パートの雇用保険への加入条件とは?対象者や手続きを解説
監修者:税理士法人古田土会計 社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
2024/06/19更新
会社が雇用した従業員は、所定の条件を満たす場合、雇用保険への加入が必要になります。これは正社員に限らず、パートやアルバイトの従業員でも同様です。スムーズに手続きを進めるためにも、雇用保険の加入条件などを正しく把握しておきましょう。
本記事では、パートやアルバイトの従業員が雇用保険へ加入する条件や、雇用保険に加入できないケース、会社が行う雇用保険の手続きなどについて解説します。
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雇用保険とは社会保険の1つ
雇用保険とは、企業に雇用される従業員の生活や雇用の安定を目的とした社会保険の1つです。
社会保険には、「広義の社会保険」と「狭義の社会保険」があります。広義の社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つのことで、狭義の社会保険はその中の、健康保険、厚生年金保険、介護保険のことを指しています。狭義の社会保険に含まれない雇用保険は、労災保険と併せて「労働保険」と呼ばれることもあります。
正社員やパート、アルバイトといった雇用形態にかかわらず、企業に所属していて、一定の条件を満たす従業員は、雇用保険への加入が必要です。雇用保険の被保険者は、失業時の失業保険や、育休時の育児休業給付金、キャリア形成を目的とした学習への費用が支給される教育訓練給付金といった給付制度を利用できます。雇用保険は、企業に雇用される従業員の安定的な暮らしを守るための保険だといえるでしょう。
パートの雇用保険への加入条件
雇用保険の加入対象者は、企業に雇用されている従業員のうち、以下の条件にすべて当てはまる人です。パートやアルバイトの従業員も、条件を満たす場合は雇用保険に加入しなければなりません。
1週間の所定労働時間が20時間以上になる
パートの雇用保険への加入条件の1つとして、1週間の所定労働時間が20時間以上になることが挙げられます。1週間の所定労働時間とは、雇用契約により、その従業員が通常の週(年末年始や夏季休暇、祝祭日などの特別休日を含まない週)に勤務すべきとされている時間のことです。
例えば、1日6時間・週3日勤務のパート従業員の場合、週の所定労働時間は18時間なので、雇用保険の加入対象にはなりません。その一方、同じ週3日勤務でも、1日の所定労働時間が7時間のパート従業員の場合は、週の所定労働時間が21時間となり、「20時間以上」の条件を満たすことになります。
31日以上継続して雇用される見込みである
31日以上継続して雇用される見込みがあることも、雇用保険の加入条件の1つです。雇用期間が決まっていない場合や、契約更新に関する規程があり31日未満での雇止めの明示がない場合、過去に同様の雇用契約を締結して31日以上雇用された従業員がいる場合なども、「31日以上継続して雇用される見込み」に該当します。
また、当初は雇用期間が31日未満の予定だったとしても、31日以上に延長された場合は、変更された時点で雇用保険への加入が必要になります。
昼間学生ではない
昼間学生でないことも、雇用保険の加入条件となります。昼間学生とは、日中に高校や大学、専門学校などの学校に通っている学生・生徒のことです。
雇用保険に加入できる学生は、通信教育や大学の夜間学部、夜間高校や定時制高校などに通っている人です。なお、昼間学生であっても、卒業前に内定先で働くことが決まっていて、卒業後に引き続き勤務することが決まっている場合や、休学中など、例外的に雇用保険の加入対象になるケースもあります。
パートが雇用保険に加入できないケース
パートやアルバイトの従業員も、条件に当てはまる人は雇用保険に加入する必要がある一方で、次のいずれかに該当する人は、雇用保険に加入することができません。
雇用保険に加入できないケース
- 1週間の所定労働時間が20時間未満
- 高校や大学などに通う昼間部の学生
- 他社で雇用保険に加入している
- 船員や公務員、法人の代表者や取締役など
また、季節的に雇用される労働者の場合は、「4か月を超える期間を定めて雇用される」「1週間の所定労働時間が30時間以上」という2つの条件に該当すれば、雇用保険の加入対象となりますが、そうでない場合は加入できません。季節的な雇用とは、例えば積雪や梅雨など自然現象の影響を受ける業務に、期間を定めて雇用されることです。
その他、パートやアルバイトが雇用保険の加入対象になるのか判断に迷った場合は、管轄のハローワークに相談しましょう。
会社が行う雇用保険の手続き
従業員の雇用保険の手続きをするのは、会社などの事業者です。事業者が従業員を1人でも雇用する場合は、雇用保険の適用事業所となり、パートやアルバイトを含む対象者を雇用保険に加入させる義務が生じます。雇用保険の手続きは、基本的に事業所単位で行います。また、会社に限らず、個人事業主でも、従業員を雇用するなら同様に雇用保険の手続きが必要です。
雇用保険の加入手続き
雇用保険の加入条件に当てはまる従業員を雇い入れたときには、「雇用保険被保険者資格取得届」を管轄のハローワークに提出して、雇用保険の加入手続きを行います。提出期限は、雇用した月の翌月10日までです。例えば、対象となる従業員が4月20日に入社した場合は、5月10日までに手続きを行う必要があります。
