切手の勘定科目は?仕訳方法や収入印紙との違い、消費税の扱いを解説
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近年、メールやクラウドツールが広く普及していますが、ビジネスでは郵送が必要となる場面が依然として存在します。しかし、実際には、郵便物の発送に欠かせない「切手」について、勘定科目や仕訳方法を正しく理解できていないという方も少なくないのではないでしょうか。
本記事では、切手の勘定科目や仕訳方法のほか、収入印紙との違いについて解説します。期末に切手が残っていたときの対応や経費計上における注意点にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
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切手は購入時と使用時で仕訳方法が異なる
切手の会計処理では、購入時は「貯蔵品」、使用時は「通信費」というように勘定科目を使い分ける必要があります。処理を誤ると、経費の過少・過大計上につながる可能性があるため、タイミングごとに適切な会計処理を行うことが重要です。
なお、切手の勘定科目を「消耗品費」や「雑費」と誤って仕訳してしまうケースもありますが、これは適切ではありません。消耗品費は文房具などの物品に、雑費は他の科目に分類できない少額支出に使われるものであり、切手には該当しないためです。切手は現金同等物とされており、郵送という明確な用途があります。
ここでは、購入時と使用時の勘定科目について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
購入時は「貯蔵品」
切手を購入した際には、切手代を「貯蔵品」として資産計上します。切手は使用するまでは消費されないことから、購入時点では費用ではなく、一時的に資産として処理しなければなりません。
特に、未使用のまま切手を長期保管する可能性がある企業では、正確な資産計上が重要です。一連の処理に誤りがあると費用の計上時期がズレてしまい、利益の過大・過少計上につながる可能性があります。税務上の誤認も発生しやすくなることから、購入したタイミングで確実に「貯蔵品」として記帳しましょう。
使用時は「通信費」
切手は、業務で使用した時点で、初めて費用として計上します。その際に用いる勘定科目は、一般的に「通信費」です。
切手を購入後、すぐに使用した場合も同様に「通信費」として仕訳をします。「通信費」とは、電話料金やインターネット利用料、郵便料金などに使用される勘定科目です。郵便物は情報を伝える手段であるため、切手代は「通信費」として計上されます。
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切手の仕訳方法
次に、切手の仕訳方法を具体例と共にご紹介します。「貯蔵品」として計上する場合、「通信費」として計上する場合の仕訳例をそれぞれ確認しておきましょう。
「貯蔵品」として計上するときの仕訳例
切手を購入した際には「貯蔵品」として資産計上しますが、110円の切手を10枚、現金で購入した場合の仕訳例は以下のようになります。
仕訳例:110円の切手を10枚購入したとき
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 貯蔵品 | 1,100円 | 現金 | 1,100円 |
この処理は月末や期末に棚卸しの対象となるため、実務では切手の保管状況を正確に把握しなければなりません。帳簿と現物の一致を常に確認し、ズレが生じることのないよう留意しましょう。
ただし、特に小規模な企業や個人事業主では切手を多額に購入することは少なく、そうした場合は購入時に通信費として計上し、そのまま貯蔵品への振り替えも行わないケースもあります。こうした処理も金額が数千円程度であれば重要性が乏しいということで正当な処理として認められます。以下ではこうした処理ではなく厳密に、貯蔵品で計上する処理を前提に説明します。
通信費として計上するときの仕訳例
切手を使用した際には、通信費として費用処理します。業務で550円分の切手を使用した場合の仕訳例は以下のとおりです。
仕訳例:110円の切手を5枚使用したとき
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 通信費 | 500円 | 貯蔵品 | 550円 |
| 仮払消費税 | 50円 | ||
500円切手の場合、内税として消費税50円が含まれているため、上記のように借方には通信費と仮払消費税を記載します。
ただし、上記のように使うたびに仮払消費税を計上するのは手間がかかります。そこで、継続して同じ処理をすることを前提に、切手を購入したときに仮払消費税を計上する方法も認められます。その場合は貯蔵品を計上する段階で仮払消費税を計上し、通信費に振り替えるときには仮払消費税が計上されないことになります。
なお、日々の仕訳作業の効率化を目的として、切手の使用を週ごとや月ごとにまとめて一括処理するケースもあります。ただし、帳簿の一貫性を保つには、切手を使用した日付や用途を正確に記録しておかなければなりません。したがって、切手は使用するたびに通信費として記帳するのが望ましいでしょう。
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切手代は非課税?消費税の取り扱い
切手代は、郵便局や切手販売所として指定されているコンビニエンスストアなど、正規の販売所で購入した場合、非課税扱いです。領収書に「非課税」と記載されていれば、正規の販売所で購入した切手であると判断できます。
なお、国内の郵便料金には消費税が含まれていることから、経費として計上する際には課税取引として処理しなければなりません。購入時に「貯蔵品」として計上する際は非課税ですが、使用時に「通信費」として費用処理する際は、仮払消費税を計上し、課税仕入として処理するのが一般的です。
なお、金券ショップなどの正規販売所以外で切手を購入した場合は、購入時点から課税取引として扱う必要があります。購入時に「貯蔵品」または「通信費」として計上し、仮払消費税を計上して課税仕入の対象とします。
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切手と収入印紙の違いと勘定科目
