給与明細(給料明細)書は保管が必要?保管期間と保管方法を紹介

2022/12/09更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

会社が従業員に給与を支払うときには、支給額や控除額などを記載した給与明細(給料明細)書を交付します。この給与明細書は従業員に交付した後、会社で保管する必要はあるのでしょうか。また、保管する場合、保管期間や保管方法はどうすればいいのでしょうか。

ここでは、従業員に発行する給与明細書や給与関連書類の保管について、詳しく解説します。

会社に給与明細書の保管義務はない

給与明細書は、支給額や控除額、労働日数といった大切な情報が記載された書類です。そのため、「給与明細書は一定期間、会社で保管しなければいけないのでは」と考える方もいるかもしれません。

しかし、給与明細書そのものについては、会社で保管する必要はありません。法律でも、会社に対して給与明細書の保管義務は定められていないのです。

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給与明細に関わる書類には保管義務がある

会社は給与明細書を保管する必要はありませんが、給与明細に関わる書類や情報には保管義務があります。保管が必要なのは、給与計算の根拠になる書類や給与明細の記載項目をまとめた書類です。保管期間は書類の種類によって異なり、法律によって決められています。

会社で保管義務がある書類について、保管期間別に見てみましょう。

5年保管が必要な書類

労働基準法において5年間の保管が義務付けられている書類は、下記になります。なお、以前は保管期間が3年でしたが、労働基準法の改正により2020年4月から5年に延長されました(法改正の経過措置として当分の間は3年)。

労働者名簿 労働者名簿は、従業員の氏名、生年月日、住所、性別などの情報を記載した書類です。会社の規模にかかわらず、従業員を1人でも雇い入れている場合は、必ず作成しなければならない法定帳簿の1つです。
賃金台帳 賃金台帳は、従業員の氏名や労働日数、賃金の計算期間など、給与の支払い状況を記載した書類です。賃金台帳も法定帳簿の1つです。
雇い入れに関する書類 雇い入れに関する書類は、雇入決定関係書類、雇用契約書、労働条件通知書、履歴書などが該当します。
解雇に関する書類 解雇に関する書類は、解雇決定関係書類や解雇予告除外認定関係書類などです。
災害補償に関する書類 災害補償に関する書類は、労災(労働災害)にあたるケガや病気の診断書の他、補償の支払いに関する書類、領収関係書類などを指します。
賃金に関する書類 賃金に関する書類は、賃金決定関係書類、昇給・減給関係書類などです。
労働関係に関する重要な書類 労働関係に関する重要な書類は、出勤簿、タイムカードの記録が該当します。出勤簿は、従業員の出勤日や労働日数、出社・退社時刻などを記載した帳簿で、労働者名簿、賃金台帳と並ぶ法定帳簿の1つです。
他には、労使協定の協定書、各種許認可書、退職関係書類、休職・出向関係書類などがあります。

7年保管が必要な書類

給与に関係する書類のうち、下記のものは国税通則法により7年の保管が義務付けられています。いずれも税に関わる書類のため、「税に関わる書類は7年保管」と覚えておくといいでしょう。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
    給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、所得税の扶養控除などを受けるために従業員が提出する書類です。給与所得のある従業員は、アルバイトやパートを含め提出が必要です。
  • 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
    年末調整で保険料控除や配偶者控除(配偶者特別控除)を受けるため、従業員は申告書を提出する必要があります。
  • 源泉徴収簿(作成した場合)
    源泉徴収簿は、所得や控除額を記載し、所得税額を正しく算出するために使用します。法的な記録義務はありませんが、作成した場合は7年間の保管が必要です。

給与明細書の保管方法

会社には給与明細書の保管義務はないとはいえ、従業員から給与明細書の再発行の依頼を受けた場合に便利なこともあり、賃金台帳と共に5年間保管している会社も少なくありません。続いては、給与明細書を保管する方法と保管時の注意点について確認しておきましょう。

紙交付の場合

給与明細書は会社に保管義務がないため、保管に関する法的なルールもありません。ただし、給与明細書は従業員の個人情報が記載された重要な書類であるため、取り扱いには十分な配慮が必要です。

  • ファイルやバインダーに保管する
    従業員に発行した給与明細書の控えを、ファイルやバインダーに綴じるのが最も手軽な給与明細書の保管方法です。後で従業員から給与明細の確認を求められた場合に探しやすいように、個人別かつ月単位で管理しておくといいでしょう。また、用紙の劣化を防ぐため、直射日光や湿気を避けて保管することをおすすめします。
    紛失対策としては鍵付きのロッカーに入れ、管理者を限定するなど、管理体制を整えておきましょう。
  • 電子化して保管する
    紙の給与明細書をスキャンして、画像やPDFで保管する方法もあります。スキャンの手間がかかりますが、電子化すればファイルやバインダーのような保管のための備品や場所も必要ありません。
    スキャンをする際には、解像度に注意が必要です。印刷したときに記載内容がきちんと確認できる解像度を確保するようにしましょう。

Web交付の場合

給与明細書は従業員の同意が得られればWeb交付も可能です。Web交付の場合はデータのまま保管ができるので、備品や保管場所が必要ないというメリットがあります。ただし、情報漏洩には注意が必要で、高度なセキュリティ対策が求められます。

  • 電子データで保管する
    Web交付の場合は、電子データのまま保管します。従業員はWeb上で給与明細を確認することが可能ではありますが、後で内容の確認を求められた際に、該当するデータをすぐに探し出せるよう、検索性の高い保管を心掛けることをおすすめします。
    また、情報漏洩対策として、給与明細データがあるファイルやフォルダへのアクセス権は管理者限定で設定し、記憶媒体は鍵のかかる場所に保管しましょう。

従業員から給与明細書の再発行を依頼されたらどうする?

給与明細書は給与の支払いの際に交付するものですが、後日従業員から「再発行してほしい」と依頼されることがあります。

従業員が給与明細書の再発行を求める理由として多いのが、管理不足による紛失です。また、住宅や車のローン契約、医療費控除などでの収入証明書類として、複数の給与明細書が必要になるケースもあります。

再発行の義務はないが、対応するのがベター

会社は従業員に給与明細書を交付したら、再発行する義務はありませんが、従業員の満足度や会社に対する信頼度を考えて、できる限り給与明細書を再発行する会社は多いです。その際には、従業員に給与明細書の重要性や原則として再発行しないことなどを伝え、従業員自身の保管意識を高めるよう心掛けましょう。

給与明細書や給与関連書類は適切な方法で保管しよう

給与に関わる書類は、種類によって5年または7年の保管が必要です。一方、給与明細書は、会社での保管義務はありません。ただし、給与明細書の発行後に従業員から確認や再発行を求められる可能性を考えると、可能であれば給与明細書も保管しておいた方が安心かもしれません。

給与明細書は、従業員の氏名をはじめ、給与支給額や控除額、労働日数などの大切な情報が記載された書類です。紙交付とWeb交付のいずれの場合も、保管する際には十分なセキュリティ対策をとり、万が一にも情報漏洩が起こらないように注意しましょう。

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