「雇用保険被保険者資格取得届」には、従業員の氏名や性別、個人番号(マイナンバー)、雇用形態、職種などの他、その従業員を雇い入れた日や入社時点での賃金についても記載が必要です。初めて雇用保険に加入する従業員の場合は、被保険者番号は空欄のままで問題ありません。なお、書類の様式は定期的に更新されるため、ハローワークのWebサイトなどで最新のものを確認しましょう。
届け出が受理されると、ハローワークから「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」と「雇用保険被保険者証」が交付されるので、従業員本人へ渡します。
転職や退職時の場合の手続き
雇用保険に加入していた従業員が退職したときには、「雇用保険被保険者資格喪失届」と、給付額などの決定に必要な「離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)」をハローワークに提出します。提出期限は、従業員の退職日の翌々日から10日以内です。例えば、退職日が4月10日なら、4月21日までに提出が必要です。その際、内容に問題がないかハローワークで審査を行うため、賃金台帳や出勤簿、退職届なども併せて提出します。
なお、該当する従業員が離職票(雇用保険被保険者離職票)の交付を希望しない場合は、離職証明書の提出は不要です。
審査が完了すると、ハローワークから「雇用保険被保険者離職票」が発行されるので、3枚綴りのうち「離職票-1」「離職票-2」を退職者へ送付し、事業主の控えは企業が保管します。
パートが失業手当を受給できる条件
雇用保険の中でも代表的な手当が、失業した場合に受給できる失業手当です。雇用保険には、雇用の安定と失業者への支援を提供する役割があります。失業手当はその1つで基本手当ともいわれ、パートも条件に当てはまれば手当を受給することができます。基本手当は正式には失業等給付に含まれる手当で、雇用保険の被保険者が定年、倒産、自己都合などの理由により離職した場合に、失業中の生活を心配しないで求職活動ができるように、給付金が支給される制度のことです。
手当を受給するための条件は、以下のとおりです。
失業状態である
失業手当を受給するには、失業状態であることが大前提です。雇用保険における失業とは、就職する積極的な意思や能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない状態のことを指します。したがって、病気やケガですぐに就職できない場合や、すぐに就職するつもりがない場合などは、失業手当の支給対象にはなりません。
雇用保険の加入期間が過去2年で通算12か月以上ある
失業手当を受給するには、原則として、離職の日より以前の2年間のうち、通算12か月以上は雇用保険の被保険者でなければなりません。そのため加入期間がこの条件を満たさない場合は、失業状態にあっても失業手当を受けられません。
この被保険者期間は、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1か月ごとに区切った期間に、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上または時間数が80時間以上ある月を1か月と計算します。
ただし、離職理由や倒産・解雇などのやむを得ない理由である場合(特定理由離職者)は、離職日より以前の1年間に6か月以上の通算加入期間があれば、受給条件を満たしたものとみなされます。
ハローワークで求職申し込みをしている
失業手当は就職する意思と能力がある場合に受給できる手当のため、就業する意思を確認できる実績が必要とされます。そのため、手当の受給は、ハローワークに来所して求職の申し込みを行った人を対象としています。ハローワークやインターネットでの求人情報の閲覧や、知人に就職先を紹介してもらうための依頼をしただけでは、受給条件を満たしたことにはならないので注意しましょう。
パートの雇用保険加入における注意点
雇用している従業員が、雇用保険に加入する条件を満たしているにもかかわらず、手続きを行わなかった場合、事業者は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります。また、雇用保険料の追徴金や延滞金が徴収されることもあります。パートやアルバイトであっても、条件に該当した場合には、必ず雇用保険の加入手続きを行いましょう。
また、複数の勤務先で働いている従業員の場合は、主たる事業所において雇用保険に加入することになります。既に他社で雇用保険に加入している従業員は、二重に加入することはできません。パートの従業員を雇用する際には、パート先の掛け持ちをしているのかどうか、主たるの勤務先を確認しておくことが大切です。
雇用保険の手続きはミスのないように行おう
正社員やパート、アルバイトといった雇用形態を問わず、雇用保険の条件を満たす従業員を雇用した際は加入手続きが必要です。雇用保険は従業員の安定的な暮らしを守る大切な制度ですから、忘れずに手続きを行いましょう。また、従業員が雇用保険に加入した後は、毎月の給与を基に雇用保険料を計算し、徴収しなければなりません。雇用保険料をはじめとした、給与にかかわる計算をスムーズに行うには、給与計算ソフトの導入がおすすめです。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
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