合同会社設立は1人でできる?設立するメリットや注意点を解説
監修者:森 健太郎(税理士)
2024/03/04更新
個人事業主からの法人化(法人成り)などで、1人で会社を設立するときには、一般的に株式会社か合同会社どちらかの会社形態を選びます。中でも合同会社は、株式会社に比べて設立費用が少なくて済むことから、一人会社の第一選択肢ともなり得ます。
では、そもそも合同会社は1人で設立できるのでしょうか。また、一人社長で合同会社を設立すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、1人で会社を設立するときに合同会社を選ぶメリットや注意点、1人で合同会社を設立する際に意識したいポイントについて解説します。
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合同会社は1人で設立できる
合同会社は1人で設立できます。1人で設立が可能な会社形態には、「株式会社」「合同会社」「合名会社」の3つがありますが、合同会社は設立費用が抑えられる点や定款認証が不要なためより簡易に会社が設立できる点から、一人会社の設立の会社形態として選ばれる場合があります。
合同会社や株式会社などの法人は個人事業主とは税金の仕組みが異なるため、個人事業主としての事業所得が一定額を超えると、会社を設立した方が節税効果は高くなる可能性があります。合同会社を1人で設立した場合には、自分自身が代表社員として事業を運営していくことになります。
- ※一人会社については以下の記事を併せてご覧ください
株式会社と比較した際の合同会社のメリットや注意点
日本で多く選ばれている会社形態は、株式会社と合同会社です。一人会社を設立する場合には、会社形態を合同会社と株式会社のどちらにするか選ぶことが多いでしょう。
合同会社と同様に、株式会社も1人での設立が可能です。かつては、株式会社を設立するには最低でも取締役が3人は必要でしたが、2006年の改正会社法により、取締役1人でも株式会社を設立できるようになりました。そのため、設立人数においては合同会社と株式会社に違いはありません。
以下に、株式会社と比べた合同会社のメリットや注意点といった特徴をあげます。比較したうえで、自分の目的や事業内容に合った会社形態を選ぶようにしましょう。
メリット | 注意点 |
---|---|
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- ※株式会社と合同会社の違いについては以下の記事を併せてご覧ください
一人社長で合同会社を設立するメリット
合同会社を設立すると、社会的信用が向上する点や経費の適用範囲が広がる点など、個人事業主にはないさまざまなメリットを得られます。設立を検討する前に、どのようなメリットがあるのかを確認しておきましょう。
一人社長で合同会社を設立するメリット
- 法人化により、一人会社でも社会的信用を得やすくなる
- 経費の適用範囲が広がり、税負担を軽減しやすくなる
- 社会保険への加入が可能になる
- 有限責任になり、会社が倒産した際のリスクが低下する
法人化により、一人会社でも社会的信用を得やすくなる
一人社長で合同会社を設立するメリットには、法人化により社会的信用を得やすくなることがあげられます。法人を設立する際には、商号(社名)や住所、資本金などの情報を法務局に提出して法人登記(会社設立登記)を行います。登記した内容は誰でも閲覧できるため、法人としての責任が発生し、たとえ一人会社であっても社会的な信用度は高くなります。
そのため、個人事業主とは契約を結ばない企業の中には、合同会社を設立することにより取引が可能になる企業もあるでしょう。社会的な信用度が向上した結果、金融機関からの融資を受けやすくなる可能性もあります。金融機関からの融資を考えている方は、法人化を検討してみてください。
経費の適用範囲が広がり、税負担を軽減しやすくなる
一人社長で合同会社を設立するメリットには、税負担を軽減しやすくなることがあげられます。
同じ1人でも、法人化すると個人事業主より経費の幅が広がるためです。
- ※所得とは合計所得金額のことを指します。
