現金過不足とは?仕訳例を基にした勘定科目や発生の原因を解説
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帳簿上の現金残高と手元の現金は一致しているのが原則ですが、記帳ミスや管理上の問題などにより、実際の金額に差が出ることもあります。「現金過不足」は、ズレが生じた際に使われる勘定科目です。ただし、原因が判明するまでの仮の科目にすぎないため、使用する際は注意しなければなりません。
本記事では、現金過不足が発生する主な原因や仕訳方法に加え、注意点について解説します。現金過不足を未然に防止するための対策も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
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現金過不足とは、帳簿上の現金残高と手元の金額が一致しない状態
「現金過不足」とは、帳簿に記録されている現金残高と手元の現金が一致しないときに用いられる、一時的な勘定科目のことです。原因不明の現金過不足が発生している場合に使われ、後に原因が判明した際には、「雑収入」や「雑損失」などの適切な勘定科目に振り替える必要があります。
帳簿と手元の現金とのズレを放置していると、会計の正確性が損なわれることにもなりかねません。現金過不足が発生した際にやるべきことを理解し、適切に対処していくことが大切です。
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現金過不足が発生する原因
現金過不足が発生する背景には、さまざまな原因が考えられます。その中でもよく見られるのは以下の2つのケースです。
記帳ミス
現金過不足が発生する原因の1つは、帳簿のミスです。売上や支出の記帳漏れ、金額の記入ミスなどがあげられます。
例えば、売上が実際には50,000円だったところを、5,000円と記帳してしまった場合、帳簿上の現金が実際よりも少なく計上されることになります。また、記帳そのものが漏れていたり、二重計上したりすることも、帳簿と手元の現金にズレが生じる典型的なケースです。
さらに、誤った勘定科目を用いて記帳することも、現金過不足につながる原因です。一例として、代金の一部を商品券で受け取っているにもかかわらず、「貯蔵品」ではなく「現金」として計上していた場合、手元の現金よりも帳簿上の金額が大きくなります。
現金の管理ミス
現金の管理ミスが原因で、現金過不足が生じることもあります。釣銭の渡し間違いや手元の現金の数え間違いといった人的ミスに加え、紛失や盗難などの予期せぬトラブルによって現金が合わなくなるケースは少なくありません。
特に、複数名で金庫を管理していたり、現金の取扱担当者が頻繁に交代したりする場合は、管理体制が複雑になりミスも起きやすくなります。その結果、現金過不足が頻発すると、責任の所在が曖昧になり、不正を疑われるリスクも高まります。しかし、現金を扱う以上、こうした管理上のミスを完全に防ぐことは難しいため、現金過不足の発生時には原因の特定と適切な対処が必要です。
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現金過不足の仕訳方法
現金過不足が発生した場合は、まずそのズレを一時的に「現金過不足」として記帳し、原因が判明した段階で適切な勘定科目に振り替える必要があります。ただし、必ずしもすぐに原因がわかるとは限らず、原因不明のまま決算を迎えることもあり得るため、その場合は所定の方法で処理をする必要があります。
ここでは、現金過不足が発生した際の基本的な仕訳方法に加え、原因が判明した場合の処理や、原因が不明なまま決算を迎えるケースについて、仕訳例を確認していきましょう。
現金が少ないときの仕訳例
帳簿上の金額よりも現金が少ない場合には、借方に「現金過不足」、貸方に「現金」の勘定科目を使用します。このような場合、原因が不明なままでは他の勘定科目で処理できないため、「現金過不足」を使って一時的に記帳します。
仕訳例:帳簿上の金額よりも現金が3,000円少ないと判明した
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金過不足 | 3,000円 | 現金 | 3,000円 |
一時的に記帳した後、帳簿上の金額よりも現金の少ない原因が判明した際には、現金過不足を取り崩し、適切な勘定科目へと振り替える処理をしましょう。
仕訳例:現金不足の原因が消耗品費の計上漏れと判明した
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 3,000円 | 現金過不足 | 3,000円 |
現金が多いときの仕訳例
