シフト管理とは?手順や成功のポイント、おすすめツールを解説
監修者:下川めぐみ(社会保険労務士)
2024/08/09更新
シフト管理とは、シフト勤務の従業員の休日や勤務時間、休憩時間などを決めて、勤務状況を管理する業務です。従業員の人数や配置の決定は業務の円滑な遂行に影響するため、担当者は適切に管理しなければなりません。
本記事では、シフト管理業務の担当者が効率的に業務を行うために役立つ情報をまとめています。シフト管理の目的から、よくある問題、シフト作成の基本的な手順や効率化のポイント、シフト管理におすすめのツールまで解説します。
シフト管理とは
シフト管理とは、シフト制の従業員の勤務時間や各時間帯に配置する人員の組み合わせなどを考えながら勤務体制を管理する仕事のことです。
勤務時間が固定制ではなく、複数の時間帯に分かれている場合には、業務上必要となる人員や個別の希望を考慮して各従業員のシフトを決定します。業務の効率化や売上・利益の向上などにつながる重要な業務のため、店長やマネージャーといった、主に現場の責任者が担当します。
シフト管理の目的
シフト管理は、業務効率や生産性を高めて、売上や利益を向上させる目的で行う業務です。従業員の出勤・退勤・休暇などを適切に管理していると、業務に応じた人員を配置できます。忙しい時間帯に合わせて十分な人員を配置できると、質の高いサービスを提供でき、売上の向上にもつながります。反対に、業務量が少ない時間帯では過剰な人員の配置を防ぐことで、人件費を削減し無駄なコストを減らすメリットも期待できます。
シフト管理を適切に行わないと、業務量に対して人員が不足し、従業員の負担が増加するため業務が滞るケースがあります。作業効率の低下による生産量の減少や機会損失による売上減少といった影響が出やすい点にも注意が必要です。適切なシフト管理によって、従業員の負担軽減や企業の利益向上が期待できます。
シフト管理におけるよくある問題
シフト管理を行っていても、さまざまな問題から適切に管理できていないケースがあります。シフト管理の目的を達成するためには、以下のような問題を解消しなければなりません。
- シフト管理表の作成がうまくできない
- 従業員の配置・組み合わせがうまくできない
- シフトを正確に伝達できていない
- 急な欠勤などに対応できない
- 就業規則や法令を遵守できているのか分からない
シフト管理表の作成がうまくできない
手書きやエクセルを使用してシフト管理表を作成する場合、表のフォーマットから作る必要があるため、時間や手間がかかります。作成前には、従業員全員から勤務の希望を集めておき、それぞれの希望を考慮して休日や勤務時間を決める必要があります。また、曜日や時間の傾向やデータから忙しい時間帯を判断し、業務の必要性に応じて勤務時間を調整しなければなりません。希望や必要性などすべての条件に合わせて調整しなければならない複雑さがあり、難しい作業です。
表を完成させた後にも、従業員からの申し出や問題点が見つかったなどの理由で変更が必要になり、修正や作り直しをする場合があります。これは、紙の表やエクセルの表どちらの場合でも作成者にとって大きな負担です。他の業務もあり、時間がない中の作業でうまく作成できなくなるケースがあります。
従業員の配置・組み合わせがうまくできない
シフト管理表は、各従業員の希望と業務内容、業務量などさまざまな条件を考慮して作る必要があります。曜日や時間帯が異なると業務内容が変わる場合があるため、必要な業務に対応できる人員を配置しなければなりません。また、勤務日数や夜勤などの回数に偏りがある場合や、忙しい曜日にばかり出勤している人がいる場合には、一部の従業員が不満を感じている可能性があります。
従業員の能力を考慮せずに、ただ勤務日数や時間、希望などからシフトを作成している場合、配置人員のバランスが偏ってマンパワーが不足する日もあります。例えば、同じ人数でも新人ばかりを配置すると全体の能力が不足してしまい、業務がスムーズに行えなくなるため注意が必要です。各従業員のスキルや曜日・時間帯などのバランスに注意しつつ、公平さを保ちながら作成するのは難しい作業です。
シフトを正確に伝達できていない
完成したシフトを従業員に伝達する際に、表を印刷して職場に貼り出す方法を用いるケースが多く見られます。しかし、職場に貼り出すだけでは出勤した人しか確認できず、責任者は全員がシフトを確認したかどうかを把握できません。
また、シフト管理表の文字が細かすぎてはっきり見えにくい状態では、従業員が勤務日や勤務時間を間違えて出勤してしまいトラブルが発生するケースもあります。貼り出す場合には、見やすい大きさで作成・印刷することが大切です。
