年金収入がある場合は年末調整ではなく確定申告が必要|必要書類や書き方を解説

2024/03/01更新

「年金をもらいながら働いている人は年末調整が必要?」「確定申告はしなくてよい?」このような悩みを抱えていませんか。いざ年金を受給するようになると、年末調整と確定申告のどちらを行えばよいのか迷ってしまいますよね。年金収入は雑所得に該当するため年末調整の対象外であり、確定申告をする必要があります。

ここでは、年金収入が年末調整の対象にならない理由や確定申告が必要なケースを解説します。

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年金収入は年末調整できない

年金収入と給与所得の両方がある場合、年末調整を行うことはできません。その理由について、以下3つの項目を基に見ていきましょう。

  • 年金収入は雑所得に該当するため年末調整の対象ではない
  • 雑所得と給与所得の違い
  • 雑所得の計算方法と控除額

それぞれ詳しく解説します。

年金収入は雑所得で年末調整の対象ではない

年末調整の対象となるのは、給与所得のみです。

年末調整とは、源泉徴収された税額の年間の合計額と、年税額を一致させる精算の手続きです。年金収入といった公的年金は雑所得に該当し、年末調整の対象ではありません。そのため、年金収入と給与所得の両方がある会社員は、基本的に確定申告をする必要があります。

雑所得となる主な公的年金は以下のとおりです。

  • 国民年金(老齢給付)
  • 厚生年金(老齢給付)
  • 共済組合
  • 国民年金基金
  • 厚生年金基金
  • 確定給付企業年金
  • 企業型拠出年金
  • 外国の制度にもとづいた年金

該当する収入がある場合は確定申告が必要なので確認しましょう。なお、国民年金と厚生年金には、老齢給付以外にも非課税の障害給付と遺族給付があります。

雑所得と給与所得の違い

雑所得と給与所得の違いは個人で活動して得ているか、会社から支給されているかです。

  • 給与
  • 賞与
  • 役員報酬

会社から支給される給与のほとんどが給与所得に該当します。一方で、雑所得に該当するのは主に以下の3種類です。年金収入の他に、副業で得た収入も雑所得に該当します。

具体例
1. 公的年金など 国民年金、厚生年金、国民年金基金、厚生年金基金
確定拠出年金からの老齢給付金など
2. 業務にかかるもの 副業(事業ではない)の原稿料や講演料、ネットショップで販売して得た収益など
3. その他 個人年金保険(契約者 = 年金受取人)からの年金、外貨預金の為替差益、暗号資産取引による所得

参考:国税庁「No.1500 雑所得新規タブで開く

雑所得の計算方法と控除額

雑所得の計算方法は以下のとおりです。

  • 1.
    公的年金などの雑所得=公的年金などの金額-公的年金等控除額
  • 2.
    業務にかかる雑所得=総収入金額-必要経費
  • 3.
    その他雑所得=総収入金額-必要経費

雑所得は3つの値を合算して金額を出します。なお、公的年金等控除額は公的年金などの受給者の年齢と年金収入に応じて決められているため、計算時に注意が必要です。控除額の一覧は以下のとおりです。

公的年金の雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合(令和2年分以後)
受給者年齢 公的年金などの収入金額 公的年金等控除額
65歳未満 130万円未満 60万円
130万円以上410万円未満 収入金額×25%+27万5,000円
410万円以上770万円未満 収入金額×15%+68万5,000円
770万円以上1,000万円未満 収入金額×5%+145万5,000円
1,000万円以上 195万5,000円
65歳以上 330万円未満 110万円
330万円以上410万円未満 収入金額×25%+27万5,000円
410万円以上770万円未満 収入金額×15%+68万5,000円
770万円以上1,000万未満 収入金額×5%+145万5,000円
1,000万円以上 195万5,000円

参照:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係新規タブで開く

具体例として、65歳で350万円の年金収入があった場合の雑所得金額を確認してみましょう。

  • 1.
    350万円×25%+27万5,000円=115万円(控除金額)
  • 2.
    350万円-115万円(控除金額)=235万円(雑所得)

まず1で控除金額を算出し、2で収入金額から控除金額を差し引いて、雑所得金額を計算します。

このように、年金収入の控除金額は年齢と年金収入の金額によって決まっています。年金収入と給与所得の両方がある場合は、控除金額も確認しておきましょう。

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年金収入は年末調整ではなく確定申告が必要

年金収入がある場合は年末調整ができないため、代わりに確定申告をする必要があります。しかし、すべての人が確定申告をするわけではありません。それぞれのケースを見ていきましょう。

  • 確定申告が必要なケース
  • 年金収入があっても確定申告が不要なケース
  • 確定申告は不要でもした方がよいケース

確定申告が必要なケース

年金収入があり、確定申告が必要な人は以下のとおりです。

  • 年金収入以外の所得が年間20万円を超えている
  • 年金収入が年間400万円を超えている

年金収入は、国民年金、企業年金、確定給付企業年金、外国の社会保険に基づき支給される年金です。例えば、年金収入が300万円程度で、会社勤めをしていて年間20万円超の給与所得がある場合は確定申告が必要です。

