記帳代行の料金相場は?代行先や費用、依頼時の注意点を解説
監修者: 高崎 文秀
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法人や個人事業主が事業を営むうえで日々発生するお金のやり取りを取引といい、その内容を帳簿に記入することを記帳といいます。ここで作成される帳簿は、税額計算や申告時にも使用されるため、正確さが求められます。そんな記帳業務は税理士事務所などに依頼することも可能です。本記事では、記帳を外部に依頼する際の料金相場や依頼時の注意点、選ぶときのポイントなどについてわかりやすく解説します。おすすめの税理士紹介サービスもご紹介します。
記帳代行の料金相場
記帳を外部に依頼した場合には、どの程度の費用がかかるのでしょうか。ここでは、税理士事務所に依頼した場合、記帳代行業者に依頼した場合に分けて、それぞれの料金相場を見ていきます。
税理士に依頼した場合 |
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記帳代行業者に依頼した場合 |
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税理士事務所に依頼した場合の費用
一般的に税理士事務所と顧問契約を結ぶことが前提になっており、月額顧問料を支払って、業務を行ってもらいます。記帳代行を含む顧問料の費用相場は、法人の場合が月額4万円程度から、個人事業主の場合は月額3万円程度からです。ただし従業員数が5~10人程度の小規模事業者の場合には、上述した法人の相場よりも費用を抑えられることもあります。企業規模が大きくなり従業員数も多くなれば、作業量も増えるため料金も高くなります。
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記帳代行業者に依頼した場合の費用
費用相場は仕訳数などによって変わってきます。月間で100~250件程度である場合には、かかる費用は月額6,000~20,000円程度です。仕訳数のほかに、時間制で料金を設定しているところもあり、その場合は1時間あたり2,000~3,000円程度が相場です。
記帳でも社内の部門別に分ける必要がある場合や、証憑書類(領収書や請求書など)のファイリングなどの仕事を依頼する場合には、原則として追加料金が発生します。急ぎでお願いする場合には、特急料金がかかることもあります。追加料金の規定は依頼先によって異なるため、事前に確認しておく必要があります。
記帳代行業者に依頼せずに、 パートや派遣の人材を雇用して記帳業務を任せる場合 には、月額で10万円程度が必要です。そのため記帳代行の月額費用に追加料金が発生するような場合があったとしても、記帳代行業者に依頼した方が、費用を抑えられる傾向にあります。
記帳代行の依頼先
記帳代行とは、法人または個人事業主の記帳を請け負うアウトソーシングサービスのことです。依頼先に領収書や請求書の控え、通帳のコピーなどの必要書類を渡せば、仕訳をしたうえで会計ソフトに入力し、試算表や総勘定元帳などの帳簿を作成してくれます。
なお、記帳代行とよく混同される業務代行業に経理代行があります。これは、記帳代行に加えて、請求書の発行や入金の管理など、会社の経理担当者が行う業務全般を代行するサービスです。
ここでは、依頼先となる税理士事務所と記帳代行業者との違いについて解説します。
税理士事務所
依頼先として一般的なのが税理士事務所です。決算申告や年末調整の代行は税理士の独占業務であり、税理士資格をもたない者が行うことは税理士法によって禁じられています。そのため、税理士事務所であれば記帳代行だけでなく、決算申告を依頼することもできます。 税理士事務所に記帳を依頼する場合には、顧問契約を結ぶことが一般的です。税理士は、税務代理のほか、税務書類の作成や税務相談といった独占業務を行えるため、契約内容によっては、会社の税務全般に関する相談などにも応じてもらえます。
記帳代行業者
記帳代行業者は記帳業務を専門に請け負っており、アシスタントサービスとも呼ばれます。税理士事務所とは異なり、依頼先に必ず税理士がいるわけではありません。そのため、依頼先によって成果物の質やスピードに差が出ることもあります。一方で、税理士事務所に依頼するよりも料金が安くなる可能性があり、多くのところで月単位での短期契約にも対応してもらえます。依頼先に税理士が在籍していなければ、決算申告は、 記帳代行業者とは別に税理士に依頼する必要があります。
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記帳代行の料金形態と料金変動のポイント
記帳代行の料金は、仕訳数によって決まることが一般的です。月額料金内の仕訳数までは対応し、あらかじめ設定した仕訳数を超えた場合には追加料金が発生したり、1仕訳単位で料金が発生したりといったところもあります。
記帳代行の料金はそのほかにも、以下の条件によって変わってくる可能性があります。
- 依頼先に提出する資料の状態
- 消費税の課税事業者かどうか
料金形態は税理士事務所でも記帳代行業者でも依頼先ごとに異なるため、必ず事前に確認するようにしてください。
依頼先に提出する資料の状態
依頼時に渡す領収書や請求書控えなどの資料の状態次第で、料金が高くなることがあります。資料が整理されていなければ、振り分けるところから行わなければならず、そのぶん作業量が増えるため 料金は高くなります。例えば、現金や預金の入出金を記録した出納帳や電子データがそろっているか、資料が月ごとや項目ごとにファイリングされているかどうか、などは要チェックポイントです。
消費税の課税事業者かどうか
依頼する側が消費税の課税事業者であるのか否かによっても、料金が変わってくることがあります。消費税の課税事業者は、標準税率と軽減税率とで区分しなければならないなど、帳簿の作成が複雑になります。そのため免税事業者に比べると、記帳代行の料金が高くなる可能性があります。
記帳代行を依頼する際の注意点
記帳代行を依頼するときには注意すべきポイントがあります。ここでは、以下の3つについて解説します。
- 決算申告や年末調整の費用も併せて考える
