仮払金とは?前払金や立替金との違い、仕訳例などを解説

2023/07/13更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

仮払金は、会社が用途未確定の経費として会社が一時的に支払う勘定科目です。例えば、交通費や交際費といった経費について、正確な金額が決まる前に、会社が従業員に概算でお金を支払うことがあります。このように、用途や金額が定まっていないものに対して支払いをした場合には、仮払金の勘定科目で仕訳をします。

仮払金が発生した場合は、支払時や精算時などに適切に仕訳をしなければなりません。ここでは、仮払金の内容や具体的な仕訳例、仮払金と混同しやすい前払金・立替金との違いなどを解説します。

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仮払金とは、用途未確定の経費として会社が一時的に支払うお金のこと

仮払金とは、金銭の支払いはあったにもかかわらず用途や金額が決まっていない場合に、概算で会社が一時的に支払うお金のことです。使い道や金額は定かでないものの、一定のお金が必要になることは確定しているものに対して事前に支払いをしたときには、勘定科目を仮払金として処理します。

例えば、従業員が海外出張をする場合、交通費や宿泊費などがいくらかかるのかは、出張が終わってみないとわかりません。しかし、高額になることが予想される経費を、出張が終わるまですべて従業員に立て替えさせるのは無理があります。そのため、出張にかかる金額を大まかに計算し、あらかじめ従業員に渡しておきます。このような金銭を処理する勘定科目が仮払金です。

ただし、仮払金はあくまで一時的に使用するための勘定科目です。用途や金額が確定した時点で、すみやかにしかるべき勘定科目に計上し直さなければなりません。前述の例でいえば、従業員が出張から戻って交通費や宿泊費、接待費などの金額がはっきりしたら、それぞれ適当な勘定科目に金額を振り替える必要があります。

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仮払金と前払金・立替金との違い

仮払金と混同しやすい勘定科目に、前払金と立替金があります。これらと仮払金とでは、どのような点が異なるのでしょうか。それぞれ説明します。

仮払金と前払金との違い

仮払金と混同されやすい勘定科目の1つに、前払金があります。仮払金と前払金の違いは、「支払った時点で目的や金額が明確であるか」どうかです。

前払金とは、商品やサービスなど支払いの対象が既に決まっていて、その代金の一部または全部を財貨や役務の受け取りより先に支払ったときに、いわゆる手付金を処理するために使用する勘定科目です。支払いの段階で目的や金額は判明しており、残金がある場合もその金額は明確になっています。

一方、仮払金は、支払った時点ではまだ用途や金額が確定していません。支払う金額は概算であり、後で変動する可能性もあります。お金を先に支払うという点では前払金と似ていますが、状況に応じて適切に使い分ける必要があります。

仮払金と立替金との違い

立替金も、仮払金と混同しがちな勘定科目の1つです。仮払金と立替金は、会社からの一時的な支払いという意味では似ていますが、「支払いをするタイミングや、最終的に費用を負担するのが誰になるのか」という点が異なります。

立替金は、取引先や従業員などが本来負担すべき金銭を、会社が一時的に立て替えたときに計上する勘定科目です。必要な金額が明確になってから支払うものであり、取引先や従業員などの後で本来負担すべき相手から回収するため、債権としての性質を持ちます。

一方、仮払金は、必要な勘定や金額が確定する前に概算で支払うものです。また、仮払金はそもそも自社で負担すべき金額を財貨やサービスの受け取りより先に払っているものであり、後で経費として計上することを前提としています。そのため、仮払金は債権を伴いません。

仮払金の仕訳例

ここからは、仮払金の仕訳例を具体的に見ていきましょう。「仮払金を支払ったとき」「仮払金の内容が確定し、お金が余っていたとき」「仮払金の内容が確定し、不足が生じていたとき」の3つのケースに分けて、仕訳例をご紹介します。

仕訳例1:仮払金を支払ったとき

まずは、実際に仮払金を支払ったときの仕訳について説明します。ここでは、従業員への出張費用として、消費税も加味して現金で22万円を渡した場合の仕訳について考えてみましょう。

会社の資産から現金22万円が減るため、貸方の勘定科目は現金になります。現金が減った理由は仮払金を従業員に支払ったことなので、借方科目は仮払金です。

この場合の仕訳は下記のとおりです。

仮払金を支払ったときの仕訳例
借方 貸方
仮払金 220,000円 現金 220,000円

仕訳例2:仮払金の内容が確定し、お金が余っていたとき

仮払金を支払い、後日内容が確定したら、該当する勘定科目に振り替える必要があります。振り替えとは、ある勘定科目から別の勘定科目に金額を移すことです。支払った仮払金の方が実際に使用した金額よりも多かった場合は、従業員から返金してもらうことになります。なお、このとき消費税については、消費税の税抜経理をしている場合には、仮払消費税という勘定科目を使用します。

ここでは、仕訳例1の出張で、交通費5万円、宿泊費10万円、消費税10%が経費として発生することが確定し、余った5万5,000円が返金された場合の仕訳について考えてみましょう。

この場合の仕訳は下記のとおりです。

仮払金の内容が確定し、お金が余っていたときの仕訳例
借方 貸方
交通費 50,000円 仮払金 220,000円
宿泊費 100,000円
仮払消費税 15,000円
現金 55,000円

