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事業承継は税理士への相談がおすすめ!費用相場やメリット、注意点を解説

監修者: 宮川 真一

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事業承継では、税務申告や財務状況の整理、相続税対策などの複雑な作業が必要です。これらの手続きをすべて自社で対応するのは難しく、専門的な知識が求められます。そこで頼りになるのが税理士への依頼です。税理士に相談すれば、税務や財務のサポートを受けながらスムーズに事業を引き継げます。

本記事では、事業承継において税理士を活用するメリットや費用相場、依頼時の注意点について解説します。

事業承継は税理士への依頼がおすすめ

事業承継とは、企業の経営や事業を後継者に引き継ぐことを指します。従業員の生活を維持しながら、企業の技術や伝統を次世代へ受け継ぐことが目的です。

一般的に、事業承継の際には税理士に依頼するケースが多く見られます。なぜなら、相続や株価評価、税務手続き、相続税・贈与税対策など、多くの課題が発生するからです。事業規模がある程度大きい場合は、スムーズな承継とトラブル回避のために税理士の活用をおすすめします。

ただし、比較的小規模な企業や個人事業主で財務がシンプルな場合や、相続税や贈与税が発生しないケースでは、税理士が必要とは限りません。

税理士に相談できる事業承継の主な種類

事業承継にはさまざまな方法があり、経営者の状況や企業の規模によって適切な方法を選ぶ必要があります。以下では、代表的な事業承継の種類と、そのメリット・デメリットについて解説します。

事業承継の全体像の解説や、事業承継の具体的な流れについては、以下の記事も参考にしてください。

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1. 親族内承継

親族内承継とは、経営者の親族(子ども、配偶者、兄弟姉妹など)に事業を引き継ぐ方法です。中小企業や家族経営の会社によく見られる承継方法で、経営ノウハウをしっかりと後継者に引き継ぐことが求められます。

【メリット】
  • 後継者が親族であるため、早い段階から育成が可能
  • 従業員や取引先からの信頼を得やすい
  • 相続による財産・株式の移転がしやすく、所有と経営を一体的に承継しやすい
【デメリット】
  • 後継者が経営者としての資質を十分に備えていない可能性がある
  • 後継者以外の相続人との財産分配でトラブルになることがある

2. 親族外承継

親族外承継とは、親族ではない第三者を後継者として事業を引き継ぐ方法です。近年は後継者不足の影響で、この方法を選択する企業が増えています。事業承継後の経営の安定性を考慮し、税理士と相談しながら計画的に進めることが求められます。

【メリット】
  • 親族内承継よりも多くの候補者から選定できる
  • 既に自社業務に関与している役員や従業員に経営を任せられるため、引き継ぎがスムーズ
【デメリット】
  • 人選に関してトラブルが発生する可能性がある
  • 株式の譲渡が必要となり、後継者に税負担がかかる

3. M&A

M&A(企業の合併・買収)は、外部の企業や投資家に事業を売却し、経営を引き継いでもらう方法です。適切な後継者がいない場合の有効な選択肢となります。M&Aを成功させるためには、企業価値の評価が重要な要素となります。税理士と連携しながら、適切な売却価格や税務対策を検討することが大切です。

【メリット】
  • 事業売却により経営者はまとまった資金を得られる
  • 事業を存続させられるため、従業員の雇用維持につながる
【デメリット】
  • 買収相手を見つけるのに時間がかかる
  • 売却後、企業の方針が変わる可能性がある

事業承継で税理士に依頼できること

事業承継は、親族内承継・親族外承継・M&Aの3つの方法に分類されます。それぞれの方法には税務手続きや資金調達、トラブル防止などの課題が伴うため、税理士への依頼がおすすめです。以下では、税理士に依頼できる内容について解説します。

1. 親族内承継の場合

親族内承継では、後継者が親族のため相続税や贈与税が発生する可能性があります。税理士は、自社株の評価や納税資金の準備、生前贈与の計画立案などをサポートし、税負担を軽減する対策を提案してくれます。

