法人化(法人成り)は誰に相談する?会社設立の相談先と費用相場を解説

2024/01/19更新

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

個人事業主から法人化するには、個人事業の廃業や資産などの引き継ぎをはじめ、さまざまな手続きが必要です。また、資本金や株主構成、役員報酬の他、決算月の決め方などは、納税や融資の際に影響が出るものもあります。そのため、法人化の手続きは、専門家に相談して進めることが大切です。
しかし、法人化する際に相談できる専門家には、司法書士や税理士、行政書士、社会保険労務士がおり、専門領域に応じて依頼できる内容や費用相場などが異なります。専門家に依頼する際には、その役割をしっかり理解することも必要でしょう。
ここでは、法人化する際に相談できる専門家の役割や依頼したときの費用相場、法人化の手続き手順を解説します。

法人化(法人成り)の手順

法人化する際には、まず株式会社か合同会社かなどの会社形態を決めて、定められた書類の届出や申請を行う必要があります。会社形態によって設立の流れは異なりますが、一般的な会社設立の流れは下記のとおりです。
なお、会社設立の手続きには、法律で定められた費用が発生します。例えば、株式会社なら定款の認証手数料(3万円から)や登録免許税(15万円から)などが必要です。合同会社の場合は、定款認証は不要ですが、登録免許税(6万円から)などが必要になります。

会社の設立手順 STEP1 会社の概要を決める STEP2 法人用の実印を作成する STEP3 定款を作成し、認証を受ける STEP4 資本金(出資金)を払い込む STEP5 設立登記申請書類を作成し、法務局で申請する

STEP1. 会社の概要を決める

会社を設立するには、まず会社の概要として基本事項を決めなければなりません。基本事項の項目は、下記のとおりです。

  • 会社名
  • 所在地
  • 資本金(出資金)
  • 設立日
  • 会計年度
  • 事業目的
  • 株主の構成
  • 役員の構成

STEP2. 法人用の実印を作成する

法務局に書面で設立登記申請の手続きをするときには、会社の実印が必要になります。会社名が決まったらまず実印を作り、印鑑届書も忘れないようにしましょう。印鑑届書とは、会社が法務局で実印を登録するために必要な書類で、個人の印鑑登録と同じ意味合いを持ちます。

STEP3. 定款を作成し、認証を受ける

定款(ていかん)とは、会社を運営するうえでのルールをまとめたものです。定款には、STEP1で決めた会社の概要を記載しますが、中でも必ず記載しなければならないと法律で決められている「絶対的記載事項」があるので注意しましょう。
株式会社の場合は、作成した定款を公証役場に提出し、認証の手続きを行います。合同会社の場合は定款の認証は不要です。

STEP4. 資本金(出資金)を払い込む

資本金(出資金)の払い込みは、STEP3で申請した定款が認証された後で行います。この時点では、STEP5の設立登記申請が完了していないため、会社の銀行口座はまだ作れません。そのため、資本金の振込先は、発起人の個人口座になります。
会社法では資本金の下限がないので1円から申請可能ですが、最低限の資本金として、運転資金3か月分程度は用意しておくといいでしょう。

STEP5. 設立登記申請書類を作成し、法務局で申請する

設立登記申請に向けて、申請書類の準備を行います。設立登記申請の手続きは原則として代表者が行いますが、司法書士などの代理人によって行うことも認められています。代理人が行う場合は、委任状が必要です。
設立登記申請の手続き後、不備がなければ1週間~10日程度で設立登記が完了し、無事に会社設立が完了となります。

個人事業主が会社設立後に行う手続き

1から会社を設立する場合は、上記の手続きに加え、税務署などで税金関係、年金事務所で社会保険関係、従業員を雇う場合は労働基準監督署で労災保険、ハローワークで雇用保険の手続きを行えば完了です。
しかし、個人事業主が法人化する場合には、法人に事業を引き継ぐための手続きも行う必要があります。個人事業主が会社設立後に行う手続きは下記のとおりです。

個人事業の廃業手続き

会社を設立したら、個人事業の「廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を管轄の税務署に提出し、廃業手続きを行います。青色申告をしていた場合は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」、従業員を雇っていた場合は「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」も提出します。
なお、個人事業を廃業しても、最後の年の確定申告は必要です。廃業した翌年に確定申告を行うのを忘れないようにしましょう。また、法人化1年目は、前述の個人事業主の事業所得に加え、法人化後の役員報酬をもとにした給与所得の2種類の申告が必要です。

