副業は雑所得?雑所得に該当する例や確定申告のボーダーラインを解説
監修者:齋藤一生(税理士)
2024/07/01更新
多くの副業収入は「雑所得」に該当します。そこで、「雑所得とは何か」「どんな収入が該当するのか」「ほかにどんな所得があるのか?」と、気になる人もいるでしょう。
本記事では、雑所得について説明し、該当する収入の例や事業所得との違い、確定申告が必要となる収入のボーダーラインなどについて解説します。
雑所得とは所得の一種
雑所得とは、所得の一種を指します。所得とは、収入から必要経費等を差し引いた金額です。
所得は、所得税法によって10種類に分類されています。雑所得は、ほかの9種類の所得区分のいずれにも当てはまらない所得です。
雑所得のほか、副業をするときに押さえておきたい所得に「給与所得」「事業所得」があります。
給与所得とは、会社から従業員に対して支払われる年間の給与の合計から、給与所得控除を差し引いた金額のこと。副業のパート・アルバイトで得た収入なども給与所得に該当します。
事業所得とは、農業、製造業、卸売業、小売業など、事業主自身が独立して営む事業で得た収入から必要経費や青色申告特別控除を引いた金額です。
所得の種類 | 内容 |
---|---|
利子所得 | 預貯金や公社債の利子ならびに合同運用信託および公社債投資信託の収益の分配による所得です。 |
配当所得 | 株式や出資者が会社から受ける配当、投資信託や特定受益証券発行信託の収益の分配による所得です。 |
不動産所得 | 不動産を貸し出して得た所得です。具体的には、土地や建物などの不動産の貸し付け、借地権など不動産の上に存する権利の設定および貸し付け、船舶や航空機の貸し付けによる所得を指します。 |
事業所得 | 農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業から得た所得を指します。 |
給与所得 | 勤務先から支払われた給与、賞与などの所得です。 |
退職所得 | 退職により勤務先から支払われる退職手当や、厚生年金基金等の加入員が退職した際に支払われる厚生年金保険法に基づく一時金などの所得を指します。 |
山林所得 | 山林の譲渡による所得を指します。 |
譲渡所得 | 土地や建物、ゴルフの会員権などの資産を譲渡することによって生じた所得、および建物などの所有を目的とする地上権等の設定による所得で一定のものを指します。 |
一時所得 | 利子所得から譲渡所得までのいずれにも該当しないもので、営利を目的とした継続行為から生じた所得ではないもの、かつ労務や役務の対価ではないもの、資産譲渡の対価でもないものを指します。例えば、競馬の払戻金や懸賞の賞金、損害保険の満期返戻金などが該当します。 |
雑所得 | 上記の9種類の所得に当てはまらない所得。 |
雑所得についてはこちらの記事でも解説していますので、参考にしてください。
副業の収入は雑所得に該当するケースが多い
雑所得は、他の9種類の所得のどれにも当てはまらない所得全般となるため、その範囲は多岐にわたります。
雑所得は、大きく分けると「公的年金等」と「業務」、「その他」があります。雑所得も他の所得と同様に課税対象です。
副業の収入は、基本的に「業務」として行う雑所得として、確定申告を行うケースが多いものです。
そのため、多くの副業収入が雑所得に該当するのです。例えば、継続的に安定した収入を得るものではなく、単発や一時的な収入を得るものなどは、雑所得と見なされます。
その一方で、継続した期間、安定した収入を得るケースでは、事業所得になることもあるでしょう。収入元が不動産の場合は不動産所得に該当し、本業以外にパート・アルバイトなど雇用契約を結ぶ副業で得た収入は、給与所得に分類されます。
副業の所得が雑所得になる例
副業の所得が雑所得になる主な例は、以下のとおりです。ただし、継続的(反復的)に事業的規模で業務を行っている場合は事業所得と判断できるケースもあります。
雑所得に該当する例
- ネットオークション、フリマアプリ、ネットショップの収入
- アフィリエイトの収入
- 原稿料や印税、講演料
- FXや仮想通貨取引での利益
ネットオークションやフリマアプリ、ネットショップを使って商品を販売しても、単発で収入を得た場合、雑所得になることが多いといえます。アフィリエイトも、事業としてではなく「副業で少額をアフィリエイトで稼いでいる」「お小遣い稼ぎをしている」といった程度であれば、雑所得と判断される可能性が高いです。
