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パートの給与にも社会保険料がかかる?加入条件や計算方法などを解説

監修者:税理士法人古田土会計 社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

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会社は、社会保険への加入の対象となる従業員がいる場合は、加入の手続きを行い、給与から社会保険料を控除しなければなりません。では、パートやアルバイトとして働いている従業員も、所定の条件を満たす場合は社会保険への加入が必要なのでしょうか。

本記事では、パートやアルバイトが社会保険に加入しなければならない条件や、給与から控除する社会保険料の計算方法などについて解説します。

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パートやアルバイトも社会保険への加入が必要な場合がある

社会保険は、正社員だけでなく、パートやアルバイトとして働いている従業員も、所定の条件を満たす場合は加入が必要です。

なお、社会保険は、「広義の社会保険」と「狭義の社会保険」に分けられます。広義の社会保険は、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つを指します。その中で、健康保険、厚生年金保険、介護保険をまとめて狭義の社会保険といい、雇用保険、労災保険は含まれません。雇用保険と労災保険は、まとめて「労働保険」と呼ばれることがあります。

本記事では、社会保険は狭義の社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)として解説します。

パートやアルバイトの社会保険への加入条件

会社が社会保険の適用事業所であれば、パートやアルバイトとして働いている人も、以下の要件に該当する場合、社会保険に加入する必要があります。

社会保険の加入条件

  • 適用事業所に常時雇用されている70歳未満の従業員(厚生年金保険)・75歳未満の従業員(健康保険)
  • 1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が常勤労働者の4分の3以上の従業員

さらに、所定労働時間や所定労働日数がフルタイム従業員の4分の3未満のパート・アルバイトであっても、以下の要件にすべて該当する場合は、社会保険の加入対象となります。

パート・アルバイトの社会保険の加入条件

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円(年間で約106万円)以上
  • 2か月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない
  • 従業員(被保険者数)が101人以上の事業所に勤めている(2024年10月より従業員数51人以上の事業所が対象)

社会保険の適用範囲が拡大

法改正により、2024年10月以降、社会保険の適用範囲が拡大されます。パート・アルバイトの社会保険の加入条件のうち、「従業員が101人以上の事業所」が、2024年10月以降は「従業員が51人以上の事業所」となるため注意が必要です。これまで社会保険に入る必要がなかった、従業員数51~100名の事業所で働くパート・アルバイト従業員も、社会保険の加入対象になります。

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パートやアルバイトの社会保険料の計算方法

従業員の社会保険料は、「標準報酬月額」を基に計算されます。標準報酬月額は、従業員の月々の給料を等級で区分した金額のことです。パートやアルバイトの給与は一般的に時給制ですが、見込みで月収換算した平均額を区分したものになります。

標準報酬月額は健康保険と厚生年金保険で別々に定められており、健康保険は50段階、厚生年金保険は32段階に等級が分かれています。それぞれの等級区分は、「保険料額表」によって確認が可能です。

社会保険料は、従業員と会社が折半で負担します。そのため、従業員の給与から控除(天引き)する金額は、標準報酬月額に所定の保険料率を掛けて算出した社会保険料の半額となります。

では、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料について、それぞれの計算方法を見ていきましょう。

健康保険料の計算方法

健康保険料の従業員負担分は、以下の計算式で求めます。

健康保険料の計算式

健康保険料=(標準報酬月額×健康保険料率)÷2

健康保険料率は、加入している健康保険組合の種類などによって決まります。また、協会けんぽに加入している場合は、適用事業所の都道府県によって保険料率が異なるため注意が必要です。

厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料は、以下の計算式で求めます。厚生年金保険料率は、2024年4月現在は18.3%で固定されています。

厚生年金保険料の計算式

厚生年金保険料=(標準報酬月額×厚生年金保険料率)÷2

介護保険料の計算方法

社会保険の加入要件を満たす従業員が40歳以上の場合は、健康保険と併せて介護保険の計算も必要です。介護保険料の計算式は、以下のとおりです。

介護保険料の計算式

介護保険料=(標準報酬月額×介護保険料率)÷2

介護保険料率は、健康保険料率と同様に、加入している健康保険組合の種類や事業所の都道府県によって異なります。

パートやアルバイトの社会保険料の計算例

ここからは、パートやアルバイトの社会保険料を、実際に計算してみましょう。

月収が8万8,000円、10万円、15万円のケースを例に、「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」の保険料を計算します。なお、健康保険と厚生年金保険の保険料率については、協会けんぽ(東京都)の2024年3月分の保険料額表を参考にしています。

