パートの雇用保険料の計算方法は?加入条件や注意点を解説
監修者:税理士法人古田土会計 社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
2024/03/19更新
従業員を雇用したときには、多くの場合、雇用保険の加入手続きが必要です。雇い入れた従業員がパートやアルバイトであっても、所定の要件を満たした場合は雇用保険の加入対象となります。では、パート従業員の雇用保険料は、どのように計算すればいいのでしょうか。
ここでは、パート従業員が雇用保険の加入対象となる要件や、パートが雇用保険に加入するメリット・デメリットのほか、パートの雇用保険料を計算する方法などについて解説します。
【初年度0円】クラウド給与計算ソフトで大幅コスト削減【全機能無料でお試し】
【定額減税にしっかり対応!初年度0円】クラウド給与計算ソフトで大幅コスト削減
パートも条件を満たせば雇用保険の加入対象
雇用保険は、事業主に雇用されている従業員の生活や雇用を安定させるための保険です。一定の条件を満たした従業員は、必ず雇用保険に加入しなければなりません。
ここでいう従業員とは、雇用形態を問わないので、正社員に限らずパートやアルバイトでも、条件を満たす場合は雇用保険への加入が必要です。また、雇用主が法人ではなく個人事業主であっても、雇用保険の加入条件は変わりません。
雇用保険の加入対象範囲は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)よりも広いため、社会保険には加入していなくても雇用保険の加入が必要なケースもあります。
なお、従業員の雇用保険加入の手続きをするのは、雇用主である事業者です。企業が要件を満たす従業員を雇い入れたときには、ハローワークで雇用保険の加入手続きを行わなければなりません。
パートが雇用保険の加入対象となる要件
パート・アルバイトが雇用保険に加入する要件は、以下の3つです。これらの要件をすべて満たすパート・アルバイトは、雇用保険に加入しなければなりません。
1週間の所定労働時間が20時間以上
従業員の1週間の所定労働時間が20時間以上であることは、雇用保険の加入要件の1つです。
1週間の所定労働時間とは、雇用契約により、その人が通常の週(年末年始や夏季休暇、祝祭日などの特別休日を含まない週)に勤務すべきとされている時間を指します。
例えば、週3日・1日6時間勤務のパート従業員の場合、週の所定労働時間は18時間となり、雇用保険の加入対象にはなりません。一方、週3日・1日7時間勤務のパート従業員は、所定労働時間が21時間となるので加入要件の1つを満たしたこととなります。
なお、4週5休制(4週間のうち休日が5日ある制度)のように、1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合は、当該1周期における所定労働時間の平均を、1週間の所定労働時間と見なします。
31日以上継続して雇用される見込みがある
31日以上継続して雇用される見込みがあることも、雇用保険の加入要件となります。なお、雇用期間が決まっていない場合や、契約更新による継続雇用が前提になっている場合、更新規程があり31日未満での雇止めの明示がない場合なども、雇用保険の加入対象です。
その他、当初31日未満の予定だった雇用期間が31日以上に延長された場合は、変更された時点で雇用保険への加入が必要です。
昼間学生ではない
雇用保険の加入要件には、従業員が昼間学生ではないこともあげられます。昼間に学校に通っている学生・生徒は、基本的に雇用保険の適用対象外です。ただし、通信教育や大学の夜間学部、夜間高校や定時制高校などに通っている人は、昼間学生には該当しないため、雇用保険の加入対象となります。
また、昼間学生であっても、以下のようなケースは雇用保険の加入対象となります。
昼間学生が雇用保険の加入対象となるケース
- 卒業見込み証明書があり、卒業前に就職して卒業後も引き続き同一事業所に勤務する予定の人
- 休学中の人(事実を証明する文書が必要)
- 事業主の承認を受け、雇用関係を存続したまま大学院等に在学する人
- 一定の出席日数を課程修了の要件としない学校に在学しており、当該事業所で他の労働者と同様に勤務している人(事実を証明する文書が必要)
パートが雇用保険に加入するメリット・デメリット
雇用保険は、従業員の生活や雇用を安定させるための保険ですから、加入することはパート従業員にとってメリットがあります。その一方で、雇用保険の加入にはデメリットもあります。ここでは、パートが雇用保険に加入する主なメリットとデメリットをご紹介します。
メリット:離職時に失業等給付を受けられる
雇用保険に加入していたパート従業員は、失業したときに失業等給付を受け取ることができるのがメリットといえます。
