アルバイトの給与計算はどのように行う?確認事項や計算方法を解説
監修者:税理士法人古田土会計 社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
2024/06/19更新
アルバイトを雇用する場合は、勤務形態に合わせた給与計算を行います。アルバイトの給与計算は、時給に勤務時間を掛けて計算をするだけではなく、勤怠状況や割増賃金、控除額など、多くの事項の確認が必要です。
本記事では、アルバイトの給与計算において必要な確認事項や、注意すべき割増賃金などについて、具体的な計算方法と共に解説します。
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アルバイトの給与計算時に必要な確認事項
アルバイトとは、正社員に比べて所定労働時間が短い短時間労働者の通称です。なお、法律上はアルバイトという言葉はなく、アルバイトやパートは、どちらも「パートタイム労働者」のことを指しています。
一般的にアルバイトの給与形態は時給制で、給与は月払いが多いでしょう。その場合、毎月所定の締め日に勤怠状況を取りまとめ、給与計算を行います。
アルバイトの給与を計算するうえでは、いくつかの確認事項があります。給与計算の際には、以下の内容を確認しながら作業を進めましょう。
就業規則
就業規則には、始業時刻や終業時刻、休憩時間、休日、給与の支払日、賞罰や減給に関する規定など、働くうえで大切な事項が定められています。給与計算は就業規則に従って行う必要があるため、必ず内容を確認し、労働時間や給与の取り扱いについて把握しておきましょう。
なお、常時10人以上の従業員を雇用する会社は、就業規則を作成し労働基準監督署へ届け出ることが義務付けられていますが、従業員数が10人未満の会社であっても、トラブル防止のために就業規則を作成しておいた方がいいでしょう。
給与規程
会社によっては、就業規則とは別に、給与(賃金)に関するルールをまとめた給与規程(賃金規程)を作成している場合もあります。給与規程には、給与計算の基準や計算方法の他、給与の締め日や支払いの時期、支払方法など、給与に関する内容が細かく規定されています。給与規程がある場合は、給与計算時に就業規則と併せて必ず確認しましょう。
勤怠管理にかかわる書類
給与計算を行うためには、出勤・欠勤日数や労働時間の確認が必要です。アルバイトの勤怠状況がわからなければ、給与計算を行うことはできません。タイムカードやシフト表、勤怠管理システムのデータなど、従業員の出勤日数や勤務時間などがわかる資料を用意しましょう。
また、所得税の源泉徴収のため、扶養親族の有無など従業員の家族構成についても確認が必要です。
アルバイトの給与計算で注意すべき割増賃金
アルバイトの給与計算において注意が必要なのが、割増賃金です。割増賃金とは、会社が従業員に時間外労働(残業)や休日労働、深夜労働をさせた際に支払わなければいけない賃金で、労働基準法によってそれぞれ割増率が定められています。
割増賃金が発生する条件と割増率は、以下のとおりです。
時間外労働の場合
労働基準法では、1日の労働時間を8時間以内、1週間の労働時間を40時間以内と定めています。この法定労働時間を超える労働のことを、時間外労働といいます。時間外労働に対する割増賃金の割増率は、25%以上です。会社はアルバイトに時間外労働をさせた場合は、法定労働時間を超えた分について、基本時給の1.25倍以上を支払わなければなりません。
また、時間外労働の上限は、原則として1か月45時間、1年360時間と定められています。ただし、特別条項付きで労使協定を締結していれば、臨時的に特別な必要性がある場合に限り、月45時間を超える時間外労働が認められます。このような場合に時間外労働が1か月60時間を超えると、50%以上の割増率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
なお、会社の所定労働時間を超える残業をしても、それが法定労働時間の範囲内であれば、割増賃金は発生しません。例えば、1日の所定労働時間が6時間のアルバイトが、1時間残業をした場合、合算しても8時間の法定労働時間内となります。この場合、割増はせず、基本時給で7時間分を支払います。
休日労働の場合
労働基準法では、週1日または4週を通じて4日の休日を従業員に与えることを定めており、この休日を法定休日といいます。休日の曜日は問われませんが、多くの会社では就業規則などで曜日を定めています。この法定休日に従業員を働かせたときの割増率は、35%以上です。つまり、会社が法定休日にアルバイトを働かせた場合は、基本時給の1.35倍以上を支払う必要があるということです。
深夜労働の場合
労働基準法では、22時~翌5時を深夜として扱い、この時間帯における労働を深夜労働といいます。深夜労働に対する割増率は25%以上です。会社がアルバイトに深夜労働をさせた場合は、割増分として基本時給の0.25倍以上を支払わなければなりません。深夜シフトのように始業時刻が22時からの場合でも、割増賃金の支払いが必要です。
割増賃金が重複した場合
割増賃金は、重複して発生することもあります。例えば、深夜にわたって時間外労働を行った場合や、休日労働が深夜に及んだ場合などです。このようなときは、該当する割増賃金を合算して支払う必要があります。
上記の例で計算をすると、深夜にわたって時間外労働を行った場合は25%+25%で50%以上、休日労働が深夜まで及んだ場合は35%+25%で60%以上の割増率となります。
アルバイトの具体的な給与計算
ここからは、アルバイトの具体的な給与計算について見ていきましょう。アルバイトの給与は、以下のような流れで計算します。
勤務時間を集計する