- ※本図は所得税と法人税に絞った比較をしています。個人事業主と法人で支払う総合的な税金額の比較をされる場合は、税理士へご相談ください。
例えば、個人事業主は事業所得がすべて課税対象となりますが、合同会社なら、要件を満たせば自身への役員報酬を経費として扱うことが可能です。また、個人事業主の所得税は所得に応じて税率が最大45%まで上がりますが、合同会社にかかる法人税の税率は、資本金1億円以下で所得が800万円以下なら15%、所得が800万円を超える部分については23.2%です。
そのため、所得が増えれば増えるほど、法人化による節税効果は高くなるといえます。税負担を少しでも軽減したいと考える方は、法人化も視野に入れてみましょう。ただし、所得によっては法人化しても節税にならない場合もあるため、税理士などの専門家にも相談して慎重に見極めるようにしてください。
社会保険への加入が可能になる
一人社長で合同会社を設立するメリットには、社会保険への加入が可能になることがあげられます。
合同会社を設立すると、たとえ一人会社でも、健康保険や厚生年金保険といった社会保険に加入することになります。
厚生年金保険に加入すると、国民年金しか加入できない個人事業主に比べて、将来受け取る年金額を増やすことが可能です。ただし、社会保険料の事業者負担分が発生する点には注意しましょう。
有限責任になり、会社が倒産した際のリスクが低下する
一人社長で合同会社を設立するメリットには、有限責任になるため、倒産した際のリスクが低下することがあげられます。個人事業主は無限責任なので、経営が悪化した際の仕入れ先への未払い金や金融機関からの借入金、滞納した税金は、個人で負担しなければなりません。
一方、法人の場合は、事業上の責任は限られた範囲の有限責任です。
一人会社であっても原則として、代表者個人がすべての責任を負う必要はありません。
もし倒産してしまったとしても、出資額を超えた支払義務が発生せず個人の資産は守られるため、万一の際のリスクを最小限にとどめることができるでしょう。
一人社長で合同会社を設立する際の注意点
1人での合同会社の設立は、メリットばかりではありません。一人社長で合同会社を設立する場合は、次のような注意点があることも知っておきましょう。
一人社長で合同会社を設立する際の注意点
- 会社を設立する費用と手間がかかる
- 日常的な事務手続きの負担が重くなる
- 赤字でも納税しなければならない
- 法人や個人のお金を厳密に管理する必要が出てくる
会社を設立する費用と手間がかかる
一人社長で合同会社を設立する注意点には、会社を設立する費用と手間がかかることが挙げられます。
合同会社は株式会社に比べて設立費用が少なく、定款の認証も不要とはいえ、法務局での法人登記には最低6万円の登録免許税が必要です。
また、1人ですべての設立手続きをしようとすると、定款の作成や設立登記申請にも時間がかかってしまう可能性があることも、考えておく必要があります。
- ※合同会社の設立にかかる手続きや費用については以下の記事を併せてご覧ください
日常的な事務手続きの負担が重くなる
一人社長で合同会社を設立する注意点には、日常的な事務手続きの負担が重くなることがあげられます。
法人の決算申告は、個人事業主の確定申告より手続きが複雑で作成する書類も多いため、自分1人だけですべてを行うのは困難といえるしょう。
日常的な事務負担に加え、決算申告手続きを税理士に依頼する費用がかかることも、考慮しておく必要があります。
赤字でも納税しなければならない
一人社長で合同会社を設立する注意点には、赤字でも納税しなければならないことがあげられます。
合同会社をはじめとする法人には、決算が赤字でも納付する義務のある税金があります。個人事業主なら赤字の場合、所得税と住民税は0円です。
しかし、法人の場合、たとえ決算が赤字であっても、法人住民税の均等割や消費税は納付しなければなりません。法人住民税の均等割は定額で所得とは関係性がないものですし、消費税は間接税なので取引先や顧客から預かっている税金であるためです。
なお、法人であっても要件を満たしていれば、消費税は免税となる場合があります。免税事業者を希望される方は、自分が免税となる要件を満たしているか確認してみてください。
- ※消費税の免税要件については以下の記事を併せてご覧ください
