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決算申告のみを税理士に依頼した場合の費用相場とメリットを解説

監修者: 高崎 文秀

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事業規模に関係なく、法人は一年に一度の決算申告が義務付けられています。決算の目的は、納税額を正しく算出するほか、企業の財務状況を正しく把握し経営状況を明らかにすることです。決算業務は多くの手間を要するため、経理担当者にかかる負担は大きくなりがちです。このような課題を解消する方法のひとつに、決算申告のみを税理士に依頼する方法があります。

本記事では、決算業務を税理士に依頼する際のメリットとデメリット、費用の相場、安心して任せられる税理士を選ぶポイントを紹介します。

決算申告のみを税理士に依頼する費用相場は15万~25万円

決算申告のみで税理士に依頼した場合の費用は、15~25万円が相場です。決算申告の代行やサポートは税理士の独占業務であり、費用も税理士事務所によって多少の違いがあります。また、決算申告の費用は事業の規模や売上などにより変化します。年間売上1千万円までは25万円~、3千万円までは30万円~といった報酬形態を採用している税理士事務所も多いため、売上が多ければ多いほど費用は高くなるのが一般的です。

なお、決算のみを依頼する場合、税務に関する相談には応じてもらえません。税務関連の相談を希望する際は、別途で報酬を支払う必要があります。

顧問契約を結んでいても決算申告は別料金

税理士と顧問契約を交わすことによって、税務に関するさまざまなサポートを受けられます。たとえば、税務書類の作成や税務相談、税務調査が行われた際の対応などが代表的なサポート内容です。一般的に、期間を定めたうえで税理士と顧問契約を交わし、企業は月々、もしくは一年分の報酬を支払います。顧問契約を交わしていても、決算申告の報酬は別途支払わなければなりません。

このように、顧問料には決算申告費用が含まれていないケースが大半です。決算申告業務にかかる費用の目安は、月額顧問料4~6カ月分が相場です。費用が別途必要となるものの、通常の決算申告費用よりも低くなる可能性はあります。たとえば、顧問料に税務に関する相談や記帳業務の代行が含まれているケースでは、追加費用が発生しにくいため決算申告費用を抑えられる可能性があります。

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税理士に決算申告のみを依頼するメリット

個人事業主の確定申告に比べ、法人決算はやるべきことが多く、いくつもの書類を作成しなければなりません。自社で決算申告に必要な知識や時間を確保する自信がない場合は、決算申告のみを税理士に任せることも選択肢に含め検討してみましょう。

決算申告のみを税理士に依頼することで期待できるメリットは、以下の通りです。

  • 顧問契約よりも税理士に支払う費用を抑えられる
  • 定期的にやりとりする必要がない
  • 税理士の署名で決算申告書の信頼性が高まる

顧問契約よりも税理士に支払う費用を抑えられる

税理士の顧問契約料は、月額3万円前後が目安です。仮に月額3万円で1年契約を交わした場合、3万円×12カ月で年間36万円の費用が発生します。一方、決算申告のみを依頼するケースでは15~25万円程度で済むため、年単位の顧問報酬と比較すると大幅に費用を抑えられます。顧問契約を交わしている税理士に決算申告を依頼する場合は、年額の顧問報酬約36万円に加え、12~16万円の決算申告報酬を支払わなければなりません。

また、起業したばかりのタイミングでは、事業が軌道にのっておらず経済的に余裕がないといったケースは珍しくありません。起業直後は少しでも資金を手もとにプールしておきたいため、顧問契約ではなく決算申告のみを依頼するほうがメリットは大きいと考えられます。

定期的にやりとりする必要がない

税理士に決算申告だけを依頼するときは、1年分の帳簿や会計ソフトのデータをまとめて税理士に渡し、必要書類を作成してもらうのが一般的な流れです。年に1度の依頼になるため、顧問税理士のように定期的にやりとりすることはありません。税理士とのやりとりに時間を割けない場合や、頻繁に税務相談を行う必要がない場合、定期的にやりとりする必要がないのはメリットです。ただし、このメリットを享受できるのは、あくまでも事業規模が小さく取引内容もシンプルで、会計資料のボリュームが少ない場合に限ります。そうでなければ、顧問契約を結んで定期的に税理士とやりとりすることが必要となります。

