変更登記するのは大変?手続きする方法やかかる費用を解説
監修者: 森 健太郎(税理士)
更新

会社を設立するときには、法務局で法人設立登記の手続きを行います。会社設立後、登記された事項に変更があったときには、そのたびに変更登記が必要です。
変更登記には手間や費用がかかるため、できるだけ避けたいと考える方も多いでしょう。将来的な変更登記の負担を減らすには、会社設立時から意識しておきたいいくつかのポイントがあります。
ここでは、会社設立後に変更登記が必要になるタイミングや変更登記に関する注意点のほか、なるべく変更登記をしないで済むように会社を設立する方法について解説します。
【利用料0円】はじめてでもカンタン・安心な「開業届」の作成はこちらをクリック
変更登記にかかる手間や費用を理解した上で会社を設立する
変更登記にかかる手間や費用を理解した上で会社を設立するようにしましょう。
株式会社も合同会社も、すべての会社には法人登記が義務付けられており、設立時には法務局へ登記申請を行います。登記された事項は誰でも自由に閲覧でき、ビジネス上で取引先の実態を確認するための有効な手段となります。会社設立後、登記事項に変更が生じたときには、定められた期限までに必要書類を法務局へ提出し、登記内容を変更しなければなりません。
変更登記には、必要書類を用意して提出する手間に加えて、所定の登録免許税がかかります。会社を設立するときには、将来発生する可能性のある変更登記について、どのような手間と費用がかかるのかを知っておきましょう。
※法人登記については以下の記事を併せてご覧ください。
変更登記が必要になるタイミングによってかかる費用は異なる
変更登記は、必要になるタイミングによって、かかる費用が異なります。なお、変更登記の期限は原則として、登記事項に変更が生じてから2週間以内に行う必要があります。
変更登記が必要になるタイミング | 変更登記にかかる登録免許税 |
---|---|
取締役や監査役の就任・辞任・退任・解任 | 1件につき1万円(資本金1億円を超える場合は3万円) |
事業の立ち上げ・撤退(事業目的の変更) | 1件3万円 |
会社の名称の変更 | 1件3万円 |
代表者(代表取締役や代表社員)の住所変更 | 1万円(資本金1億円を超える場合は3万円) |
会社の所在地の移転 | 管轄内本店移転なら3万円、管轄外本店移転の場合は新旧それぞれの法務局で納付するため倍の6万円 |
支店の設置・廃止 | 設置は1か所6万円、廃止は1か所3万円、本店と支店の管轄の法務局が違う場合は、さらに支店の所在地で9,000円 |
増資や減資 | 増資の場合、増加した資本金額の0.7%または3万円のどちらか多い方で、減資の場合は1件につき3万円 |
会社形態の変更 | 6万円~ |
- 取締役や監査役の就任・辞任・退任・解任
- 取締役や監査役といった役員に変更があった場合は、変更登記が必要になります。役員が新たに就任したり、辞任・退任したりしたときだけではなく、任期満了後に同じ人が再任された場合も変更登記が必要です。
提出書類は、役員変更登記申請書、就任承諾書、定款、株主総会議事録などです。1件につき1万円(資本金1億円を超える場合は3万円)の登録免許税がかかります。 - 事業の立ち上げ・撤退(事業目的の変更)
- 新規事業を立ち上げたり既存事業から撤退したりして事業目的に追加や削除があった場合は、目的変更登記が必要です。
目的変更登記申請書や定款変更を決議した株主総会議事録(合同会社の場合は総社員の同意書)などを提出し、登録免許税は1件3万円となります。 - 会社の名称の変更
- 会社名を変更する場合は、商号変更登記を行います。
申請には商号変更登記申請書のほか、目的変更登記と同様に定款変更を決議した株主総会議事録(または同意書)などが必要です。登録免許税は1件3万円です。 - 代表者(代表取締役や代表社員)の住所変更
- 株式会社の代表取締役や合同会社の代表社員の住所が変わったときにも、変更登記をしなければなりません。
変更登記申請書と住民票を用意し、登録免許税1万円(資本金1億円を超える場合は3万円)とともに申請します。 - 会社の所在地の移転
- 会社の所在地が変わった場合には、本店移転の変更登記を行います。
本店移転には、管轄の法務局の区域内で移転する「管轄内本店移転」と、区域外へ移転する「管轄外本店移転」があり、それぞれ必要書類が異なります。共通する提出書類は、本店移転変更登記申請書や取締役の決定書(合同会社の場合は業務執行社員の決定書)などです。
登録免許税は、管轄内本店移転なら3万円ですが、管轄外本店移転の場合は新旧それぞれの法務局で納付するため、倍の6万円となります。 - 支店の設置・廃止
- 支店を新しく開設したり、廃止したりした場合は、本店と支店の両方の所在地で登記が必要です。
本店所在地での登記では、支店の設置については1か所6万円、廃止は1件につき3万円の登録免許税がかかります。それに加えて、本店と支店の管轄の法務局が違う場合は、支店の所在地で9,000円の登録免許税がかかります。必要書類は、変更登記申請書や取締役の決定書(業務執行社員の決定書)などです。