また、会社員など他に本業のある人が副業として原稿料や本の印税、講演料などで単発の収入を得た場合も、基本的に雑所得の業務に該当します。FXや仮想通貨取引での利益は、たとえ収入額が多くなったとしても雑所得です。FXや仮想通貨取引での利益は、雑所得における分類では「その他」に該当します。なお、株式や投資信託などの売買益は雑所得ではなく、譲渡所得です。
副業の所得が雑所得にならず、事業所得と判断できるケース
副業の継続性やかけた時間、事業規模、収入規模などを総合的に考え、「事業として営んでいる」といえる場合は、雑所得ではなく事業所得で申告ができる可能性があります。
国税庁のWebページに記載されている事業所得の判断基準は、次の2点です。
事業所得の判断基準
- その所得を得るための活動が、社会通念上、事業と称するに至る程度で行っているか
- 記帳・帳簿書類の保存があるか
収入金額 | 記帳・帳簿書類の保存あり | 記帳・帳簿書類の保存なし |
---|---|---|
300万円超 | 概ね事業所得※ | 概ね業務にかかる雑所得 |
300万円以下 | 業務にかかる雑所得 ※資産の譲渡は譲渡所得・その他雑所得 |
- ※「その所得の収入金額が僅少と認められる場合」もしくは「その所得を得る活動に営利性が認められない場合」は、事業と認められるかどうかを個別に判断する。
- ※国税庁「『所得税基本通達の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」
副業が雑所得の場合、確定申告は必要?
副業による雑所得は、確定申告が必要なのでしょうか。雑所得がいくら以上で確定申告が必要となるか、確定申告に必要な書類、経費の考え方、事業所得の場合との違いについて解説します。
雑所得が年間20万円超なら確定申告が必要
副業による雑所得が20万円を超える場合、確定申告が必要です。
雑所得の総額が年間20万円以下であれば、確定申告は不要です。しかし、副業の収入が源泉徴収をされている場合、確定申告をすることで還付を受けられる可能性があるため、確定申告をすることをおすすめします。
なお、年末調整で適用ができない医療費控除などの控除を受けるなどの理由で確定申告をする場合は、副業の年間所得が20万円以下であっても、副業の所得も併せて申告しなければなりません。
また、副業の年間所得が20万円以下で確定申告をしない場合も、1円でも利益があれば居住している市区町村に対して住民税の申告は必要です。
なお、副業でも適格請求書等保存方式(インボイス制度)への対応で、適格請求書(インボイス)発行事業者の登録をした場合、消費税の課税事業者になるので消費税を納めることになります。所得税の確定申告とは別に、消費税の申告・納付が必要です。
そのため、インボイス登録をした場合、副業の所得が20万円以下であっても、消費税の申告・納付、帳簿付けを行う必要があることを理解しておきましょう。
収入規模によっては領収書の保存や収支内訳書の提出が必要
雑所得にて確定申告を行う際、場合によっては領収書の保存や添付書類が必要です。
2022年分の確定申告から2年前の副業の業務による収入が一定を超える場合、現金預金取引等関係書類(領収書や請求書等)の保管や「収支内訳書」の提出が必要となりました。この場合、所得ではなく収入金額であることに注意をしてください。
また、雑所得の場合、所得税法では帳簿付けの義務はありません。しかし、適格請求書発行事業者の登録をしている場合、消費税法上、帳簿付けと適格請求書(インボイス)の発行・保存が義務なので、間違えないようにしましょう。
前々年の業務にかかる雑所得の収入金額 | 現金預金取引等関係書類の保存義務 | 収支内訳書の作成義務 | 帳簿の作成義務※ |
---|---|---|---|
300万円以下 | なし※ | なし | なし |
300万円超1,000万円以下 | あり |
なし | なし |
1,000万円超 | あり |
あり |
なし |
- ※適格請求書発行事業者の場合は、収入金額の規模にかかわらず、帳簿付けと適格請求書の発行・保存が必要です。
雑所得での確定申告は、経費をきちんと計上する
