副業でも経費は認められる?計上できる費用や確定申告の注意点を解説
監修者: 齋藤一生(税理士)
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会社員が副業を行っている場合、副業の所得が事業所得や雑所得、不動産所得に該当するなら、副業を行ううえでかかった費用は必要経費と認められ、確定申告の際に経費として計上できます。
では、「副業を行ううえでかかった費用」かどうかは、どのように判定されるのでしょうか。
本記事では、経費として認められるもの、認められないものの見分け方と、副業の経費を計上するにあたっての注意点を解説します。
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必要経費とは?
必要経費とは、収入を得るためにかかった費用のことです。
副業を行っている人で、本業以外の所得が20万円を超える場合は、確定申告でその年の所得を申告し、所得に応じた所得税を納めなくてはいけません。必要経費と認められる費用は、この1年の所得を計算する際に、収入金額から差し引くことが認められています。つまり「所得=収入-必要経費」となり、この所得に対して所得控除等を行ってから、所得税等が課せられるのです。
副業が事業所得の場合はもちろん、雑所得の場合も同様に収入を得るためにかかった経費であれば、必要経費として計上できます。
副業の雑所得では、経費計上できないと思っている方もいるので、必要であった経費は漏れなく計上しましょう。
経費が認められる所得
本業や副業から得られる所得は、税法上10種類に区分されています。この10種類すべての所得に、必要経費の計上が認められているわけではありません。必要経費の計上が認められているのは、以下の所得です。
経費が認められる所得
- 雑所得
- 事業所得
- 不動産所得
- 山林所得
副業が該当する所得
副業は、その内容によってどの所得に当たるかが異なります。代表的なものを紹介しましょう。
副業の種類 | 該当する所得の種類 |
---|---|
アルバイト、パート | 給与所得 |
個人が営むビジネス (ショップ経営、フリマアプリなどでの販売、イラストレーター、ライター、SE、翻訳、キッチンカーなど) |
雑所得または事業所得 |
マンション・アパートの貸し付け、駐車場の貸し付け | 不動産所得 |
株の売買や配当金 | 譲渡所得、配当所得 |
FX取引 | 雑所得 |
ショップ経営やフリマアプリによる販売などで得た所得が、雑所得に当たるか事業所得に当たるかは、仕事の規模や独立・継続・反復して行われる仕事かといった点から、総合的に判断されます。
副業の場合は、雑所得に該当する場合が多いでしょう。
副業で認められる経費の金額
副業の経費として認められる金額に、上限はありません。
雑所得、事業所得、不動産所得を得るために支出した費用であれば、原則として経費として認められます。
給与所得は経費計上が認められていない
会社員やアルバイトなど、企業と雇用契約を結んで働くことで得る所得「給与所得」には、経費の計上が認められていません。代わりに、「給与所得控除」という給与額に応じて一定額を収入から差し引けるしくみがあり、所得税を計算する際に適用されます。
副業で接客などのアルバイトを行い、本業と副業で2か所以上の勤務先から給与所得を得ている場合は、給与所得控除が適用されるので経費の計上はできません。
経費として認められる支出
副業の経費として認められるものには、どのようなものがあるのでしょうか。所得の種類別に解説します。
雑所得・事業所得における必要経費
ショップ経営やフリマアプリでの販売、イラストレーター、ライター、SE、キッチンカーなど、個人が副業として営むビジネスの所得は、社会通年的に「事業」と呼ばれる水準に達しており、事業所得となる一部を除いて雑所得となります。
所得区分が雑所得では経費が計上できない、または経費として計上できる範囲は事業所得より狭くなると思いがちですが、まったくの誤解です。雑所得・事業所得問わず、所得を得るためにかかった費用であれば、経費として計上できます。
例えば、所得区分が雑所得・事業所得どちらであっても、以下のようなものはすべて経費として計上できます。
経費として計上できる費用の例
- 事業に必要な文房具、伝票、名刺、携帯電話料金やインターネットなどの回線使用料
- 事務所などで使う水道光熱費など
