記帳代行とは?メリット・デメリットや依頼先の探し方、注意点を解説

2022/04/28更新

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

事業を営むうえで、日々お金のやりとりが発生します。そのやりとりの内容を帳簿に記載することを記帳といい、収支などを正しく仕訳する必要があります。仕訳はどういった取引があったかを簿記のルールに従って分類することです。特に仕訳数の多い会社や個人事業主などの場合は、記帳に手間や時間がかかってしまうと感じることがあるかもしれません。そんなときに便利なのが「記帳代行」というサービスです。
ここでは、記帳代行の概要とメリット・デメリット、依頼先の探し方の他、記帳代行を依頼する際の注意点などについて解説します。

記帳代行が対応できる業務とは?

記帳代行とは具体的にはどのようなサービスなのでしょうか。記帳業務の内容と記帳代行が対応できる業務について解説します。

記帳とは取引内容を帳簿に記載すること

事業を営むうえで日々発生するお金のやりとりを、会計上では取引といい、その取引内容を帳簿に記載することを「記帳」といいます。事業を営んでいると、さまざまな取引が発生します。法人でも個人事業主でも、取引内容を正しく記載した帳簿を作成しなければなりません。
法人税や所得税は、帳簿にもとづいて税額を計算し申告するため、作成した帳簿は一定期間の保存が義務付けられています。

また、記帳は事業の状況を把握するうえでも非常に大切です。帳簿によってお金の流れを正確に把握することで、事業が順調に進んでいるかどうかの定期的なチェックができるようになります。

記帳代行は記帳業務のアウトソーシングサービス

記帳代行とは、記帳業務を請け負うアウトソーシングサービスです。記帳代行の依頼先に領収書や請求書の控え、通帳のコピーなどの必要書類を渡すと、仕訳して会計ソフトに入力し、試算表や総勘定元帳といった帳簿の作成を行ってくれます。

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記帳代行を依頼するメリット

記帳代行を依頼するとどのようなメリットがあるのでしょうか。記帳代行のメリットについて見ていきましょう。

記帳業務にかかる手間や時間を削減できる

記帳代行を依頼すると、記帳業務にかかる手間や時間を削減できるのがメリットです。必要書類を渡せば会計ソフトの入力から帳簿の作成まで行ってくれるため、それらにかかっていた手間や時間を削減でき、業務効率化につながります。

記帳ミスの不安が軽減する

記帳ミスの不安が軽減するのも、記帳代行を依頼するメリットといえます。簿記の知識がないなど記帳業務に不慣れな場合は、ミスが発生することも多くなり、ミスに気が付いても原因がわからないということにもなりかねません。記帳代行を利用すれば、そのようなミスの不安が軽減されます。

本業に集中できる

記帳代行を依頼すれば、本業に集中することができます。会社の規模によっては、経営者自身が記帳業務を行うことも珍しくありません。記帳代行を依頼することで、煩雑な記帳業務に時間を割く必要がなくなり、本業に集中できるようになることがメリットです。

記帳代行を依頼するデメリット

記帳代行には多くのメリットがありますが、一方でデメリットもあります。記帳代行を依頼することで考えられるデメリットについて見ていきましょう。

コストがかかる

記帳代行には、当然のことながらコストがかかります。記帳業務の手間や時間を削減できるのはメリットですが、その代わりにコストがかかってしまうのは、記帳代行のデメリットの1つといえます。

ノウハウの蓄積ができない

記帳業務のノウハウを蓄積できないということも、記帳代行のデメリットといえるでしょう。記帳代行では、記帳業務のノウハウを蓄積できないため、従業員のスキルアップにもつながりません。

リアルタイムに業績を把握できない

記帳代行を依頼すると、リアルタイムに業績を把握できないこともデメリットです。記帳代行を依頼した場合、必要書類を渡してから実際に帳簿を確認するまでには、一定の期間が必要になります。特に請求書の控えは、支払い処理が済んでから依頼先に渡すことになるため、どうしてもタイムラグが生じてしまいます。そのため、記帳代行に依頼した場合は、リアルタイムに業績を把握するのが難しいといえるでしょう。

記帳代行を依頼する際に必要な書類とは?

記帳代行を依頼する場合はどのような書類を依頼先に渡せばいいのでしょうか。一般的には以下のような書類が必要になります。

1 領収書、現金出納帳などの現金の入出金に関する書類 2 通帳コピー、振込明細などの預金収支に関する書類 3 請求書控え、売上管理表などの売上に関する書類 4 賃金台帳、給与明細などの給与に関する書類 5 クレジットカード明細などの立替金に関する書類 6 支払管理表、請求書などの買掛金に関する書類

領収書、現金出納帳などの現金の入出金に関する書類

記帳代行に依頼する際には、領収書、現金出納帳などの現金の入出金に関する書類が必要です。
現金出納帳とは、会社の現金の入出金を記録した帳簿のことです。現金出納帳は自社で作成することもありますが、領収書などを依頼先に渡して、現金出納帳を作成してもらうことも可能です。

通帳コピー、振込明細などの預金収支に関する書類

記帳代行を依頼する際には、通帳や振込明細など、預金収支がわかる書類も必要になります。インターネットバンキングなどで通帳がない場合は、明細の電子データを保存するか、印刷しておきましょう。

