所得税計算の方法とは?税率や控除について詳しく解説
監修者:税理士法人古田土会計 社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
2024/06/03更新
個人が一定額以上の所得を得ると、所得税がかかります。所得税の金額は、基本的にはベースとなる課税所得に所定の税率を掛けて計算します。ただし、所得税の税率は所得額によって変わるうえ、所得控除や税額控除といった制度もあり、計算は複雑になりがちです。
会社員などの給与所得者は、会社が給与から所得税を天引きして、本人に代わって納めるしくみになっています。そのため、企業の給与計算担当者は、所得税の計算方法について正しく理解しておくことが大切です。
本記事では、会社員やパート、アルバイトといった給与所得者の所得税を中心に、税率や計算方法のほか、所得税計算の際に適用される控除などについて解説します。
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所得税とは所得にかかる税金のこと
所得税とは、個人の所得にかかる税金です。1月1日~12月31日の1年間の所得が一定額を超えた人は、所得税を納める必要があります。まずは、所得税がどのような税なのか、詳しく見ていきましょう。
源泉所得税と所得税の違い
源泉所得税は、会社員などの給与所得者の給与から源泉徴収(天引き)して納める所得税のことです。
会社員やパート、アルバイトなど、勤務先から給与を受け取っている人を給与所得者といい、その所得税は給与などの支払者、つまり会社が給与支払額からあらかじめ徴収し、本人に代わって国に納付します。
このように、給与などから天引きして納める所得税を、源泉所得税といいます。源泉徴収した所得税は、1年間の給与額が確定した年末に会社が改めて正しい納税額を計算し、年末調整によって過不足を精算するしくみです。
その一方、個人事業主の場合は、納めるべき所得税額を計算し、年に一度の確定申告によって自分で所得税を納めます。源泉所得税に対して、このように自ら申告・納税する所得税を申告所得税と呼びます。
所得税の税率は7段階に区分されている
所得税は、所得が多いほど税率が高くなる「累進課税制度」が適用されています。そのため、所得税の計算は課税所得金額を7段階に区分し、各段階に応じて5~45%の税率が設定されています。課税される所得金額(1,000円未満の端数は切り捨て)ごとの税率は、国税庁「No.2260 所得税の税率」で確認できます。
なお、所得税の計算のベースになる課税所得は、給与の額面金額ではないので注意しましょう。給与所得者の場合は、1年間の給与収入から、収入金額ごとに定められた給与所得控除などの非課税手当を差し引き、さらに所得控除を引いた金額が課税所得となります。具体的な所得税額の計算方法については、後ほど解説します。
2037年までは復興特別所得税も納付する
2037年までは通常の所得税に加えて、東日本大震災の復興に必要な財源を確保するために設けられた「復興特別所得税」の納付が必要です。
復興特別所得税額は、年間の所得税に2.1%を掛けた金額で、所得税を納めるすべての人が対象となります。復興特別所得税は所得税額に対する付加税であり、所得税と併せて納付します。
給与所得者の所得税を計算する方法
続いては、会社員やアルバイト、パートといった給与所得者の所得税額を計算する方法を紹介します。所得税の計算は、5つのステップで行います。
1. 年間の「収入合計額」を計算する
まずは、年間の収入合計額を計算します。給与所得者の年間の収入合計額とは、1月1日~12月31日に勤務先から支給された給与・賞与収入の合計額です。基本給のほか、残業手当や休日出勤手当、資格手当、家族手当、住宅手当などの各種手当も含みます。ただし、一定額までの通勤交通費など、非課税となる手当は除外しましょう。
なお、個人事業主の場合は、1月1日~12月31日の売上総額が、年間収入合計額に該当します。