貼り出す方法以外にも、SNSやメッセージツールを使用して共有するといった、全員が無理なく確実に確認できる方法を検討する必要もあります。
急な欠勤などに対応できない
シフト管理表を一度作成して全員に共有した後に、病気や急用などの理由で従業員の予定が急に変わることも少なくありません。欠員が出た場合、代わりに勤務できる人を探すのが大変で、人員の調整に多くの時間がかかることがあります。
不足した人員を円滑に補充するためには、従業員と連絡を取りやすい状態にしておかなければなりません。欠員が生じた場合に備えて、人員が不足した日を従業員全体に知らせる仕組みを作ることも必要です。
就業規則や法令を遵守できているのか分からない
シフト管理表は、業務の都合や従業員の希望を反映するだけでなく、就業規則や法令で定められているルールにそって作成しなければなりません。手書きやエクセルで作成している場合には、作成者が自分でルールを確認するためチェックに時間がかかります。規則が守られていないまま作成してしまうミスにも注意が必要です。
シフト管理表が就業規則や法令に違反していると後から気づいた場合、問題のあった部分を修正しなければなりません。法定労働時間を超えた勤務時間を設定した、18歳未満の従業員を深夜時間帯に配置したなど、労働基準法に違反した内容に気づかず勤務させてしまうと、従業員とのトラブルが発生したり労働基準監督署の是正勧告を受け罰則を科せられたりする恐れがあります。
シフト管理を的確かつ効率的に行うメリット
シフト管理を的確・効率的に行うと、シフトの質が高まり、以下のようなさまざまなメリットを得られます。
- 業務効率の改善につながる
- コスト削減につながる
- 現場従業員の働きやすさ・満足度があがる
- 従業員の教育にもつながる
業務効率の改善につながる
シフト管理を的確に行うと、従業員の能力に応じた配置を実現できます。業務内容に応じて必要なスキルや経験のある従業員をバランス良く配置できると、業務負荷を分散できるため業務の効率化が可能です。業務効率の向上によって、スムーズに質の高いサービスが提供できることから、店舗や企業の売上アップにもつながります。リソースに余裕が生まれ、他の業務やサービスに注力しやすくなるのもメリットです。
コスト削減につながる
忙しい曜日や時期を把握して過不足なく従業員のシフトを作成すると、無駄のない人員の配置が可能です。適正な人員配置を行うことで、結果的に、人件費の削減や利益の増加につながります。
人員不足を避けるために余裕のある人数を配置していると、従業員の業務負担が抑えられる反面、常に余剰人員分の人件費がかかります。しかし、従業員の属性や能力、売上実績などのデータを用いることで必要な人員を予測でき、コストの削減が可能です。
現場従業員の働きやすさ・満足度があがる
シフト管理が的確に行われていると、従業員の希望が考慮され、業務負担の偏りがないバランスの良いシフトの作成が可能です。適正な配置で1人当たりの業務量にムリ・ムダがなく、公平で働きやすい環境を提供できることから、従業員はストレスなくスムーズに業務を行えます。
効率的かつ合理的に働けると、その働きやすさから従業員の仕事に対する満足度やモチベーションも向上します。希望の日に休みを取得できるためワークライフバランスの改善にもつながります。
従業員の教育にもつながる
的確なシフト管理によって、業務時間中の新人教育の実施も可能です。新人教育は、能力のある従業員を教育係にし、業務中に教育係が新人に仕事を教える方法で効率的に行えます。
新人教育を考えている場合には、教育係と新人を同じシフトに入れるだけでなく、忙しい日や時間帯を避けることも大切です。忙しい時間帯では、まだ仕事を覚えていない新人に教育する時間が取れず、無理に教えようとすれば教育係の負担が増加します。職場全体の業務も円滑に進みにくくなるはずです。
過去の売上実績やシフト状況を活用して的確にシフトを作成すれば、余裕のある時間帯に教育係や新人を配置して無理なく新人教育を行えます。
シフト管理の基本的な手順
シフト管理を行う場合、従業員に希望日を確認する前に作業計画を立てて必要なMH(マンアワー)管理を行います。そのうえでシフトの割り当てをし、最終的に微調整を行うと、スムーズに作成が可能です。手順の流れは以下のとおりです。
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1.作業計画を立てる
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2.必要なMH(マンアワー)管理を行う
