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社会保険料控除とは?計算方法や算出時の注意点を分かりやすく解説

監修者:下川めぐみ(社会保険労務士)

2024/03/18更新

企業で年末調整を行う担当者は、社会保険料とその控除に関する正しい知識を身につけておかなければなりません。この記事では、年末調整作業で必須の知識である社会保険料控除の種類、社会保険料に関する計算方法や控除における注意点などについて、分かりやすく解説します。

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社会保険料控除とは

社会保険は、定められた保険料を納めることで、病気やケガ、労働災害の発生時や退職後などに医療費や生活費を補助する制度です。主に健康保険、厚生年金保険、介護保険の3種類を指し、広義では労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険も含まれます。

社会保険料控除とは、これらの保険料を支払った際に受けられる所得控除です。この控除は本人の分だけでなく、配偶者や扶養者の社会保険料を負担した場合にも適用できます。従業員本人の社会保険料については会社側で把握できます。しかし、従業員が支払った配偶者や扶養者の分については、年末調整の際に会社が支払額を調査し、控除を適用する必要があります。年末調整を行った結果、源泉徴収した金額が納税すべき金額を上回った場合には、差額を還付金として会社が給与とともに振り込むことが多いです。

控除可能な金額に上限がない

社会保険料控除については上限額の定めがありません。したがって、年末の時点で支払い済みの社会保険料はすべて所得から控除できます。さらに、過去に滞納していた社会保険料をまとめて支払った場合には、支払った年の所得から全額を控除します。次年度以降分の国民年金保険料を前納した場合については、支払った年に全額を控除する方法と、各年に分けて控除する方法のいずれかを選択できます。

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社会保険料を計算する前に知っておきたい標準報酬月額

個々の従業員の社会保険料を算出するには、算定基準となる標準報酬月額を把握しなければなりません。標準報酬月額とは、社会保険料の計算が複雑にならないように、1か月分の報酬を一定額ごとに等級で分けたものを指します。

報酬月額の対象には、基本給、通勤手当や残業手当のほか各種手当、賞与(年4回以上支給される場合)、現物支給された労働の対価などが含まれます。通常の場合、毎年4~6月分に支払われたこれらの報酬を合計して3で割り算し、その金額を保険料額表の等級区分に照らし合わせることで導出します。標準報酬月額の等級設定は保険ごとに異なり、健康保険は全50等級、厚生年金保険は全32等級に分けられています。

控除が適用される社会保険料の種類と計算方法

厚生年金保険料

厚生年金保険とは、企業などに雇用された従業員や公務員が加入する公的年金です。老後に受け取る老齢年金や重い障害を背負った場合に受け取れる障害年金、死亡した被保険者の遺族に支払われる遺族年金が含まれます。

厚生年金保険料は、会社と被保険者が折半して日本年金機構に納めます。所得控除の対象は従業員が負担した分のみであり、会社の負担分は対象外です。厚生年金保険料は、毎月の給与と賞与から計算します。標準報酬月額と標準賞与額(税引き前の賞与額から千円未満の端数を切り捨てた額、上限150万円)を厚生年金保険料率の18.3%で掛け算した金額が厚生年金保険料となり、それを2で割った額が従業員の負担分です。
参考:日本年金機構「厚生年金保険料額表新規タブで開く

国民年金保険料

国民年金保険は、日本に居住している満20歳から満60歳になるまでのすべての人が入らなければならない公的年金です。

厚生年金保険の加入資格がなく、国民年金保険にしか加入できない個人事業主などの場合には、確定申告を行って、支払った国民年金保険料を税務署に申告することで、全額所得控除を受けられます。また、その年の途中で入社してそれまで国民年金保険料を支払っていた人や、配偶者や扶養者の国民年金保険料を支払った従業員は、年末調整の際に所得から控除できます。

国民年金保険料は全加入者で一律です。物価などを反映して毎年見直されており、2023年度の場合は月額16,520円が設定されています。
参考:日本年金機構「国民年金保険料新規タブで開く

国民年金基金

国民年金基金は、厚生年金保険に加入できない個人事業主などが、国民年金に上乗せして掛けられる任意加入型の公的個人年金です。自営業者の家族や学生などを含む、国民年金を直接納めている第1号被保険者と60歳以上の国民年金に任意加入している人のうち、65歳未満で国民年金保険料を免除されていなければ、国民年金基金に加入できます。