なお、事業用資産の損害保険料(火災保険料など)も、一括で支払った場合は、支払時にその年に対応する部分の金額を経費計上できます。
また、副業の職種別で見ると、Webライター、フードデリバリーの配達員、フリマアプリでハンドメイド品を販売する作家の場合、以下のようなものが経費として計上可能です。
職種別・経費として計上できる費用の例
- Webライター:パソコンの購入費、インターネットの通信費、家賃(仕事場の分のみ)など
- フードデリバリーの配達員:配達用自転車の購入費、シェアサイクル利用料、ヘルメット代、配達用バッグの購入費、バイクのガソリン代、保険料など
- フリマアプリでハンドメイド品を販売する作家:ハンドメイド品の材料費、フリマアプリに支払う手数料、梱包や発送にかかる費用など
不動産所得における必要経費
不動産所得とは、主にマンションやアパート、駐車場などを貸し出すことで得る所得です。なお、不動産を売却して得る所得は譲渡所得として区別されます。
不動産所得も、所得を得るためにかかった費用は必要経費として計上できます。具体的には次のようなものです。
不動産所得で必要経費に該当するものの例
- 貸し出している不動産の固定資産税やローンにかかる金利
- 管理会社への管理委託料
- 貸し出している不動産の修繕費
- 個人事業税
- 賃貸建物に対する火災保険や地震保険などの損害保険料
経費計上できるか迷いやすい支出の具体例
経費として計上できるのは「所得を得るためにかかった費用」に限られ、事業や売上に関係ない、プライベートでの支出は経費に計上できません。
しかし、事業や売上に関係するものなのか判断しづらいものもあります。いくつか例を紹介しましょう。
経費計上できる支出例
カフェなど、仕事でもプライベートでも利用するものは、利用目的によって判断します。例えば、友人とのランチ代は経費にはなりませんが、カフェで仕事をしたときのコーヒー代や打ち合わせをした際の飲食代などは経費として計上できます。
スーツは、業務上必要であり、副業のためだけに購入・使用しているものであれば経費にできる可能性がありますが、プライベートでも使用する場合は基本的に経費として認められないと考えてよいでしょう。
経費計上できない支出例
事業と関係がなく、副業の収入につながらないプライベートな支出は、経費に計上できません。
また、所得税、住民税、交通違反金などの罰金、フィットネスジムの会費や健康診断費など事業者自身や家族の福利厚生に関する費用、借入金の元本の支払いなどは、いずれも経費に計上することはできません。
事業とプライベートの両方にかかる費用は家事按分する
賃貸住宅の一室で仕事をしている場合の家賃や水道光熱費など、事業とプライベートの両方で使用しているものにかかる費用については、事業利用分のみ経費として計上できます。そのため、確定申告の際には、費用を事業利用分とプライベート利用分と分ける計算が必要です。
確定申告の際に、業務とプライベートを兼ねた支出を振り分けることを「家事按分」といいます。
家事按分が必要な例
家事按分が必要なのは、「業務利用分とプライベートを兼ねた支出がある人」です。例えば、自宅の一角を仕事場として、副業でフリーランスのライターやデザイナー、エンジニアをしている人、自家用車を移動手段としているフリーランスの副業フォトグラファーなどが対象になります。また、個人契約のスマートフォンを業務で使用している場合や、運送・配達業で使用する車やバイク、自転車をプライベートで利用する場合なども家事按分の対象です。
家事按分の計算方法
家事按分の計算方法には、明確に定められたルールはありません。ただし、客観的な根拠があり、税務調査の際に調査官が見て妥当だと思える方法であることが必要です。
一般的には以下のように、副業で使用している部屋の使用面積や業務時間、使用日数などを基準とします。
- 家賃
- 賃貸住宅の一角を副業の仕事部屋にしているような場合は、家事按分をして事業利用分を経費として計上することが可能です。例えば、自宅の広さが50平方メートルで、約10平方メートル分を仕事のスペースとして使っている場合は、家賃の20%を経費として計上します。
- 通信費
- 通信費は、使用時間によって家事按分を行うのが一般的です。例えば、プライベート用のスマートフォンを副業の連絡や調べものにも使っている場合、全体のうち2割ほどを副業のために使っているなら、通信費の20%を経費として計上できます。
