スマホでの確定申告はマイナンバーカードなしでもできる?方法を解説
監修者: 奥 典久(奥典久税理士事務所)
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スマホで確定申告をしたいけど、マイナンバーカードを持っていない、マイナンバーカードの発行が間に合わない、とお悩みの方は少なくありません。実は確定申告は、e-Taxによる「ID・パスワード方式」によってマイナンバーカードがなくてもスマホから行うことができます。
本記事では、マイナンバー制度の概要について触れつつ、税務署への郵送・持参、e-Taxの「ID・パスワード方式」による申告など、マイナンバーカードなしで確定申告を完了させる方法について解説します。また、自身のマイナンバー(個人番号)を確認する方法も取り上げているので、ぜひ参考にしてください。
マイナンバーカードなしで確定申告をする方法は2つ
所得税の確定申告は、マイナンバーカードを所持していなくても申告が可能です。申告方法は2種類あり、ひとつは税務署への郵送・持参、もうひとつは「ID・パスワード方式」を利用したe-Taxによる方法です。以下では、それぞれの方法について詳しく解説します。
1. 税務署に郵送または持参
マイナンバーカードなしで確定申告を行う最も一般的な方法は、確定申告書類を税務署に郵送または直接持参することです。確定申告書、青色申告決算書(白色申告の場合は収支内訳書)のほか、本人確認書類のコピー、各種控除証明書など必要な書類を準備して、必要事項を記載し、提出期間内(例年2月16日から3月15日まで)に税務署へ郵送するか窓口に提出します。この一連のプロセスでは、マイナンバーカードを用意する必要はありません。
マイナンバーカードが必要とされる理由は、e-Taxを利用して確定申告書をオンラインで提出する際に、カードを電磁的に読み取らせることで本人確認を行うためです。しかし、確定申告を郵送や税務署の窓口で行う場合は、郵送であれば本人確認書類を添付し、持参する場合はその場で本人確認書類を提示するだけで済むため、マイナンバーカードは不要です。
次に紹介する「ID・パスワード方式」は、そのe-Taxを利用しながら、マイナンバーカードを使わずに申告できる手段です。
2. e-Taxの「ID・パスワード方式」で申告
パソコンやスマホを使用して電子申告を行う場合、e-Taxを利用します。e-Taxとは、国税庁が提供するオンライン申告システムです。インターネットを通じて確定申告書などの税務書類を提出でき、税務署に足を運ぶ必要はありません。
通常、e-Taxを利用する際にはマイナンバーカードを使って本人確認を行います。それには、ICカードリーダライタや、ICカードの読み取りに対応しているスマホを使用してマイナンバーカードの情報を読み込ませる必要があります。
一方の「ID・パスワード方式」では、マイナンバーカードやこれらの機器を使わずに確定申告書類のデータを提出することが可能です。具体的な申告手順は後述します。
なお、マイナンバーカードそのものは不要でも、確定申告書にはマイナンバーの記載が必要です。従って、後述する住民票の写しや「通知カード」「個人番号通知書」で、自身のマイナンバーをあらかじめ確認する必要があります。
確定申告書にはマイナンバー (個人番号) の記載が必要
前述の通り、マイナンバーカードの有無にかかわらず、確定申告書にはマイナンバーの記載が求められます。以下では、マイナンバーの概要とその調べ方について詳しく解説します。
そもそもマイナンバーとは
マイナンバーは、法令上では「個人番号」と呼ばれ、日本に住民票がある全ての人に割り当てられる12桁の識別番号です。行政の効率化と行政手続きの簡略化、行政サービス向上を目的として2016年に導入され、国民全員にその番号が通知されています。社会保障、税、災害対策といった行政手続きにおいて、個人を特定するために使用されます。
特に税務関連の手続きでは、マイナンバーは申告者の正確な身元確認のために不可欠であり、確定申告書類の上段にはマイナンバーを記入する欄が設けられています。マイナンバーによって国税庁は申告者の情報を正確に把握でき、申告者側も申告や納付をスムーズに進めることが可能です。
マイナンバーについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
マイナンバーの調べ方
マイナンバーはマイナンバーカードに記載されています。しかし、マイナンバーカードを持っていない場合でも、マイナンバーを確認する方法が2種類あります。
一つ目は、役所でマイナンバーが記載された住民票の写しを発行してもらう方法です。市区町村の役所に出向くか、申請すればマイナンバーが記載された住民票の写しを郵送で取得できます。ただし、通常の住民票の写しにはマイナンバーが記載されないため、申請時にマイナンバーの記載を希望することを伝える必要がある点に注意してください。
二つ目は、通知カードや個人番号通知書を確認することです。通知カードは2015年10月から住民票を持つ全ての住民に簡易書留によって送付されています。その後、法改正によって2020年5月25日に通知カードは廃止され、それ以降に新たにマイナンバーが付番された人には通知カードに代わる「個人番号通知書」が郵送されています。
なお通知カードや個人番号通知書の再発行は受け付けていないため、紛失してしまった場合はマイナンバー記載の住民票の写しを取得する必要があります。
「ID・パスワード方式」によるスマホを使った確定申告のやり方
