退職までに必要な手続きは?従業員側と会社側の流れと必要書類を解説
監修者:税理士法人古田土会計 社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
2024/08/27更新
会社を退職する際には、従業員側も会社側も、さまざまな手続きを行います。特に、会社側が行う退職手続きの多くは期限が定められており、対応が遅れると退職者に迷惑がかかってしまうこともあります。退職日直前になって慌てないように、必要な手続きの流れをしっかり確認しておきましょう。
本記事では、従業員の退職にあたり、従業員側・会社側のそれぞれで必要になる手続きや届け出、提出書類などについて解説します。
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従業員が退職までにする手続きの一般的な流れ
従業員は、退職することを決めたら、上司に退職の意向を伝えたうえで退職願または退職届を提出し、退職日までに必要な手続きを行います。
退職願と退職届は、どちらも従業員が退職時に勤務先に提出する書類です。ただ、退職願が一方的に辞めるのではなく、会社の同意ないし承諾を得て「退職を願い出る」書類であるのに対し、退職届は従業員による一方的な意思表示であり、「退職の意思を通告する」書類です。退職願は、従業員の意志が到達した時点では効果は生じず、会社が承諾しなければ効果が生じないため、会社からの承諾を得る前なら提出後でも撤回できます。一方、退職届は会社に到達すれば効果が生じる書類のため、一度提出すると原則として撤回できず、会社も基本的に拒否することはできません。
なお、退職には、従業員の自己都合による退職の他、解雇などの会社都合退職や有期雇用契約の満了による退職などがありますが、本記事では自己都合退職のケースについて解説していきます。
自己都合退職における手続きの一般的な流れ
- 退職意向の意思表示、退職日の決定(~2か月前)
- 退職届の提出と引き継ぎ(~1か月前)
- 退職書類の受取、備品の返却(最終出社日)
- 退職後に再就職しない場合は、社会保険や税金などの手続きをする
退職意向の意思表示、退職日の決定(~2か月前)
退職を決めた従業員は、退職希望日の2か月前を目安に直属の上司に退職の意向を伝えます。法律上は、退職を申し出てから2週間で退職が可能です。しかし、後任者の手配や業務の引き継ぎをスムーズに進めるために、退職希望日の1~2か月前までの届け出を就業規則で定めている企業が多いでしょう。一般的には、退職届や退職願を書面で提出する前に、上司と相談して退職日を決定します。
退職届の提出と引き継ぎ(~1か月前)
退職日の1か月前を目安に、退職届(または退職願)を会社に提出します。退職届は法律で義務付けられている書類ではありませんが、就業規則などで提出が定められている場合もあります。退職届には、一般的に、氏名や退職日、退職理由などを記載しますが、退職理由は詳細に書く必要はなく、自己都合退職なら「一身上の都合」などで問題ありません。
退職届を提出したら、業務の引き継ぎや取引先へのあいさつに進みます。余裕をもって引き継ぎを完了できるように、最終出社日から逆算してスケジュールを立てることが大切です。
退職届の例
退職書類の受取、備品の返却(最終出社日)
最終出社日もしくは退職日に、退職後に必要になる書類を会社から受け取り、貸与されていた備品などを会社へ返却します。会社から受け取る書類は、ものによっては最終出社日ではなく、後日郵送されるものもあります。
会社から受け取る主な書類
- 健康保険の資格喪失証明書(本人が希望する場合)
- 雇用保険被保険者資格喪失確認通知書
- 離職票
- 源泉徴収票
- 退職証明書
会社へ返却する主な書類・備品
- 健康保険証(扶養家族分を含む)
- 社員証
- 名刺
- 携帯電話
- パソコン
- 業務で使用した書類
- 業務上の作成物
- 制服
- 鍵
なお、健康保険証は退職日まで有効です。そのため、最終出社日の後に有給休暇を消化する場合、退職日が過ぎてから郵送などで健康保険証を返却するのが一般的です。
源泉徴収票についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
退職後に再就職する場合は、就職先で社会保険や税金などの手続きをする
退職後に就職する場合、社会保険や税金などの手続きは、就職先の会社が行うことになります。主な手続きは、健康保険、厚生年金保険の資格取得、雇用保険の資格取得の手続きなどです。この手続きの際には、従業員はマイナンバー(または基礎年金番号)や雇用保険被保険者証を会社へ提出します。また、会社は住民税を特別徴収に切り替えるため異動の届け出を行い、12月には提出された源泉徴収票を基に年末調整をすることになります。
退職後に再就職しない場合は、社会保険や税金などの手続きをする
退職後に再就職しない場合は、社会保険や税金などの手続きが必要になります。主な手続きは、健康保険から国民健康保険への切り替えや、厚生年金保険から国民年金への切り替え、失業手当(基本手当)の受給申請などです。また、年の途中で退職して、年内に再就職をしなかった場合は、翌年2月16日から3月15日までの期間に確定申告を行います。
必要な手続きと場所は、以下のとおりです。
手続き | 手続きの場所 |
---|---|
失業保険の申請 | 居住地を管轄するハローワーク |
年金の切り替え | 居住地の市区町村役所の国民年金課もしくは年金事務所 |
健康保険の切り替え | 居住地の市区町村役所の国民健康保険課 |
住民税の納付 | 住民税の納付 |
確定申告 | 税務署、e-Tax |
会社側が行う退職関連の手続き
従業員から退職の申し出を受けた会社側は、必要な手続きを迅速に進めなければなりません。会社が行う退職関連の手続きには、期限が定められているものも多いため、漏れや遅れのないように注意しましょう。
自己都合で退職する場合の会社側が行う手続き
- 退職届の受理
- 備品や健康保険証の回収
- 社会保険、雇用保険の喪失手続き
- 所得税、住民税などの手続き
- 源泉徴収票や離職票などを手渡し、または郵送する
退職届の受理
従業員の退職日が決まったら、就業規則に定められた期日までに退職届を提出してもらい、受理します。法律上、退職の意思表示は口頭でも認められますが、将来的なトラブルを防ぐためにも退職届の提出があった方がいいでしょう。遅くとも、法律上有効とされる2週間前までには、退職届を提出してもらうようにしてください。その際、有給休暇が残っている場合は、有給休暇の消化についての話し合いを行います。
備品や健康保険証の回収
従業員の退職日に、健康保険証(扶養家族分を含む)や社員証、名刺、携帯電話、パソコン、仕事に関するデータなどを従業員から回収します。
