経理システムとは?種類や機能、メリットと選び方などを解説
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経理業務の効率化に役立つツールのひとつが、経理システムです。企業のお金にかかわる経理業務は、煩雑な作業が多く、小さなミスが信用問題に発展してしまうこともあります。経理システムを導入することで、業務効率化と共に、経理業務におけるミスや漏れの防止にもつながります。とはいうものの、経理システムの種類や具体的にできることについて詳しく把握できていない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、経理システムの種類や主な機能、導入メリットの他、自社に合った経理システムの選び方についても解説します。
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経理システムは経理業務を効率化するためのシステム全般の総称
経理システムは、経理業務を効率化するためのシステム全般の総称です。経理とは、企業の経済活動にかかわるお金と取引の流れを記録し、管理することです。具体的には、経費精算から伝票や請求書の作成、入出金の各種帳簿への記帳、固定資産台帳の管理、経営にかかわる資料の作成まで、企業のお金に関すること全般を経理が担当します。これらの業務を効率化・自動化するためのシステムが、経理システムです。経理システムの機能については後ほど解説しますが、経理業務の中で、経費精算のみに特化したものもあれば、複数の機能を併せ持つものもあります。そのため、さまざまな種類の中から、自社に適した経理システムを選ぶことが重要です。
経理業務は複雑で多岐にわたるため、手作業で行うには負担が大きく、人為的なミスも発生しやすいですが、経理業務は社外とかかわるものも多く、小さなミスが信用問題に発展する可能性もあります。経理システムを導入することによって、手間のかかる業務の効率化を目指せるだけでなく、ヒューマンエラーの防止にも役立つでしょう。
経理システムと会計システムの違い
経理システムと混同しやすいのが、会計システムです。会計システムとは、会計業務を自動化し、帳簿や決算書(財務諸表)などの作成・管理をサポートするシステムのことです。一般的には、仕訳の入力、集計、決算書の作成といった会計業務の流れを、会計ソフトで自動化する仕組みを指します。
経理業務と会計業務は似た部分も多く、企業によっては、会計システムのことを経理システムと呼んでいるケースがあるかもしれません。しかし、厳密にいうと、経理業務と会計業務には違いがあります。
経理業務とは、基本的に企業における日々のお金の流れを記録・管理することです。その一方で、会計業務とは、企業の経済活動における損益を記録して、その結果明らかになった財政状態などを利害関係者に報告することです。会計業務の中に経理業務が含まれていると考えるとわかりやすいかもしれません。
経理システムを導入する際には、このような経理業務と会計業務の違いを理解しておくことが大切です。例えば、会計業務全体の効率化を考えている場合、経理システムのみを導入すると、必要な機能が不足している可能性があります。そのため、経理システムにどのような機能が備わっているかを確認したうえで、会計システムと連携しやすいものを選ぶといいでしょう。
経理システムの種類
経理システムには多くの種類があり、それぞれ特長が異なります。経理システムの中でも代表的なものが、「経費精算システム」「請求書受領システム」「債権・債務管理システム」の3つです。それぞれどのような機能があるのか、詳しく見ていきましょう。
経費精算システム
経費精算システムは、経費の申請や承認、経理部門での処理といった経費精算に必要な業務を効率化する経理システムです。経費精算は、経理業務の中で頻繁に発生する作業のひとつですが、従業員が立て替えた経費に対して、金額の確認と計算、領収書との照合、承認を経て精算する作業は手間がかかります。また、交通費であれば、使用したルートの確認なども必要になるでしょう。
経費精算システムを導入することで、このような手間を軽減できるうえ、経費精算書など紙の書類をやりとりする必要もなくなります。経費精算システムの種類によっては、領収書やレシートなどをデータ化して読み込むことも可能です。経理業務のペーパーレス化にも役立つため、多くの企業が経費精算システムを導入しています。
請求書受領システム
請求書受領システムは、請求書の受け取りや読み取り、管理ができる経理システムです。請求書受領システムを活用することで、取引先ごとに異なる請求書のフォーマットを統一でき、個別の確認にかかる手間を軽減できます。
