年末調整はいつ、いくら戻ってくる?平均金額と還付金の計算方法を解説

2024/03/01更新

年末調整を行うと還付金が戻ってくるケースもあるため、いくら戻ってくるのか知りたい方も多いのではないでしょうか。年末調整で戻ってくる金額は人それぞれであり、還付金がいくらなのかを計算して確認することをおすすめします。

ここでは、年末調整で戻ってくる金額の計算方法をシミュレーション付きで解説します。

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年末調整はいくら戻ってくる?平均金額を紹介

年末調整をして戻ってくる還付金の平均金額は、53,856円だと推測されます。この還付金の額は、源泉所得税の還付金額(約2兆6,357億円)を、年末調整を受けた人数(約4,894万人)で割った数字です。
参考:国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査新規タブで開く
参考:国税庁「第147回 国税庁統計年報書新規タブで開く

しかし、年末調整でいくら戻ってくるかは人それぞれであり、戻ってくる金額が数百円という人もいれば、数十万円戻ってくるという人もいます。また、還付金が戻ってくるどころか、追加で税金を徴収される人もいます。人によって還付金の金額に違いがあるのは、年末調整のときにどれだけ所得控除を利用したかにより変わるためです。

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年末調整でお金が戻ってくる理由

年末調整でお金が戻ってくる理由は、源泉徴収により天引きされた所得税額よりも本来払うべき所得税額が少ないからです。逆に源泉徴収された所得税額よりも払うべき所得税が多くなるときには、お金が戻ってくるのではなく追徴税額を支払わなければいけません。

年末調整は源泉徴収された所得税額と実際に払う所得税額を調整する制度であり、調整した結果によりお金が戻ってくるかどうかが決まります。調整するときに所得を控除できる項目が多いほど、還付金が増える可能性が上がります。

年末調整でお金が戻ってくるかどうか計算する方法

年末調整でお金が戻ってくるかどうかは、以下の方法で計算できます。

  • 1.
    計算に必要な書類を準備する
  • 2.
    1年間の給与や賞与を合計する
  • 3.
    1年間の所得を計算する
  • 4.
    所得控除の額を計算する
  • 5.
    所得から所得控除を差し引いて課税所得を計算する
  • 6.
    課税所得に所得税率を掛ける
  • 7.
    住宅ローン控除を差し引く
  • 8.
    年調年税額から源泉徴収税額を差し引く

多くの手順を踏む必要がありますが、計算自体はそこまで難しくありません。年末調整の前にまず自分で還付金の金額を計算してみましょう。

1. 計算に必要な書類を準備する

年末調整でいくら戻ってくるか計算するために必要な書類は、以下のとおりです。

  • 1月~12月までの今年の給与明細
  • 生命保険や地震保険、iDeCoなど今年に払った金額がわかる書類
  • 住宅ローンの残高証明書

もし今年の給与明細が12月までないのであれば、ある分の金額を合計して1ヶ月の平均金額を計算し、12をかけて1年の目安を算出しましょう。また、生命保険や地震保険の支払いも同様に計算します。住宅ローンの残高は年末時点の金額が必要なため、いくらになるのか予測した金額を利用します。

2. 1年間の給与や賞与を合計する

計算に必要な書類を準備したら、1年間の給与や賞与を合計します。給与明細や賞与の明細が1年分ないときは、先述のとおり平均金額から1年分の給与を計算しましょう。

なお、年末調整の還付金に関係するのは、所得税課税対象になる金額のみです。家族手当や残業手当、住宅手当は所得税課税対象になるため、給与として計算します。しかし、通勤手当は通常所得税の課税対象にはならないため、給与を合計するときには計算から除外しておきましょう。

3. 1年間の所得を計算する

1年分の給与合計額を計算したら、次に1年間の所得を計算します。1年間の所得の計算方法は、以下のとおりです。

1年間の所得 = 1年間の給与合計額 - 給与所得控除

給与所得控除は、以下のとおりです。

給与などの収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで 550,000円
1,625,001円から1,800,000円まで 収入金額 × 40% - 100,000円
1,800,001円から3,600,000円まで 収入金額 × 30% + 80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで 収入金額 × 20% + 440,000円
6,600,001円から8,500,000円まで 収入金額 × 10% + 1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円(上限)

参照:国税庁「No.1410 給与所得控除新規タブで開く

例えば、1年間の給与が300万円だった場合、給与所得額控除額は以下のように計算します。

300万円 × 30% + 8万円 = 98万円

給与所得控除額を計算できたら、1年間の給与合計額から差し引きます。

4. 所得控除の額を計算する

1年間の所得が計算できたら、次に所得から所得控除を差し引きます。所得から差し引ける所得控除は多くあり、ここでは年末調整で考慮される代表的な所得控除を紹介します。

  • 基礎控除
  • 配偶者控除・配偶者特別控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 扶養控除
  • 生命保険料・地震保険料控除
  • ひとり親控除
  • 寡婦控除

