク・ノーペイの原則にもとづき、欠勤控除で給与から差し引くことができるのは、欠勤や遅刻、早退によって働かなかった時間分の賃金だけです。欠勤したことへのペナルティとして、働かなかった時間分以上の賃金を控除すると、労働基準法違反になってしまいます。
例えば、半日遅刻した従業員の給与から、欠勤控除として1日分の賃金を差し引くようなことは違法です。欠勤控除の控除額を1分単位で計算し、小数点以下を切り捨てにするのもこのためです。控除額の計算時に、小数点以下の端数を切り上げや四捨五入にすると、働かなかった時間分より多く控除してしまう可能性があります。特に遅刻や早退など、時間単位で控除額を算出する際には十分気を付けましょう。
なお、就業規則に懲戒処分として「減給」を定めていれば、ペナルティとして減給扱いとすることが可能です。減給になる例としては、「特段の理由がないのに遅刻や欠勤を繰り返す」「無断欠勤をする」などが挙げられます。懲戒処分としての減給額は、「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、月給の10%以下」と定められています。就業規則に定めていないのに減給を行ったり、月給の10%を超える額を減給したりすることは法律違反になります。
正しいルールと計算のもと欠勤控除を適用しよう
欠勤控除は法律で決まっているルールではありませんが、就業規則や給与規程に定めることで、従業員が働かなかった分の賃金を本来の給与から差し引くことができます。ただし、欠勤控除を適用する場合は、対象になるケースや控除額の計算方法を明確にしたうえで、従業員にきちんと周知しなければなりません。
欠勤控除は、計算を手作業で行っていると手間がかかるうえ、ミスも起こりやすくなってしまいます。そこで、給与計算の効率化におすすめなのが、給与計算ソフトです。自社に合った給与計算ソフトで、欠勤控除をはじめとした給与計算を効率化しましょう。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人古田土人事労務
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