資産や負債の引き継ぎ

設立した法人に、事業に関わる資産や負債を引き継ぎます。資産の移行には、「売買契約」「現物出資」「賃貸契約」の3つの方法があり、それぞれ手続きや税法上の取り扱いなどが異なります。
また、法人に債務を移行する方法には、設立した法人が個人事業主と共に債務引受する「重畳的債務引受」と、法人単独で債務を引受する「免責的債務引受」があります。

許認可手続きや各種契約物の名義変更

許認可が必要な事業を営んでいる他、オフィスや店舗の賃貸契約を結んでいる場合などは、個人から法人への名義変更を行います。取引に使用する銀行口座も、個人名義のものとは別に法人名義の口座を開設しましょう。

法人化の手続きを相談できる専門家とは?

法人化の手続きは自分で行うこともできますが、必要な手続きを調べたり多くの書類を作成したりするのは、慣れていない方にとっては大変な作業です。適切な節税対策を行ううえでも、専門家に相談した方がいいでしょう。
法人化の手続きを相談できる専門家には、司法書士、行政書士、税理士、社会保険労務士がおり、それぞれ専門領域によって依頼できる内容が異なります。
法人化の手続きの流れに沿って、各士業に依頼できる内容をまとめると、下記のようになります。

法人化に関する手続きを相談できる士業の領域
司法書士 行政書士 税理士 社会保険労務士
設立登記申請 定款作成 × ×
定款認証(公証役場) × ×
設立登記申請(法務局) × × ×
設立登記申請後の届出 税金関係届出(税務署) × × ×
社会保険関連届出(年金事務所) × × ×
労務関係届出(労働基準監督署) × × ×
雇用保険関係届出(ハローワーク) × × ×
許認可届出(業種による) × ×

※有料職業紹介事業、労働者派遣事業の許可申請は社会保険労務士のみ対応できます。

上記の表のように、法人化に関わる士業の役割や専門領域はそれぞれ異なります。また、会社設立の手続きを依頼した場合は、士業同士が提携して対応することも多くあります。

ここからは、それぞれの士業の役割と依頼した場合の実費以外の報酬相場を見ていきましょう。なお、実際の報酬は会社の規模や業種、社員数などによって変動するため、依頼前にしっかりと確認することをおすすめします。

司法書士

司法書士は登記の専門家です。会社設立に関わる書類の作成や定款認証、法務局への設立登記申請の手続きなどを相談することができます。特に設立登記申請の手続きは、司法書士の独占業務です。
設立登記申請の手続きを司法書士に依頼する場合の報酬相場は、7万~10万円程度です。

行政書士

行政書士は行政への提出書類作成の専門家です。定款など会社設立に関わる書類の作成や認証代行の相談が可能です。書類を作成してもらった後は自分で設立登記申請の手続きを行うか、別途司法書士に代行を依頼する必要があります。また、行政書士は許認可取得を得意領域としているため、飲食や建設、運送業といった許認可が必要な業種の場合、申請代行を依頼することもできます。
行政書士に依頼したときの報酬相場は、書類作成のみなら2万~3万円、提携する司法書士と共に代行を請け負う場合は7万~10万円程度です。

税理士

税理士は、税務の専門家で、会社設立後の税務関連の手続きや届出、融資関係の書類作成ができます。
税理士は経理の仕組みづくりや資金繰りなど、会社設立後も長期でお付き合いすることが多いため、顧問契約することが一般的です。そのため、顧問契約を前提として、会社設立時の相談は無料で行ってくれる場合もあります。
税理士の月額顧問料の目安は、記帳を行うかによって違いはありますが、月2万~4万円程度に設定されていることが一般的です。なお、会社設立後の顧問契約を結ぶ場合は、これらの手続きを無料で対応することがあります

社会保険労務士

社会保険労務士は社労士とも呼ばれ、社会保険手続きの専門家です。健康保険や厚生年金保険といった社会保険関係の手続きの他、労働基準監督署やハローワーク、年金事務所への労働保険関係の手続きを相談することができます。雇用する社員の人数によって会社設立時の手続きを依頼する際の報酬相場は異なり、社員30人未満の会社で社労士に依頼する場合の報酬相場は、5万円程度からです。
また、会社設立後の顧問契約を結ぶ場合は、これらの手続きを無料で対応することがあります。社労士の月額顧問料の目安は、月2万~4万円程度です。

