資金繰り表とは?作成するメリットと作り方をわかりやすく解説
監修者: 齋藤一生(税理士)
公開
事業者が事業を続けていくためには、資金繰りが非常に大切。その資金繰りの管理に役立つのが、過去から将来までのお金の流れを把握できる「資金繰り表」です。
ここでは、資金繰り表の概要や作成するメリットのほか、作り方と活用方法について解説します。
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資金繰り表とは、事業者が得た現預金の収入や支出をまとめた表
資金繰り表とは、事業者が一定期間に得た現金・預金の収入や支出をまとめ、お金の流れを可視化した集計表です。一般的には、過去のデータを「実績」としてまとめただけでなく、将来の資金計画を表す「予定」についても記載した表になります。
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資金繰り表を作成するメリット
資金繰り表を作成するメリットは、お金の流れが可視化されることで資金繰りの改善に役立ったり、融資を受ける際に資料として活用できたりすることが挙げられます。具体的に資金繰り表を作成するメリットは、次の3点です。
黒字倒産の防止につながる
黒字倒産とは、会計上は黒字にもかかわらず、現金がないために期日までに支払いを行えず倒産してしまうことです。東京商工リサーチが行った2020年「倒産企業の財務データ分析」調査によると、2020年に倒産した企業のうち、最終赤字だった企業は53.2%ですから、倒産した企業の半数弱は、直近の決算が黒字にもかかわらず倒産していることになります。
例えば、黒字倒産になってしまうのは、例えば次のようなケースです。
黒字倒産が起きる例
- 売上:500万円(現金100万円、売掛金400万円)
- 仕入:300万円(買掛金300万円)
- その他の経費:50万円(現金払い)
この場合、帳簿上では500万円-300万円-50万円=150万円の利益が出ていますが、実際に手元にあるお金は100万円-50万円=50万円だけです。
この状態で、売掛金が入金される日より先に買掛金の支払日を迎えてしまうと支払いができずに、黒字倒産の危険があります。
黒字倒産を防ぐためには、帳簿とは別に手持ち現金の流れを常に把握し、支払いが滞らないように管理する必要があります。現金の流れを可視化できる資金繰り表があれば、問題の早期発見や手持ち現金の管理がしやすくなり、黒字倒産の予防につながります。
例えば、売掛金の回収サイトが長すぎるようなら、取引先と交渉して支払期日を変更してもらうことも検討できるでしょう。
金融機関からの融資がスムーズになる
金融機関から融資を受けるには、なぜこのタイミングでこの金額の融資を受けるのかを、論理的に説明できなくてはいけません。資金繰り表は、借り入れの必要性と返済見込みを説明する際の材料になります。
実績だけでなく売掛金の回収予定についてもまとめておけば、将来の資金計画を可視化して説明できるので、より説得力が高まります。
資金繰り改善に役立つ
資金繰り表を作ると現金の流れが分かるので、売掛金の回収サイトが遅い、買掛金の支払サイトが早いなど、現状の問題点が分かります。収入と支出の改善について対策ができるので、資金繰り改善に役立つでしょう。
また、今後のお金の流れが予想できれば、資金ショートの可能性を予測し、対策をとることもできます。
資金繰り表の作成方法
資金繰り表を作成する際には、まず過去のデータから現在までのお金の流れをまとめた実数値の表を作り、それをもとに、将来の予測数値を盛り込んだ予定表を作るのが一般的です。ここでは、実数値の資金繰り表の作成にあたって準備すべきものと、Excelなどを利用して資金繰り表を作る場合の手順をご紹介します。
なお、資金繰り表の様式は、Excelやノートを使って自分で作ることもできますが、インターネット上で数多く公開されている雛形を利用すると便利です。
準備するもの
- 月次試算表や現金出納帳など(現金や預金、借入金のお金の流れが分かる資料)
- 会計ソフトを利用して帳簿をつけている場合は入力済のデータ
1.雛形などを利用してフォーマットを作成する
インターネット上でダウンロードできる雛形などを利用して、項目を設定した資金繰り表のフォーマットを作ります。
どのような項目を盛り込むかに明確な決まりはありませんが、本業の収支(経常収支)と本業以外の収支(非経常収支)、財務収支を区分することと、カテゴリーごとに数字を把握しやすいように、できる限りシンプルにしておくのがポイントです。