タイムカードやシフト表、勤怠管理システムのデータなどを確認し、アルバイトの勤務時間を集計します。通常の労働時間に加えて、時間外労働や休日労働、深夜労働があった場合は、それぞれ正しく集計しましょう。
なお、勤務時間は、原則1分単位で集計する必要があります。10分や15分単位などで労働時間を切り捨てることは、賃金の「全額払いの原則」を定めた労働基準法に反するためできません。
支給額を計算する
勤務時間を集計したら、その時間に時給の単価を掛けて、支給額を計算します。通常賃金と割増賃金を合計して支給額を出しましょう。
それぞれの計算方法は、以下のとおりです。
アルバイトの賃金の計算方法
- 通常賃金=時給×勤務時間
- 割増賃金=時給(所定内賃金)×割増率×対象となる労働時間(時間外労働・休日労働・深夜労働)
控除額を計算する
支給額を計算した結果、給与から控除する社会保険料や税金がある場合は、それぞれの控除額の計算が必要です。アルバイトも、勤務状況や収入によっては、社会保険(健康保険・厚生年金保険・介護保険)や雇用保険への加入義務があります。また、所得税や住民税についても、控除される場合があります。
アルバイトにおける社会保険や雇用保険の加入条件、税金の徴収が必要になる条件は、以下のとおりです。
アルバイトの社会保険への加入条件
1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、常勤の従業員と比べて4分の3以上のアルバイトは、健康保険、厚生年金保険、介護保険(40歳以上のみ)の加入が必要です。また、所定労働時間や所定労働日数が常勤の従業員と比べて4分の3未満でも、以下の要件にすべて該当する場合は、社会保険の加入対象となります。
社会保険への加入条件
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
- 従業員(被保険者数)が101人以上(2024年10月以降は51人以上)の事業所に勤めている
アルバイトの雇用保険への加入条件
アルバイトも、以下の条件にすべて当てはまる場合は、雇用保険への加入が必要となります。ただし、条件を満たしていても、季節的な雇用や船員、国や都道府県などの国家公務員や地方公務員は、雇用保険法の適用の対象となっていないため加入することができません。
雇用保険への加入条件
- 31日以上引き続き雇用される見込みがある
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 学生ではない
所得税の源泉徴収が必要になる条件
アルバイトで年収が103万円を超える場合は、所得税の源泉徴収が発生します。また、年収が103万円以下でも、月収が8万8,000円以上の場合は源泉徴収が必要です。
ただし、扶養親族の数や本人の状態(障害者や寡婦・勤労学生など)によっては、それらの金額を超えても所得税がかからない場合があります。
住民税の特別徴収が必要になる条件
自治体によっても異なりますが、アルバイトの前年の収入が100万円を超えている場合、住民税の納付が必要です。アルバイトで入社した人が前職分の収入に対して住民税が発生している場合、当年度分の徴収の引き継ぎとして、引き続き会社で特別徴収を行いましょう。また、前職分の収入や自社に入社後の収入によって、次年度の住民税が発生する場合には、その年の収入見込みが100万円以下であったとしても、住民税を徴収することとなります。
その他に、住民税の納付方法は、自分で納付書を使って納める「普通徴収」と、給与からの天引きで納める「特別徴収」の2種類があります。
パートタイム労働者の社会保険加入についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
控除を差し引いて給与を確定させる
給与計算で社会保険料や雇用保険料、税金の金額を計算した後は、控除を差し引いて給与を確定させます。確定した給与は、会社ごとに決められた支払日に、振り込みや手渡しで支払います。
アルバイトの給与計算に誤りがあったときの対処法
もし給与計算にミスが発覚した場合は、従業員からの信頼を失う状況につながりかねないため、迅速な対応が必要です。該当する従業員に対して謝罪と説明をし、「差額は◯月分の給与支給において調整する」など、具体的な対応方法を明示します。
同時に、誤りのあった給与明細を訂正して差し替えます。特に、給与から控除する社会保険料や税金などに誤りがあると、年末調整にも影響するため、年内に対処することが大切です。
その後、給与の過不足分を精算しますが、このときの対処法は、給与を多く支払った場合と少なく支払っていた場合で異なります。
給与を払いすぎていた場合は、従業員からの同意を得られれば、翌月分の給与で調整する方法もあります。ただし、発覚からできるだけ早く対応を行うことが重要なため、当月中の対処が望ましいでしょう。
その一方、従業員に支給した給与が不足していたときは、労働基準法に定められた給与の全額支払いの原則により、当月中の速やかな調整が必要です。従業員本人の了承があれば、翌月の給与で精算することも可能ですが、トラブル防止のためにもできるだけ速やかに不足分を支払うことが大切です。
アルバイトの給与計算は給与計算ソフトで効率化を
アルバイトの給与計算は、さまざまな事項を確認したうえで正しく行う必要があり、作業は複雑で手間がかかります。給与計算のミスは、従業員の会社への信用低下につながるため、計算にあたっては細心の注意が必要です。また、アルバイトの人数が多くなるほど、給与担当者の負担も大きくなります。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
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