なお、支店の設置・廃止にかかる変更登記の期限は、本店の所在地では他と同様に2週間以内ですが、支店の所在地では3週間以内となります。 - 増資や減資
- 資本金の額を増加または減少させたときにも変更登記が必要です。例えば、株式会社で増資目的の株式を発行したり、合同会社で新たに出資を行ったりするケースです。
登録免許税は、増資の場合は、増加した資本金額の0.7%または3万円のどちらか多い方がかかります。また、減資の場合は1件につき3万円です。
提出書類は状況によって異なり、例えば株式会社の増資であれば、変更登記申請書のほか、株主総会議事録、株主リスト、株式の引受けの申込みを証する書面(または総数引受契約書)、払込金額を証明できる書類(通帳のコピーなど)が必要になります。 - 会社形態の変更
- 株式会社から合同会社、合同会社から株式会社など、会社形態を変更する場合は組織変更の登記が必要です。組織変更の登記は、変更後の会社の設立登記と変更前の会社の解散登記を同時に行います。必要な手続きや書類も多岐にわたり、最低でも6万円の登録免許税がかかります。
上記のほか、「株式の分割」「会社の分割」「会社の吸収・合併」「会社の廃業・解散」のタイミングでも変更登記が必要です。
また、上にあげた費用は登録免許税だけですが、登記事項証明書の取得費用や、専門家への依頼費用など、その他にもコストがかかる可能性があります。
※取締役の設置や事業目的については以下の記事を併せてご覧ください。
変更登記にあたって行うのは、法務局に書類を提出することだけではありません。例えば、会社名(商号)や事業目的を変更する場合は定款の変更も必要になり、株式会社なら株主総会決議、合同会社なら総社員の同意が必要になります。会社を設立後、もし頻繁に変更登記が発生すると、作業面でも費用面でも負担がかかってしまいます。
そのような事態を避けるためには、将来的にできるだけ変更が生じないよう、変更登記が必要になるケースを踏まえ、会社設立時点で登記事項の内容を検討するようにしましょう。
なるべく変更登記をしないで済むように会社を設立する方法
将来なるべく変更登記をしないで済むようにするには、あらかじめ意識して会社を設立する必要があります。会社設立時には、以下のようなポイントに気を付けるようにしてください。
なるべく変更登記をしないで済むように会社を設立する方法
- 役員の任期を適切に設定する
- 事業目的には将来行う可能性のある事業も入れておく
- 資本金の設定金額を少なくしすぎない
- 会社形態を熟慮する
- 住所の表記を地番までにしておく
役員の任期を適切に設定する
なるべく変更登記をしないで済むように会社を設立する方法として、役員の任期を適切に設定することがあげられます。
株式会社の取締役の任期は原則として2年ですが、非公開会社では最長10年まで延長が可能です。特に、1人社長や家族同士で経営している会社は役員が変わる可能性は少ないでしょうから、あらかじめ役員の任期を延ばしておくと良いといえます。
役員の任期が満了すると、たとえ同じ人が再任する場合であっても、変更登記の手続きが必要です。役員の任期を10年に設定しておけば、変更登記の手続きは10年に1度で済みます。
一方で、役員の任期を延長する際には注意も必要です。
例えば、任期途中での役員の解任はあまりないケースです。
また、関係がまだしっかり築けていないにもかかわらず外部の方に役員を依頼するような場合や、高齢など健康上の理由によって10年間役員を務めるのが難しい場合など、個々の事情を考慮し、適切な任期を設定しなければなりません。
なお、合同会社の役員(代表社員や業務執行社員)には任期はありません。
事業目的には将来行う可能性のある事業も入れておく
なるべく変更登記をしないで済むように会社を設立する方法として、定款に記載する事業目的には将来行う可能性のある事業も入れておくことがあげられます。
特に、許認可が必要な事業を行う場合、要件に適した事業目的が記載されていないと許認可申請ができません。後になって不足に気付いた場合、変更登記の手続きが必要になってしまいます。
また、事業目的を考えるときは、内容に幅を持たせておくこともポイントです。例えば、項目の最後に、「前各号に附帯または関連する一切の事業」と記載しておくと、会社設立時に想定していなかった事業でも、もともとの事業目的に関連性があれば行うことが可能になります。
ただし、あまりにも事業目的の数が多すぎると、何がメインの事業なのか、実態がわからなくなってしまいます。一貫性のない事業や、本業とまったく関係ない事業が並んでいると、取引先や金融機関から不信感を持たれるおそれがあるため考慮しましょう。
資本金の設定金額を少なくしすぎない
なるべく変更登記をしないで済むように会社を設立する方法として、資本金の設定金額を少なくしすぎないことがあげられます。資本金は、会社の体力を示す目安として、金融機関や取引先からもチェックされます。株式会社も合同会社も資本金1円から設定が可能ですが、資本金が少なすぎると、返済能力が低いとみなされて希望どおりの融資を受けられなかったり、事業を行う資金がないと判断されて取引を断られたりする可能性があるためです。
