定款認証の必要書類は?電子定款の場合や公証役場の手続きについて解説
監修者:森 健太郎(税理士)
2024/01/16更新
株式会社を設立する際には「定款」を作成して認証を受ける必要がありますが、定款の認証にはいくつかの書類が必要です。定款の認証手続きをスムースに進めるには、事前に必要書類を確認しておくとよいでしょう。なお、定款には書面と電子定款の2種類があり、認証手続きに必要な書類はそれぞれ異なります。
ここでは、定款の認証に必要な書類について、紙の定款と電子定款に分けて解説します。
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書面での定款の認証に必要な書類
紙(書面)による定款の認証に必要な書類を、以下の表にまとめました。必要な書類は発起人が個人か法人か、認証を行うのが発起人本人か代理人かにより変わるため、注意が必要です。
必要書類 | 概要 |
---|---|
定款3通 | 印刷し、製本した定款を3通提出 |
発起人(出資者)全員分の印鑑証明書 | 発起人が個人の場合、本人確認書類として印鑑証明書を提出。実印も全員分必要。 |
登記事項証明書 | 発起人が法人の場合、代表者事項証明書・現在事項全部証明書・履歴事項全部証明書のいずれかを提出 |
法人代表者の印鑑証明書 | 発起人が法人の場合、法人代表者の本人確認書類として代表者の印鑑証明書を提出 |
実質的支配者となるべき者の申告書 | 発起人が法人の場合、公証人に実質的支配者となるべき者の申告書を申告 |
実質的支配者となるべき者の本人確認書類 | 発起人が法人の場合、実質的支配者となるべき者の本人確認書類も提出 |
委任状 | 代理人が定款認証を行う場合は、委任状を提出 |
代理人の本人確認書類 | 代理人が認証を行う場合には、代理人の本人確認書類を提出 |
また、書面の認証には、以下の手数料も必要です。
書面での定款認証で必要な手数料
- 定款の認証手数料:定款の認証手数料を3万~5万円支払う
- 収入印紙代:4万円分の収入印紙を定款に貼付
- 定款謄本発行手数料:定款謄本の発行手数料を250円×枚数(定款のページ数)分支払う
定款3通
書面での定款認証では、発起人全員が実印を押印した定款3通が必要です。1通は公証役場に保管され、もう1通は会社保管用、残り1通は設立登記申請用謄本として返されます。製本した定款は、各ページの見開きの境目に、発起人全員の実印による割印が必要です。
発起人(出資者)全員分の印鑑証明書および実印
発起人が個人の場合は、定款に押印された実印が発起人本人のものかを確認するために、印鑑証明書および実印が必要です。発起人が複数いる場合には、全員分を用意しなければなりません。
なお、発起人本人が公証役場に行く場合には、運転免許証などの写真つきの身分証明書と認印でも認められます。
登記事項証明書
発起人が個人ではなく法人の場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)が必要です。代表者事項証明書または現在事項全部証明書、履歴事項全部証明書のいずれかを用意しましょう。登記事項証明書は、発起人となる法人の存在や事業目的、代表者を確認するための資料となります。
法人代表者の印鑑証明書および実印
発起人が法人の場合は、上記の登記事項証明書と併せて、法人代表者の印鑑証明書および代表者が必要です。個人の場合とは異なり、身分証明書と認印で代用することはできません。
そのため、発起人となる法人は、定款の認証前に、印鑑登録の手続きを済ませておく必要があります。
実質的支配者となるべき者の申告書
公証人法施行規則の一部改正によって、2018年11月30日から、実質的支配者となるべき者について氏名・住居・生年月日に加え、暴力団との関係性の有無も、法人の場合には公証人に申告することになりました。実質的支配者となるべき者の申告書は、日本公証人連合会のWebサイト内の「公証事務」からダウンロードが可能です。
なお、実質的支配者とは、株式会社の場合、株主総会の議決権の50%超を保有する人を指します。該当者が不在の場合には議決権の25%超を保有する人を、さらにその該当者も不在の場合には事業活動に支配的な影響力を持つ人を指します。それらすべての該当者が不在の場合、代表取締役が実質的支配者です。
実質的支配者となるべき者の本人確認書類
