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残業手当の計算に必要な月平均所定労働時間とは?算出方法も解説

2024/04/02更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

事業主が従業員に時間外労働(残業)をさせたときには、残業手当(残業代)を支払う必要があります。この残業手当を計算するときに必要になるのが、「月平均所定労働時間」です。月平均所定労働時間とは、1か月当たりの平均の所定労働時間のことです。所定労働時間は企業によって異なるため、残業手当を計算するときには、まず自社の月平均所定労働時間を算出しなければなりません。

ここでは、所定労働時間と残業手当の関係や、勤務形態別の月平均所定労働時間の計算方法、月平均所定労働時間に関する注意点などについて解説します。

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所定労働時間とは企業や労働者ごとに定められた勤務時間のこと

月平均所定労働時間を理解するためには、まず、所定労働時間が何かを把握しておく必要があります。
所定労働時間とは、企業や労働者ごとに定められた「従業員が勤務する時間(労働時間)」のことです。休憩時間は労働時間には含みません。就業規則や雇用契約書には、従業員の始業時間と終業時間が記載されています。その始業から終業までの時間から休憩時間を引いたものが、所定労働時間です。

なお、休憩時間は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも60分の付与が義務付けられています。例えば、「始業時間が9時、終業時間が18時、休憩時間が60分」という場合、所定労働時間は8時間になります。

労働基準法では、労働時間の上限を「1日8時間かつ週40時間」以内と定めており、これを法定労働時間といいます。所定労働時間は、法定労働時間の範囲内であれば、自由に設定することが可能です。反対に、変形労働時間制など特殊な労働形態を除き、所定労働時間を法定労働時間より長く設定することは、原則としてできません。

所定労働時間と残業手当の関係

所定労働時間を超えて働くことを、残業といいます。残業は、「法定内残業」と「法定外残業」に大きく分けられます。

法定内残業とは、所定労働時間を超えるものの、法定労働時間(1日8時間かつ週40時間)を超えない残業のことです。それに対して法定外残業とは、法定労働時間を超える残業のことを指します。

例えば、所定労働時間が7時間の会社で、9時から19時(休憩時間60分)まで働いて2時間残業した場合、17~18時は法定内残業、18~19時は法定外残業となります。

なお、法定内残業と法定外残業では、残業手当の計算方法が異なります。法定内残業の残業手当には割増賃金は不要ですが、法定外残業では割増賃金が発生します。また、月60時間を超える法定外残業や深夜残業をさせた場合は、割増賃金の割増率が上がります。

残業の種類別に見た割増賃金の割増率は、以下のとおりです。残業手当を計算するときには、残業の種類を正しく把握し、それぞれについて計算しなければなりません。

割増賃金の割増率

法定内残業:割増なし

法定内残業の残業手当には、割増はありません。残業時間に応じた通常賃金を支払います。

法定外残業:割増率25%以上

法定外残業は、割増率25%以上(通常賃金の1.25倍以上)の残業手当が発生します。

月60時間を超える法定外残業:割増率50%以上

月60時間を超える法定外残業に対しては、割増率50%以上(通常賃金の1.5倍以上)の残業手当を支払う必要があります。

深夜残業:割増率25%以上

労働基準法では、22時~翌5時を深夜として扱います。この時間帯に従業員を働かせた場合は深夜労働になり、割増率25%以上の割増賃金が発生します。もし、深夜に法定外残業をさせた場合、深夜労働の割増率25%以上+時間外労働の割増率25%以上で、50%以上の割増率となります。

さらに、深夜残業が月60時間を超える法定外残業となった場合、深夜労働の割増率25%以上+月60時間を超える法定外残業の割増率50%以上で、75%以上の割増率となります。

法定休日労働:割増率35%以上

労働基準法では、週1日または4週を通じて4日の休日を、法定休日と定めています。この法定休日に従業員を働かせた場合、割増率35%以上の割増賃金を支払う必要があります。

また、法定休日労働が深夜まで及べば、法定休日労働の割増率35%以上+深夜労働の割増率25%以上で60%以上の割増率になります。なお、法定休日の労働時間は、月60時間を超える法定外残業の算定には含まれず、割増率は35%のままになります。

残業手当についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

残業手当の計算と月平均所定労働時間

法定外残業や深夜労働、法定休日労働の割増賃金を算出する際に必要になるのが、月平均所定労働時間です。月平均所定労働時間とは、1か月当たりの平均の所定労働時間のことです。法定外残業などの割増賃金は、以下の計算式で求められます。

各種残業の割増賃金の計算式

各種残業の割増賃金=1時間当たりの基礎賃金×対象の労働時間数×各種割増率

月平均所定労働時間は、この「1時間当たりの基礎賃金」を算出する際に用いられます。

中には「単純に月給額を月の日数で割ればよいのでは」と考える人もいるかもしれませんが、月によって1か月の日数や時間が異なるため、残業した月の日数や時間で月給を割ると、月ごとに基礎賃金の違いが出てしまいます。

そのようなばらつきを防ぐため、割増賃金を計算する際には、月平均所定労働時間を使って、1時間当たりの基礎賃金を算出することになっているのです。

月平均所定労働時間の考え方

月平均所定労働時間を求めるには、年間の所定労働日数に1日の所定労働時間を掛けて年間の所定労働時間を算出し、それを12か月で割ります。年間の所定労働日数は、365日(うるう年は366日)から年間休日数を引いて算出します。また、年間休日数とは、会社が就業規則によって定める1年間の休日数のことです。