また、遺産分割の計画や遺言書の作成に関して税務の面からアドバイスを行い、親族間のトラブル防止にも対応可能です。特に後継者が複数いる場合は、合意形成のサポートを通じて円滑な承継を促してくれます。

2. 親族外承継の場合

親族外承継では、株式の譲渡を伴う場合と経営権のみの譲渡の場合で、税理士の役割が大きく異なります。

株式の譲渡が発生する場合、税理士は株式価値の評価や税務対策をサポートしてくれます。株式の評価額によって税負担が変わるため、正確な株価算定が必要です。特に、後継者が株式を取得する際には多額の資金が必要となることが多く、税理士は資金調達方法の選定や融資手続きに関するアドバイスを行ってくれます。

一方、経営権のみの譲渡では、株式の移転を伴わないため、資金調達の必要はありません。しかし、税理士からは経営権の移行計画の策定や手続きに関するアドバイスを受けられます。また、現経営者が保有する株式を親族などに贈与や相続する場合は、贈与税や相続税の負担を軽減するための対策を提案してくれます。

3. M&Aの場合

M&Aでは、企業の経営権や株式の譲渡に伴い、企業価値の評価や税務・会計デューデリジェンス(買収監査)、売却スキームの提案など、専門的な業務が発生します。

企業価値の評価では、税理士は自社の財務状況や収益力を基に売却価格を算出してくれます。適正な企業価値を把握することは、売却条件の交渉や税務対策にも大きく影響するため重要です。

また、税務・会計デューデリジェンスでは、税理士は企業の財務状況や税務リスクを精査してくれます。税務・会計デューデリジェンスは通常、買収側の税理士が行いますが、売却側の税理士が必要な資料の作成や提供を担当するケースもあるので注意してください。

さらに、売却スキームの提案では、税理士は株式譲渡や事業譲渡など複数の選択肢の中から、税負担を抑える最適な手法を提案してくれます。税理士は、税務面のリスクやメリットを踏まえたうえで、最適なスキームの選定や税務対策に関するアドバイスを行い、M&Aの成功に向けたサポートを行います。

事業承継を税理士に依頼する際の費用相場

事業承継にかかる税理士費用の相場は、一般的に100万円〜1,000万円です。ただし、具体的な金額は、依頼内容や承継の手法によって大きく変動するため、事前にしっかりと検討することが重要です。税理士に依頼する範囲を明確にし、予算とのバランスを考えながら選択することが求められます。

例えば、基本的な節税対策や株式評価のみの依頼であれば、数十万円程度で対応可能です。一方、M&Aを活用した事業承継や、包括的な税務・財務コンサルティングを依頼する場合は、高額になる傾向があります。さらに、税理士事務所ごとに料金体系が異なるため、複数の事務所に見積もりを依頼し、比較検討することも大切です。

事業承継を税理士に依頼するメリット

事業承継は、税務や法律、財務など幅広い知識が求められる複雑なプロセスです。税理士に依頼することで、効率よく進められます。以下では、具体的なメリットについて解説します。

税務関係の負担を軽減し効果的な節税対策ができる

事業承継に関する主な税務処理として、「相続税」「贈与税」「法人税」が挙げられます。特に、親族内承継の場合、相続税や贈与税の負担が大きくなることがあるため、税理士に依頼することで、事前に適切な対策を講じてくれます。

例えば、「事業承継税制」を活用することで、贈与税や相続税の納税を猶予することが可能です。この制度は、2009年度の税制改正で導入され、承継時の税負担を大幅に軽減できるしくみとして利用されています。また、生前贈与を活用して、非課税枠を上手に使ったり、段階的な贈与を計画することで、税負担を抑えたりすることが可能です。

また、税理士は自社株の評価額を抑えることで、贈与税や相続税の負担を軽減する手法も提案してくれます。自社株の評価額が高いと、承継時に多額の税金が発生し、後継者の財務負担が増えるため、株式の評価引き下げ対策を講じることは重要です。これにより、後継者がスムーズに株式を取得できるようになり、親族間のトラブルを防ぐことにもつながります。