失業等給付のうち代表的なものが、一般的に失業保険と呼ばれる基本手当です。従業員が離職した後、ハローワークで就職活動を行うなどの受給要件を満たすと、離職理由や年齢、被保険者期間などに応じて、退職前の給与額の50~80%(60~64歳については45~80%)程度の基本手当が、90~360日支給されます。
- ※ハローワーク「基本手当について」
被保険者であった期間 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | ||
区分 | 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30歳以上 35歳未満 |
120日 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
35歳以上 45歳未満 |
150日 | 240日 | 270日 | |||
45歳以上 60歳未満 |
180日 | 240日 | 270日 | 330日 | ||
60歳以上 65歳未満 |
150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
- ※特定理由離職者のうち「特定理由離職者の範囲」の1に該当する人は、受給資格に係る離職の日が2009年3月31日から令和7年3月31日までの間にある人に限り、所定給付日数が特定受給資格者と同様となる。
被保険者であった期間 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | ||
区分 | 全年齢 | 90日(※) | 90日 | 120日 | 150日 |
- ※※特定理由離職者については、被保険者期間が6か月(離職以前1年間)以上あれば基本手当の受給資格を得ることができる。
被保険者であった期間 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | ||
区分 | 45歳未満 | 150日 | 300日 | |||
45歳以上 65歳未満 |
360日 |
- ※ハローワーク「基本手当の所定給付日数」
その他にも、資格取得などを支援する教育訓練給付、育児休業・介護休業などを支援する雇用継続給付など、労働者の生活と雇用の安定や就職の促進を目的としたさまざまな給付制度があります。
デメリット:雇用保険料が毎月の給与から天引きされる
パートが雇用保険に加入するデメリットは、雇用保険料を支払わなければならないことです。雇用保険に加入すると、賃金の額を基に計算された雇用保険料を、給与から天引きの形で支払うことになります。従業員にとっては、その分手取り額が減るため、デメリットと感じる方も多いかもしれません。
なお、雇用保険料は、従業員と事業者が所定の割合分を支払うしくみになっており、事業者の負担金額の方が従業員負担分よりも大きくなっています。
パート・アルバイトの雇用保険料計算方法
雇用保険の保険料は、従業員に支給する賃金の総額に、既定の雇用保険料率を掛けて計算します。計算の基になる賃金の額は、通勤費や残業代、各種手当などを含む雇用保険の対象賃金となる総支給額です。
パート・アルバイトをはじめとする従業員が負担する雇用保険料は、毎月の総支給額に雇用保険料率を掛けた金額となり、月々の給与から天引きされます。一方、事業主が負担する雇用保険料は、雇用保険の対象となる全従業員の1年分の給与と賞与の合計額に、所定の雇用保険料率を掛けて求めます。
ここからは、パート・アルバイトの雇用保険料の計算方法について、詳しく見ていきましょう。
雇用保険料は事業主と労働者で負担する
雇用保険は、広義の社会保険の1つです。広義の社会保険とは、「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つの保険の総称です。この5つの保険のうち、厚生年金保険、健康保険、介護保険の3つを、「狭義の社会保険」と呼ぶこともあります。その場合、雇用保険と労災保険は、まとめて「労働保険」と呼ばれます。
パート従業員が「社会保険に加入する」というときは、狭義の社会保険、つまり厚生年金保険と健康保険(40歳以上は併せて介護保険)を指すことが一般的です。
狭義の社会保険も雇用保険も、保険料は事業主と労働者の双方で負担します。ただし、社会保険は事業主と労働者が半分ずつ保険料を負担するのに対して、雇用保険は事業者の方が多く保険料を負担するという違いがあります。なお、労災保険の保険料は全額事業主負担であり、労働者の負担分はありません。
雇用保険料の計算式
雇用保険料は、以下の計算式で算出します。端数が出た場合は、50銭以下を切り捨て、50銭超を切り上げます。四捨五入ではないので注意しましょう。
雇用保険料の計算式
雇用保険料=支給総額(雇用保険対象賃金)×雇用保険料率
雇用保険料の計算に用いる雇用保険料率は業種ごとに異なり、定期的に見直しが行われます。また、労働者負担分と事業主負担分では、それぞれ雇用保険料率が違います。雇用保険料を計算するときには、厚生労働省のウェブサイトで最新の料率を確認してください。