上記の実質的支配者となるべき者の申告書には、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードの写しなど、写真つきの身分証明書を添付する必要があります。提出しなければならないため、コピーしておきましょう。
なお、印鑑証明書も本人確認書類に該当するため、設立する会社の実効支配者が発起人本人である場合には印鑑証明書の提出のみで良く、本人確認書類を追加提出する必要はありません。
委任状
代理人が認証手続きを行う場合には、発起人の実印を押印した委任状を持参します。発起人が複数いる場合には、公証役場に来られない全員分の委任状が必要です。
委任状には決まった書式はありませんが、委任する内容を記載する必要があります。「日本公証人連合会のWebサイト」内に委任状のサンプルが掲載されているので、ダウンロードして使うと良いでしょう。
代理人の本人確認書類
代理人が認証手続きを行う場合、個人の場合には、本人確認書類として印鑑証明書と実印、もしくは運転免許証やパスポートなど、写真つきの身分証明書と認印が必要になります。一方、法人の場合には、登記事項証明書(登記簿謄本)と法人代表者の印鑑証明書および代表者印が必要です。
電子定款の認証に必要な書類
電子定款の場合、認証の申請は、登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと」または、デジタル庁のマイナポータル「法人設立ワンストップサービス」から、オンラインで行います。申請後、公証役場に電子定款を受け取りに行く際には、下記のものが必要です。
必要書類 | 概要 |
---|---|
発起人(出資者)の印鑑証明書 | 発起人が個人の場合、本人確認書類として印鑑証明書を提出。電子署名をした発起人が公証役場に行く場合には実印も必要 |
登記事項証明書 | 発起人が法人の場合、代表者事項証明書・現在事項全部証明書・履歴事項全部証明書のいずれかを提出 |
法人代表者の印鑑証明書 | 発起人が法人の場合、法人代表者の本人確認書類として代表者の印鑑証明書を提出 |
発起人(出資者)の印鑑証明書 | 発起人が複数いる場合は、発起人全員分の印鑑証明書を提出 |
実質的支配者となるべき者の申告書 | 発起人が法人の場合、公証人に実質的支配者となるべき者の申告書を申告 |
実質的支配者となるべき者の本人確認書類 | 実質的支配者となるべき者の本人確認書類も申告書に添付して提出 |
委任状 | 電子署名をした本人の代わりに、代理人が公証役場に行く場合は委任状を提出 |
代理人の本人確認書類 | 代理人が認証を行う場合は、代理人の本人確認書類を提出 |
その他には、電子定款の場合は認証された定款が電子データ(PDFファイル形式)のため、受け取るためにUSBメモリやCD-R、DVD-Rなどの電子記録媒体を持参しましょう。
また、以下の手数料も必要です。
電子定款の認証で必要な手数料
- 定款の認証手数料:定款の認証手数料を3万~5万円支払う
- 電磁的記録の保存手数料:電子記録媒体にデータを保存するための手数料300円を支払う
- 同一情報の提供手数料:紙の定款の謄本発行手数料にあたる同一情報の提供手数料は、1通につき700円を支払う
- 同一情報の書面交付手数料:上記の同一情報について、書面での交付を希望する場合には、手数料を20円×枚数(定款のページ数)分支払う
発起人(出資者)の印鑑証明書
電子定款に電子署名をした発起人が公証役場に行く場合、印鑑証明書および実印を持参します。または、運転免許証などの写真つきの身分証明書と認印でも認められます。なお、電子署名をしていない発起人や、電子署名をしても公証役場に来られない発起人の場合には、実印や認印は必要ありません。
登記事項証明書
発起人が法人の場合には、登記事項証明書(登記簿謄本)が必要です。提出する登記事項証明書は、代表者事項証明書、現在事項全部証明書、履歴事項全部証明書のいずれか1つとなります。登記事項証明書の提出は、会社の設立が発起人である法人の事業目的の範囲と合致しているかを確認するためです。
法人代表者の印鑑証明書
発起人が法人の場合には、上記の登記事項証明書と併せて、法人代表者の印鑑証明書と実印が必要です。電子書名をしていない発起人や、電子署名をしても公証役場に来られない発起人の場合には、実印は必要ありません。
なお、代理人が電子定款を受け取りに来る際は、電子委任状の場合には印鑑証明書の提出が不要です。
実質的支配者となるべき者の申告書