副業が雑所得でも必要経費が認められます。必要経費に算入できる金額は、次のとおりです。
必要経費にできるもの
- 収入を得るためにかかった費用の額
- その年に生じた販売費、一般管理費、その他業務上の費用の額
例えば、雑所得で経費計上できる費用には、具体的に以下のようなものがあげられます。
雑所得で必要経費に計上できる費用の例
- 業務で使用するパソコンやスマートフォン、タブレットの購入費
- 打ち合わせや取材の交通費・飲食費
- コワーキングスペースの利用料
- コピー用紙や文房具などの事務用品費
- 水道代や電気代、家賃などの一部(自宅を仕事場として利用している場合)
雑所得と事業所得の確定申告の違い
副業による所得が事業所得か雑所得かどうかは、事業規模や費やす時間、もしくは継続性の観点から総合的に判断されます。副業による所得の多くは雑所得に該当しますが、事業所得と判断される可能性もあるでしょう。
副業が事業所得に該当すれば、青色申告による確定申告を選ぶことも可能です。青色申告は、事前申請が必要ですが、事業上の支出入すべてを正確に記帳して申告するので、帳簿の信頼性が高く、主に4つの特典を設けています。
青色申告の主な特典
- 最大65万円の青色申告特別控除を受けられる
- 家族の給与を必要経費にすることができる
- 赤字を3年間繰り越せる
- 少額減価償却資産の特例を使える
※青色申告についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
確定申告に向けた帳簿書類の作成は確定申告ソフトを利用しよう
副業で得た所得は基本的に雑所得として、確定申告を行うケースが多いものです。
雑所得では、基本的に帳簿作成は義務ではありませんが、所得を計算するためには帳簿付けをしておくとお金の流れがわかり、集計や申告時期の業務が軽減されます。
また、副業の雑所得でも販売先次第では、インボイス登録が必要です。インボイス登録をしている場合、帳簿付けが必要です。
帳簿を付けておくことで、事業所得で申告できる可能性も出てくるため、雑所得でも帳簿付けをしておくことをおすすめします。クラウド確定申告ソフト「やよいの白色申告 オンライン」なら、会計や簿記の知識がなくてもスムースに確定申告が可能です。
なお、無料で利用できる「やよいの白色申告 オンライン」は、雑所得の確定申告には対応していません。雑所得として確定申告をする場合は、「やよいの白色申告 オンライン」で作成した書類を基に、国税庁の確定申告コーナーや手書きで収支内訳書と確定申告書に転記するとスムースです。
バックオフィス業務は弥生のクラウドソフトで効率化
事業所得になる副業の確定申告は会計ソフトを使って楽に済ませよう
会社員などが副業をした場合、副業の所得が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。副業の収入や報酬から源泉徴収をされているなら、確定申告をすれば納めすぎた税金が返金される可能性が高いでしょう。ただ、所得税の確定申告をするには、書類の作成や税金の計算など面倒な作業が多いため、負担に感じる方もいるかもしれません。
事業所得になる副業は、帳簿付けが必要です。そんなときにおすすめなのが、弥生のクラウド確定申告ソフト『やよいの白色申告 オンライン』です。『やよいの白色申告 オンライン』はずっと無料で使えて、初心者や簿記知識がない方でも必要書類を効率良く作成することができます。e-Tax(電子申告)にも対応しているので、税務署に行かずに確定申告をスムースに行えます。
副業の所得区分を事業所得・雑所得どちらにするか迷っている場合、まずは帳簿付けをしておきましょう。事業所得で確定申告する場合は帳簿が必要です。雑所得の場合、帳簿付けの義務はありませんが、売上や仕入・経費などの集計に帳簿がある方が便利です。
なお、『やよいの白色申告 オンライン』では、雑所得の収支内訳書と所得税の確定申告書は作成できません。もし、『やよいの白色申告 オンライン』で作成した収支内訳書から確定申告書を作成すると自動で「事業所得」に集計されます。国税庁の確定申告コーナーで、自分で収支内訳書と確定申告書に転記して申告をしてください。
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