2. 収入合計額から経費を引き、「所得」を算出する
計算した収入合計額から経費を差し引き、1年間の所得を求めます。ここで改めて、「収入」と「所得」の違いを確認しておきましょう。収入とは、給与所得者なら給与や賞与の支給額、個人事業主なら売上総額を指します。収入から必要経費を差し引いた金額が所得です。
個人事業主は売上収入から経費や仕入にかかった金額を差し引きますが、給与所得者は必要経費相当額として、収入金額に応じた「所得金額調整控除の適用がある場合は、その金額を含めた金額」が定められているため、収入合計額から下記の給与所得控除を差し引いた金額が、1年間の所得となります。
給与所得控除の額は、国税庁「No.1410 給与所得控除」で確認できます。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 |
---|---|
162万5,000円まで | 55万円 |
162万5,001円~180万円まで | 収入金額×40%-10万円 |
180万1円~360万円まで | 収入金額×30%+8万円 |
360万1円~660万円まで | 収入金額×20%+44万円 |
660万1円~850万円まで | 収入金額×10%+110万円 |
850万1円以上 | 195万円(上限) |
- ※国税庁「No.1410 給与所得控除」
3. 所得から所得控除額を引き、「課税所得」を算出する
所得税の計算にあたっては、計算した所得からさらに一定額を差し引ける「所得控除」という制度があります。所得から所得控除を差し引いた金額が、所得税が課税される課税所得です。
所得控除には、配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除、医療費控除、生命保険料控除など、全部で15種類あり、控除ごとに差し引ける金額の計算方法が決められています。
また、所得控除にはそれぞれ適用要件がありますが、要件に該当しても自動的に適用されるわけではなく、年末調整や確定申告で申告必要なので注意しましょう。所得控除の種類と概要については、国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」で確認できます。
4. 課税所得に所得税の税率を掛けて「所得税額」を算出する
算出した課税所得に所定の税率を掛けて、所得税額を計算します。所得税の税率は、課税所得の額に応じて、5~45%まで7段階に区分されています。具体的な税率と控除額については、国税庁「No.2260 所得税の税率」を確認してください。なお、2037年までは、所得税の金額に、所得税額×2.1%の復興特別所得税が加算されるので注意しましょう。
例えば、課税所得が300万円とすると、所得税の税率は10%で、控除額が9万7,500円です。この場合、所得税及び復興特別所得税は、次のように計算されます。
所得税及び復興特別所得税の計算式
- 所得税:課税所得300万円×10%-9万7,500円=20万2,500円
- 復興特別所得税:所得税20万2,500円×2.1%=4,252円
- 所得税及び復興特別所得税:20万2,500円+4,252円=20万6,752円
5. 求めた所得税額から税額控除額を引いて「所得税の年額」を算出する
所得税には、所得税額から一定の金額を差し引ける「税額控除」という制度もあります。前述した所得控除が所得額から差し引く金額であるのに対して、税額控除は所得税額から直接差し引きます。どちらも所得税額を軽減させる制度ですが、控除のタイミングが違うので、混同しないように注意しましょう。
税額控除には、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)や配当控除など、さまざまな種類があります。税額控除の種類や適用要件などは、国税庁「No.1200 税額控除」で確認が可能です。こうして所得税額から税額控除を差し引いた金額が、所得税の年額になります。
収入がいくらになったら所得税を徴収される?