紙の定款と同様に、発起人が法人の場合には、実質的支配者となるべき者の申告書が必要です。申告書の用紙は、日本公証人連合会のWebサイト内の「公証事務」からダウンロードできます。2023年6月1日より新たな書式に更新されたので、新書式の申告書を使うように注意しましょう。
実質的支配者となるべき者の本人確認書類
上記の実質的支配者となるべき者の申告書に、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードの写しなど、写真つきの身分証明書を添付します。電子定款の場合には、PDF化したものを添付するとよいでしょう。
電子定款の場合にも、印鑑証明書は本人確認書類に該当するため、設立する会社の実効支配者が発起人本人である場合には、本人確認書類を追加で提出する必要はありません。
委任状
電子定款に電子署名をした発起人ではなく、代理人が公証役場に行く場合は、委任状が必要です。書面またはデータで、発起人全員分の委任状が必要になります。
日本公証人連合会のWebサイト内の「定款等記載例」に委任状のサンプルが掲載されているので、ダウンロードして使うと良いでしょう。
代理人の本人確認書類
電子署名をした発起人ではなく代理人が認証手続きを行う場合、個人の場合には、本人確認書類として印鑑証明書と実印、もしくは運転免許証やパスポートなど、写真つきの身分証明書と認印が必要になります。一方、法人の場合には、登記事項証明書(登記簿謄本)と法人代表者の印鑑証明書および代表者印が必要です。
- ※定款や定款の認証については以下の記事を併せてご覧ください。
定款認証を受ける際の注意点
定款の認証を受ける際には、下記のような注意点があります。
また、認証を受ける定款の事前チェックを行っている公証役場も多数あります。当日定款を修正する手間が省けるため、必要書類に不安がある方は利用すると良いでしょう。
認証済みの電子定款を受け取りに行く必要がある
電子定款の認証では、PDFファイル形式で作成し、電子署名を付与した定款をオンラインで申請します。ただし、認証申請はオンラインでできても、認証済みの定款をインターネット経由で受け取ることはできません。認証済みの電子定款は、公証役場まで受け取りに行く必要があるため注意しましょう。
復代理人が公証役場に行く際は復代理の委任状が必要
復代理人が公証役場に行く際は、復代理人の委任状が必要となるほか、作成代理人の印鑑証明書と復代理人の本人確認書類も必要です。
復代理人とは、代理人からさらに代理を委託された方のことです。
例えば、電子定款の作成は、司法書士や行政書士に依頼することも可能です。この場合、依頼された専門家は作成代理人となります。そして、認証申請後、その作成代理人とは違う方が公証役場に行く場合、認証済みの電子定款を受け取るのは復代理人ということになります。
なお、作成代理人が電子署名した復代理の委任状を事前に公証人にメールで送信すれば、作成代理人の印鑑証明書は必要ありません。
公証役場に行く際には事前に予約が必要
公証役場は基本的に予約制です。認証済みの電子定款を受け取りに行く際も、あらかじめ予約が必要なので注意しなければなりません。また、定款の認証手続きに必要なものは、公証役場によって異なる可能性があります。手続きの前に、管轄の公証役場に定款の認証時に必要な書類などを確認し、忘れずに持参するようにしましょう。
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ただし、定款の認証手数料や登録免許税など行政機関への支払いは別途必要です。会社設立の手続きを専門家に依頼したいという方は、「弥生の設立お任せサービス」の利用を検討してみてください。
定款認証の必要書類を事前にチェックしよう
株式会社を設立する場合は、定款作成後に公証役場で認証を受ける必要があります。定款には紙と電子定款があり、認証手続きに必要なものはそれぞれ異なります。提出書類に不足や不備があると、手続きがやり直しになってしまうため、事前準備が必要です。
また、定款の作成や認証手続きは、専門家に依頼することも可能です。例えば、「弥生の設立お任せサービス」なら、電子定款の作成や公証役場への定款認証をはじめとした会社設立手続きを専門家に丸ごと依頼できます。「定款の作成や認証手続きが難しい」と感じたら、「弥生のかんたん会社設立」や「弥生の設立お任せサービス」の活用をぜひご検討ください。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
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