社会保険の標準報酬月額とは?注意点や保険料の計算方法について解説

2022/12/09更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

毎月、従業員の給与から控除する健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険料。この社会保険料を計算するうえで、「標準報酬月額」を確認しておかなければなりません。健康保険料や厚生年金保険料は、標準報酬月額をもとに保険料の計算をします。

ここでは、標準報酬月額の概要や求め方、決定・改定のタイミングの他、標準報酬月額にもとづく社会保険料の計算方法などについて見てみましょう。

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標準報酬月額は、社会保険料の計算を簡便化して用いるための金額

標準報酬月額は、従業員の月々の給料を一定の幅(等級)に区分し、等級に該当する金額のことです。標準報酬月額によって、健康保険料や厚生年金保険料の計算を簡便化することができます。

社会保険料を算定する際のベースとなる数値

標準報酬月額は、従業員の健康保険料と厚生年金保険料を算定する際の基準となります。従業員の報酬月額の区分(等級)ごとに設定されます。

健康保険や厚生年金保険の保険料は従業員の給与額に応じて決まりますが、月々の給与の増減に合わせて毎月保険料を計算することは、納付金額を確認する上でも煩雑です。標準報酬月額があることで、残業代などで月々の給与に変動があっても控除する保険料は一定となり、保険料の把握が簡便化されます。

健康保険と厚生年金保険の標準報酬月額は異なる

標準報酬月額は健康保険と厚生年金保険で別々に定められており、健康保険は50段階、厚生年金保険は32段階に等級が分かれています。最高等級に達した場合は、給与が上がってもそれ以上保険料が増えることはありません。それぞれの等級区分は、「保険料額表」によって確認できます。

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標準報酬月額はどうやって決まる?

標準報酬月額が、健康保険料と厚生年金保険料を算定する際の基準となる金額であることがわかりました。ここからは、標準報酬月額がどのように決まるのか解説していきます。

社会保険加入時の報酬月額を求める

標準報酬月額を決定するときは、まず「報酬月額」を算出します。報酬月額とは、基本給をはじめ、残業手当(見込み含む)や家族手当、通勤手当、住宅手当、役職手当、通勤手当などの各種手当を含んだ金額です。なお、ボーナス(支給が年3回以下の場合)は、別の計算方法で保険料が徴収されるため報酬には含みません。

保険料額表を参照する

この報酬月額を算出したら、金額を「保険料額表」にあてはめて標準報酬月額を確認し、決定します。

では、具体的に標準報酬月額の確認方法を見てみましょう。

標準報酬月額の確認方法

例えば、東京都の会社に勤務、全国健康保険協会(協会けんぽ)で、合計報酬額が30万円の場合

令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表 新規タブで開く」に報酬月額30万円をあてはめると、「標準月額290,000~310,000円」のゾーンに該当します。この場合、健康保険は22等級、厚生年金保険は19等級となり、標準報酬月額は30万円です。

令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)

標準報酬月額の決定・改定のタイミング

この標準報酬月額の決定や改定のタイミングは5つあります。それぞれ、どのようなケースが該当するのか具体的に見ていきましょう。

また、いずれの場合も、管轄の年金事務所か事務センターに届出が必要なので、忘れないように注意が必要です。

資格取得時決定

資格取得時決定を行うのは、従業員が社会保険に加入するタイミングです。新たに入社した従業員が社会保険に加入する場合、雇用開始から5日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を提出する必要があります。この被保険者資格取得届には見込みの報酬月額を記入し、それによって標準報酬月額が決定されるのです。資格取得時決定で決まった標準報酬月額は、6月1日以降に資格取得した方、8月または9月に随時改定に該当する方以外は、原則として次の定時改定にて等級の更新を行います。

定時決定

標準報酬月額は、毎年4~6月の各月に支払われた報酬の平均支給額をもとにして見直します。この毎年1度行う標準報酬月額の見直しを、定時決定といいます。定時決定では、7月10日までに「算定基礎届」を提出しなければなりません。決定した標準報酬月額は、原則としてその年の9月分から翌年8月分の保険料まで使用されます。

随時改定

随時改定とは、昇給や降給等によって、固定給である報酬が大幅に増減した場合に行う標準報酬月額の改定のことです。随時改定を行うには、「固定的賃金が変動した」「継続した3か月間の月平均額が2等級以上変動した」「変動月から3か月間の報酬支払基礎日数(給与計算の対象となる日数)がすべて17日以上」という3つの条件があります。残業手当等の変動手当の増減による変動は、随時改定の対象にはなりません。