おすすめは上の図のように、「営業収支」「投資収支」「財務収支」を区分したシンプルな作りにすることです。最低限、毎月の売上にあたる「現金売上」と「売掛金回収」、仕入にあたる「買掛金支払」、経費である「人件費」や「諸経費」、銀行借り入れなどの「借入金」、銀行返済にあたる「借入金返済」といった項目は記載します。
さらに、「設備投資」と「納税」も盛り込んでおくことも忘れないようにしましょう。
2.月次推移表を見ながら入力する
月次推移表を見ながら、各項目に数字を入れていきます。月次推移表とは、各月における各勘定項目の残高を記載して並べたもので、1か月ごとの決算書のようなものです。会計ソフトを利用している場合は、日々の入力を行っていれば、自動で作成してくれます。
現時点までの数字を入れ終わったら、内容をチェックしていきます。特に注目したいのは、下記のような点です。
経常収支がプラスになっているか
経常収支がマイナスの場合、本業が赤字だということなので、早急に原因を突き止めて対策を打つ必要があります。経常収支がマイナスで損益計算書上は黒字の場合は、「売掛金の回収サイトが長い」「売掛金の回収が滞っている」など、資金繰りに問題があると推測されます。損益計算書も赤字の場合は、事業内活動自体に問題があると思われるので、売上は落ちていないか、経費の使い方は適切かなど、事業活動を見直すことになります。
財務収支(借入金の返済)が経常収支を上回っていないか
借入金の返済が経常収支を上回っている場合、資金繰りや事業活動に問題があることを示しているので、経常収支がマイナスのときと同じように改善策が必要になります。
計画どおりの投資リターンが得られているか
設備投資を行った結果、本業に関わる売上がどれだけ増えたのかをチェックします。投資から回収までは時間がかかりますが、回収が予定どおりに進んでいない場合は、計画の見直しや原因究明が必要になります。
将来の資金繰りについても予測してみる
現在までのデータを入力し終えたら、次に未来の数字を予測して「予定」の部分を作っていきます。販売計画や設備投資予定の予算案、人員計画などを用意して、それらの数値を反映させてください。できれば年内、最低でも3か月先までの予測を立てましょう。
予定の資金繰り表を作成するポイントは、固定費など毎月確実に発生する経費から先に入力していくことです。売上予想などは、ややシビアに設定します。
予定の資金繰り表を見て、3か月後の翌月繰越がマイナスになっている場合、3か月後に資金不足に陥ることを示しているため、早急に対策が必要です。資産を売却する、金融機関から融資を受けるといった直接の資金調達に加え、不要な経費の削減や借入金の返済スケジュールの見直し、売上額のチェックなどの対策も検討する価値があります。
逆に資金に余裕があるなら、設備投資等を考える材料になります。
資金繰り表とキャッシュ・フロー計算書との違い
資金繰り表と同じく事業の現金の流れを把握するための資料としては、キャッシュ・フロー計算書が挙げられます。資金繰り表とキャッシュ・フロー計算書の違いは、まず現在までのお金の流れを把握するための資料か、将来を含めたお金の流れを見るための資料なのかという点です。また、作成の義務があるかどうかも違いの1つとなります。
ここでは、資金繰り表とキャッシュ・フロー計算書、それぞれの特徴と違いについて見ていきましょう。
キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フロー計算書は、事業の資金の流れを表した会計書類で、損益計算書・貸借対照表をもとにして作成されるものです。会社や団体の一会計年度の経営成績や財務状態を表した書類「財務諸表」の1つであり、財務諸表の中でも特に重要な書類として、貸借対照表、損益計算書と併せて、「財務三表」と呼ばれています。
キャッシュ・フロー計算書は、大規模法人は作成が義務付けられている書類です。中小企業の場合、作成の義務はありませんが、お金の流れが把握できるため作成するメリットはあります。
資金繰り表
資金繰り表は、現在までのお金の流れと今後の予想を表にしたものです。大規模企業、中小企業など、企業規模によって作成義務は発生しません。純粋に自社の資金管理に役立てるためや融資を受ける際の資料として提出するために作成します。構成がキャッシュ・フロー計算書より直感的で分かりやすく、どちらかといえば中小企業向けです。
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