月平均所定労働時間の基本の計算式は、以下のとおりです。

月平均所定労働時間の計算式

月平均所定労働時間=(365日-年間休日数)×1日の所定労働時間÷12か月

なお、上記の式は1日の所定労働時間が変わらない場合となります。
月平均所定労働時間を計算したら、次の計算式で、1時間当たりの基礎賃金を求めます。

1時間当たりの基礎賃金の計算式

1時間当たりの基礎賃金=所定内給与(月給)÷月平均所定労働時間

なお、割増賃金計算で、1時間当たりの基礎賃金を算出するために月平均所定労働時間を利用するのは、従業員が月給制の場合です。月給制以外の給与形態では、以下のように、月平均所定労働時間を使わずに1時間当たりの基礎賃金を算出します。

週給制の場合

1時間当たりの基礎賃金=所定内給与(週給額)÷1週間の所定労働時間

日給制の場合

1時間当たりの基礎賃金=所定内給与(日給額)÷1日の所定労働時間

時給制の場合

1時間当たりの基礎賃金=時間給として決まっている金額

出来高制(歩合給)の場合

1時間当たりの基礎賃金=出来高給÷出来高給の算定期間中の総労働時間数

月平均所定労働時間を求める計算例

年間休日数や1日の所定労働時間は企業や従業員ごとに違うため、月平均所定労働時間も同様に変わってきます。ここからは、具体例とともに、月平均所定労働時間の計算方法を解説していきます。

完全週休2日制の場合

完全週休2日制の場合、月平均所定労働時間は「(365日-年間休日数)×1日の所定労働時間÷12か月」で求めます。休日を土日祝日と年末年始2日、お盆に3日とすると、例えば2023年では年間休日数が123日になります。このケースで1日の所定労働時間が8時間だった場合、月平均所定労働時間は次のようになります。

完全週休2日制の月平均所定労働時間

月平均所定労働時間=(365日-123日)×8時間÷12か月=161.3時間

1年単位の変形労働時間制の場合

変形労働時間制とは、繁忙期や閑散期に合わせて、一定期間内における労働時間を調整する制度のことです。「繁忙期の所定労働時間を長くする代わりに、閑散期の所定労働時間を短くする」というように、業種の特性に応じて労働時間を配分し、全体的な労働時間の短縮を図ることを目的とします。

1年単位の変形労働時間制では、1年を平均して週の労働時間が40時間を超えなければ、特定の日や週に法定労働時間を超えて所定労働時間を設定できます。なお、1年単位の変形労働時間制を採用するには、労使協定を締結のうえ、所轄の労働基準監督署への届け出が必要です。

1年単位の変形労働時間制の場合、1年の日数(365日)を1週間の日数で割り、1週当たりの法定労働時間である40時間を掛けると、年間の労働時間が求められます。これを12か月で割れば、月平均所定労働時間が算出できます。計算式にすると、以下のとおりです。

1年単位の変形労働時間制の月平均所定労働時間

月平均所定労働時間=年間の所定労働時間÷12か月

1か月単位の変形労働時間制の場合

労使協定の締結または就業規則などで定めれば、1か月単位の変形労働時間制を採用することもできます。1か月単位の変形労働時間制で月平均所定労働時間を求めるには、各月の日数ごとに労働時間を算出します。

1か月単位の変形労働時間制においては、原則として、1週間当たりの平均労働時間は40時間以内となります。そのため、1か月当たりの労働時間の上限は「月の日数÷7日×40時間」です。これを各月にあてはめて、月ごとの労働時間を出していきます。

1か月単位の変形労働時間制における法定労働時間の総枠

  • 28日の月:28日÷7日×40時間=160時間
  • 29日の月:29日÷7日×40時間=165.7時間
  • 30日の月:30日÷7日×40時間=171.4時間
  • 31日の月:31日÷7日×40時間=177.1時間

月平均所定労働時間についての注意点

月平均所定労働時間を使って残業手当を計算する際には、就業規則への記載や時間の上限などに気をつける必要があります。具体的には、以下のような点に注意しましょう。

月平均所定労働時間の計算根拠は就業規則に明記する

月平均所定労働時間の計算根拠となる所定労働時間や年間休日数は、就業規則や雇用契約書に明記します。週休2日制や変形労働時間制など、制度の違いに沿って始業時間や終業時間、休憩時間などの記載が必要です。

なお、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、労働基準監督署に提出する義務があります。就業規則の作成・提出義務のない企業でも、不要なトラブルを防ぐために、就業規則を作成しておいた方がよいでしょう。

月平均所定労働時間には上限がある

月平均所定労働時間には上限があります。労働基準法で定められた週の労働時間の上限は40時間で、これに基づき、月平均所定労働時間は「365日÷7日(1週間の日数)×40時間(法定労働時間)÷12か月」となり、計算上は、173.8時間が上限となります。

しかし、1日の所定労働時間が固定されている場合などは、上限が変わるため注意が必要です。また、原則労働、1か月・1年単位の変形労働時間制などによっても異なります。

運用する場合には、変形労働時間制の場合も含めて実際のカレンダーを用いて計算を行い、法定時間以内であるか検証しなければなりません。

月平均所定労働時間について理解し、残業手当を正しく計算しよう

残業には、法定内残業と法定外残業があります。このうち、法定外残業の残業手当を計算するには、月平均所定労働時間を把握する必要があります。

また、月平均所定労働時間は、深夜労働や法定休日労働における割増賃金の計算にも使います。残業手当をはじめとした割増賃金の計算方法や割増率は、労働基準法で定められているため、ミスや漏れのないように十分注意を払わなければなりません。

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この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

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