年金収入があっても確定申告が不要なケース

年金所得者には確定申告不要制度があります。年金受給者は基本的に高齢であるため、手続きが多いと身体的にも精神的にも負担が大きいからです。確定申告不要制度に該当する場合を確認しましょう。

  • 年金収入以外の所得が年間20万円以下
  • 年金収入の合計が年間400万円以下
  • 年金が源泉徴収をされている

これらを満たしていれば、確定申告は必要ありません。基本的に年金収入が400万円以上あるケースは少ないので、気を付けるのは年金収入以外の所得です。高齢者でもパートやアルバイトに出ている場合は20万円超の収入があると考えられるので、その場合は確定申告が必要です。

確定申告は不要でもした方がよいケース

控除の対象となる支出があった場合は還付金を受け取れます。そのため、年金収入があって確定申告の義務がない場合でも、申告をした方が良いケースもあります。確定申告で適用される控除は以下のとおりです。

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 寄附金控除
  • 障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 基礎控除

控除の対象となる支出があれば還付金が戻ってくるので、義務でなくても確定申告をしておきましょう。

年金収入の確定申告のやり方と必要書類

年金収入がある場合に必要な確定申告のやり方と必要書類について解説します。なお、確定申告のより詳しいやり方は「確定申告のやり方は?初めての方向けに流れや手順、申告方法を解説」でも解説しているので、参考にしてください。

確定申告のやり方

確定申告は毎年2月16日から3月15日の期間で行うので、忘れずに申告書類を提出しましょう。確定申告には以下3つのやり方があります。

  • 税務署の窓口に直接提出する
  • 税務署に郵送する
  • e-Taxを利用して提出する

直接郵送する場合は紙の申告書を作成し、e-Taxで提出する場合はインターネット上で申告書を作成します。個人での確定申告は確定申告ソフトがおすすめです。会計知識に自信がなくても、簡単に確定申告の手続きができます。

必要書類と証明書一覧

確定申告に必要な書類と証明書は以下のとおりです。

  • 確定申告書
  • マイナンバーカード(ない場合は通知カード+身元が確認できる書類)
  • 控除証明書(社会保険料控除証明書など)

確定申告書は国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成できます。また、確定申告書を用紙で欲しい人は近くの税務署や確定申告会場などに足を運びましょう。あらかじめ準備しておけば、余裕をもって確定申告ができます。

年金収入と給与所得がある場合の確定申告書の書き方

年金収入(雑所得)と給与所得がある場合の確定申告書の記入例を見てみましょう。記載用紙は第一表と第二表の2種類です。まずは第一表の記載箇所を確認します。

引用:国税庁「公的年金等の雑所得がある方の記載例新規タブで開く

第一表は、以下の項目をそれぞれ記載する必要があります。

  • 収入金額等
  • 所得金額等
  • 所得から差し引かれる金額
  • その他

続いて第二表の記載箇所を見てみましょう。

引用:国税庁「公的年金等の雑所得がある方の記載例新規タブで開く

給与所得と、年金収入の源泉徴収票を見ながら、1〜6の箇所に収入金額と源泉徴収税額を記載します。

記載例を見てもわかるように、確定申告書は記載する場所が多く、非常に難しいです。そのため正しいやり方をしっかり理解する、もしくは確定申告ソフトを使ってスムーズに作成を進めましょう。

年末調整で年金収入があるときによくある質問

年金収入のある人が年末調整をする際によくある質問を2つ紹介します。

  • 年金収入がある会社員は確定申告しないとどうなる?
  • 年金の年末調整の控除額はいくらになる?

回答と共に見ていきましょう。

年金収入がある会社員は確定申告しないとどうなる?

確定申告が必要にもかかわらず、法定申告期限内に申告をせず税金を納めなかった場合は、無申告加算税や延滞税が課される場合もあるので要注意です。申告期限が過ぎた後でも以下の条件を満たせば、加算税は課されません。

  • 法定申告期限から1か月以内に自主的に行われている
  • 期限内申告をする意思があったと認められる

また、会社員で年金収入があっても年金収入以外の所得が20万円以下であれば、確定申告は不要です。

年金の年末調整の控除額はいくらになる?

年金収入は雑所得に該当するので、年末調整ができません。控除をする際には確定申告が必要です。年金収入の控除額は、年齢やもらっている年金収入金額によって異なります。年金収入以外にも給与所得を得ている場合は「所得金額調整控除」で、最大10万円を給与所得から差し引けます。

年金収入があれば年末調整ではなく確定申告をしよう

年金収入は雑所得になり、年末調整では処理できません。そのため、年金収入と給与所得がある人は確定申告が必要です。確定申告不要制度に該当しているのであれば必要ありませんが、パートやアルバイトなどで定期的に働いているのであれば、年に20万円超の給与所得があると考えられます。年金収入と給与所得の両方がある場合は、確定申告を忘れずに行いましょう。

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