所得税には、これまで紹介してきたような、さまざまな控除があります。収入があったとしても、これらの控除を適用すれば、所得税が徴収されないケースもあります。
では、収入がいくらになると、所得税が徴収されるのでしょうか。給与所得者と個人事業主のケース別に見ていきましょう。
基本的に給与所得者は年収103万円を超えれば所得税が徴収される
給与所得者の場合は、基本的に、年収103万円を超えると所得税が徴収されます。年収103万円以下なら、給与所得控除と基礎控除を適用すれば課税所得がゼロになるので、所得税は徴収されません。
なお、給与所得者の年間収入が162万5,000円までであれば、給与所得控除の金額は55万円です。また、合計所得金額が2,400万円以下なら、48万円の基礎控除が適用されます。そのため、55万円と48万円の合計額、つまり103万円までは所得税が徴収されないということになります。
個人事業主なら年間所得が48万円を超えれば所得税がかかる
個人事業主の場合は、給与所得者とは違い、一概に「年収がいくらになったら所得税が徴収される」と判断することはできません。所得税計算のベースになる課税所得は「総収入(売上)-必要経費-所得控除」で算出しますが、必要経費がどれくらい発生するかは、業種や事業規模、設備投資の有無などによって大きく異なるからです。いくら総収入(売上)が大きくても、それ以上に経費がかかっていれば、所得税はかからないということになります。
個人事業主に所得税が徴収される目安となるのは、課税所得の金額が基礎控除の48万円を超えたときでしょう。売上から必要経費と所得控除(青色申告特別控除も含む)を引いた金額が48万円以下であれば、所得税はかかりません
パートやアルバイトは月収8万8,000円を超えると源泉徴収される
パートやアルバイトの給料も給与所得のため、年収が103万円を超えると所得税がかかります。
なお、パートやアルバイトで月収が8万8,000円以上になると、たとえ年収が103万円以下でも所得税の源泉徴収が必要です。その場合は、年末に勤務先で年末調整を行う、もしくは確定申告をすることで、納めすぎた所得税が還付されます。
所得税の申告と納付の方法
所得税の申告と納付の方法は、給与所得者と個人事業主で異なります。ここからは、給与所得者と個人事業主、それぞれの所得税の申告と納付方法について見ていきましょう。
給与所得者の場合
給与などから源泉徴収されている給与所得者は、勤務先で年末調整を受けることによって、基本的には所得税の申告と納付が完了します。年末調整とは、1月1日~12月31日の1年間に支給された給与を基に給与所得者の所得税額を確定させ、過不足金額を調整することです。それまで概算で納めた源泉所得税と、年末に確定した正しい所得税額を比較し、納めすぎていた場合は還付が、不足していた場合は追加徴収が行われます。
なお、給与所得者のうち、以下のような人は、自分で確定申告をして所得税を納める必要があります。
自分で確定申告をする必要がある給与所得者
- 給与収入が2,000万円を超える人
- 副業、兼業などを行っており、給与所得以外の収入を申告する必要がある人
- 医療費控除や寄附金控除を受けたい人(ふるさと納税のワンストップ特例を利用する人を除く)
- 住宅ローン控除を受けたい人(初年度)
特に副業、兼業などを行っており、給与所得以外の収入を申告する必要がある人は、注意しましょう。例えば、会社員がフリーランスとして副業をしていたり、FXや株の配当、譲渡などで収入があったりする場合は、本業以外の給与収入以外の所得(収入-必要経費)が20万円を超えたら確定申告が必要です。
個人事業主の場合
個人事業主は、1年間の収支をまとめて所得税の納税額を計算し、確定申告を行う必要があります。確定申告では、毎年1月1日~12月31日の所得などの状況を、原則として翌年2月16日~3月15日(初日や最終日が土日祝日の場合は翌平日)に、納税地を所轄する税務署に申告します。
所得税を納付するには、金融機関や税務署窓口での現金納付のほか、口座振替、クレジットカード、e-Taxによる電子納税などの方法がありますが、口座振替(振替納税)を利用される方は、4月20日ごろ(年により異なる)に引き落とされますので注意しましょう。なお、報酬が源泉徴収の対象となる業種で、所得税を納めすぎている場合は、確定申告を行えば還付が受けられます。
所得税の計算は給与計算ソフトの活用が便利
所得税額を求めるには、収入や所得、所得控除などを正しく理解して計算しなければならず、手間がかかります。また、会社員をはじめとする給与所得者の場合、所得税は給与や賞与から源泉徴収され、年末調整で精算されます。
この場合、従業員の所得税を計算するのは勤務先の企業です。給与所得者の所得税は、本人に代わって勤務先が納めるルールになっているので、計算する際にはミスのないように十分注意が必要です。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
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