仕訳例3:仮払金の内容が確定し、不足が生じていたとき

仮払金の用途や金額が確定し、不足が生じていたことがわかったときは、すみやかに不足分を従業員に支払う必要があります。

ここでは、仕訳例1の出張で、交通費7万円、宿泊費15万円、消費税10%が経費として発生することが確定し、2万2,000円の不足が生じていることが判明したため、従業員に現金で不足分を支払った場合の仕訳について考えてみましょう。

この場合の仕訳は下記のとおりです。

仮払金の内容が確定し、不足が生じていたときの仕訳例
借方 貸方
交通費 70,000円 仮払金 220,000円
宿泊費 150,000円 現金 22,000円
仮払消費税 22,000円

仮払金を用いるときのポイント

仮払金は、概算で支払うという性質から不正に用いられることもあるため、適切な管理が求められます。ここでは、仮払金を使用するときに押さえておくべきポイントを4つ紹介します。

決算までには内容を確定させる

仮払金はあくまで一時的に使用する勘定科目であり、基本的には決算までに内容を確定させ、しかるべき勘定科目に振り替える必要があります。もし決算までに内容を確定させることができなかった場合は、仮払金として貸借対照表の資産の部に計上することになります。

しかし、そうなると、税務署や金融機関から、管理体制への不備や本来必要ない部分への支払いがあることを疑われてしまうかもしれません。場合によっては税務調査に入られたり、融資を断られたりする可能性もあります。

そのため、仮払金はいつまでも放置せず、できるだけ早く内容を確定させましょう。どうしても決算までに確定できなかった場合は、理由をきちんと説明できるようにしておくことも大切です。

内容が確定したら早めに適切な勘定科目に移動させる

仮払金に仕訳した金額は、その内容が判明次第、できるだけ早くしかるべき勘定科目に移動させましょう。仮払金はあくまで一時的に使用する勘定科目のため、交通費などを概算で従業員に渡したケースであれば、金額や勘定が確定したら、すぐに精算し、適切な科目に振り替えることが大切です。

消費税の計上に気をつける

仮払金は、支払いの時点では用途や金額が定まっていないため、消費税が発生しません。仮払金の段階で消費税を計上してしまうと、後日内容が確定したときの金額と食い違いが生じる可能性があります。消費税は、仮払金の内容が確定し、勘定科目が決まったときに併せて計上するようにしましょう。このとき使用する勘定科目は、「仮払消費税」になります。

なお、支払った仮払金が余った場合、返金された仮払金は消費税の対象とならないため注意が必要です。

管理台帳を作成する

仮払金の件数が増えると、精算漏れや金額間違いなどが起こりがちです。仮払金を適切に管理するためには、管理台帳を作成するとよいでしょう。誰にいくら仮払金を支払い、用途や金額が確定するのがいつになるかを、支払い時点で管理台帳に記録しておきます。管理台帳を作成することで、仮払金のミスや漏れを防ぐことができるはずです。

複数の人間で管理する

仮払金は、現金の着服などの不正が起こりやすい勘定科目です。不正のリスクを防ぐため、仮払金は、必ず複数人で管理するようにしましょう。1人の担当者に管理を任せていると、管理がずさんになったり、周りから疑念を持たれてしまったりすることもあります。

前述した管理台帳と併せて、複数人でチェックする体制を整えておくことが大切です。仮払金の上限や精算方法など、社内ルールを設定しておくのも不正防止に役立ちます。

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会計ソフトを活用して仮払金を適切に管理しよう

仮払金は、目的や金額が定まっていないお金を支払ったときに使用する勘定科目です。仮払金という名前のとおり、あくまで一時的に用いる勘定であるため、できるだけ早い段階で内容を確定させ、本来の勘定科目に計上し直す必要があります。そのためには、精算していない仮払金がないか、重複した支払いがないかなどを、こまめにチェックすることが大切です。

仮払金の管理を行ううえで役立つのが、会計ソフトです。会計ソフトを活用すれば、仮払金の残高を確認したり、適切な勘定科目に振り分けたりする作業もかんたんに行えます。仕訳の手間を削減するためにも、自社に合った会計ソフトの導入をおすすめします。

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よくあるご質問

仮払金とは?

仮払金とは、用途や金額が未確定の経費として会社が一時的に支払うお金のことを指します。仮払金はあくまで一時的に使用するための勘定科目であり、用途や金額が確定した時点ですみやかにしかるべき勘定科目に計上し直す必要があります。詳しくはこちらをご確認ください。

仮払金と前払金との違いは?

仮払金と前払金の違いは、「支払った時点で目的や金額が明確であるか」どうかです。前払金は支払いの段階で目的や金額は判明しており、残金がある場合もその金額は明確になっているのに対し、仮払金は支払った時点ではまだ用途や金額が確定していません。詳しくはこちらをご確認ください。

仮払金の処理における注意点は?

仮払金はあくまで一時的に使用する勘定科目であるため、基本的には決算までに内容を確定させ、その内容が判明次第できるだけ早く、しかるべき勘定科目に振り替える必要があります。仕訳の手間を削減するためにも、「弥生会計 オンライン」をはじめとする会計ソフトの導入をおすすめします。

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この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
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