役職手当のメリット・デメリットは?相場額や残業代との関連を解説

2024/03/01更新

「役職手当は必要なのだろうか?」「役職手当の平均金額はいくらくらいだろう?」このような悩みをお持ちの経営者や財務担当の方は多くいらっしゃるでしょう。役職手当の支給は会社ごとに自由に設定できるため、具体的な金額のガイドラインはありません。本記事では役職手当の概要やメリット・デメリット、相場額について解説しています。また、役職手当の設定時に注意しておくべきポイントもまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。

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役職手当とは

役職手当とは、その人の役職に応じて支給される手当(お金)のことです。「管理職手当」「主任手当」などと呼ばれることもあり、会社ごとに好きな名称を設定できます。手当とは給与以外に支給する賃金の総称であり、ほかの種類では「残業手当」や「住宅手当」などがポピュラーです。役職手当を含む各種手当は基本給にプラスされることが原則であり、昇給(基本給が上がること)とは異なります。

役職手当のメリット

役職手当を導入する1番のメリットは、従業員のモチベーションアップにつながることです。「〇〇の役職になれば毎月1万円の手当を支給」といった明確な金額を提示することで、よりいっそうやる気が出る従業員もいます。金銭面だけではなく、貢献している従業員を良い待遇にすることで「日々の働きをきちんと評価している」と伝える手段のひとつにもなるでしょう。

また役職手当は、残業代が出ない管理職に対して別の形で報酬を支払う意味もあります。管理職(管理監督者)について詳しくは後述します。

役職手当のデメリット

役職手当をつけることに対して人件費の増加以外には大きなデメリットはありませんが、導入は慎重に行わなくてはなりません。なぜなら、どのくらいの金額に設定すればよいのか判断が難しいケースが多いからです。

たとえば「部長・課長・係長」と3つしか役職がない会社ならシンプルですが「リーダー・店長・主任」など、複数の地位があり上下があいまいな場合は金額の設定に困ることが多いでしょう。今後、役職を増やす可能性があるかどうか、どの程度の仕事量を任せているかなどによって、総合的に判断することが必要になります。

役職手当の相場

役職手当全体の平均額は約5万5,239円で、支給者の平均年齢は47.3歳です。それぞれの地位によって支給額が異なるため、以下に役職別の平均支給額をまとめました。

中小企業の「部長」の役職手当相場

東京産業労働局の調査による、部長クラスの役職手当の相場は以下のとおりです。

部長の役職手当の平均額 平均支給額 約8万7,470円
従業員数別 10~49人 約8万517円
50~99人 約7万5,040円
100~299人 約10万8,766円

参照:中小企業の賃金・退職金事情(2022年/令和4年版)新規タブで開く(同一役職の支給額が同じ場合)

部長の役職手当の相場は8万円前後で、100人以上の規模の企業だと10万円以上が平均値となっています。

中小企業の「課長」の役職手当相場

東京産業労働局の調査による、課長クラスの役職手当の相場は以下のとおりです。

課長の役職手当の平均額 平均支給額 約6万98円
従業員数別 10~49人 約5万507円
50~99人 約4万7,291円
100~299人 約7万9,188円

参照:中小企業の賃金・退職金事情(2022年/令和4年版)新規タブで開く(同一役職の支給額が同じ場合)

課長の役職手当の平均額は約6万円です。会社規模により平均額が異なり、従業員が10~49人の場合は約5万円、100人~299人の大企業になると約7万円が相場となっています。

中小企業の「係長」の役職手当相場

東京産業労働局の調査による、係長クラスの役職手当の相場は以下のとおりです。

係長の役職手当の平均額 平均支給額 約2万5,597円
従業員数別 10~49人 約2万2,659円
50~99人 約2万9,537円
100~299人 約2万5,663円

参照:中小企業の賃金・退職金事情(2022年/令和4年版)新規タブで開く(同一役職の支給額が同じ場合)

係長の役職手当の相場は約2万5千円で、会社規模による支給額の差はほかの役職に比べると少なくなっています。

管理監督者と役職手当の関係

「名ばかり管理職」という言葉をご存知でしょうか。実は管理職には「名ばかりの人」と「本当の管理職(管理監督者)」の2つのタイプが存在しているのが現状です。管理職と役職手当には深い関係があるので、それぞれの違いを把握しておきましょう。

管理監督者とは

管理監督者とは、労働基準法第41条第2号に定められる「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」のことです。管理監督者に該当するかどうかの判断基準について、厚生労働省は次のように説明しています。

「管理監督者」は労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けません。「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断します。

引用:厚生労働省資料新規タブで開く

管理監督者は、決められた時間に出勤したり休憩を取ったりする義務がなく、自己判断で労働してよいことになっています。もし従業員に管理監督者としての役職をつけた場合は、実際に経営に関わらせなくてはなりません。単に管理監督者という名目をつけただけで、適切な裁量権を与えない場合は「名ばかり管理職」とみなされることがあります。

管理監督者には他社員より高い賃金(役職手当)を用意しなくてはならない

従業員が管理監督者になった場合、これまでよりも責任ある立場で業務を行うことになります。会社側は責任ある労働の対価として、管理監督者に対して一般従業員より高い賃金を支払わなくてはなりません。厚生労働省からも「他の労働者と比べて優遇するように」と通達が出ています。役職手当を別途支給するなどの方法で、業務にかかる労力に応じて適切な金額を設定する必要があります。