年末調整の控除について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

基礎控除

基礎控除とは、所得税を算出するときに誰にでも適用される控除です。基礎控除で控除される控除額は、下表のとおりです。

納税者本人の合計所得金額 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円

参照:国税庁「No.1199 基礎控除新規タブで開く

基礎控除は1年間の給与ではなく、所得を基準として控除額が決まります。

配偶者控除・配偶者特別控除

配偶者控除とは、所得税法上の控除対象配偶者がいて、なおかつ納税者の所得が一定以下である場合に受けられる控除です。配偶者控除で受けられる控除額は、下表のとおりです。

控除を受ける納税者本人の
合計所得金額
一般の控除対象配偶者
900万円以下 38万円
900万円超950万円以下 26万円
950万円超1,000万円以下 13万円

参照:国税庁「No.1191 配偶者控除新規タブで開く

配偶者控除を受けるには、配偶者の所得に制限があるなどの条件があります。詳しくは国税庁「No.1191 配偶者控除新規タブで開く」のページをご参照ください。

配偶者特別控除とは、配偶者に48万円を超える所得があり配偶者控除を受けられない場合でも、納税者・配偶者の所得が一定以下のときに利用できる控除です。配偶者特別控除の控除額は、下表のとおりです。

控除を受ける納税者本人の合計所得金額
900万円以下 900万円超
950万円以下
950万円超
1,000万円以下
配偶者の合計所得金額 48万円超95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超100万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超133万円以下 3万円 2万円 1万円

参照:国税庁「No.1195 配偶者特別控除新規タブで開く

社会保険料控除

社会保険料控除とは、支払った保険料の金額をすべて控除できる制度です。控除できる社会保険は、以下のとおりです。

  • 健康保険
  • 国民年金
  • 厚生年金保険
  • 国民健康保険の保険料
  • 国民年金基金の加入員として負担する掛金 など

なお、社会保険料控除は、生活をともにしている配偶者や親族が払うべきものを納税者が払っても控除対象となります。なお、納付期日が到来した社会保険料であっても未払いの場合、社会保険料控除の対象にはならないことに注意しましょう。

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除の具体的なものとして、「企業型確定拠出年金やiDeCoの支払額」が挙げられます。これらの支払いをしていると小規模企業共済等掛金控除の対象となります。なお、小規模企業共済等掛金控除の対象となる支払いは、全額控除対象です。

扶養控除

扶養控除とは、一定条件を満たす親族を扶養している場合に受けられる控除です。扶養控除の控除額は、下表のとおりです。

区分 控除額
一般の控除対象扶養親族(12月31日時点で16歳以上19歳未満・23歳以上70歳未満の人を扶養している場合) 38万円
特定扶養親族(12月31日時点で19歳以上23歳未満の人を扶養している場合) 63万円
老人扶養親族(12月31日時点で70歳以上の人を扶養している場合) 同居老親等以外の者 48万円
同居老親等 58万円

参照:国税庁「No.1180 扶養控除新規タブで開く

ただし、扶養控除を受けるには、扶養する親族の所得が48万円以下といった条件があります。

生命保険料・地震保険料控除

生命保険や地震保険に支払った保険料も控除の対象です。生命保険料は新契約と旧契約で異なり、控除額は下表のとおりです。

新契約(平成24年1月1日以降に締結した保険契約等)
年間の支払保険料等 控除額
20,000円以下 支払保険料等の全額
20,000円超40,000円以下 支払保険料等 × 1/2 + 10,000円
40,000円超80,000円以下 支払保険料等 × 1/4 + 20,000円
80,000円超 一律40,000円
旧契約(平成23年12月31日以前に締結した保険契約等)
年間の支払保険料等 控除額
25,000円以下 支払保険料等の全額
25,000円超 50,000円以下 支払保険料等×1/2+12,500円
50,000円超 100,000円以下 支払保険料等×1/4+25,000円
100,000円超 一律50,000円

参照:国税庁「No.1140 生命保険料控除新規タブで開く

地震保険料の控除については、以下のように控除されます。

  • 地震保険料の支払いが50,000円以下の場合:支払金額全額が控除対象
  • 地震保険料の支払いが50,000円超える場合:一律50,000円

ひとり親控除

ひとり親控除とは、納税者がひとり親であるときに受けられる控除であり、一律35万円の控除です。ひとり親控除を受けられる条件は、以下のとおりです。

  • 納税者と事実上婚姻関係にある人がいないこと
  • 生計をともにする子がいること(この子の所得は48万円以下で他の人の配偶者や扶養になっていないことが条件)
  • 納税者の合計所得金額が500万円以下であること

参照:国税庁「No.1171 ひとり親控除新規タブで開く

寡婦控除

寡婦控除とは、夫と離婚したり死別したりした妻が受けられる控除です。寡婦控除が適用されると、一律27万円の控除が受けられます。なお、納税者の所得が500万円以下でないと、寡婦控除は受けられません。