- 車のリース料やガソリン代
- 副業としてフリーのフォトグラファーをしており、移動手段としてリース車を使っている場合は、走行距離で家事按分を行うのが一般的です。月の走行距離が300kmで、うち150kmを現場への移動に使っているなら、リース料やガソリン代の50%を経費に計上できます。
なお、副業のために利用した駐車場代や有料道路の通行費は、全額経費として計上可能です。
按分計算は、基準とする数量の設定によって変動する
按分計算の結果は、基準とする数量の設定によって変動します。例えば、水道光熱費の計算は家賃と同じように面積を基準に計算することもできますが、その結果は、時間を基準に計算した場合とは異なります。
なお、取得価額(資産の取得にかかった費用)が10万円以上の固定資産については、取得年に全額を経費計上することはできず、それぞれのものに定められた年数に分けて経費計上する「減価償却」を行うのが原則です。副業の場合も減価償却ができます。
この減価償却費も、家事按分の対象になります。取得価額が10万円を超えるかどうかは、家事按分をする前の金額で判定されます。
副業の経費に関する注意点
副業の経費計上にあたっては、いくつか注意したい点があります。きちんと計上するためにも、確認しておきましょう。
経費を計上するタイミング
経費は、取引が発生したタイミングで計上します。クレジットカードで決済した場合は、引き落とし日ではなく、基本的に決済日に計上する点に注意が必要です。
経費の証拠書類の保管期間
副業で雑所得を得ており、前々年のその業務にかかわる収入金額が300万円を超える人は、事業に関する領収証や作成・受領した請求書、小切手控、預金通帳、借用証などの現金預金取引等関係書類を、5年間保存する必要があります。
副業が事業所得に該当する場合は保存期間が異なり、青色申告の場合は確定申告期日の翌日から7年間、白色申告の場合は5年間の保存が必要です。
また、適格請求書(インボイス)発行事業者には、発行した適格請求書(インボイス)の控えや受領した適格請求書(インボイス)を7年間保存する義務があります。電子取引の証憑については、電子帳簿保存法の電子取引データの要件に従った保存が必要です。
領収書を紛失した際の対処法
領収書を紛失した場合は、出金伝票に支払い記録を残しておき、経費として計上します。
なお、出金伝票は適格請求書(インボイス)には該当しないので、副業でも適格請求書発行事業者の場合は、出金伝票で消費税の仕入税額控除を受けることはできません。
ただし特例により、1万円未満の課税仕入れについては、帳簿への記載のみで仕入税額控除の適用を受けられます(2029年9月30日まで、小規模事業者限定)。
また、簡易課税制度を選択している場合は、課税売上にかかった消費税額から、みなし消費税率によって、納める消費税額を算出するため、仕入れや経費の請求書は、適格請求書(インボイス)でなくても構いません。
副業所得が20万円以下なら確定申告は不要?
副業の所得は原則として確定申告は必要ですが、本業で年末調整を受けている場合で、副業の所得が年間20万円以下であれば不要になります。
収入20万円ではなく所得20万円以下であれば所得税の確定申告は不要
ここで注意したいのは、副業の「収入」が20万円以下ではなく、収入から必要経費を差し引いた「所得」が20万円以下である点です。例えば、収入が100万円でも必要経費が80万円なら、所得は20万円となるため確定申告は不要になります。
副業でインボイス制度における適格請求書発行事業者となっている場合、消費税の確定申告は所得に関係なく必要になる点にも注意しましょう。なお、ライターの原稿料など源泉徴収が行われている場合では、副業所得が20万円以下でも、還付金を受け取るために確定申告を行った方がよいケースもあります。
また、医療費控除を受けるなど別の理由で確定申告をする場合は、副業所得が20万円以下でも含めて確定申告が必要です。
副業の確定申告についてはこちらの記事でも解説していますので、参考にしてください。
確定申告が不要の場合でも、住民税の申告は必要
20万円以下のために確定申告が不要でも、1円でも利益が出ていたら住民登録をしている市区町村への住民税の申告は必要です。副業の所得も住民税の計算に必要となりますので、忘れずに申告しましょう。
ビジネスパーソンが副業をする際に青色申告をするメリットは?
