1. 弥生株式会社
  2. 税理士相談お役立ち情報
  3. 税理士の選び方
  4. 経理アウトソーシングとは?メリット・デメリット、費用相場や失敗例を解説

経理アウトソーシングとは?メリット・デメリット、費用相場や失敗例を解説

監修者: 高崎 文秀

更新

膨大な経理業務に忙殺され本業に注力できない、と頭を抱える企業経営者や個人事業主は少なくありません。このような問題を解決してくれるのが、経理アウトソーシングです。

本記事では、経理アウトソーシングの概要やメリット・デメリット、依頼先の選び方などについて詳しく解説します。

経理アウトソーシングとは自社の経理業務を外部に代行してもらうこと

経理業務は、外部業者への委託(アウトソーシング)ができます。具体的にどのような業務をアウトソーシングできるのか、あらかじめ把握しておきましょう。

経理アウトソーシングで依頼できる業務

アウトソーシングできる業務の内容や範囲は、代行業者によって異なります。一般的に依頼可能な内容は、記帳業務や給与計算業務、決算業務などです。
なお、年末調整業務や決算・申告業務に関しては税理士しか対応できない点に注意しましょう。

経理アウトソーシングが重要視される理由

経理業務とは、取引で発生したお金の流れを把握、管理する業務であり、日々の帳簿付けや給与計算、経費精算、売掛・買掛金管理、決算業務などが該当します。適切な経理は、組織の財務状況の正確な把握、経営判断の指針にもつながる重要な業務です。

ところが、小規模な企業や個人事業主の場合、経理専門の部署がなく経営者や他部門の従業員が経理業務を手掛けるケースも少なくありません。経理業務は高度に専門的な知識が必要なうえに、業務領域も広範で、素人では多大な時間と手間がかかることもあります。

そこで経理業務をアウトソーシングすれば、業務の一部、もしくはすべてを代行してもらえるため、経営者は本来の組織運営に力を注げます。

なお、経理と混同されやすい業務に税務会計や財務会計があります。税務会計は、納税に必要な税額を算出するための業務であり、帳簿付けや決算書作成も含まれます。一方、財務会計は決算書の内容に基づき、自社のステークホルダーへ財務状況などを報告するための会計業務です。

経理アウトソーシングと記帳代行の違い

取引先から経理 ①仕入れや販売、経費の支払い 経理(利益や資産の現状を把握)②売掛金や買掛金の管理、帳簿付け、給与計算、経費精算、請求書発行 会社 ③経営や事業の方向性を正しく判断 経理から記帳代行 ④記帳代行を依頼 記帳代行 ⑤試算表や総勘定元帳を作成

経理アウトソーシングと似たサービスとして、記帳代行があります。記帳代行は、帳簿作成に特化した代行サービスです。通帳のコピーや領収書、請求書など取引の内容を示す資料を提出すると、帳簿の作成を行ってくれます。あくまで、試算表や総勘定元帳といった帳簿作成が記帳代行のメインサービスです。

一方、経理アウトソーシングはさらに幅広い業務領域をカバーします。記帳代行をはじめ、取引先への支払いや給与計算、回収できていない売掛金の督促、買掛金管理、決算書作成などあらゆる経理業務が対象です。

経理アウトソーシングをうたう業者でも、実際に行っているサービスは記帳代行のみにとどまるケースもあります。経理業務を外部に依頼する場合は、記帳代行だけで十分なのか、経理業務全般を依頼したいのかを明確にしておきましょう。

関連記事

経理アウトソーシングのメリット

経理アウトソーシングの主なメリットとして、以下の点が挙げられます。

  • 人手不足の解消
  • リソースの有効活用
  • 法改正への対応
  • 不正の抑制

短期間の依頼で人手不足に対応できる

必要なときだけ利用できる点が、経理アウトソーシングの魅力です。経理担当が突然に退社してしまったとしても、外部の業者へ業務の一部、もしくはすべてを委託すれば経理業務が滞る心配はありません。

また、決算や年末調整などの繁忙期も、アウトソーシングすれば人手不足の問題を解決できます。繁忙期に備えて自社で人材を確保すると、閑散期へ移行したときコストがかさみますが、経理アウトソーシングなら余剰人員を抱えません。そのため、人件費の削減にもつながります。