請求書控え、売上管理表などの売上に関する書類

売上管理表とは、売上を集計した帳簿のことで、「売上台帳」とも呼ばれる書類です。現金出納帳と同様に、自社内で請求書を整理して売上管理票を作成する場合と、請求書の控えを渡して依頼先に売上管理表を作成してもらう場合があります。

賃金台帳、給与明細などの給与に関する書類

従業員を雇用している場合は、賃金台帳や毎月の給与明細を記帳代行の依頼先に渡す必要があります。労働基準法によって作成が義務付けられている、従業員への給与の支払状況を記載した書類が賃金台帳です。

クレジットカード明細などの立替金に関する書類

クレジットカードを使用した場合は、記帳代行の依頼先に利用明細を渡す必要があります。クレジットカードのWeb明細サービスを利用している場合は、明細の電子データを保存するか、印刷しておきましょう。

支払管理表、請求書などの買掛金に関する書類

記帳代行の依頼先に渡す書類として、支払管理表や請求書などの買掛金に関する書類も必要です。仕入れ先や外注先から届いた請求書を用意しましょう。

記帳代行を依頼できる業者

記帳代行を依頼できるのは、主に税理士事務所か記帳代行業者です。両者の違いについて解説します。

税理士事務所

税理士事務所は、記帳業務を依頼できるだけでなく、税務相談にも対応してもらえます。また、決算申告業務や年末調整業務の代行は、税理士以外は代行できないため、決算申告まで依頼したい場合は、記帳代行から税理士事務所に依頼するとスムースでしょう。
なお、税理士事務所に記帳代行を依頼した場合、記帳代行業者よりも高額になる傾向があります。また、税理士事務所に記帳代行を依頼する場合は、顧問契約を結ぶことが一般的です。

記帳代行業者

記帳代行業者は記帳代行サービスを請け負う専門業者で、アシスタントサービスとも呼ばれます。税理士のように税務の専門家ではありません。業務の質やスピードは代行業者によって差があります。一方で、税理士事務所に依頼するよりも料金が安く、月単位などで契約できるなどの点がメリットといえるでしょう。

ただし、依頼先の代行業者に税理士が在籍していない場合は、決算申告業務までを依頼することはできません。その場合は、記帳代行とは別に決算申告業務を税理士に依頼する必要があります。

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記帳代行を依頼する際の注意点

記帳代行を依頼する際には、依頼先の選び方や依頼するタイミングなどを検討する必要があります。記帳代行の依頼先を選ぶ際の注意点をまとめました。

税理士の有無を確認する

記帳代行の依頼先を選ぶ際には、税理士がいるかどうかがポイントの1つです。税務申告や年末調整の代行は税理士でなければ代行できません。税理士でないと代行できない業務まで依頼したい場合は、税理士事務所に依頼するようにしましょう。

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依頼するタイミングを検討する

記帳代行を依頼するタイミングも検討する必要があります。記帳代行を依頼するタイミングとしては、経営者自身が記帳業務を行っていて、本業にあてるべき時間を圧迫しているようなときが挙げられます。一方、取引数や売上がさほど多くなかったり、記帳業務に慣れている従業員がいたりするのであれば、社内で記帳業務を行った方がいいかもしれません。
記帳代行を依頼するメリットとデメリットをよく検討したうえで、記帳代行を検討するようにしましょう。

信頼できる記帳代行の依頼先を探すには

税務の専門家である税理士に記帳代行を依頼したいと思っても、自力で税理士を探そうとすると手間や時間がかかります。そのような場合は、弥生株式会社の「税理士紹介ナビ 新規タブで開く」がおすすめです。

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「税理士紹介ナビ」はこんな方におすすめ

「税理士紹介ナビ」は、特に次のような方におすすめです。

初めて会社を設立する方

会社を設立する際には、必要な手続きや資金調達など多くの不安や疑問が生じることがあります。「税理士紹介ナビ」なら、これから事業を始める方の悩みや困りごとに合わせて、最適な税理士探しをサポートします。個人事業主から法人成りを予定している方にもぴったりです。

起業後の会計処理や決算が不安な方

会社を運営するうえでは、法人税や地方税、消費税など、さまざまな税や固定資産の知識が必要になります。そのような場合も、会計処理や決算に関することをまとめてプロに相談できます。

できるだけ節税したい方

「節税したいが方法がわからない」という方にも「税理士紹介ナビ」はおすすめです。税理士からのアドバイスで節税方法を理解できれば、戦略的な経営にも役立つでしょう。

記帳業務を丸ごとプロに任せたい方

日々の取引を記帳するには手間や労力がかかります。売上が増えるとともに経理作業量も増え、負担が大きくなってしまうでしょう。記帳業務を税理士に丸投げできれば、その分しっかり本業に集中できるようになります。

記帳代行サービスを賢く利用して業務を効率化しよう

記帳代行を依頼すると、記帳業務の手間が大幅に削減できます。また、記帳代行に加えて税務申告や年末調整も依頼したい場合は、税理士事務所に依頼すると一括で対応してもらえて安心です。「どうやって税理士を探したらよいかわからない」という場合は、ぜひ弥生の「税理士紹介ナビ 新規タブで開く」をご活用ください。

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。
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