マイナンバーカードを持っていなくても、「ID・パスワード方式」を利用すれば、スマホなどを使ってe-Taxで確定申告が可能です。以下では、「ID・パスワード方式」を利用した確定申告の手順を紹介します。
1. 税務署でID・パスワード方式の届出を作成・提出
「ID・パスワード方式」を利用したい場合は、税務署で「ID・パスワード方式」の届出を行う必要があります。
まず、税務署に直接出向き、職員と対面で本人確認を行った後、利用者識別番号(ID)とパスワード(暗証番号)が記載された「届出完了通知」が交付されます。このIDとパスワードを使って、e-Taxにログインし、ID・パスワード方式の届出書を作成・提出できます。なお本人確認には、運転免許証などの本人確認書類の提示が必要です。
参照:国税庁 e-Tax「ID・パスワード方式について」
2. 「確定申告書等作成コーナー」にアクセス
次に、ブラウザから「確定申告書等作成コーナー」にアクセスしてください。国税庁が推奨するブラウザ環境は、Androidの場合はGoogle Chrome、iPhoneの場合はSafariです。
アクセスしたら、トップページにある「作成開始」を選び、「ID・パスワード方式でe-Tax」を選択してください。画面に表示される動作環境や利用同意事項を確認し、「利用規約に同意して次へ」を選択します。
参照:国税庁「確定申告書等作成コーナー」
3. e-Taxにログインし、確定申告書類を作成
そして、税務署で取得した半角数字16桁の利用者識別番号(ID)と、半角英数字8文字以上50文字以内のパスワード(暗証番号)を入力して、e-Taxにログインします。その後、画面の指示に従って確定申告書類を作成します。申告書類の作成が終わったらデータを保存し、e-Taxを通じて送信します。送信の際も、マイナンバーカードは不要で、取得したIDとパスワードだけで申告手続きが完了します。
スマホ申告の「ID・パスワード方式」に関する注意点
e-Taxの「ID・パスワード方式」を利用して確定申告をする際にはいくつかの注意点があります。以下では、これらの注意点と対処法について詳しく解説します。
利用者識別番号・暗証番号は税務署でしか発行できない
e-Taxの「ID・パスワード方式」は、マイナンバーカードがなくても利用できますが、前述したように、事前に税務署に行き、職員による本人確認を受ける必要があります。リモートでの本人確認は受け付けていません。
また、原則として申請したその日に、利用者識別番号(ID)とパスワード(暗証番号)の通知を受け取れるものの、確定申告の締め切り当日は税務署の混雑が予想されます。発行までに時間がかかり、最悪の場合、申告期限に間に合わない可能性があります。そのため、利用者識別番号・暗証番号の発行手続きは余裕を持って行うようにしてください。
市販の確定申告ソフトで作成したe-Taxデータは使用できない場合がある
確定申告を行う際に使用する「確定申告書等作成コーナー」で読み込めるのは、拡張子が「.data」のデータファイルです。市販の確定申告ソフトで作成した拡張子が「.xtx」や「.pdf」などのデータファイルは、「確定申告書等作成コーナー」では読み込めません。このため、事前に作成方法やデータ形式に注意しておくことが必要です。
利用者識別番号には3年の有効期限がある?
「ID・パスワード方式」で使用する利用者識別番号(ID)には3年間の有効期限が設定されているという情報が一部で流布されていますが、国税庁ではそのような情報は一切発信していません。
また、パスワード(暗証番号)については、3年間同じものを使用しても問題ありませんが、3年経過後のログイン時にはパスワード(暗証番号)の変更案内が表示されます。ただし、変更は任意で、「スキップ」ボタンを押せばそのまま現在のパスワード(暗証番号)を使用できます。変更を希望する場合は、更新前と新しいパスワード(暗証番号)を入力して変更手続きを行ってください。
「ID・パスワード方式」は恒久的に使える申告方法ではない
「ID・パスワード方式」はあくまでも暫定的な申告方法であり、将来的にこの方式が終了する可能性があります。現時点では具体的な期限は設けられていませんが、マイナンバーカードやICカードリーダライタの普及に伴い、この方法が使えなくなることも考えられます。国税庁でも、早めにマイナンバーカードの取得を検討するように呼びかけています。
参照:国税庁 e-Tax「ID・パスワード方式とは」
長期的な対策として、マイナンバーカードを準備しておくことをおすすめします。
マイナンバーカードは早めに準備し、スマホで確定申告を行おう
マイナンバーカードを持っていなくても確定申告はできます。税務署に郵送または持参する方法、あるいは、e-Taxの「ID・パスワード方式」を利用する方法のどちらかを選択してください。ただし、確定申告書にはマイナンバーの記載が必要です。そのため、住民票の写しを発行してもらうなどして、自身のマイナンバーを確認してください。
なお「ID・パスワード方式」は暫定的なやり方で、将来的には終了する可能性があるため、マイナンバーカードの取得を検討しておくことも重要です。また、確定申告作業を効率的に進めたい場合は、会計ソフトの使用をおすすめします。
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この記事の監修者奥 典久(奥典久税理士事務所)
奥典久税理士事務所 代表
簿記専門学校で税理士講座講師として勤めたのち、会計事務所で勤務。その後独立し、奥典久税理士事務所を開業。相続(贈与)対策や事業承継コンサルティング経営、財務コンサルティングから各種セミナーなど、幅広く税理士業務に従事。