労働者名簿の書き方とは?記載事項や保存・更新方法を紹介

2023/03/03更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

労働者名簿は、従業員を雇用する場合に必ず作成し、一定期間保存しなければなりません。ですが、会社の労務管理業務を行ううえで、労働者名簿について「どのような項目を記載すれば良いのだろう」「正しい書き方はあるのだろうか」などと、お困りの方もいるかもしれません。

そこで本記事では、労働者名簿に記載する項目や書き方の他、保存や更新をする際の注意点などを解説します。

労働者名簿とは?

労働者名簿とは、その名のとおり労働者の情報を記した名簿で、従業員の氏名や生年月日といったさまざまな情報を記録するもの。労働基準法第107条により、従業員を雇用する事業者には、労働者名簿の作成・保管が義務付けられています。

労働基準法で事業場に必ず備えておかなければならないとされる法定帳簿となり、賃金台帳や出勤簿と合わせて、「法定三帳簿」と呼ばれて、適切に整備しておくことが必要です。

労働者名簿作成は義務

大企業であっても中小企業であっても、企業の規模を問わず、従業員を雇用していれば労働者名簿の作成は必要です。また、法人の他、個人事業主も、従業員を雇っているのであれば労働者名簿を作成しなければなりません。

未作成・未保管の場合は是正勧告の対象に

労働者名簿は基本的に社内での保管となりますが、労働基準監督署の調査が入った際に提出するよう求められることもあります。もし労働者名簿の作成や保管をしていなかったり、必要な事項が記載されていなかったりすると、労働基準監督署の是正勧告の対象となります。

また、労働者名簿の作成義務違反や保存義務違反とみなされた場合は、労働基準法第107条により30万円以下の罰金の対象となります。

労働者名簿の対象者

労働者名簿の対象になるのは、基本的にはすべての従業員です。正社員、契約社員、パートタイム、アルバイトなどの雇用形態は問いません。なお、派遣社員に関しては、派遣元の会社が情報を管理するため、派遣先に労働者名簿を作成する義務はありません。

その他にも下記のような場合、作成の対象になるか判断に迷いやすいので注意が必要です。

労働者名簿の対象者を判断するポイント
対象者 内容
代表者および役員 労働基準法上「労働者」に該当しないため、管理対象にならず
在籍出向中の社員 出向元・出向先の両方の企業で労働者名簿への記載義務がある
移籍出向中の社員 出向先の企業のみで労働者名簿への記載義務あり
派遣労働者 原則的に派遣元が管理を行うため、派遣先企業には作成や管理義務はなし

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労働者名簿の記載事項

労働者名簿は、労働基準法、および同法施行規則で定められた項目を必ず記載しなくてはなりません。また、必須ではないものの、記載しておくと役立つ項目もあります。例えば、健康保険や厚生年金、雇用保険に関連する情報や緊急連絡先などを、労働者名簿に記載する企業は少なくありません。

どのような項目を記載すると役立つかは会社によっても異なるため、各社で追加すべき項目を検討することをおすすめします。労働者名簿に必ず記載すべきなのは、下記の項目です。

氏名・生年月日・性別

従業員の氏名や生年月日、性別を記載します。氏名は、戸籍で記載されているものを記入してください。業務上、旧姓など戸籍上の氏名以外を使用していたとしても、労働者名簿は戸籍の氏名で記します。在職中に婚姻や養子縁組などで戸籍上の氏名が変わった場合は、その都度、労働者名簿の氏名も変更してください。

住所

従業員の住所を記載します。住民票の住所と現在の居住地が違う場合や、単身赴任をしている場合などは、住民票の住所ではなく実際に住んでいる場所の住所を記入する、もしくは両方の住所を把握しておくことを推奨します。また、従業員が転居した場合は、その都度変更が必要です。

履歴

労働基準法などの法律では、従業員の履歴についてどこまで記載するべきかといった定めはありません。異動や昇進といった社内での履歴や、最終学歴などを記載することが多いです。また、会社によっては、必要に応じて社外履歴などについても記載しているケースがあります。

履歴の項目は、例えば次のように記載します。

記入例:

2020年3月 ◯◯大学卒業
2020年4月 入社・営業部配属

従事する業務の種類

社内での業務内容(部門・職種)や役割(役職・資格の選任)などを記載します。万が一労災事故が発生した場合は、従事している業務について確認が必要なこともあります。どのような業務なのかがわかるように正しく記入します。ただし、労働基準法施行規則第53条第2項により、常時使用する労働者が30人未満の事業では、「従事する業務の種類」の記入は必須ではありません。

記入例:

「営業部 部長」「経理部 主任」「販売店員」「配達員」「製造作業員 一般職 クレーン資格保有」など

雇い入れた年月日

実際に雇用が開始された年月日を記載します。採用が決定した日ではないので注意してください。試用期間を設けている場合は、試用期間の開始日が雇い入れた日になります。

退職した年月日と事由

従業員が退職した場合、退職した年月日とその事由を記載します。ただし、従業員の都合による退職の場合は、理由の記載は不要です。会社が従業員を解雇したときは、その理由を記載する必要があります。

死亡した年月日と原因

在職中に従業員が亡くなった場合は、死亡した年月日と同時に死亡原因についても記載が必要です。

労働者名簿のテンプレートをダウンロードする場合は、必須項目があるか確認を

労働者名簿の様式・書式には法律による定めはなく、必要事項が不足なく記載されていれば、どのようなものでも問題はありません。最近は、インターネットでも労働者名簿のテンプレートをダウンロードすることができますが、その際には記載が義務付けられている項目がしっかりあるか確認しましょう。

厚生労働省のWebサイトでも、「主要様式ダウンロードコーナー 新規タブで開く」より、労働者名簿のテンプレートがダウンロードできます。こちらのテンプレートを活用すれば、記載すべき必要事項が網羅されているため便利です。

労働者名簿の保存期間や更新頻度における注意点

労働基準法には、労働者名簿の保存期間や更新頻度について明記されています。従業員を雇用するすべての事業者は、この定めを守らなくてはなりません。

保存期間が3年から5年へ延長

労働者名簿の保存期間は2020年4月施行の改正労働基準法によって、保存期間が5年間になりました。保存期間の起算日は、その従業員が労働者名簿の対象外になった日です。具体的には、従業員の退職日や解雇日、死亡した日から5年間ということになります。

保存方法については明確な定めはないが、電子データの場合は注意が必要

労働者名簿は、原則として、事業場単位で保存する必要があります。保存方法に関しては、特に明確な定めはありません。紙とデータのどちらの形で保存しても構いませんが、電子データで労働者名簿を作成・保存する場合は、次のような要件を満たす必要があります。

電子データの保存要件

  • 必要事項の記載などの要件を備え、それを画面上に表示および印字することができる
  • 労働基準監督官の調査などの際、直ちに必要事項が明らかにされ、提出できるシステムになっている
  • 誤って消去されない
  • 長期にわたって保存できる

更新頻度は随時する必要がある

労働基準法107条2項では、労働者名簿の記載事項に変更があった場合は、遅延なく訂正しなければならないとしています。住所や氏名の変更の他、社内や部署異動や配置転換があった場合など、随時内容を更新するようにしてください。

労働者名簿を管理する際は万全なセキュリティ対策を

労働者名簿には、従業員の氏名や住所、生年月日など重要な個人情報が記載されているため、個人情報保護法の対象となります。個人情報保護法のルールに則り、必要とされる安全管理措置をとり、情報漏洩などが起こらないように適切に管理しなければなりません。労働者名簿を管理する際は、特定の場所を設け、施錠をして保管するといったセキュリティ対策が必要となります。また、誰でも閲覧できる状態にならないよう、関係者以外は見られないようにすることも大切です。

なお、マイナンバーについては、労働者名簿とは別に、マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)において管理されます。

労働者名簿の記載項目を理解して正しく作成・保管しよう

労働者名簿は、正社員をはじめパートやアルバイトなど、すべての従業員を対象に作成が必要な帳簿です。労働者名簿に記載すべき事項は法律によって定められており、不足があると法令違反とみなされてしまう可能性もあります。

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