ただし、会社員をはじめ、農業者年金の加入者は国民年金基金制度の対象外です。毎月の掛け金は加入時の年齢と性別に応じて決まり、7種類の給付型と加入口数ごとに設定されています。掛け金の月額上限である68,000円の範囲内で、給付型と加入口数を自由に選べます。

国民年金基金の掛け金は全額社会保険料控除の対象です。配偶者や扶養者のために国民年金基金の掛け金を負担しているような場合には、年末調整で控除できます。
参考:国民年金基金「掛金について新規タブで開く

健康保険料

健康保険には、会社員などが加入する社会保険の健康保険と個人事業主などが加入する国民健康保険の2種類があります。健康保険には運営主体が2種類あり、ひとつは企業が組合を作って自主運営する健康保険組合で、もうひとつは健康保険組合を作れない企業が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)です。

健康保険料は前述の標準報酬月額に健康保険料率を掛け算して求めます。健康保険料率は、健康保険組合が存在する会社は独自に設定され、協会けんぽに加盟している会社の場合は、都道府県ごとに定められています。運営主体にかかわらず、健康保険料は会社と従業員が折半するので、従業員の負担額は健康保険料を2で割った金額です。

なお、配偶者や扶養者の国民健康保険料を支払っている場合には年末調整の際に控除されるので、対象の従業員には忘れずに申告してもらわなければなりません。

介護保険料

介護保険は、介護サービスにかかる費用負担を抑えられるよう、40歳になったら加入しなければならない社会保険です。40歳以降は、健康保険料に介護保険料が含まれる形で徴収されます。

介護保険料は、会社員の場合は標準報酬月額×介護保険料率と、標準賞与額(税引き前の賞与額から千円未満の端数を切り捨てた額)×介護保険料率で計算できます。介護保険料率は健康保険組合によって異なります。協会けんぽの場合、2023年3月以降の介護保険料率は一律1.82%です。運営主体にかかわらず、会社が介護保険料を半分負担するため、介護保険料を2で割れば従業員の負担額が計算できます。

なお、介護保険の対象となる配偶者や扶養者の国民健康保険料を負担している場合、前述のように介護保険料は健康保険料に含まれているので、年末調整の際には健康保険料の申告のみで事足ります。
参考:全国健康保険協会「協会けんぽの介護保険料率について新規タブで開く

労働保険料

労働保険とは、会社員が加入する労災保険と雇用保険の2つを指します。業務中や通勤中に災害や事故で、病気・ケガ・障害・死亡した場合に、従業員とその家族が暮らしていけるよう保障するのが労災保険です。一方、雇用保険は従業員の雇用や暮らしを安定させるための保険で、失業したり、教育訓練を受けたりした場合に給付金が得られます。

労災保険については会社側の全額負担となりますが、雇用保険については会社と従業員の両者が異なる割合で負担します。それぞれ、会社の事業内容によって保険料率が異なります。労災保険で会社が負担する保険料は、例えば林業なら1,000分の60、食料品製造業なら1,000分の6の保険料率を賃金総額に掛けることで計算可能です。

会社から雇用されていない企業の役員や個人事業主の場合は、原則として労災保険に加入できませんが、特別加入が認められて労災保険料を自己負担している場合には、確定申告で控除が受けられます。
参考:厚生労働省「労災保険率表新規タブで開く

雇用保険料は、賃金総額に雇用保険料率を掛けることで計算できます。2023年度の雇用保険料率は以下のとおりです。従業員の負担分については、控除を適用できます。

事業の種類 従業員負担 会社負担
一般の事業 6/1,000 9.5/1,000
農林水産・清酒製造 7/1,000 10.5/1,000
建設の事業 11.5/1,000