月収8万8,000円の場合

月収8万8,000円は、パート・アルバイトの社会保険への加入条件となるラインです。この場合の標準報酬月額は、8万8,000円となります。

健康保険料

(標準報酬月額8万8,000円×健康保険料率9.98%)÷2=4,391円(1円未満の端数が50銭以下は切り捨て)

厚生年金保険料

(標準報酬月額8万8,000円×厚生年金保険料率18.3%)÷2=8,052円

介護保険料

(標準報酬月額8万8,000円×介護保険料率1.60%)÷2=704円

月収10万円の場合

月収10万円の場合の標準報酬月額は、9万8,000円となります。社会保険料は、それぞれ次のように計算します。

健康保険料

(標準報酬月額9万8,000円×健康保険料率9.98%)÷2=4,890円(1円未満の端数が50銭以下は切り捨て)

厚生年金保険料

(標準報酬月額9万8,000円×厚生年金保険料率18.3%)÷2=8,967円

介護保険料

(標準報酬月額9万8,000円×介護保険料率1.60%)÷2=784円

月収15万円の場合

月収15万円の場合、標準報酬月額は15万円です。

健康保険料

(標準報酬月額15万円×健康保険料率9.98%)÷2=7,485円

厚生年金保険料

(標準報酬月額15万円×厚生年金保険料率18.3%)÷2=13,725円

介護保険料

(標準報酬月額15万円×介護保険料率1.60%)÷2=1,200円

パートやアルバイトが社会保険に加入するメリット

社会保険の適用範囲拡大によって、新たに加入するパートやアルバイトが増える可能性もあるでしょう。パートやアルバイトとして働いている人が社会保険に加入すると、主に以下のようなメリットがあります。

保険料を会社と折半できる

社会保険の保険料は、労働者と雇用主が折半で納めることがメリットです。従業員が負担するのは保険料の半分の額となるため、負担が軽減されます。もし、社会保険ではなく、国民健康保険や国民年金に加入している場合、保険料は全額が本人の負担となります。

保障が手厚くなる

厚生年金保険に加入すると、国民年金(基礎年金)に加えて厚生年金が上乗せされ、将来受け取れる年金額が増えることがメリットです。

また、協会けんぽや健康保険組合といった健康保険には、病気やケガで仕事を休んだ場合の「傷病手当金」や、出産のために仕事を休んだ場合の「出産手当金」の制度があります。これらの手当金は、国民健康保険にはありません。

パートやアルバイトが社会保険に加入するデメリット

パートやアルバイトが社会保険に加入する場合のデメリットは、社会保険料の負担が発生することです。給与から保険料が差し引かれる分、手取り額が減ることになります。

もし、それまで配偶者などの被扶養者だったパート・アルバイトの年収が130万円以上になると配偶者の扶養から外れ、自分で社会保険(または国民健康保険と国民年金保険)に加入しなければなりません。このとき、年収を129万円に抑えた場合と、130万円に達した場合を比べると、保険料の負担がある分、手取りが年収130万円の方が少なくなってしまうというケースが出てきます。このことから、扶養の範囲内で働きたいと考えるパート・アルバイトもいるため注意が必要です。

106万円と130万円の壁への対応

パートやアルバイトの社会保険加入に関連して、よく聞かれるのが「年収の壁」という言葉です。

社会保険では、目安となる年収106万円以上で、週の所定労働時間が20時間以上になるなどの加入条件を満たし、かつ特定適用事業所に勤務していれば、厚生年金保険と健康保険への加入義務が生じます。その際、年収130万円以上で配偶者の扶養から外れることから、「106万円の壁」「130万円の壁」と呼ばれます。もし、パートやアルバイトで「扶養の範囲内で働きたい」と考えている場合は、勤務先へ明確に伝えることが大切です。

なお、上記の特定適用事業所とは、1年のうち6か月以上、厚生年金保険の被保険者の総数が101人以上(2024年10月1日からは51人以上)となる事業所のことを指します。

また、厚生労働省では、人手不足対策として「年収の壁・支援強化パッケージ新規タブで開く」に取り組んでいます。この支援強化パッケージによって、「106万円の壁」に対しては従業員の収入増に取り組む事業主への助成金や、「年収130万円の壁」に対しては2023年10月から連続2年までは、一時的な超過として従業員を扶養対象にできる措置が設けられています。ただし、保険者よって取り扱いが異なるケースがあるため、別途個別に確認が必要です。

「年収の壁」問題と対策を知りたい方は、こちらの資料で解説していますので参考にしてください。

社会保険料の計算は給与ソフトで効率化を

パートやアルバイトとして働く人も、所定の条件を満たす場合は、社会保険への加入が必要です。会社は給与計算の際、社会保険に加入した従業員について、それぞれ社会保険料を計算する必要があり、担当者には多くの複雑な作業が発生することになります。

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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

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