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3.シフト希望日を従業員から聞く
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4.シフトや業務を割り当てる
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5.確認や微調整を行う
1. 作業計画を立てる
最初の手順は作業計画を立てることです。まずはどんな作業があるのかを把握するために、作業の洗い出しを行います。
例えば受付や品出し、掃除などその職場で必要な作業をあげましょう。洗い出した作業は、いつ(曜日や時間帯)、どの程度のサイクルで(毎日、毎週、毎月など)、何人で行うのかも明確にします。シフト希望の提出締切日やシフトの決定日なども決めましょう。作業計画はMH管理や業務の割り当てなどの基礎となる重要な作業です。
2. 必要なMH(マンアワー)管理を行う
MH(マンアワー)とは、シフト期間において、作業を行う際に必要な従業員の勤務時間のことです。MHは「作業人数×時間」で算出します。例えば、ある作業を1日で完了させるために3人がそれぞれ5時間働く必要がある場合は「3人×5時間=15時間」が必要なMHです。作業計画をもとに、作業ごとのMHを加算していくと、1日に必要なMHを算出できます。必要MHを算出することで、その日や週に必要な人員を把握可能です。
なお、MHには売上予算を用いる計算方法もあります。この方法では年間もしくは月間の必要MHの算出が可能です。「売上予算÷1人当たりの1時間の売上高」の計算式で、長期間の必要MHを算出します。
上の方法によって算出した必要MHと、実際に投入できた人数と勤務時間(投入MH)から過不足を算出します。これによって日や週、時間帯別などのムリ・ムダ・ムラを把握し、適切に人員を配置するのがMH管理です。
3. シフト希望日を従業員から聞く
次の手順は、シフト希望日の確認です。従業員全員の希望日を確認しながら、余裕のある内容でスケジュールを立てていきます。従業員への希望日確認は、早めに呼びかけておくことが大切です。締切前や締切後にもこまめに未提出の従業員に声をかけて、希望日を取りまとめます。
従業員の希望に「出勤できない日」が多すぎると公平なシフトを組めなくなるため、希望日は「絶対に出勤できない日」以外を教えてもらいます。従業員がシフトに入っていない日でも出勤可能な日を把握できていると、急にスケジュールが変わっても代わりの人を探しやすいため、早めの対応が可能です。
4. シフトや業務を割り当てる
このステップでは、従業員のシフト希望日、必要な従業員数などを考慮してシフトや業務の割り当てを行います。忙しい日や時間帯には、十分な人員の配置が必要です。単純に人数を合わせるだけでなく従業員の能力にも注意しながら、人員不足や人件費の無駄が生じない人員配置を行います。
シフト作成時には、人間関係も考慮しないと業務が円滑に進まない場合もあるため注意が必要です。また、新人の勤務は忙しい時間帯を避けて、新人教育ができる従業員とシフトを合わせるようにしましょう。
シフトを作成した後には、従業員の労働時間や休憩時間が適切かどうかなど法令・ルール面も確認し、必要に応じて調整を行います。
5. 確認や微調整を行う
シフト管理表が完成したら、従業員にシフトを確認してもらいます。人員に過不足が生じていないか、無理なシフトが組まれていないか確認してもらい、問題がある部分を微調整します。修正が必要な箇所や、従業員の急なスケジュール変更などが生じた箇所には、他の従業員にも確認してシフトを変更し、調整を行わなければなりません。
最終的には、実際にシフトに入った従業員の仕事の状況を確認して、次のシフト作成に役立てます。
シフト管理を成功させるポイント
シフト管理を効率的に行うためには、以下のポイントを押さえてシフト表を作成することが大切です。
- 希望シフトの提出にはルールを決める
- シフト表のフォーマットを決めておく
- 早期にシフト表を完成させて従業員に伝える
希望シフトの提出にはルールを決める
従業員に希望シフトを出してもらう際には共通のルールを設けましょう。「休みの希望日は毎月3日まで」「出勤できない日は月6日まで」などのルールを設けていると、希望シフトの範囲が絞られる心配がなくなり、スムーズにシフトを組めます。
希望シフトの提出ルールを決めていないと、従業員全員が思い思いの希望シフトを伝えてくるため、シフトの作成難易度があがります。細かい希望がない一部の従業員ばかりに業務負担がかかりすぎ、公平なシフトが作成できないため従業員が不満を抱えるリスクがあります。ルールの設定によってシフトに公平性が生じると共に業務負担の偏りをなくし、業務の効率化が実現します。