確定申告の方法には青色申告と白色申告があります。事業所得として申告できる規模で青色申告なら、最大65万円の青色申告特別控除を受けられるといったメリットがあります。所得区分が「雑所得」の場合は、青色申告を選択することができません。
副業の所得はほとんどの場合、雑所得に該当しますが、継続的に業務を行っており、年間の売上額が300万円以上で、帳簿の作成・保存をしている場合は「事業所得」と認められる可能性が高くなります。
事業所得として確定申告を行う場合は、青色申告を選択することが可能です。また、青色申告を選んだ方が節税につながります。青色申告の主なメリットは以下のとおりです。
最大65万円の青色申告特別控除を受けられる
青色申告では条件を満たすことで、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。
納めなければならない税金を少なくできるのは、大きなメリットの1つです。一方、白色申告に特別控除はありません。
青色申告特別控除についてはこちらの記事でも解説していますので、参考にしてください。
青色事業専従者給与を利用できる
青色申告では、家族従業員に支払った給与額を必要経費として計上できる、青色事業専従者給与の特例を利用できます。
白色申告では経費計上ではなく、一定金額での控除が可能です。一方、青色申告では、妥当な額であれば全額を経費に計上できます。
赤字は最大3年間繰り越せる
青色申告では、赤字を最大3年間繰り越せる点も大きなメリットになります。
なお、副業の所得を事業所得として申告する場合、副業の赤字を本業の会社の給与所得から差し引く「損益通算」ができます。そのため、副業の赤字を繰り越すことはほぼないといえるでしょう。なお、損益通算は青色申告でも白色申告でも適用することができます。
固定資産は30万円未満まで一括で経費計上できる
取得価額が10万円を超える固定資産は減価償却が必要になりますが、青色申告の場合、取得価額が30万円未満であれば一括で経費に計上できます。
副業の帳簿付けに会計ソフトを活用しよう
副業の所得は雑所得に区分されることがほとんどですが、所得を計算するには、収入と経費を把握する必要があります。そのためにも帳簿付をしておくと申告が楽になります。そしてある程度の事業規模があり、しっかり帳簿付けを行っていれば事業所得として認められ、節税メリットが高い青色申告を行える可能性があります。
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業種や取引によっては、請求書の発行や保存も必要になります。その際には、インボイス制度や電子帳簿保存法の要件に従う必要があるので、請求書作成ソフトを利用するのがおすすめです。
帳簿付けと併せて請求書の作成・管理ができる、「Misoca」の活用もご検討ください。
副業のバックオフィス業務は弥生のクラウドソフトで効率化
事業所得になる副業の確定申告は申告ソフトを使って楽に済ませよう
会社員などが副業をした場合、副業の所得が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。副業の収入や報酬から源泉徴収をされているなら、確定申告をすれば納めすぎた税金が返金される可能性が高いでしょう。ただ、所得税の確定申告をするには、書類の作成や税金の計算など面倒な作業が多いため、負担に感じる方もいるかもしれません。
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副業の所得区分を事業所得・雑所得どちらにするか迷っている場合、まずは帳簿付けをしておきましょう。事業所得で確定申告する場合は帳簿が必要です。雑所得の場合、帳簿付けの義務はありませんが、売上や仕入・経費などの集計に帳簿がある方が便利です。
なお、『やよいの白色申告 オンライン』では、雑所得の収支内訳書と所得税の確定申告書は作成できません。もし、『やよいの白色申告 オンライン』で作成した収支内訳書から確定申告書を作成すると自動で「事業所得」に集計されます。国税庁の確定申告コーナーで、自分で収支内訳書と確定申告書に転記して申告をしてください。
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