帳簿上の金額よりも現金が多い場合には、借方に「現金」、貸方に「現金過不足」の勘定科目を用います。現金が多い場合も、まずは「現金過不足」で処理し、後から原因に応じて適切な科目へ振り替える点は、現金が少ない場合と同様です。
仕訳例:帳簿上の金額よりも現金が3,000円多いと判明した
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 3,000円 | 現金過不足 | 3,000円 |
超過の原因がわかった場合は、現金過不足を取り崩し、正しい勘定科目へ振り替えます。
仕訳例:現金超過の原因が消耗品費の二重計上と判明した
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金過不足 | 3,000円 | 消耗品費 | 3,000円 |
原因が不明なまま決算を迎えるときの仕訳例
決算までに現金過不足の原因が判明しなかった場合、過不足分は最終的に「雑損失」もしくは「雑収入」として処理します。
「現金過不足」はあくまで一時的な勘定科目であり、決算時には帳簿に残っていない状態にする必要があります。会計期間をまたいで使用できないため、原因が不明なままの場合は、妥当な科目へ振り替えなければなりません。
決算時に、帳簿残高に対して現金が少ない場合には「雑損失」、現金が多い場合には「雑収入」を用いて処理しましょう。
仕訳例:帳簿残高5,000円に対して現金残高が2,000円で、かつ原因が不明だった
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
雑損失 | 3,000円 | 現金過不足 | 3,000円 |
仕訳例:帳簿残高5,000円に対して現金残高が8,000円で、かつ原因が不明だった
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金過不足 | 3,000円 | 雑収入 | 3,000円 |
ただし、現金過不足が生じている状態で決算を迎えるのは、本来であれば望ましいことではありません。現金過不足が長期にわたって解決していなかったり、帳簿残高と現金残高のズレが過大だったりすれば、現金管理の不備として、税務署から指摘を受ける可能性もあります。そのため、決算までに現金過不足の原因を可能な限り調査し、本来の勘定科目へと振り替えておくことが大切です。
また、決算直前まで差異に気づかないといった事態を防ぐためにも、日頃から帳簿残高と現金残高を照合する習慣を持つことが求められます。
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現金過不足が発生したときの注意点
現金過不足が発生した際には、単に仕訳して終わりにするのではなく、税金の処理や税務調査に影響する可能性にも注意しなければなりません。場合によっては、消費税の課税対象とみなされたり、税務調査で問題視されたりすることもあります。
現金過不足を処理する際に気をつけたい注意点は、以下のとおりです。
消費税の課税対象になることもある
現金過不足の原因が売上の計上漏れであった場合、その金額は消費税の課税対象となります。
通常、「現金過不足」や振り替えられた「雑収入」「雑損失」は、対価を得た取引ではなく、帳簿と実際の現金残高の差額を調整するための処理です。そのため、消費税の課税対象外(不課税取引)となります。
しかし、現金超過の原因が売上の計上漏れであれば、本来の勘定科目である「売上高」へと振り替えなければなりません。「売上高」に振り替えた時点で、その金額は売上とみなされ、消費税の課税対象となります。もし、原因を調査せずに「雑収入」として処理してしまうと、本来計上すべき売上を申告していないと判断され、税務調査で追徴課税を受けるリスクが高まります。税務調査で追徴課税を受けた場合、不足した税額の納付に加え、原則として追加納税額の10%~15%にあたる過少申告加算税や、延滞税が発生する可能性もあり、税務上の負担が大きくなる点に注意しなければなりません。
現金過不足の原因を調査する際には、売上の計上漏れが含まれていないかを十分に確認し、適切な勘定科目へ振り替えることが大切です。
税務上問題があると判断される場合もある
現金過不足が高い頻度で発生していたり、金額の大きいズレが未解決のまま残っていたりすると、税務上の問題がある事業者と判断され、税務調査などの際に指摘を受ける可能性があります。例えば、長期間にわたって帳簿残高と現金残高に大きな乖離があるような場合は、不透明なお金の流れがあるのではないかと疑われることもあるでしょう。
本来、帳簿上の金額と手元の現金は一致していなければなりません。差異が生じた場合は、速やかに原因を調査し、判明したら正しい勘定科目へ振り替えるのが基本です。現金過不足が頻繁に発生したり、多額のまま残っていたりすると、税務調査などで現金管理がずさんであると見なされる可能性もあります。日常的に帳簿と現金残高を突き合わせ、現金過不足が発生した場合は原因を究明し、正しい管理を徹底しなければなりません。