本業に専念できる

経理業務のアウトソーシングによって、自社のリソースをより有効に活用できます。経営者や従業員は自社の利益拡大に資する本業に専念できる点がメリットです。
専門性が高い経理業務ではありますが、経費精算や請求書発行などの定型業務は、外部委託に適しています。誰でも対応可能な業務を外部へ委託することで従業員の業務負担を軽減できるうえに、経理のプロが業務を代行してくれるため業務品質の向上効果も期待できます。

最新の法律に準拠した対応を期待できる

経理に関連する法律は頻繁に改正されています。近年では、2022年に電子帳簿保存法が改正されたほか、2023年にはインボイス制度がスタートしました。

法律が改正されると、企業は順次対応しなくてはなりません。対応しないと違法とみなされ、罰金などのペナルティを負うおそれがあるためです。

ただ、法改正のたびに自社で対応するとなると、手間もコストもかかります。専門の外部業者へ委託すれば、最新の法律に準拠した対応を行ってくれるため安心です。

不正の防止につながる

経理業務は専門性の高さゆえに、業務が属人化しやすいというデメリットがあります。特定の担当者のみが組織のお金を管理することになり、その結果、横領をはじめとした不正の温床にもなりかねません。

外部の人間に業務を委託する経理アウトソーシングなら、経理業務が属人化しにくくなるので、改ざんや横領など不正の回避につながりやすくなります。また、経理のプロに業務を代行してもらえるためヒューマンエラーの減少も期待できます。

経理アウトソーシングのデメリット

経理アウトソーシングには、以下のようなデメリットもあります。メリットとデメリットを把握し、天秤にかけながら導入を検討しましょう。

  • 社内の経理担当者を育成できない
  • 外注費の発生
  • 業績変化の把握の遅れ

社内の経理担当者を育成できない

経理業務の一部、もしくはすべてを外部へ委託するため、社内に経理のノウハウを蓄積できません。いずれは自社に正式な経理部門を設けたいと考えていても、ノウハウがなければ難しいです。自社でも経理担当者を育成したいと考えるのなら、一部の業務のみ外部へ委託するなど工夫しましょう。

また、すべての業務を委託しているケースでは、自社の業務効率化や生産性向上につながったのかわかりにくいデメリットもあります。効果検証を行うためにも、双方間で適切にコミュニケーションを取るなど、綿密な情報共有が必要です。

外注費がかかる

外部業者への業務委託には費用がかかります。依頼内容や業務範囲によっては、これまで以上のコストが発生してしまうかもしれません。専門業者によって費用は異なるため、事前に漏れなく確認しておきましょう。

ただ、外注費の発生は必ずしもデメリットとは言えません。外部業者の利用によって、自社の業務負担は減少するため、浮いた時間をマーケティング活動や営業活動など他の業務に使えます。アウトソーシングの費用は無駄なコストではなく、将来の成長を見据えた戦略的な支出です。

業績の変化をリアルタイムに把握できない

ビジネスにおいては、業績の変化をいち早く察知し、そのときどきに応じた適切なアクションを起こさなくてはなりません。
しかし、経理業務を外部に委託すると、業績の変化をリアルタイムに把握することが難しくなります。外部の経理担当者とのコミュニケーションが遅れることで、迅速な意思決定が妨げられることもあります。

経理アウトソーシングの費用相場

経理アウトソーシングの費用は、依頼する業務の内容によって大きく変わります。それを踏まえて、以下に費用相場の目安を依頼業務別に整理しました。

記帳代行
1仕訳につき50~100円が相場です。100仕訳まで1万円、300仕訳まで2万円と数量で金額を決めているケースが多く見受けられます。
給与計算
従業員1人につき、1~2千円が目安です。各種労務手続き、年末調整などもあわせて委託する際にはさらに高くなります。
決算・申告
5~25万円が目安です。依頼先や事業規模などによって大きく変わります。売上が少ない企業なら、5~8万円程度で対応してもらえるケースもあります。

経理アウトソーシングにおけるよくある失敗例

経理アウトソーシングを有益に活用できるよう、よくある失敗例を把握し反面教師にしましょう。

業務範囲と費用感を把握していないまま依頼する

経理業務をアウトソーシングする主な目的のひとつはコストカットです。ただ、事前知識がないままやみくもに外部へ委託してしまうと、コストカットどころか、かえって費用がかさむ羽目になりかねません。