シフト表のフォーマットを決めておく
あらかじめシフト表のフォーマットを作成しておくと、毎回フォーマット作成からする必要がなくなり、シフト管理業務の効率化が可能です。
日付、勤務区分(早番、遅番など)、時間など、シフト表に記載する項目は使用する会社・店舗によって異なるため、シフト管理では自社に合ったフォーマットを使用しましょう。一度自社用のフォーマットを作成しておくと、次回からのシフト管理業務をスムーズに行えます。
早期にシフト表を完成させて従業員に伝える
完成したシフト表はできるだけ早く従業員へ示しましょう。早期にスケジュールを知ることで、従業員が仕事とプライベートの両立も可能になり、満足度がアップします。シフト表の作成時間を削減してシフト表を効率よく完成できると、作成者が他の業務に時間をかけられるメリットもあります。
完成が遅くなった場合、シフトを確認するまでは自分の予定を入れられないことから、従業員のストレスにつながります。シフト表を完成させてから職場に貼り出して発表している場合には、自分の勤務日まで次のシフトが分からない従業員もいるため、さらに確認が遅くなる点も問題です。
シフト管理に活用できるおすすめツール
手書きでシフト表を作成していると完成までに時間がかかりやすく、従業員の不満につながると共に作成者の負担も増加します。そこでシフト管理には以下のようなツールの活用がおすすめです。
- エクセル(Excel)
- チャットツール
- シフト管理システム
エクセル(Excel)
表計算ツールのエクセルを活用してシフト管理を行うと、比較的効率的に作業を行えます。エクセルでは関数を使用して自動計算できることから、手計算が必要な紙のシフト表で管理するよりも、正確に勤務時間の合計を算出できます。作成者に関数の知識があると、自社の勤怠管理に役立つ、使いやすいフォーマットも作れます。
オンラインで利用できるスプレッドシートを使用する場合には、作成者と従業員がリアルタイムで入力箇所を編集でき、いつでも情報を共有できるメリットもあります。
なお、Web上には、エクセルで作られたシフト表のさまざまなテンプレートも公開されています。無料でダウンロードできるものも多いので、自社で使用する形式に近いフォーマットがある場合には活用しましょう。
チャットツール
チャットツールを活用した場合、気軽にコミュニケーションを取りながらシフト表の作成が可能です。ツール内でメッセージをやり取りして希望日や提出日などを確認でき、完成したシフト表の共有まで行えます。スムーズに情報を伝えられる反面、情報漏えいのリスクがあるため、共有する文章の内容やファイルの貼付時には注意が必要です。
シフト管理システム
シフト管理システムを使う場合は、エクセルとは異なり、関数や表作成の知識が不要です。導入したシステム内のフォーマットを使用できるため、フォーマットを一から作る手間もかかりません。シフト管理の一部の工程を自動化できる機能があるため、業務の効率化が可能です。
スマートフォンアプリを利用できるシフト管理システムなら、手軽にシフトを共有できるメリットがあります。製品によっては、希望の収集やリマインド、シフト表への転記、給与計算や他のシステムとの連携なども可能です。幅広い業務を自動化できることから、作成者の業務負担を大幅に削減し、業務時間の短縮につながります。
シフト管理を効率化して業務効率化や売上アップにつなげよう
シフト管理は、シフト勤務の従業員の出勤日や休暇、勤務時間を決定、管理する業務です。適切に行うことで、業務の効率化や従業員の満足度向上、コスト削減、利益向上などにつながります。従業員の希望を反映させ、的確なシフト管理を行うには手間や時間がかかるため、使いやすいシフト管理システムの導入がおすすめです。
弥生のクラウド給与サービス「弥生給与 Next」「やよいの給与明細 Next」は、シフト管理が可能な他社の勤怠管理システムとの連携が可能です。勤怠管理システムから勤怠データを取り込んで勤怠情報を入力する手間を削減できるため、給与計算の効率化が実現します。業務効率化にぜひお役立てください。
- ※本記事は2024年5月時点の情報をもとに執筆しています。
この記事の監修者下川めぐみ(社会保険労務士)
社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ所属社労士。
医療機関、年金事務所等での勤務の後、現職にて、社会保険労務士業務に従事。