税務調査は税理士の立ち会いを!税務署・国税局の調査の流れは?

2024/01/19更新

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

「税務調査」と聞くと、ある日突然税務署から大勢の調査官がやってきて洗いざらい調べ上げられる、というイメージを持つ方もいるのではないでしょうか。一方で、「自分のような小規模な事業者のところに税務調査が来るはずがない」と、楽観的に考えている方もいるかもしれません。

税務調査はあくまで「調査」であり、脱税など後ろめたいことがなければ、決して怖がる必要はないものです。しかし、「小さい会社だから税務調査は入らない」「これまでずっと何もなかったから、これからも税務調査はない」ということもありません。また、大勢の調査員が早朝一斉に企業を訪問するような調査は国税局査察部によるものであり、原則として資本金が1億円以上の企業が対象となります。

税務調査に慌てず対処するためには、税理士の力を借りることがおすすめです。ここでは、税務調査の基礎知識に加え、実際の調査の流れ、税理士に税務調査の立ち会いを依頼するメリットなどについて解説します。

納税者の申告が正しいかどうかを確認する税務調査

税務調査とは、納税者から提出された申告内容が正確かどうかを確認するために行われる、税務署による調査のことです。

法人税や所得税などは、納税者が自ら税額を申告し、それにもとづき納税する申告納税制度をとっています。納税者全員が正しく申告・納税をしていれば問題はありませんが、中にはミスをしたり故意に不正をしたりする方が出てきます。そのため、申告内容に誤りがないか確認することを目的として、税務調査が行われるのです。
税務調査には、大きく分けて「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。それぞれどのような調査なのか見てみましょう。

任意調査

任意調査は、税務署職員が実施するもので、税務調査の大半がこれに該当します。一般的には事前に電話で通知があり、2日ほどかけて帳簿などが調べられます。
なお、「任意」という言葉から「拒否できるのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、任意調査を拒否したり正当な理由なく帳簿を見せなかったりすると、法律で定められた罰則があります。つまり、任意とはいいながら、実際は通知が来たら調査を受けざるをえないということになります。

強制調査(犯則調査)

強制調査は、国税局査察部が実施する調査です。裁判所の令状をもって事前連絡なく強制的に行われるもので、調査対象となった場合は拒否できません。立件を目的とした犯罪捜査の一種で、巨額の脱税の疑いがある場合に行われます。なお、よほど悪質な脱税をしていない限り、中小企業や個人事業主が受けることはありません。

税務調査の際に揃えておくべき資料は?

税務調査(任意調査)では、帳簿類や申告書などの確認作業が行われます。調査当日までに、必要書類をしっかり揃えておきましょう。用意すべき資料は、基本的には一定期間の保存が義務付けられている帳簿や書類です。税務署からの指示に応じて、直近3年~5年分の資料を用意します。提示を求められたときにすぐ見せられるよう準備しておくと、当日の対応もスムースです。

用意する資料

帳簿 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など(青色申告承認申請書で届け出た帳簿や伝票)
帳簿作成のもととなった資料 領収書、請求書、小切手控、預金通帳、借用証など
決算関係書類 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など
人件費に関わる書類 扶養控除等申告書、源泉徴収簿、社会保険関係の書類など
その他 見積書、契約書、株主総会議事録など

税務調査(任意調査)の流れ

もし税務調査(任意調査)が行われたら、どのように対応すればいいのでしょうか。任意調査の具体的な流れは下記のとおりです。

STEP1 税務署からの事前通知 STEP2 調査実施日の日程調整 STEP3 必要書類を揃える(顧問税理士がいる場合は調査前に税理士と相談する) STEP4 調査当日 STEP5 税務署の指摘に対して回答する(顧問税理士がいる場合は税理士が行う) STEP6 調査結果 STEP7 修正申告書の作成 STEP8 追徴課税の納税

STEP1. 税務署からの事前通知

まず、税務署から税務調査を行う旨の事前通知があります。一般的には税務署から電話で連絡がありますが、通知は義務ではありません。税理士が申告書に税務代理権限証書を添付して申告していた場合は、税理士に連絡が入ります。

STEP2. 調査実施日の日程調整

事前通知の後は、税務署と調査実施日の調整を行います。調査実施日は、仕事が忙しい日を避けるなど、会社や事業主側の都合に合わせることができます。なお、調査実施日については、税理士に立ち会ってもらう場合、税理士と日程調整を行うことが大切です。顧問税理士がおらず、対応が不安な場合は、税理士を探すことをおすすめします。

STEP3. 必要書類を揃える(顧問税理士がいる場合は調査前に税理士と相談する)

税務調査前に必要書類を揃えます。顧問税理士がいる場合は、税務調査前に税理士と打ち合わせをして、揃えるべき資料に不備や漏れはないかを確認することが可能です。調査当日に聞かれそうなことや、誤りではなくても税務署と見解が食い違いそうな項目なども想定して準備しておきましょう。

STEP4. 調査当日

税務調査当日は、税務調査官が会社や店舗、事務所などを訪れます。多くの場合、税務調査は2日間にわたって行われます。

STEP5. 税務署の指摘に対して回答する(顧問税理士がいる場合は税理士が行う)