社会保険料の計算や控除における注意点

社会保険料を計算した際の端数の扱いに注意する

会社が行う社会保険料の計算で、1円に満たない端数が出た時の扱いは、切り捨てと切り上げの基準を理解しておくことが重要です。

まず、会社が日本年金機構などの保険者へ納入する社会保険料は、従業員および会社の負担分をすべて合算したうえで、1円未満の端数を切り捨てて計算します。これに対し、個々の従業員の負担分および控除額については、社会保険料を徴収する方法によって端数処理が変化します。従業員の給与または賞与から天引きする場合には、従業員負担分の端数は50銭以下を切り捨て、50銭を超えたら切り上げます。社会保険料を従業員が現金で支払う場合には、従業員負担分の端数は50銭未満を切り捨て、50銭以上は切り上げを適用します。会社の負担分については、保険者へ納入する社会保険料から、端数処理を行った従業員負担分の合計を引いた額となります。

納入額と従業員負担分では異なる端数処理を行うため、会社と従業員で折半する保険料でも、実際には両者の負担額が一致しないことがあります。
参考:日本年金機構「保険料の計算方法について新規タブで開く

最新の保険料を確認する

保険料は、社会保険ごとに定期的な見直しが行われています。保険料率は一律に定められているケースがありますが、都道府県や業種ごとに異なるものもあります。年度初めなど、改定が適用される時期は、計算作業に入る前に最新情報を確認しましょう。

4~6月の残業によって社会保険料が変わる

毎月の社会保険料は、標準報酬月額が高いほど、負担額も大きくなります。この標準報酬月額は、基本的に年に1度の定時決定で、4~6月の報酬額から算出します。この際、計算に用いる報酬額には残業手当も含まれます。そのため、この3か月間の残業が多いと、その後の1年間に支払わなければならない社会保険料が増える可能性があります。

賞与からも社会保険料が控除される

従業員に支払われる賞与は、所得税が源泉徴収されますが、この時税引き前の賞与額から社会保険料を控除したうえで、源泉徴収の税額を計算する必要があります。2003年以降、会社間の社会保険料負担が不公平にならないように、賞与も社会保険料控除の対象に加えられました。

なお、賞与が社会保険料の対象となるのは、1年間に3回以下の頻度で支給される場合です。年4回以上の場合には、手当の一部として標準報酬月額に加えられます。賞与に課せられる社会保険料は、税引き前の賞与額から千円未満を切り捨てた標準賞与額を支給する月ごとに決定し、これを基準として計算します。厚生年金保険については、標準賞与額に150万円の上限が設けられており、超えた場合には150万円が標準賞与額となります。なお、健康保険については、年度(4月1日から翌年3月31日)の上限として累計額573万円が設けられています。

年末調整の修正・訂正対応について周知しておく

年末調整の書類を修正・訂正する場合、社内で対応できるのは源泉徴収票の発行前かつ翌年1月末までに限られます。源泉所得税の納付期限が1月10日なので、源泉徴収票の発行が1月末より前となることもあります。

従業員が後で不備に気づいて訂正を申し出ても、この時期を過ぎると社内での修正・訂正はできません。この場合、従業員自らが確定申告を行って、不足分の税金を納めるか、過払い分の還付金を受け取る手続きをする必要があります。したがって、年末調整の際には、書類の提出期限および修正・訂正の期限を、源泉徴収票を発行するより前の時期に設定して周知しましょう。さらに、申告漏れや間違いがあった場合には確定申告で自ら対応しなければならない旨を注意喚起しておくことが大切です。

年末調整のミスを防ぐ体制を整える

年末調整の不備に気づかず、それが税務署に発覚した場合には、延滞税や加算税の対象となる可能性があります。年末調整に不可欠な書類の提出忘れや申告漏れを未然に防ぐためには、普段から年末調整についての理解を従業員全体に広げて深めておくことが重要です。年末調整に備えて、ダブルチェックやトリプルチェックができるように体制を整えておくと、人的ミスの防止につながります。また、年末調整のミスを防止し、作業効率の改善にもつながる年末調整用のシステムを導入するといっそう効果的です。

社会保険料の計算には専用ツールの導入がおすすめ

社会保険料は従業員ごとに異なるため、一人ずつ正しく保険料を計算しなければなりません。社会保険料控除によって従業員の所得税負担を軽くできるものの、控除額の計算は複雑です。確定申告や年末調整で不備が見つかると、延滞税や加算税を課せられる恐れがあります。

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この記事の監修者下川めぐみ(社会保険労務士)

社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ所属社労士。
医療機関、年金事務所等での勤務の後、現職にて、社会保険労務士業務に従事。

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