また、決算申告だけを依頼する場合であっても、仕訳や帳簿に不明点があったときなどは必要に応じて税理士から連絡があります。

決算申告書の信頼性が高まる

決算申告書の作成を税務のプロである税理士に依頼すると、記載漏れや書き損じなどが回避できるのも利点です。不備のない確実な決算申告書を作成できるため、税務署から指摘を受けたり税務調査を受けたりするリスクも低減できます。また、税理士が作成した決算申告書には署名が入ります。税理士が作成した書類だと証明できることに加え、税務署の心象をよくできるため、税務調査のリスクを減らせます。

さらに、決算申告の締め切りに遅れる心配がないのもメリットです。決算申告を行うには、明細表や試算表の作成をはじめ、さまざまな事前準備が必要です。決算書の作成は素人にとって簡単な作業ではありません。思うように準備が進まず、定められた期限に間に合わないといった事態も起こり得ます。

申告や税金の納付期限を過ぎてしまえば、税務署からの信用を失いかねません。場合によっては、ペナルティの対象となる可能性もあるため注意しましょう。決算業務に慣れていないのなら、税理士へ依頼したほうが安心です。

税理士に決算申告のみを依頼するデメリット

決算申告のみを税理士に依頼した際に、デメリットとなる点がいくつか考えられます。メリットと併せて理解を深めておくことが大切です。

デメリットとして挙げられるのは以下の3つです。

  • 十分な節税を行えない可能性がある
  • 税務調査が入っても対応外となる場合もある
  • 税理士が会社の取引を把握しきれない

十分な節税を行えない可能性がある

企業が利益の最大化を目指すにあたり、適切な節税の取り組みが重要です。効果的な節税対策を講じる際は、税のプロである税理士の助言がポイントになります。しかし、決算申告のみを依頼した場合、節税のアドバイスは受けられないことがほとんどです。税理士からアドバイスが得られないとなると、インターネットなどを活用して自社で情報を集める必要があります。しかし、インターネット上で得られる情報は、価値あるものばかりではありません。

また、ありきたりな節税対策でどれほどの効果があるかは疑問です。インターネット上で得た情報を鵜呑みにした結果、誤った方法で節税を行ってしまえば意図せず脱税につながってしまうかもしれません。たとえ意図的でなくても、脱税は大きな問題へ発展しかねません。合法かつ自社にとって効果的な節税対策を望むのであれば、税理士へ依頼したほうが無難です。

税務調査が入っても対応外となる場合もある

決算申告のみを依頼する場合、税務調査は対応外となるケースが一般的です。そのため、万が一にも税務調査が実施された際は自社で対応しなければなりません。税務調査に対応してもらえない理由は、顧問契約の未締結だけではありません。税務調査に対応するには、顧問税理士として日ごろからクライアント企業の経理状況などを把握し、準備をしておく必要があります。顧問税理士としてクライアント企業と綿密な関係を築けていない場合には、十分な準備が行えないため対応が難しく、断られてしまうケースが大半です。

なお、税務調査によって、本来納めなければならない税額が正しく納付されていないことが発覚した場合、追徴課税を課せられるリスクがあるほか、税務署との数回にわたるやりとりが発生します。税務調査へ備えておきたいのなら、税理士と顧問契約を結ぶことも視野に入れ検討したほうがよいかもしれません。

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税理士が会社の取引を把握しきれない

決算申告のみを依頼された税理士が、クライアント企業の取引内容や経理状況などを正確に把握するのは困難です。そのため、事業計画書や資金繰り表などの作成サポートを受けられない点もデメリットになる場合があります。銀行などの金融機関から融資を受ける際は、事業計画書や資金繰り表などを提出し、貸し倒れのリスクが低い企業であることをアピールしなくてはなりません。

金融機関側は、企業から提出された事業計画書や資金繰り表などの資料をもとに融資の可否を判断します。そのため、提出書類に不備や問題があると、融資を受けられないリスクが高くなります。融資のアドバイスも受けたいと考えているのなら、単発で依頼するよりも顧問契約を視野に含めて検討してみたほうがよいかもしれません。

決算申告のみにするか顧問契約にするかの判断ポイント

自社にとって、顧問契約の税理士が必要かどうか判断に迷うケースも珍しくありません。なかなか決められないのなら、組織形態や年間の売上高、自社で行える経理業務の領域などを軸に検討してみましょう。

個人事業主か法人か

法人であれば、顧問契約を前向きに検討してみましょう。顧問税理士がいれば、日ごろから節税に関するアドバイスを受けられるうえに、税務調査対策や融資対策も行えます。単発で決算申告を依頼するよりも、割安な費用で対応してもらえるのもポイントです。