設立後に増資をすると変更登記が必要になるため、あらかじめ適正な金額の資本金を用意しておくようにしましょう。
会社形態を熟慮する
なるべく変更登記をしないで済むように会社を設立する方法として、会社形態を熟慮することがあげられます。会社を設立するときには、一般的に株式会社か合同会社のいずれかを選択します。設立後に変更しなくて良いように、自社に合った会社形態を検討して決めるようにしましょう。
株式会社は日本で最も多い会社形態であり、社会的な知名度も高いものの、合同会社に比べて設立コストが多く必要です。一方、合同会社は設立費用を抑えられますが、株式会社に比べて社会的な信用度が低いために不利益を被る場合が多くなります。
他にも、株式会社と合同会社には異なる特徴があり、それぞれメリットとデメリットがあります。例えば、初期費用を抑えたいという理由だけで合同会社を選び、後でやっぱり株式会社に変更したいということになると、変更登記の手間と費用がかかってしまうでしょう。
どの会社形態を選ぶか迷ったときには、税理士などの専門家に相談するのも1つの方法といえます。
住所の表記を地番までにしておく
なるべく変更登記をしないで済むように会社を設立する方法として、住所の表記を番地までにしておくことがあげられます。
本店所在地や代表者の住所は、「◯丁目◯番地◯号」という地番まで記載されていれば、建物名や階数、部屋番号などはなくても設立可能なためです。将来、同じ建物内で移転や拡大する可能性があることを考えると、住所表記は地番までにとどめておいた方が良いでしょう。フロアや部屋番号を登記していなければ、同じ建物内で移転したり、追加でテナントを借りたりする際には、変更登記が不要になります。
変更登記の手続きは下記の流れで進める
変更登記の手続きは、下記のような流れで行います。登記事項に変更が生じた場合は、原則として、2週間以内に変更登記の手続きを行わなければならないため、あらかじめ確認しておき、手続きをスムースに進めましょう。
1. 手続きに必要な書類を揃える
まずは、変更登記申請書をはじめとした必要書類を揃えます。必要な書類は、変更する内容によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
なお、変更登記申請書は、法務局の「商業・法人登記の申請書様式」よりダウンロード可能です。
2. 法務局へ書類を申請する
用意した書類を法務局へ提出し、変更登記の申請を行います。申請は、管轄の法務局の窓口に直接、または郵送で提出する方法と、オンラインで提出する方法の3種類です。オンラインの場合は、法務局の登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと」から申請します。
3. 登記書類の審査後、登記完了
法務局による審査が行われた後、登記完了となります。審査期間は、一般的に1~2週間程度です。
会社設立のための登記申請手続きには手軽に行う方法がある
将来の変更登記についてのポイントがわかったところで、実際の会社設立に取り掛かりましょう。自分ですべての手続きを行うとなると膨大な調べ物や作業が必要です。そこで、会社設立のために登記申請手続きを手軽に行いたい場合におすすめなのが、自分でかんたんに書類作成ができる「弥生のかんたん会社設立」と、起業に強い専門家に会社設立手続きを依頼できる「弥生の設立お任せサービス」です。
「弥生のかんたん会社設立」は、画面の案内に沿って必要事項を入力するだけで、定款をはじめとする会社設立時に必要な書類を自動生成できる無料のクラウドサービスです。各官公庁への提出もしっかりガイドしますので、事前知識は不要。さらに、入力内容はクラウドに自動保存され、パソコンでもスマホでも自由に切り替えながら書類作成ができます。
また、「弥生の設立お任せサービス」は、会社設立にかかわる手続きを、起業に強い専門家に丸ごと代行してもらえるサービスです。電子定款や登記書類作成、公証役場への定款認証、法務局への登記書類提出などの各種手続きを依頼できるので、事業の準備で忙しくても確実かつスピーディーな会社設立が可能です。会社設立後、専門家とご相談のうえ、会計事務所と税務顧問契約を結ぶと、サービス利用料金は実質0円になります(登録免許税等、行政機関の手数料は別途発生します)。
会社設立時には変更登記についても知っておこう
会社を設立するときには、将来的に登記事項を変更することまで考えていないかもしれません。
しかし、変更登記が必要となるタイミングは、意外と多いものです。変更登記には手間や費用がかかるため、余計な変更をできるだけ避けられるように、会社設立時から意識しておくようにしましょう。
また、会社設立の際は、手軽に定款の作成ができる「弥生のかんたん会社設立」や専門家に手続きの代行を依頼できる「弥生の設立お任せサービス」などを利用すると、スムースに進められるでしょう。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。