他の士業を紹介してもらえる

事業承継では、税理士だけでなく、弁護士や司法書士、行政書士などの他の専門家のサポートが必要になる場面が多々あります。例えば、以下のようなケースでは、各士業の専門知識が必要となります。

  • 弁護士:遺言書の作成、相続トラブルの解決、M&A契約書の作成
  • 司法書士:株式や不動産の名義変更、役員変更登記
  • 行政書士:事業承継計画の作成、補助金・助成金の申請

これらの手続きを進める際、それぞれの士業に個別に依頼すると、選定や手続きに時間と手間がかかります。しかし、税理士が他の専門家と連携している場合、適切な士業を紹介してもらえるため、ワンストップで事業承継を進めることが可能です。

M&Aの成功率を高められる

M&Aによる事業承継を進める際には、企業価値の評価や財務・税務デューデリジェンスを正確に行うことが必要です。これらの作業は高度な専門知識を必要とするため、税理士のサポートを受けることをおすすめします。

M&Aを検討する際、売却側はできるだけ高額での売却を目指します。しかし、企業の財務状況や事業の収益性を正しく評価できなければ、希望通りの価格で取引を成立させることは難しいです。税理士は財務諸表の分析や企業価値の算出を通じて、企業の魅力を正しく評価し、交渉を有利に進めるための材料を提供します。

また、M&Aプロセス全体の進行管理や必要書類の作成サポートまで含めて依頼できるため、税理士を活用することでM&Aをスムーズに完了できる可能性が高まります。特に、交渉段階から契約締結、事業承継後の税務手続きまで一貫してサポートを受けられる点は大きなメリットです。

事業承継を税理士に依頼するデメリット

税理士の主な業務は、確定申告や税務申告の代行、税務書類の作成などが中心です。得意分野の違いにより、事業承継に関する専門知識や実績が十分でない税理士もいるため注意が必要です。特に、事業承継では相続や法務といった税務以外の分野もかかわるため、税理士のみでは対応が難しいケースもあります。依頼する際は、事業承継の実績やノウハウを持つ税理士を選ぶことが重要です。

事業承継を依頼する税理士選びのポイント

適切な税理士を選ぶことで、事業承継に関する複雑な手続きや税務対策を円滑に進められます。税理士選びの際は、実績や専門知識、対応力などをしっかり確認することが大切です。以下では、税理士選びのポイントについて解説します。

事業承継の実績数

税理士に事業承継のノウハウがあることは非常に重要なポイントです。実績が豊富な税理士ほど、ケースに応じた最適な提案を受けられる可能性が高くなります。

税理士の経験を見極める際は、過去に何件の事業承継をサポートしているかが重要です。事業承継の成功事例や、どのような課題に対してどのような解決策を提案したかといった具体的な事例を確認しましょう。

また、製造業や飲食業、サービス業など業種によって抱える課題が異なるため、依頼者の業種に関する経験があるかも重要な確認項目です。

専門知識

事業承継では、税務知識だけでなく幅広い専門知識が求められます。特にM&Aを伴う場合や自社株の引き継ぎでは、より高度な専門性が必要になります。特に、以下のような分野に精通しているかを確認しましょう。

  • 事業承継税制(相続税・贈与税の特例措置など)
  • 企業価値評価
  • 自社株評価
  • 財務戦略
  • M&Aや組織再編の知識
  • 会社法や民法などの関連法規

税理士がこれらの知識を持っているかどうかは、事業承継のスムーズな進行に大きく影響します。

他の士業とのネットワーク

事業承継では、法律や登記に関する手続きも必要になるため、税理士以外の専門家との連携が求められます。弁護士や司法書士などの他士業とのネットワークがある税理士を選ぶことで、必要な手続きをワンストップで依頼できるため、手間や時間の節約につながります。