請求書を紙で受領した場合、金額の確認や会計ソフトなどへの入力を手作業で行う必要があり、時間がかかる他、ミスも起こりやすくなります。請求書受領システムを導入すれば、これらの作業がデータ上で完結するため、リモートワークの推進や残業時間の削減にも役立つでしょう。また、紙の請求書を保管するためのスペースやコストも不要になります。
なお、電子帳簿保存法により電子データで受領した請求書は、所定の要件に従ってデータのまま保存することが義務付けられています。請求書受領システムを導入する場合は、電子帳簿保存法に対応したものを選ぶことが重要です。
電子帳簿保存法について、こちらの記事でわかりやすく解説していますので、参考にしてください。
債権・債務管理システム
債権・債務管理システムは、自社および取引先ごとの債権・債務を、正確に把握するための経理システムです。債権は、売掛金や未収入金をはじめとしたお金を受け取る権利、債務は、買掛金や未払金などのお金を支払う義務を指します。
債権に対する入金や、債務への支払があったときには、帳簿上の債権・債務の残高を消す「消込(けしこみ)」が必要になります。特に、掛取引を行っている企業にとって、消込は日常的に発生する重要な作業です。消込は、処理件数が多いほど煩雑になり、ミスがあると取引先とのトラブルにも発展しかねないため、正確な作業が求められます。
債権・債務管理システムを導入することで、入金消込や支払消込を自動化でき、銀行口座と連携させた入金管理も可能です。また、債務残高や支払金額を分析し、どのような支払が多いのか、債務が過剰になっていないかなどを管理することもできます。
経理システムのタイプ
経理システムには、大きく分けてインターネットを経由して利用する「クラウド型」と、パソコンにソフトウェアをインストールして使う「インストール型」の2つのタイプがあります。それぞれの違いを把握したうえで、自社にとって使いやすい経理システムを選びましょう。
クラウド型:複数人やテレワークなどでの利用に適している
クラウドとは、インターネット上のサーバーにパソコンやスマートフォンといった端末でアクセスし、サービスを利用する仕組みを指します。このクラウドサービスを利用しているのが、クラウド型の経理システムです。
クラウド型はインターネット上でシステムを利用するため、インターネット環境とアクセス情報さえあれば場所を問わず利用できます。パソコンだけではなく、スマートフォンなどのモバイル端末からもアクセス可能で、複数人での利用やテレワークなどにも適しています。クラウド型の多くは、経理システムのバージョンアップが自動で行われるので、メンテナンスに手間がかからない他、法改正にも対応しやすいでしょう。
また、クラウド型ではデータがすべてクラウド上で保管されるため、データ紛失のリスクが少ないというメリットもあります。
インストール型:オフラインで作業可能、複雑な処理もすばやく対応できる
インストール型は、パソコンにソフトウェアをインストールして使う経理システムで、デスクトップ型やパッケージ型とも呼ばれます。インストール型は、インターネットに接続しなくてもオフライン環境での作業が可能です。インターネット環境や通信速度に依存しないため、一般的にはクラウド型に比べて処理スピードが速く、複雑な経理作業の処理にもすばやく対応できるというメリットがあります。
なお、インストール型は買い切りなので、一度購入すれば基本的には追加料金はかかりませんが、その反面、初期費用が高額になりやすいことに注意しましょう。また、インストールした端末のみで経理システムが利用できるため、パソコンが故障すると使えなくなってしまう他、法改正があった場合は端末ごとにバージョンアップする対応が必要になります。
経理システムを導入するメリット
経理システムを導入すると、経理業務の自動化や効率化、法改正への対応など、さまざまなメリットがあります。経理システムを導入する主なメリットについて見ていきましょう。
経理業務の自動化や効率化につながる
経理システムの導入によるメリットは、経理業務の自動化や効率化につながることです。経費精算や請求書のやりとり、消込処理など、経理業務には日々繰り返し行う作業が多くあります。経理業務を経理システムによって自動化すれば、経理担当者の業務負担が大幅に軽減され、効率化を図ることができるでしょう。同時に、経理業務でのミスや漏れといったヒューマンエラーを削減し、正確な処理が可能になります。
さらに、経理システムと会計システムを連携させて仕訳までを自動化すれば、企業のお金に関連するバックオフィス業務全般の効率化が実現可能です。複数の経理システムや会計システムのデータを連携させ、企業の現状をスピーディーに分析・把握できれば、経営戦略を立てるうえでの重要な指針となります。