税務職員の訪問が終わっても、税務調査はまだ続きます。調査を踏まえて、税務署から指摘や質問があり、それに対する資料の準備や回答するなどのやりとりをします。顧問税理士がいない場合は事業者自身が、顧問税理士がいる場合は税理士が交渉を行います。また、追加で資料の提出を求められることもあるでしょう。交渉が終わり、調査結果が決定するまでの期間は1か月以上かかるのが一般的です。

STEP6. 調査結果

税務調査の結果には「申告是認」「修正申告」「更正」という3パターンの着地点があります。申告是認とは申告内容に何も問題がないこと、修正申告は税務署の指摘を認めて自分で申告をすること、更正とは、税務署の指摘に対して、納税者がその指摘を納得せず修正申告を出さない場合に、税務署側が各税法の規定を根拠に行なう課税処分のことです。

STEP7. 修正申告書の作成

税務署の指摘を認めて追加の納税する場合は、修正申告書を作成し、税務署に提出します。

STEP8. 追徴課税の納税

修正申告書を提出した後、不足していた税額や延滞税、過少申告加算税などを納めます。場合によっては重加算税が課せられることもあります。

税務調査の立ち会いを税理士に依頼するメリット

たとえ申告内容に何も後ろめたい点がなくても、税務調査の通知が来ると不安な気持ちになるものです。また、税に関する知識がないと、調査官の指摘が間違っていたり見解の相違があったりしたときに、適切な回答ができないかもしれません。
そのようなことがないよう、税理士と顧問契約を結んで定期的に事業の状況を共有しておき、税務調査での立ち会いもお願いする方がスムースでしょう。税理士が税務調査に立ち会うメリットについて解説します。

税務調査官の主張に対し、税法面から回答してもらえる

税務調査官の主張に対して税法面から回答してもらえることが、税理士立ち会いのメリットです。税務調査官の判断が間違っていることは珍しくありません。しかし、自分だけで税務調査に対応した場合、調査官に対して正しい回答ができず、指摘をすべて受け入れることにもなりかねません。税法は解釈の仕方によって、税務署側と納税者側の言い分がわかれることがあります。税理士に立ち会いを依頼すれば、調査官の主張に対して税法面から回答し、追徴課税の回避や減額ができる可能性があります。

税務調査の事前準備がしっかりできる

税理士に税務調査の立ち会いを依頼できれば、税務調査の事前準備ができるという点もメリットだといえます。初めて税務調査を受ける場合、用意すべき書類や調査で確認されそうな事柄がわからず、不足や不備が起こりがちです。しかし、税理士に依頼すれば、準備すべき書類や調査官が指摘してくる可能性がある項目についてアドバイスを受けられます。必要書類をきちんと用意し、想定される質疑応答のシミュレーションを行っておけば、税務調査に対する不安も和らぐでしょう。

税務調査のリスクを減らす方法

税務調査の通知が来たら基本的には税務調査を受けなければいけないとはいえ、できるだけ税務調査は避けたいものです。税務調査はすべての事業者にとって無関係ではいられないものの、下記のような対策をすることで、調査のリスクを減らすことができます。

申告の段階から税理士に依頼する

税理士が申告書を作成すると、税務署に提出する申告書類に税理士の署名が入ります。それによって税務調査の対象になる可能性がなくなるわけではありませんが、税務の専門家である税理士が決算処理に携わった証明になり、書類の信頼性が高まります。

また、税理士が申告書を作成した場合、税務調査が入ったとしても、税理士自身が申請書を作成しているため、税務調査官の指摘にも適切に対応することが可能です。税務調査対応という一時的な契約ではなく、顧問契約を結んでおくことでリスクを軽減しましょう。

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書面添付制度を活用する

さらに税務調査のリスクを減らすには、申告書の作成を税理士に依頼する際に、書面添付制度を活用する方法もあります。これは、税理士法第33条の2にもとづく書面を申告書に添付する制度で、申告書の信頼性を高めることにつながります。

この書面が添付された申告書について税務調査を行う場合、税務署側は、原則として税理士の意見を聞いてからでないと税務調査に移ることができません。税務調査の対象になった場合は、まず税理士の元に連絡が入り、税務署と税理士の間でやりとりが行われます。その結果、実際の調査が行われずに済むケースも少なくありません。

できるだけ税務調査を避けたいという場合は、書面添付制度に対応してくれる税理士に申告書の作成を依頼すると良いでしょう。

税務調査にも対応できる税理士を探す方法

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税理士の力を借りて、落ち着いて税務調査に臨もう

もし税務調査を受けることになってしまったら、税理士に立ち会ってもらうようにしましょう。税理士に立ち会ってもらえれば、税務調査官の主張に対して税法面から回答してもらえるなどのメリットがあります。
また、税務調査のリスクを減らす意味でも、信頼できる税理士と顧問契約を結んでおくこともおすすめです。そして、税務調査が行われたときは立ち会いを依頼し、税務署の主張に反論してもらいましょう。良い税理士を探す方法がわからない場合は、ぜひ弥生の「税理士紹介ナビ 新規タブで開く」をご活用ください。

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。
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