参照:厚生労働省資料新規タブで開く

管理監督者に対して残業手当を支払う義務はない

管理監督者は自分の裁量権において「自由な時間に出退勤をしてよい」と労働基準法で定められています。一般従業員のように毎日の労働時間を定められないため「残業」という概念がありません。管理監督者には基準となる労働時間がなく「管理職になると残業代が出ない」と言われています。

ただし前述した「名ばかり管理職」のように便宜上、役職だけをつけて裁量権を与えない場合には管理監督者とは認められません。会社側が管理監督者に対して労働時間を指定するのであれば、勤務時間の超過(残業)が発生することになり、その分の報酬を支払う必要があります。

参照:厚生労働省資料新規タブで開く

役職手当の決め方

以下では、役職手当の金額を決める際のポイントを紹介します。

基準値を決める

まずは自社の役職の区分を整理しましょう。役職の名称や区分は会社や業種によってさまざまですが、以下のようなものがよく利用されています。

職務内容 よく利用される役職名
複数の組織を管理する者 部長・次長・工場長・店長・ゼネラルマネージャーなど
1部門の課を管理する者 課長・室長・料理長・マネージャーなど
係や班を管理する者 係長・班長・リーダーなど
仕事の技術が高い者
(現場のサポート役)
主任・チーフ・サブリーダーなど

基準値を決める際は最上位か最下位、どちらかの地位をベースとして考えることがおすすめです。はじめに、どちらかの仮の役職手当額を決定させましょう。

他の役職とのバランスを考える

仮の金額が設定できたら、他の地位との整合性が取れるように調整します。たとえば、最上位の部長に5万円の役職手当を支給すると決めた場合、1つ下の地位である課長はそれ以下の金額に設定しなければなりません。さらにもう1つ下の地位は〇〇円…、といった形で全体のバランスを確認してみてください。最上位・最下位の役職手当の額を適切に決めておかないと、差をつけていくなかで必要以上に高くなってしまったり、安くなってしまったりすることが考えられます。そのため、基準値を決める段階ではあくまで「仮の金額」として進めていくことが重要です。

役職手当を決める際の注意点

役職手当を決定する際は金額そのものだけではなく、以下のことに注意しておきましょう。

基本給と合わせた際に最低賃金を下回らないようにする

会社は最低賃金制度新規タブで開くにもとづいて、従業員に最低賃金以上の報酬を支払わなければなりません。役職手当を支給すると総支給額が変更になりますが、基本給の部分が最低賃金を下回らないように注意しましょう。

就業規則に必ず記載しなくてはならない

以下の項目については、会社の就業規則に記載するよう労働基準法(89条)で定められています。

  • 賃金の決定方法
  • 計算及び支払の方法
  • 賃金の締切り及び支払の時期
  • 昇給に関する事項

役職手当は賃金の一部であるため、その金額や決定方法を明記する必要があります。初めて役職手当を設定した際は、忘れずに該当資料の更新を行ってください。

参照:厚生労働省資料新規タブで開く

手当額をこまめに変更することは難しい

役職手当の額を変更(減少させる)場合、労働基準法8条の「不利益変更禁止の原則」に抵触するおそれがあります。不利益変更禁止の原則とは、労働者にとって不利益となる労働条件の変更を、会社側が勝手に行うことを禁じているものです(労働者の合意があれば可能)。

たとえば、5万円に設定していた役職手当を、従業員の合意なくそれ以下に減額することはできません。一切変更ができないわけではありませんが、基本的にはある程度の期間は同じ条件を用いると考えておきましょう。また実務上でも金額変更の度に就業規則を更新し、社内で周知させなくてはならないため大きな手間となります。

役職手当に関するよくある質問

役職手当に関するよくある質問に回答します。

役職手当に残業代は含まれる?

残業代の規定は、前述した「管理職」と「管理監督者」の違いによって変わります。管理職と呼ばれる人でも、裁量権を持たず一般従業員と同じように定められた就業時間で労働している人には、残業代を出さなくてはなりません。

一方、管理責任者として労働している場合は就業時間の定めがないため、基本的に残業代は発生しません。その代わり、一般従業員よりも高待遇にしなくてはならないため、役職手当の支給が必須となります。役職手当のなかに残業代が含まれているわけではないので、混同しないように注意しましょう。

役職手当なしの会社は違法?

会社が従業員に対して役職手当を支給していなくても、違法ではありません。ただし、労働基準法第41条で定められている「管理監督者」の要件については、よく理解しておく必要があります。厚生労働省では、管理監督者に対して適切な裁量権を与えることや、労働に見合った対価を支払うよう指導しています。

また、単なる管理職の場合であっても、重要な業務を任せているのであれば、その対価として役職手当の支給を検討してみてはいかがでしょうか。

参照:厚生労働省資料新規タブで開く

役職手当はボーナスに影響する?

役職手当を導入した場合でも、ボーナスに大きな影響が出るケースはそう多くないでしょう。役職手当は基本給に加算して支払うものなので、ボーナスの基準額には変更がありません。従業員の誤解を招かないよう「基本給・手当・賞与」のそれぞれをしっかり区別させておきましょう。

役職手当の金額設定は慎重に行おう

役職手当の導入は、社員のモチベーションアップに非常に有効です。導入の際には金額や条件の設定について、十分に時間をかけて検討してみてください。また管理職と管理責任者の区分についても、社内で明確に定めておく必要があります。役職手当のメリットをしっかり活かせるよう、適切な方法で取り入れていきましょう。

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