スムーズに法改正への対応ができる
経理システムを導入することで、法改正に対してスムーズに対応できるというメリットもあります。電子帳簿保存法をはじめ、近年では適格請求書等保存方式(インボイス制度)の開始など、経理業務にかかわる法令は頻繁に改正が行われます。そのため、経理業務を手作業で行っていると、法改正のたびに詳細を確認し、自社内で対応しなければなりません。また、法改正を見落として対応が不十分だった場合、法令違反になってしまう可能性もあります。
しかし、経理システムを導入していれば、システムの設定を変更したりアップデートしたりすることで、法改正にもスムーズに対応可能です。経理システムの種類によっては、法令や税制の改正に合わせて自動でバージョンアップされるクラウド型の経理システムや、最新の法改正に対応したバージョンアップのサポートが用意されているインストール型の経理システムもあります。
社内の経理情報を一元管理できる
社内の経理情報を一元的に管理できることも、経理システムを導入するメリットです。特に、複数の拠点を持つ企業の場合、紙を使って経理業務を行っていると、書類の確認だけでもやりとりに時間がかかります。経理システムを導入すれば、複数拠点にある経理情報を1か所に集約しやすく、本部や経営者がスムーズに確認できるようになるでしょう。また、クラウド型の経理システムなら、離れた場所からでもデータをリアルタイムで把握できます。
さらに、経理システムに入力されたデータはすぐに確認や検索ができるため、税務調査や監査対応において、該当するデータの提出を求められた際に役立ちます。
経理システムの選び方
経理システムにはさまざまな種類や機能があるため、どれを選んでいいか迷うケースも多いかもしれません。自社に合った経理システムを導入するには、以下のポイントを意識して選ぶといいでしょう。
自社のニーズに適したシステムやタイプで選ぶ
経理システムを導入する際には、自社のニーズに適したシステムやタイプで選ぶことが大切です。また、企業の規模によっても、選ぶべき経理システムは変わってきます。例えば、大企業が導入するような高性能かつ高額な経理システムを中小企業が導入しても、不要な機能が多くコストがかさむだけです。「経理担当者の手間を減らしたい」「ミスを軽減したい」「経費精算を効率化したい」など、自社の目的を明確にしたうえで、その目的を達成できる機能を持つシステムを選ぶことをおすすめします。
また、前述したように、経理システムにはクラウド型とインストール型の2つのタイプがあります。経理システムは、主に複数人やテレワークなどで使用するならクラウド型、決まった担当者・場所で使用するならインストール型など、自社の業務形態に合わせて利用しやすいタイプを選ぶといいでしょう。
サポート体制の充実度で選ぶ
経理システムを導入するうえで、サポート体制の充実度は重要なポイントです。サポートの有無や内容は、経理システムの種類、料金プランなどによって異なります。特に、経理システムの導入初期は操作に慣れず、サポートが必要になる場面も多くなります。不明点を気軽に相談できる窓口をはじめ、サポートセンターの受付時間や対応可能な連絡手段、サポートの範囲などをしっかりと確認しておきましょう。不明点や疑問点があったときに迅速なサポートを受けられなければ、経理システムを導入しても、かえって業務効率が低下することもあります。
法改正に柔軟に対応できるかで選ぶ
経理システムを選ぶ際には、法改正に対応しているかも確認しておく必要があります。クラウド型の場合は、法改正に対応した経理システムのバージョンアップが自動で行われるものが多いでしょう。インストール型の中にも、サポートに加入することで、法改正に合わせたバージョンアップが受けられるものがあります。
経理システムがバージョンアップに対応できないと、税制改正や書類の様式変更があるたびに、自社で調べて対処する必要があります。
他のシステムと連携しやすいものを選ぶ
経理システムを導入するときは、会計システムなど他のシステムとの連携がしやすいものを選ぶのがおすすめです。経理システムによっては、会計システムをはじめ、販売管理や給与計算などのシステムとも連携が可能なものがあります。例えば、経費精算システムを会計システムと連携させれば、経費精算だけではなく仕訳の入力も自動化できます。それぞれのシステムの機能を連携させることで、企業全体の業務効率化につながるでしょう。
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経理システムを活用して業務効率化を目指そう
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。