令和6年度の雇用保険料率は、以下の表のとおりです。
- ※厚生労働省「令和6年度の雇用保険料率」
パート従業員が負担する雇用保険料
パート従業員が支払う雇用保険料は、毎月の給与総額に、業種ごとの雇用保険料率を掛けて計算されます。具体的には以下のとおりです。
一般の事業のパート従業員負担分の雇用保険料の計算式
従業員負担分の雇用保険料=毎月の給与総額×0.006
農林水産・清酒製造の事業のパート従業員負担分の雇用保険料の計算式
従業員負担分の雇用保険料=毎月の給与総額×0.007
建設の事業のパート従業員負担分の雇用保険料の計算式
従業員負担分の雇用保険料=毎月の給与総額×0.007
事業主が負担する雇用保険料
企業など、従業員を雇用している事業主が負担する雇用保険料は、1年間に雇用保険被保険者に対して支払った給与と賞与の総額に、雇用保険料を掛けて算出します。そのため、月々の事業主負担分を個別に計算する必要はありません。
従業員を雇用している事業主は、1年分の概算の雇用保険料を計算して、年に1度、労災保険料と合わせて申告・納付します。その際に、前年度に概算申告した保険料について、確定申告をして精算します。この手続きを「年度更新」といいます。年度更新を行う時期は、原則として、毎年6月1日から7月10日までの間です。
一般の事業の事業主負担分の雇用保険料の計算式
事業主負担分の雇用保険料=賃金総額×0.0095
農林水産・清酒製造の事業の事業主負担分の雇用保険料の計算式
事業主負担分の雇用保険料=賃金総額×0.0105
建設の事業の事業主負担分の雇用保険料の計算式
事業主負担分の雇用保険料=賃金総額×0.0115
パートの雇用保険料を適切に処理するには、給与計算ソフトがおすすめ
パートやアルバイトでも、所定の要件を満たした場合は、雇用保険に加入する義務があります。雇用保険は任意ではないので、従業員や企業の希望で加入の有無を決められるものではありません。加入条件を満たした従業員がいる場合は、必ず雇用保険の加入手続きを行い、毎月支払う給与から雇用保険料を徴収する必要があります。
雇用保険料は給与額を基に計算しますが、雇用保険料率が従業員と事業主で異なるうえ、定期的に見直しが行われます。従業員ごとの雇用保険料の計算や、適切な端数処理など、従業員の数が増えるほど手間も煩雑になるものです。
雇用保険料をはじめとする給与計算をミスなくスムーズに行うには、「弥生給与」「弥生給与 Next」「やよいの給与計算」「やよいの給与明細 Next」といった給与計算ソフトの導入がおすすめです。自社に合った給与計算ソフトを活用して、給与計算のミス削減と業務効率化を目指しましょう。
【無料】お役立ち資料ダウンロード
パート従業員の社会保険加入チェックと対策ガイド
社保加入が必要なのはフルタイム従業員だけじゃない!「年収の壁」問題と対策を知りたい方におすすめです。
弥生のクラウド給与サービスなら給与計算・年末調整がスムーズに
弥生のクラウド給与サービスは、初心者でも給与・賞与計算から年末調整まで、”かんたん”に行えるソフトです。
従業員規模や利用目的など、お客さまに最適な「給与計算ソフト」をお選びいただけます。
今なら初年度無償で使えるキャンペーンを実施中です!
まずはお気軽にお試しください。
年末調整までご自身で行いたい方におすすめな「弥生給与 Next」
弥生給与 Nextは、毎月の給与計算から年末調整業務を効率化するクラウド給与ソフトです。
勤怠情報を入力すれば残業代や社会保険料などは自動計算で、給与明細書の作成はラクラク。
また作成した給与明細書は、Web配信で従業員のスマホ・PCに配付することができます。
さらに年末調整に必要な控除申告書の回収、法定調書の作成、源泉徴収票の従業員への配付もオンラインでスムーズです。
年末調整の法定調書作成を委託されている方向けの「やよいの給与明細 Next」
やよいの給与明細 Nextは、年末調整を会計事務所に委託している方にピッタリのソフトです。
給与・賞与明細書の作成から配付はオンラインでスムーズ。
年末調整は控除申告書のWeb回収まで可能です。
- ※年末調整の法定調書作成を自社で対応したい方は弥生給与 Nextをお申し込みください。
また、外部委託先へデータ連携の共有がかんたんだから、データの転記や控除申告書のPDF化などの手間が大幅に削減されます。
この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
中小企業を経営する上で代表的なお悩みを「魅せる会計事務所グループ」として自ら実践してきた経験と、約3,000社の指導実績で培ったノウハウでお手伝いさせて頂いております。
「日本で一番喜ばれる数の多い会計事務所グループになる」
この夢の実現に向けて、全力でご支援しております。
解決できない経営課題がありましたら、ぜひ私たちにお声掛けください。必ず力になります。