業務範囲ごとの費用や分量を正確に把握せず、さまざまな業務を委託してしまうとコストがかさみます。業務ごとの費用を把握し、最終的にどれくらいのコストが発生するのかを事前に確認しておきましょう。

また、依頼先によっては料金設定が高額なケースも考えられます。現在では、さまざまな経理業務代行業者が営業しているため、料金を比較しつつ選定を進めるのも大切なポイントです。

アウトソーシング会社と円滑なコミュニケーションが築けない

依頼先と円滑にコミュニケーションが取れないと、情報共有の遅れやトラブルの発生などを招きます。また、自社と依頼先で業務の進め方が異なるケースでは、コミュニケーション不足によって二度手間が発生したり、最終的な確認に時間がかかったりもします。たとえば、書式や勘定科目の違いなどには要注意です。

双方に認識のズレが生じたままでは、いずれ大きなトラブルに発展しかねません。経理をアウトソーシングする際には、依頼先との打ちあわせに十分な時間を割き、双方間で認識をすりあわせておくことが大切です。

経理状況の把握が遅れてしまう

経理業務を外部へ委託すると、これまで容易だった経理状況の確認が難しくなるというデメリットが発生します。その結果、業績が大幅に落ち込んでいることに気づけず、発覚時には大きな損失を被っている事態にもなりかねません。

こうしたリスクを回避するため、経理をアウトソーシングしている環境下でも経理状況を正確に把握できるシステムの構築が求められます。たとえば、短いスパンで定期的にデータを提出してもらう、依頼先と密にコミュニケーションを取れる体制を構築するなどです。

経理アウトソーシングはどこに依頼する?

経理アウトソーシングの依頼先は、税理士事務所や会計事務所、経理代行会社などが代表的です。業者によって対応できる業務範囲や料金が異なるため、事前の確認は必須です。

経理アウトソーシング業者には、オンラインで完結するタイプやオペレーションセンターによって対応を行うタイプなどがあります。前者は自社の事業やニーズに沿って人材がアサインされるもので、予算目安は10~200万円程度。後者はセンターに属する作業スタッフが対応にあたるもので、50~300万円程度が目安です。他方、税理士・会計事務所では、依頼する業務内容によるものの、5~20万円程度の費用で済むケースもあります。

なお、年末調整業務や決算・申告業務に関しては、税理士の独占業務である点に注意しましょう。税理士でない者がこれらの業務を代行することはできません。これらの業務も依頼したいのなら、税理士事務所や税理士が所属している業者を選択しましょう。

経理アウトソーシングを依頼するタイミング

経理担当者が突然退職した、人手が足りなくなったといったタイミングで依頼する企業が多く見受けられます。

経理担当者が急に退職してしまった場合

急に退職した担当者の代わりに、新たに経理担当者を採用するとなると多大なコストがかかります。求人サイトなどへ掲載する広告費をはじめ、選考や面接に人的コストも費やさねばならず、採用後は育成コストも発生します。専門業者への委託なら、担当者の急な退職にも対応してもらえるうえに、採用コストや育成コストを抑えられる点が魅力です。

経理業務の人手が足りない場合

経理業務が多く、本来の業務に支障をきたしている状況なら、経理のアウトソーシングを検討してみましょう。アウトソーシングによって従業員の業務負担を軽減でき、リソースをより有効活用できます。決算の時期など、繁忙期のみ依頼するのもひとつの手です。

経理アウトソーシングを依頼する会社を選ぶ際の注意点

経理アウトソーシングを利用する際には、以下の注意点を踏まえて業者を選定しましょう。

信頼できる経理アウトソーシング業者を選ぶ

経理業務の委託では機密情報を提出するため、信頼できるかどうかは重要なポイントです。事業の継続年数や実績もチェックしましょう。あわせて、セキュリティ体制・秘密保持契約締結の有無も要チェックです。機密情報の漏えいを防ぐためどのような取り組みをしているのかを確認しておきましょう。

税務申告などの代行を依頼する場合は税理士事務所に依頼する

年末調整や税務申告の代行も依頼したいと考えている場合は、依頼先に税理士がいるかどうかが重要なポイントです。これらの業務は税理士でなければ代行できないため、税理士事務所への依頼がおすすめです。