産前産後休業終了時改定

産休後に時短勤務などによって報酬額が下がると、以前の標準報酬月額では社会保険料が高いままになってしまいます。そのような状況を避けるため、産前産後休業(産休)終了後に従業員から希望があった場合に行う改定が、産前産後休業終了時改定です。

育児休業等終了時改定

育児休業(育休)終了後に、従業員から希望があった場合に行う改定を、育児休業等終了時改定といいます。産休終了時と同様、時短勤務や残業免除などによって給与が下がった際に、社会保険料の負担によって手取額が減ることを避けるための措置です。

標準報酬月額にもとづく社会保険料の計算方法

健康保険料と厚生年金保険料は、標準報酬月額に所定の保険料率を掛けて計算します。前述のとおり、保険料額表には等級ごとに健康保険料と厚生年金保険料の金額がそれぞれ表示されているため、保険料額表を見て、それぞれの保険料を確認することもできます。

健康保険料の計算方法

健康保険料を求める計算式は、下記のとおりです。

健康保険料(従業員負担額)の計算式

標準報酬月額×健康保険料率×1/2=健康保険料(従業員負担額)

算出した保険料は、会社と従業員が半分ずつ負担します。

健康保険の保険料率は、加入している健康保険組合等によって異なります。協会けんぽの場合、地域によって料率が変わりますので、必ず都道府県ごとの保険料額表を確認しましょう。

厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料を求める計算式は、下記のとおりです。

厚生年金保険料(従業員負担額)の計算式

標準報酬月額×厚生年金保険料率×1/2=厚生年金保険料(従業員負担額)

厚生年金保険料も健康保険料と同様、会社と従業員が折半で負担します。

厚生年金保険の料率は、一律で18.3%です。なお、厚生年金保険料を支払っている従業員は、別途国民年金保険料を支払う必要はありません。

標準報酬月額に関する注意点

標準報酬月額の決定や社会保険料の計算にあたっては、知っておきたいいくつかの注意点があります。計算時にミスが発生しやすいポイントになりますので、十分注意しましょう。

保険料額表は料率が更新される

健康保険・厚生年金保険の保険料額表は、固定ではなく更新されるため、毎年確認が必要です。料率の見直しは、健康保険料率は概ね3月となっています。厚生年金保険料率は毎年9月に行われていましたが、年金制度改正にもとづき2004年から段階的に引き上げられ、2017年9月以降は18.3%で固定されています。標準報酬月額を求めるときや社会保険料の計算をするときは、必ず最新の保険料額表を確認しましょう。

労働保険料は標準報酬月額を基準としない

社会保険のうち労働保険(労災保険・雇用保険)は、保険料の計算に標準報酬月額は使用されません。労働保険の保険料は、対象となる従業員の賃金総額に保険料率を掛けて求めます。平均額ではなく実際に支払った賃金の総額が基準となるため、注意しましょう。

なお、労働保険料は、年度始めに概算保険料を申告・納付し、年度末に確定保険料との差額を精算する仕組みになっています。

労働保険料についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

労働保険料とは?労災保険・雇用保険の違いや保険料の計算方法を解説

傷病手当金・出産手当金も標準報酬月額がもとになる

傷病手当金とは、従業員が病気やケガのために働けないとき、休業4日目以降に健康保険から支給される給付金です。また、出産手当金とは、出産のために会社を休んだときに支給される給付金のことです。

この傷病手当金や出産手当金の支給額は、標準報酬月額をもとにして決定します。具体的には、支給開始日の以前12か月間の標準報酬月額の平均額にもとづいて算出されます。

標準報酬月額を理解して社会保険料を正しく計算しよう

標準報酬月額は、健康保険料と厚生年金保険料を算定する際の基準となる大切な数値です。標準報酬月額は毎年7月に見直しを行いますが、その他にも随時改定など手続きが必要なタイミングがあります。

標準報酬月額を正しく求めるためには、適切な給与管理が欠かせません。また、保険料率は頻繁に変更があるため、最新の料率や法令をしっかりチェックする必要があります。そのような給与管理の手間を軽減するには、給与計算ソフトがおすすめです。

給与計算ソフトは、専門的な設定は不要で、支給、控除、差し引き支給額を自動計算できるから、給与計算の手間やミスが軽減されます。さらに、税金や保険料率の変更にも自動で対応するため、給与計算のたびに最新の料率や法令をチェックする必要がありません。

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