一方、個人事業主は法人に比べて得られる節税メリットがそれほど多くありません。そのため、顧問契約を結ぶよりも、確定申告のみを依頼したほうがトータルでのコストを抑えられます。とくに、事業規模がそこまで大きくないのなら、経理を外注するよりも各種経費を抑えたほうが利益につながるケースは多々あります。

年間の売上高がどれくらいか

インボイス制度がスタートし、適格請求書発行事業者に登録した事業者は売上高を問わず消費税の納税が義務付けされました。消費税を申告するには、計算に必要な書類を集めて消費税額の計算を行い、申告に必要な書類を作成して期日までに提出する必要があるため、経理業務にかかる負担は大きくなります。インボイスに関するサポートも受けたいと考えるなら、顧問税理士がいたほうが安心かもしれません。

ただし、売上高がそれほど多くない場合、顧問契約報酬が経営を圧迫するおそれがあります。顧問契約のメリットとデメリットをよく理解したうえで、費用面などを考慮しつつ慎重に検討するようにしましょう。

申告書作成以外は自社で行えるかどうか

経営者や担当者が問題なく経理業務を遂行できているのなら、決算申告のみの依頼でよいかもしれません。経理業務は問題なく遂行できているものの、担当者に過度な負担がかかっているケースや経営者が経理業務に多くの時間を取られてしまい、本来の仕事に取り組めないなどの状況があれば、税理士との顧問契約を検討してみましょう。

依頼する税理士によっても異なりますが、顧問契約を交わすことにより、記帳代行や定期的な帳簿確認、財務状況に関するアドバイスなどを受けられます。業務効率化や従業員の負担軽減、リソースの有効活用を実現したいと考えているのなら、顧問契約を締結するのもひとつの手段です。

申告書の作成以外は自社で問題なく実行できていたり、従業員に負担がかかっていなかったりする場合、顧問契約の必要性は感じないかもしれません。ただし、そのような場合でも上述したデメリットには十分注意するようにしましょう。

依頼する税理士を選ぶ際のポイント

依頼する税理士を選ぶ際には、以下の4点を軸に進めてみましょう。

  • 申告業務の実績が豊富か
  • 連絡が取りやすいか
  • 期限が近くても対応してくれるか
  • コミュニケーションがとりやすいか

実績が豊富か

税理士によって得意分野は異なります。そのため、依頼先を検討する際は、決算申告業務の実績が豊富かどうかをチェックしましょう。相続専門や海外取引専門のように、特定分野で活躍している税理士は少なくありません。相続専門の税理士でも決算業務は可能ですが、確実性や業務スピードなどを考えると、決算申告業務に慣れた税理士に依頼したほうが安心です。

これまでに培ってきたノウハウを豊富に有する税理士であれば、安心して全面的に決算業務を任せられます。税理士事務所の公式サイトなどを複数チェックし、得意分野や過去の実績などを確認してみましょう。

連絡が取りやすいか

質問したいときに、すぐに連絡が取れる税理士も安心して依頼できます。電話をかけたときに不在でも、すぐに折り返してくれるかどうか、メールやチャットのレスポンスの速さなどもポイントです。連絡が取りやすい税理士であれば、困ったときやトラブルが発生した際に、スムーズな対応が期待できます。そのため、連絡の取りやすい税理士が見つかれば、将来的に顧問契約を結ぶことも視野に入れておきましょう。さまざまな場面で重宝するはずです。

期限が近くても対応してくれるか

税務申告書は提出期限が定められています。そのため、余裕をもって準備に取り掛かるのが理想的ですが、さまざまな業務との兼ね合いで後手に回ってしまうことも想定されます。期限間近となってから、決算申告を税理士へ依頼したいと考えることも珍しくありません。期限が差し迫っていても対応してくれる税理士は、相応のスキルとノウハウを有していると考えられるため、安心度は高くなります。

コミュニケーションがとりやすいか

スムーズにコミュニケーションがとれない税理士は、信頼関係を築きにくいうえに社内担当者のストレス増加につながります。税務署との細やかなやり取りも安心して任せられるような、コミュニケーション能力のある税理士ならば、安心して決算業務を任せられるはずです。また、説明がわかりやすいことも重要なチェックポイントです。税務に使われる専門用語は難しいものが多く、素人ではなかなか理解できないものも少なくありません。クライアントと同じ目線で、丁寧かつ分かりやすい説明をしてくれる税理士なら安心です。

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この記事の監修者高崎 文秀

高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役
早稲田大学理工学部応用化学科卒

都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業し、現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また通常の税理士業務の他、一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行っている。

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