5. 所得から所得控除を差し引いて課税所得を計算する

所得控除額が計算できたら、所得から差し引いて課税所得を算出します。

課税所得 = 1年間の総所得金額 - 各所得控除の合計額

なお、課税所得は1,000円未満を切り捨てにします。

6. 課税所得に所得税率を掛ける

課税所得が計算できたら、課税所得に所得税率を乗じます。

所得税額 = 課税所得 × 所得税率 - 所得税の控除額

所得税率は課税所得に応じて、下表のように変化します。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円から1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円から3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

参照:国税庁「No.2260 所得税の税率新規タブで開く

7. 住宅ローン控除を差し引く

所得税額が計算できたら、次に住宅ローン控除を差し引いて年調年税額を算出します。

年調年税額 = 所得税額 - 住宅ローン控除額

住宅ローン控除で差し引ける金額は、下表のとおりです。

住宅新旧等 住宅環境性能等 借入限度額 控除期間 控除割合
令和4・5年入居 令和6・7年入居
新築住宅
買取再販
長期優良住宅
低炭素住宅
5,000万円 4,500万円 13年間 0.7%
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円
その他住宅 3,000万円(※1) 2,000万円(※2) 10年間
既存住宅 長期優良住宅
低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
3,000万円
その他住宅 2,000万円

参照:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)新規タブで開く

  • ※1 新築住宅・買取再販住宅のその他の住宅を購入・建築した場合で、令和4・5年で入居したときの控除期間は13年
  • ※2 令和5年12月31日までに建築確認を受けたものまたは令和6年6月30日までに建築されたものに限る

例えば、新築のZEH水準省エネ住宅を購入し、住宅年末残高が3,500万円あったとします。そして令和6年に入居する場合の住宅ローン控除金額は、以下のとおりです。

3,500万円(年末借入残高)× 0.7% = 24.5万円

8. 年調年税額から源泉徴収額を差し引く

年調年税額が計算できたら、最後に源泉徴収税額を差し引きします。

還付金・追徴税額の額 = 年調年税額 - 源泉徴収額

上記の計算結果がマイナスになれば還付金が発生し、プラスになれば追徴税額が発生します。

年末調整でいくらお金が戻ってくるか計算する方法【シミュレーション】

ここからは、年末調整でいくらお金が戻ってくるのかシミュレーションしてみます。シミュレーションの条件は、以下のとおりです。

  • 30代・独身
  • 扶養家族なし
  • 月収30万円
  • 社会保険料50万円
  • 源泉徴収税額8万円
  • 年間掛金支払額12万円の確定拠出型年金を運用

給与金額の年額を計算

30万円 × 12ヶ月 = ①360万円

所得を計算

年収360万円のときの給与所得控除は「収入金額 × 30% + 80,000円」
①360万円 -(①360万円 × 30% + 8万円)= ②244万円

所得控除額を合計

基礎控除48万円・社会保険料50万円・確定拠出型年金12万円が所得控除になる
48万円 + 50万円 + 12万円 = ③110万円

課税所得を計算

②244万円 - ③110万円 = ④134万円
※ 1,000円未満の端数が出る場合は切り捨て

所得税率を掛ける

課税所得が134万円の場合、譲渡税率5%(控除額なし)
④134万円 × 5% = ⑤6.7万円

所得税額から源泉徴収額を差し引く

⑤6.7万円 - 8万円 = -1.3万円

この計算の場合はマイナス1.3万円になったため、還付金が1万3,000円戻ってきます。

年末調整で戻ってくる金額に関してよくある質問

年末調整で戻ってくる金額に関してよくある質問を3つ紹介します。

  • 年末調整で金額を間違えたときには修正できる?
  • 確定申告でも戻ってくる金額はわかる?
  • 年末調整で戻ってきた金額は収入になる?

回答と共に見ていきましょう。

年末調整で金額を間違えたときには修正できる?

年末調整で金額を間違えても、翌年1月31日までなら会社の協力を得て修正が可能です。ただし、会社によっては税務署への提出期限が近くなると、協力を得られないケースがあります。もし会社が修正に応じてくれない場合は、2月16日から3月15日までの確定申告で修正を申告しましょう。

確定申告でも戻ってくる金額はわかる?

確定申告でも戻ってくる金額はわかります。確定申告で戻ってくる金額を確認したい場合は、確定申告書第一表の税金の計算欄を見ればわかります。また、還付金がいつ戻ってくるのか知りたい場合は、e-Taxで還付金の処理状況が確認可能です。ただし、e-Taxで確認できるのは、電子申請で確定申告をした人だけです。

年末調整で戻ってきた金額は収入になる?

還付金はあくまで所得税が戻ってきているだけであるため、年末調整で戻ってきたお金は収入として計上されません。ただし、税金の納め過ぎによる還付を受けるまでの日数分の利息である還付加算金は、雑所得の扱いになります。

年末調整で戻ってくる金額は自分で計算できる

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