関連記事

依頼する内容・範囲を事前に整理しておく

まずは、外注の対象となる業務の洗い出しから始めましょう。依頼する業務によって、最終的な金額が大きく変化するためです。場合によっては、すべてを委託せずとも記帳代行だけで十分な業務効率化、コストカットにつながるかもしれません。もっとも大きな負担となっている業務を中心に洗い出しを進めましょう。

関連記事

コミュニケーションを取りやすい業者を選ぶ

経理アウトソーシングの目的は、業務効率化やコストダウン、企業組織としての成長です。そのためには、双方間で適切にコミュニケーションを取りつつ取り組まなくてはなりません。いつでも連絡を取れるか、メールや電話のレスポンスは早いか、話しやすいかなどを基準に選定しましょう。

経理アウトソーシングや記帳代行の依頼先を探すには

経理アウトソーシングや記帳代行を税理士に依頼したいと思っても、自力で税理士を探そうとすると手間や時間がかかります。そのような場合は、弥生株式会社の「税理士紹介ナビ新規タブで開く」がおすすめです。

「税理士紹介ナビ」は、起業全般や税、経理業務などに関する困りごとをお持ちの方に、弥生が厳選した経験豊富で実績のある専門家をご紹介するサービスです。業界最大規模の全国12,331のパートナー会計事務所から、ぴったりの税理士や会計事務所を最短で翌日にご案内できます。完全無料で、会社所在地や業種に合わせた最適な税理士をご紹介します(2023年5月現在)。

「税理士紹介ナビ」には、事業者のお困りごとに沿って弥生スタッフが最適な税理士や会計事務所を紹介する「税理士紹介サービス新規タブで開く」と、ご自身で自由に税理士を探すことのできる「税理士検索新規タブで開く」の2つのサービスがありますので、ご自身の状況に合ったサービスをご活用ください。

「税理士紹介ナビ」はこんな方におすすめ

「税理士紹介ナビ」は、特に次のような方におすすめです。

初めて会社を設立する方

会社を設立する際には、必要な手続きや資金調達など多くの不安や疑問が生じることがあります。「税理士紹介ナビ」なら、これから事業を始める方の悩みや困りごとに合わせて、最適な税理士探しをサポートします。個人事業主から法人成りを予定している方にもぴったりです。

起業後の会計処理や決算が不安な方

会社を運営するうえでは、法人税や地方税、消費税など、さまざまな税や固定資産の知識が必要になります。そのような場合も、会計処理や決算に関することをまとめてプロに相談できます。

できるだけ節税したい方

「節税したいが方法がわからない」という方にも「税理士紹介ナビ」はおすすめです。税理士からのアドバイスで節税方法を理解できれば、戦略的な経営にも役立つでしょう。

記帳業務を丸ごとプロに任せたい方

日々の取引を記帳するには手間や労力がかかります。売上が増えるとともに経理作業量も増え、負担が大きくなってしまうでしょう。記帳業務を税理士に丸投げできれば、その分しっかり本業に集中できるようになります。

会社の状況にあわせて経理アウトソーシングを活用しよう

経理アウトソーシングには数々の魅力があるものの、覚えておくべきデメリットや注意点もあります。それらを理解し、自社の状況を把握したうえで活用を検討してみましょう。

年末調整や決算・申告業務も代行してもらえる税理士事務所を探したいのなら、「税理士紹介ナビ新規タブで開く」の利用がおすすめです。実績豊かな税理士を厳選して紹介してもらえるサービスであり、無料で利用できます。この機会に活用を検討してみてください。

この記事の監修者高崎 文秀

高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役
早稲田大学理工学部応用化学科卒

都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業し、現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また通常の税理士業務の他、一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行っている。

カテゴリ一覧

    人気ランキング

      初心者事業のお悩み解決

      日々の業務に役立つ弥生のオリジナルコンテンツや、事業を開始・継続するためのサポートツールを無料でお届けします。

      • お役立ち情報

        正しい基礎知識や法令改正の最新情報を専門家がわかりやすくご紹介します。

      • 無料のお役立ちツール

        会社設立や税理士紹介などを弥生が無料でサポートします。

      • 虎の巻

        個人事業主・法人の基本業務をまとめた、シンプルガイドです。

      事業のお悩み解決はこちら