司法書士 設立登記 ・会社設立に関わる書類の作成 ・定款認証代行 ・法務局への設立登記申請代行など 費用相場 設立登記申請の手続きを依頼する場合の報酬相場は、7万~10万円程度 行政書士 行政提出書類 ・会社設立に関わる書類の作成 ・定款認証代行 ・許認可が必要な業種の申請代行など 費用相場 報酬相場は、書類作成のみなら2万~3万円程度 提携する司法書士と共に代行を請け負う場合は7万~10万円程度 税理士 税務申告代理 ・税務関係の手続き、届出の代行 ・融資関係書類の作成 ・節税や資金面などに関する税務のアドバイス 費用相場 月額顧問料の目安は、月2万~4万円程度 社会保険労務士 社会保険手続き ・社会保険関係の手続き(健康保険や厚生年金保険など) ・労働保険関係の手続きを代行など 費用相場 月額顧問料の目安は、月2万~4万円程度

法人化にあたって税理士から受けられるサポート

法人化にあたって、法務局への設立登記申請の手続きを代行できるのは司法書士だけです。しかし、今後の資金繰りや経理の仕組み、節税など、安定した事業運営を考えるなら、税理士に相談するのがおすすめです。ここでは、税理士に相談することでどのようなアドバイスやサポートが受けられるかを見ていきましょう。

税にまつわるアドバイスがもらえる

税理士は、事業内容や売上予測、資金繰りの状況などを踏まえたうえで、税にまつわるさまざまなアドバイスをしてくれます。特に株式会社の場合、資本金や株主構成、役員報酬の他、決算月の決め方などが会社設立後の税金に大きく関わってきます。税理士に相談すれば、個人事業主が法人化するタイミングについても、税金面からアドバイスがもらえるでしょう。

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個人事業主が法人化(法人成り)すべきタイミングは?目安やポイントを解説

創業融資や補助金・助成金を受けるサポートをしてくれる

創業融資とは、起業前でも起業間もない方も申し込める公的な融資制度のことです。創業融資を受ける際には、資本金の金額がポイントになる他、収支の見込みを記載した事業計画書の提出が必要です。事前に税理士に相談をすれば、資本金の決め方や事業計画書の作成に必要な売上予測などのアドバイスが受けられるでしょう。
その他、税理士から、助成金・補助金の最新情報や利用できる制度を提案してもらえたり、申請自体をサポートしてもらえたりすることがあります。

税務関連の届出の漏れがなくなる

会社設立後、税務署に提出する書類には提出期限が定められており、自分ですべて手続きをしようとすると、慣れない作業で漏れやミスが生じることもあります。特に「青色申告の承認申請書」は、原則として会社設立日から3か月以内に提出しないと、1期目は青色申告ができなくなってしまい、税額計算に大きく影響します。法人化の段階から税理士に相談していれば、このような書類の届出漏れも防げるでしょう。

法人化について相談できる税理士を探すには

法人化の手続きや節税対策について税理士に相談したいと思っても、自力で税理士を探そうとすると手間や時間がかかります。そのような場合は、弥生株式会社の「税理士紹介ナビ 新規タブで開く」がおすすめです。

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「税理士紹介ナビ」はこんな方におすすめ

「税理士紹介ナビ」は、特に次のような方におすすめです。

初めて会社を設立する方

会社を設立する際には、必要な手続きや資金調達など多くの不安や疑問が生じることがあります。「税理士紹介ナビ」なら、これから事業を始める方の悩みや困りごとに合わせて、最適な税理士探しをサポートします。個人事業主から法人成りを予定している方にもぴったりです。

起業後の会計処理や決算が不安な方

会社を運営するうえでは、法人税や地方税、消費税など、さまざまな税や固定資産の知識が必要になります。そのような場合も、会計処理や決算に関することをまとめてプロに相談できます。

できるだけ節税したい方

「節税したいが方法がわからない」という方にも「税理士紹介ナビ」はおすすめです。税理士からのアドバイスで節税方法を理解できれば、戦略的な経営にも役立つでしょう。

記帳業務を丸ごとプロに任せたい方

日々の取引を記帳するには手間や労力がかかります。売上が増えるとともに経理作業量も増え、負担が大きくなってしまうでしょう。記帳業務を税理士に丸投げできれば、その分しっかり本業に集中できるようになります。

法人化する際には、税理士に早めに相談しよう

法人化する際には、さまざまな手続きが必要です。費用はかかりますが、専門家の力を上手に借りることで、手続きの手間が省けたり、節税につながったりします。中でも、「しっかり節税対策をしたい」「法人化の最適なタイミングを知りたい」という方は、税理士への相談がおすすめです。税理士を探す際は、ぜひ弥生の「税理士紹介ナビ 新規タブで開く」をご活用ください。

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。
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