- 依頼するタイミングを検討する
- 依頼はできるだけ早めに行う
決算申告や年末調整の費用も併せて考える
記帳代行の費用だけを比べるのであれば、税理士事務所も記帳代行業者もそれほど大きな差はありません。ただし、記帳代行業者に税理士が在籍していない場合には、決算申告や年末調整は別途、税理士事務所に依頼する必要があります。
決算申告や年末調整は、顧問契約を交わしている税理士事務所に依頼しても別料金がかかることが一般的ですが、顧問料と併せて割引される場合もあります。また、一部の業務だけを記帳代行業者にアウトソーシングした場合には、最終的にかかる費用が高くなってしまうだけでなく、業務効率が悪くなってしまうこともあるため、注意する必要があります。費用が高くなる理由としては、個別の業務ごとに料金が発生するため、トータルで支払う金額が増えることが挙げられます。業務効率が悪くなる理由としては、複数の業者や担当者との連携が必要になり、情報のやり取りに時間がかかるため、スムーズな処理が難しくなることが挙げられます。そのためトータルの費用や効率で考えれば、記帳代行業者よりも税理士事務所に依頼した方が効果的な場合があります。依頼先を選ぶ際には費用だけではなく、決算申告や年末調整の費用についても考えておくことが大切です。
依頼するタイミングを検討する
依頼するタイミングも検討する必要があります。例えば、以下のような時が目安として考えられます。
- 本業に当てるべき時間が圧迫されている
- 経理担当者が退職してしまった
- 人件費を減らしてコストカットしたい
ただし、取引数や売上がさほど多くなかったり、記帳に慣れている従業員が社内に いるのであれば、社内で記帳業務を行った方がコストを抑えられるかもしれません。そのため記帳代行を依頼するメリットとデメリットをよく検討したうえで、判断することをおすすめします。なお、記帳代行を依頼していても、年間の取引数が1万件を超える規模になってきたら、自社で帳簿付けする自計化を考えることも大切です。自計化が大切な理由は、社内で記帳業務を行うことで、リアルタイムでの経営状況把握が可能になり、迅速な意思決定や経営戦略の策定がしやすくなるためです。
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依頼はできるだけ早めに行う
記帳代行業者の繁忙期は年末調整や確定申告などの時期です。この時期に急に依頼したとしても請け負ってくれなかったり、高額な特別料金が発生したりすることがあります。依頼はできるだけ早く行うことが重要です。特に企業規模が大きくなると、記帳しなければならない領収書などの数も膨大になり作業に時間がかかるので、早めに依頼しましょう。
記帳代行業者を選ぶ際のポイント
経理代行を含め、記帳を代行してくれる業者は数多くあります。代行業者を選ぶ際のポイント多々ありますが、ここでは特に重要だと考えられる、以下の3点について解説します。
- 税理士や経理のプロが監修(在籍)しているか
- 自社のニーズに合わせた提案をしてくれるか
- 担当者とのやり取りはスムーズにできるか
税理士や経理のプロが監修(在籍)しているか
記帳代行は、特に何らかの資格を保有していなくても請け負うことが可能です。記帳代行サービスを提供している業者だからといって、必ず高い品質の成果物がアウトプットされるわけではありません。質の高いサービスを求めるのであれば、税理士や経理のプロが監修(在籍)しているかどうかは、大きなチェックポイントになります。確定申告まで依頼する場合には、税理士資格をもつスタッフが在籍している記帳代行業者を選ぶ必要があります。
自社のニーズに合わせた提案をしてくれるか
記帳業務を依頼する際には、自社の記帳業務をそのまま請け負ってくれるのか、自社のニーズに合わせた提案をしてくれるのかといったことも選ぶ際のポイントです。記帳代行にとどまらず、ほかの経理業務などもアウトソーシングできれば、依頼側企業の業務効率は上がります。依頼側の状況をよく把握し、経費精算や請求書の処理などの業務代行も提案してくれるような業者がおすすめです。
担当者とのやり取りはスムーズにできるか
依頼先の担当者とのやり取りをスムーズに行えるのかといった点にも注意する必要があります。連絡がスムーズに取れて、円滑なコミュニケーションができる業者であれば、急な修正があってもすぐに対応してくれる可能性があります。そのほかにも、サポート体制が十分に整っているのか否かを確認することも重要です。
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記帳業務を丸ごとプロに任せたい方
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記帳代行は税理士に依頼すると安心
記帳代行を利用すれば、帳簿付けの手間が大幅に削減されます。「日々の記帳が大変で本業に集中できない」「簿記の知識がないので帳簿付けが不安」という場合には、記帳代行に依頼することをおすすめします。記帳代行の費用相場を参考に、メリットとデメリットを検討したうえで、自社に合った方法を選ぶようにしてください。
税理士事務所であれば、記帳業務に加えて、決算申告や年末調整などの業務もまとめて依頼することが可能で、まとめてお願いすれば効率面でも費用面でもメリットがあります。「どうやって税理士を探したらよいかわからない」という場合には、弥生の「税理士紹介ナビ」をおすすめします。
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この記事の監修者高崎 文秀
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役
早稲田大学理工学部応用化学科卒
都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業し、現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また通常の税理士業務の他、一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行っている。