特に、健康保険証は、従業員の退職日の翌日から5日以内に、全国健康保険協会(協会けんぽ)なら管轄の年金事務所または事務センター、健康保険組合なら保険者へ返却しなければなりません。従業員の最終出社日から退職日までの間に有給休暇の消化がある場合は、退職日以降に郵送等で回収を行ってください。
社会保険、雇用保険の喪失手続き
社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険に加入していた従業員が退職した場合は、それぞれについての資格喪失手続きが必要です。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格喪失手続き
退職日の翌日から5日以内に、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を管轄の年金事務所または事務センターへ提出します。全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は、併せて健康保険証(扶養家族分を含む)の提出も必要です。もし、紛失などによって退職者から健康保険証を回収できなかった場合は、「健康保険 被保険者証回収不能届」を添付します。
健康保険組合の場合は、健康保険証は保険者に提出してください。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格喪失手続きの流れ
雇用保険の資格喪失手続き
退職日の翌々日から10日以内に、管轄のハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出します。退職者に離職票を交付する場合は、併せて「雇用保険被保険者離職証明書」の提出も必要です。手続きが完了すると、ハローワークから離職票が発行されるので、退職者に送付しましょう。
雇用保険の資格喪失手続きの流れ
雇用保険被保険者資格喪失届についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
所得税、住民税などの手続き
従業員の退職後は、税金にかかわる手続きも必要です。所得税、住民税について、次のような手続きを行います。
所得税に関する手続き
会社は、退職後1か月以内に従業員が退職した年の所得額や源泉徴収所得税額を記載した「給与所得の源泉徴収票」を発行し、本人に交付する義務があります。その年の1月1日から退職日までに支払った給与等が250万円を超える場合は、税務署へも「給与所得の源泉徴収票」を提出します。なお、税務署への提出は、在職者分とまとめて翌年1月31日までとしても問題ありません。
また、翌年1月31日までに「給与支払報告書」を従業員の居住地である市区町村に提出する必要があります。「給与支払報告書」の届出時期は、各市区町村により異なる場合がありますので、提出先の市区町村に確認してください。
給与支払報告書についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
住民税に関する手続き
退職した従業員が住民税の特別徴収(給与から天引きで住民税を納付する方法)を行っていた場合は、住民税に関する手続きが必要です。
退職によって特別徴収ができなくなったときは、翌月10日までに「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を従業員の居住地である市区町村に提出します。退職時に従業員の転職先が決まっていないときには、届出書に普通徴収(納税通知書を使って自分で住民税を納付する方法)へ切り替える旨を記載しましょう。
なお、従業員の退職月によって住民税の徴収方法が変わるため注意が必要です。退職が1~4月なら原則として未徴収の住民税を一括徴収、5月なら通常どおり特別徴収の処理をします。6~12月なら翌月から普通徴収、または本人の希望により一括徴収になります。
住民税の特別徴収についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
退職者に必要書類を渡す
退職者の最終出社日や退職日には、源泉徴収票など必要書類を渡します。退職日までに発行することができない場合は、一般的に郵送になるため、あらかじめ従業員に書類を郵送することを伝え、退職後の住所を確認しておきましょう。退職者に渡す主な書類は以下になります。
給与所得の源泉徴収票
前述したとおり、従業員が退職したときには、1か月以内に従業員が退職した年の所得額や源泉徴収所得税額を記載した「給与所得の源泉徴収票」を交付する必要があります。
健康保険の資格喪失証明書
健康保険資格喪失証明書とは、退職後、健康保険(協会けんぽや健康保険組合)から国民健康保険への切り替え手続きをする際に必要になる書類です。退職者自身で発行手続きを行うことも可能ですが、もし退職者から会社に健康保険の資格喪失証明書の発行を依頼された場合は、会社から交付申請を行い、退職者へ送付しましょう。
なお、資格喪失証明書は、日本年金機構のWebサイトから「健康保険・厚生年金保険 資格取得・資格喪失等確認請求書(通知書)」をダウンロードして事前申請するほか、会社任意のフォーマットも使用できます。
離職票
離職票とは、正式には「雇用保険被保険者離職票」といい、雇用保険に加入している人(被保険者)が退職したことを証明する公的な書類です。退職後に失業手当(基本手当)や高年齢雇用継続給付の受給手続きをする際には、離職票が必要になります。離職票には「離職票-1」と「離職票-2」の2種類があるので、両方を退職者に送付します。
離職票についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
退職証明書
退職証明書とは、従業員が退職したことを証明するために作成する書類です。会社は退職者から退職証明書を求められた場合は、速やかに発行しなければならず、もし正当な理由なく発行を拒否すると労働基準法違反となります。
退職証明書についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
源泉徴収票のスムーズな作成は給与計算ソフトにおまかせ
従業員が退職する際には、会社はさまざまな手続きを行わなければなりません。特に、社会保険や雇用保険、税金に関する手続きは、退職日から書類の提出期限まであまり余裕がなく、スムーズに進めるためには、日々の適切な管理が重要になります。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
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