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現金過不足を防止するための対策
現金過不足は、日々のわずかな確認漏れや処理ミスによって発生することがあります。しかし、あらかじめ対策を講じておくことで、発生リスクを大きく減らすことが可能です。現金過不足を防止するために講じておきたい対策について、見ていきましょう。
日次での帳簿と現金残高を照合する
現金過不足の発生を防ぐための基本的な対策は、帳簿残高と実際の現金を日常的に照合することです。例えば、「日々の終業前に、帳簿残高と現金残高が一致していることを必ず確認する」といったルールを業務に組み込むことが効果的です。
帳簿残高と現金残高の小さなズレに早く気づければ、原因の特定も比較的容易になり、関係者の記憶が新しいうちに、どの取引に問題があったかを正確に振り返ることが可能です。時間が経つと確認すべき取引件数が増え、原因となった取引を特定するのが難しくなるため、日次での照合を習慣化するのが望ましいでしょう。
業務フローを整備する
業務フローの整備も、現金過不足の発生を未然に防ぐうえで欠かせない対策の1つです。現金の取扱手順をマニュアル化し、「誰が・いつ・何をするのか」を明確にすることで、人為的なミスや不正の抑止にも役立ちます。
現金管理の業務フローを整備するうえで、留意しておきたいポイントは以下の3点です。
現金の保管場所と保管方法に関するルールを策定する
現金を安全かつ確実に保管するには、保管場所と保管方法に関するルールを明確に定めましょう。例えば、現金は金庫や鍵のかかる引き出しに保管し、鍵の管理方法も含めてルールを定めておくことが大切です。誰でも現金を出し入れできるような状態では、現金過不足の原因が記帳ミスや数え間違いなのか、紛失・盗難なのかを判別するのが難しくなります。ルールを明確に定めて運用することが、現金過不足の防止につながります。
現金出納帳にすべての入出金を記録する
現金を出し入れする際は、必ず現金出納帳に記録しましょう。入出金記録と照合することにより、現金過不足がどの時点で生じたのか特定しやすくなるためです。帳簿残高と現金残高がどこまで一致していたかわかれば、その後の入出金の中にミスがあることも推測でき、原因の特定がスムーズになります。
担当者を決め、責任の所在を明確にする
現金の取り扱い担当者を決め、管理を限定的に行う体制を整えましょう。複数名で担当する場合には、誰が入出金したのか後から確認できるよう、現金出納帳に担当者名を記載する必要があります。管理体制の構築を徹底することで、現金過不足が発生した際にも、責任の所在や原因の特定がしやすくなります。
会計システムを導入する
会計システムを導入し、手作業による人為的ミスの発生を未然に防ぐのも効果的な対策です。会計システムを活用することで、仕訳や残高照合を自動化できます。人の手を介した処理が増えれば増えるほど、記帳の漏れや見落とし、計算ミスといったヒューマンエラーが発生しやすくなります。日々の入出金を会計システム上で処理し、人為的なミスを防ぐのがポイントです。
また、会計システムの導入によって業務効率化を図る効果も期待できます。仕訳や集計が自動で処理されるシステムを活用すれば、従来は担当者が手作業で行っていた業務の負担を軽減できます。さらに、会計システムと他のシステムを連携させることで、取引内容の転記を省略できる場合もあるでしょう。
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会計システムを活用して現金過不足の発生を未然に防ごう
「現金過不足」は、帳簿残高と現金残高が一致しない場合に用いる一時的な勘定科目です。あくまで仮処理のための勘定科目であるため、現金過不足の原因をできるだけ早期に特定したうえで、しかるべき勘定科目へと振り替える処理を行う必要があります。決算時に現金過不足の原因が判明していない場合には、「雑収入」や「雑損失」として処理することになりますが、その金額が大きすぎると会計上の信頼性に疑問を持たれる可能性も否めません。状況によっては消費税の追徴課税の対象となったり、税務上問題のある事業者と見なされたりするおそれもあります。
現金過不足を防ぐには、帳簿残高と現金残高をこまめに照合し、発生時には原因を調べたうえで適切に帳簿へ反映させることが求められます。一連の処理を正確かつ効率的に進めるには、会計ソフトの導入がおすすめです。現金過不足の発生を未然に防ぎ、担当者の負担軽減や業務効率の向上を図るためにも、会計ソフトを活用しましょう。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