法人や個人のお金を厳密に管理する必要性が出てくる
一人社長で合同会社を設立する注意点には、法人や個人のお金を厳密に管理する必要性が出てくることがあげられます。特に、会社のお金と個人のお金を混同しないように、注意しなければなりません。
個人事業主であれば、事業で得た所得は個人の所得なので、どのように使うかは個人の自由です。
しかし、一人会社を設立すると、代表者である自分は会社から役員報酬を受け取る形になります。たとえ社長1人だけの会社でも、会社のお金を自由に使うことはできません。
そのため、銀行口座やカードは法人用とプライベート用で分け、適切に管理するようにしましょう。
一人社長で合同会社を設立する際に意識したいポイント
1人で合同会社を設立する際には、複数人で会社を設立するときとは違った注意点があります。一人社長で合同会社を設立する場合は、以下のポイントを意識するようにしましょう。
一人社長で合同会社を設立する際に意識したいポイント
- 自分で資金を準備する
- 定款に相続人を定めておく
- 会社住所はプライバシーを考慮して設定する
自分で資金を準備する
一人社長で合同会社を設立する際に意識したいポイントは、自分で資金を準備することです。
一人会社の場合、設立にあたって出資金(資本金)を用意するのは、基本的に自分しかいません。合同会社は資本金1円から設立が可能ですが、あまりに資本金が少ないと、事務所を借りる際の契約料や備品購入の資金が足りなくなる恐れがあります。
一般的には資本金として、初期費用に運転資金3か月分を足した金額程度は用意しておいた方がいいといわれています。会社設立前には、できるだけ余裕を持って資金を準備しておきましょう。
定款に相続人を定めておく
一人社長で合同会社を設立する際に意識したいポイントは、定款に相続人を定めておくことです。
相続については、一人会社だからこそ考えておくべきといえます。合同会社は、定款に定めがなければ相続人であっても会社を継承することができず、もし唯一の社員である自分が死亡すると、会社が解散することになってしまいます。
1人で合同会社を設立する際には万一に備え、会社の相続をどうするかについても決めておきましょう。
会社住所はプライバシーを考慮して設定する
一人社長で合同会社を設立する際に意識したいポイントは、会社住所はプライバシーを考慮して決めることです。本社所在地は登記事項なので、もし自宅の住所を本社所在地として登記すると、誰でも確認できる状態になってしまいます。
そのため、自宅住所を知られたくない場合には、自宅とは別に事務所を借りたり、法人登記が可能なシェアオフィスやバーチャルオフィスを利用したりするといいでしょう。
なお、今後、登記の際に会社の代表者が希望すれば、会社代表者の住所を非公開でも登録が可能になるようです。2024年度中に実施されるとのことなので、会社の代表者で自宅住所を非公開にしたいという方は、対応可能か確認をしてみてください。
- ※シェアオフィスについては以下の記事を併せてご覧ください
合同会社の設立手続きを1人で手軽に行う方法
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1人で合同会社を設立するなら、便利なクラウドサービスを活用しよう
合同会社は株式会社に比べて設立費用を抑えることができ、設立にかかる時間も短いというメリットがあるため、一人会社を設立する際に合同会社が選ばれるケースも増えています。
特に、個人事業主からの法人化などで、既に取引先との信頼関係を築けているような場合は、株式会社よりも手軽に設立できる合同会社のメリットは大きいといえます。
とはいえ、初めての会社設立にあたり、実際に手続きをしようとすると、合同会社でもそれなりに労力が必要です。
合同会社設立の手間をできるだけ省きたい場合は、「弥生のかんたん会社設立」や「弥生の設立お任せサービス」の利用がおすすめです。便利なクラウドサービスを上手に活用して、スムースな合同会社の設立を目指しましょう。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
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