税理士に依頼する際は、提携している士業の種類や協力体制についても確認しましょう。

コミュニケーション能力

事業承継は短期間で完了するものではなく、長期にわたるやり取りが必要となります。税理士との信頼関係が築けなければ、スムーズな進行が難しくなります。

税理士を選ぶ際は、以下のような点を意識しましょう。

  • 経営者や後継者の意向をていねいにヒアリングしてくれるか
  • 専門用語をわかりやすく説明してくれるか
  • 不明点や悩みに対して迅速に回答してくれるか

後継者との連携も重要になるため、経営者と後継者双方の意見を尊重しながら進めてくれる税理士を選ぶのがおすすめです。

提案力

事業承継は単なる手続きではなく、会社の将来を左右する重要なプロセスです。税理士の役割は、必要書類の作成や税務申告の代行にとどまらず、経営者の意向や会社の状況に合わせた具体的な提案を行うことです。

提案力のある税理士は、自社株の評価引き下げや節税対策などのアドバイスを行い、税負担を軽減するための具体策を提示できます。また、M&Aや組織再編といった複数の選択肢を提示し、依頼者にとって最適な方法を一緒に検討してくれます。事業承継は企業ごとにケースが異なるため、経営者のビジョンに寄り添ったサポートを提供してくれる税理士を選ぶことが大切です。

税理士に事業承継を依頼する際の注意点

税理士に事業承継を依頼する際、以下のポイントに注意すれば、自社に合った税理士を見つけられます。

なるべく早めに相談する

事業承継は、税務・財務・経営のさまざまな要素が絡み合うため、長期的な準備が必要です。できるだけ早めに税理士へ相談することで、余裕を持った計画を立てられ、スムーズな移行につながります。反対に相談が遅れると、十分な対策が取れずに税負担の増加や経営権の移行トラブルが生じる可能性があります。

特に親族内承継では、後継者の育成や自社株の評価対策に時間がかかることが多く、事前準備の期間は5年以上かかるケースも少なくありません。突発的な承継を除き、最低でも1年は準備期間を確保し、後継者の教育や財務状況の整理を進めておくことが重要です。

所属している税理士が多い事務所を選ぶ

税理士事務所は、少人数で運営するところから多人数で運営するところまでさまざまです。事業承継を依頼する際は、なるべく所属税理士の多い事務所を選ぶのが得策です。

事業承継では税務だけでなく、相続、財務戦略、M&A、会社法など多岐にわたる専門知識が必要となります。1人の税理士ではすべての分野に対応するのが難しいため、複数の税理士が在籍している事務所の方が幅広い相談に対応できる可能性が高くなります。

サービス内容と料金体系を比較して選ぶ

税理士によって提供するサービス内容や料金体系は大きく異なります。依頼する際は、自社の事業承継のケースに合ったサービス内容であるか、料金体系が明確でわかりやすいかを必ず確認しましょう。

特に料金面では、報酬が固定なのか、手続きごとに費用が発生するのかを事前に把握しておく必要があります。追加料金が発生する場合は、どのタイミングで発生するのかを契約前に確認し、不明瞭な費用がないかをチェックしておきましょう。

事業承継について相談できる税理士を探す方法

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日々の取引を記帳するには手間や労力がかかります。売上が増えるとともに経理作業量も増え、負担が大きくなってしまうでしょう。記帳業務を税理士に丸投げできれば、その分しっかり本業に集中できるようになります。

事業承継で税務に不安があるなら税理士に相談しよう

事業承継では、税理士に依頼することで税務処理だけでなく、相続税対策やM&Aを活用した組織再編のアドバイスも受けられます。企業規模が大きいほど事業承継の手続きも複雑になるため、早めに税理士へ相談することが大切です。

ただし、税理士によって得意分野が異なるため、事業承継に精通した税理士を選ぶ必要があります。税理士選びでお悩みの方には、弥生の「税理士紹介ナビ新規タブで開く」の利用がおすすめです。希望に合った税理士を無料で紹介してもらえるため、ぜひ利用を検討してみてください。

この記事の監修者宮川 真一

税理士法人みらいサクセスパートナーズ代表
税理士/CFP®

1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応をはじめ、CFP®(ファイナンシャルプランナー)の資格を生かした個人様向けのコンサルティングも行っている。また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事する。

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