切手と収入印紙を同じ場所に保管している企業も少なくありませんが、両者の仕訳処理に違いはあるのでしょうか。ここでは、切手と収入印紙の違いと、収入印紙に用いる勘定科目について見ていきましょう。
収入印紙とは印紙税を納めるために使用する証票のこと
収入印紙とは、契約書や領収書など、印紙税の課税対象となる文書に貼付する証票のことです。法務局のほか、郵便局やコンビニエンスストア、金券ショップなどでも購入できます。
切手との大きな違いは、収入印紙の使用目的が印紙税の納税のためである点です。切手は郵便物を送る際の料金の前払いといった扱いですが、収入印紙は印紙税の納付手段に限定されています。
また、課税額は取引内容によって異なるため、文書に応じた収入印紙を貼付する必要があります。例えば、領収書の記載金額が5万円未満の場合には収入印紙の貼付は不要です。記載金額が5万円以上100万円未満の場合は200円、100万円超200万円以下の場合は400円、200万円超300万円以下の場合は600円の収入印紙をそれぞれ貼付します。
-
※国税庁「No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書
」
収入印紙の勘定科目
収入印紙を処理する際の勘定科目は、原則として「租税公課」です。ただし、未使用であれば「貯蔵品」として扱う場合もあります。例えば、購入した時点では「租税公課」として計上し、期末に未使用の残高がある場合には「貯蔵品」へ振り替えるといった方法です。
このように、収入印紙の処理に用いる勘定科目は使用目的やタイミングによって異なるため、自社における仕訳のルールを明確化し、担当者間で共有しておくことが大切です。同一の処理をしているにもかかわらず、その時々で異なる勘定科目を用いることのないよう注意しましょう。
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簡易書留を使うときの仕訳方法
重要な書類などを郵送する際には、簡易書留を利用することもあります。簡易書留の代金も切手と同様に、状況に応じて適切な勘定科目を使い分ける必要があります。
簡易書留で書類・荷物を送る場合の仕訳例は以下のとおりです。
簡易書留で書類を送るときの仕訳例
重要書類を送るために簡易書留を利用した場合、その費用は「通信費」として処理するのが一般的です。その際、通常の郵便料金と書留料金を併せて「通信費」に計上します。
仕訳例:保管していた切手を使って簡易書留で書類を郵送したとき
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 通信費 | 422円 | 貯蔵品 | 460円 |
| 仮払消費税 | 38円 | ||
上記のとおり、貯蔵品として保管されていた切手を郵送目的で使用していることから、借方は「通信費」、貸方は「貯蔵品」となります。定型郵便物(50gまで)の基本料金110円+簡易書留代350円(※)を合計した460円を、通信費として計上するのがポイントです。
- ※基本料金、簡易書留代はいずれも2025年7月時点のもの
簡易書留で荷物を送るときの仕訳例
小型商品の発送や荷物の場合は、「荷造運賃」として処理されることもあります。書類を郵送する場合と同様、基本料金+簡易書留を合わせた金額が「荷造運賃」です。
仕訳例:簡易書留で荷物を送り、窓口で代金を支払ったとき
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 荷造運賃 | 482円 | 現金 | 530円 |
| 仮払消費税 | 48円 | ||
- ※ゆうメール基本料金180円+簡易書留代350円の場合
- ※基本料金、簡易書留代はいずれも2025年7月時点のもの
なお、上記はあくまでも一例です。業務内容や送付物に応じて勘定科目を適切に選択する必要があります。書類を郵送する場合と同様、その時々で異なる勘定科目を用いることのないよう、自社での仕訳ルールを明確に決め、統一しておくことが大切です。
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期末に切手が残っていたときの対応
切手は購入時に「貯蔵品」として資産計上するのが原則ですが、まとめて購入し、すぐに使用する前提で「通信費」として一括計上する特例を採用しているケースも少なくありません。
では、購入時に通信費として計上した切手の一部が、期末の時点で未使用だった場合はどのように仕訳すればいいのでしょうか。このようなケースでは、未使用分の切手を「貯蔵品」へ振り替える必要があります。
各部門に残高報告を依頼し、未使用分の切手の残高を確認したうえで、経理で仕訳処理をしましょう。その際、実物の残高と帳簿が一致しているかを確認し、必要に応じて監査対応の実施も求められます。
「通信費」として計上していた110円切手10枚が期末時点で未使用だった場合の仕訳例は、以下のとおりです。
仕訳例:未使用の110円切手10枚を期末に貯蔵品へ振り替えたとき
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 貯蔵品 | 1,100円 | 通信費 | 1,100円 |
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切手の経費計上についての注意点
切手を取り扱う際は、いくつかの注意点があります。詳しく見ていきましょう。
高額な切手購入は「経費計上目的」とみなされることがある
一度に大量の切手を購入し、高額な経費として計上した場合、税務上「経費の計上自体が目的ではないか」と疑われる可能性があります。実態としての切手使用の必要性が乏しいと判断されれば、税務調査において経費を装った利益操作と見なされることにもなりかねません。
例えば、大量に購入した切手を通信費として計上すれば、見かけ上の経費を増やすことができてしまいます。粉飾決算が疑われる原因となるため、切手の必要数量の見積もりや使用予定を明確にしておくことが重要です。
なお、未使用の切手を期末に「貯蔵品」へ振り替える処理は、正当な会計処理として認められています。振替処理を行わないままにしておくと、意図せず経費の水増しと判断されるリスクもあるため、期末には必ず残高を確認し、振替処理を行いましょう。
帳簿と実物の突合を定期的に行う
切手を保管する際は、帳簿と実物の内容を定期的に照合し、差異がないかこまめに確認することが大切です。切手は現金同等物として扱われるため、紛失や不正利用のリスクもあります。帳簿上の記録と実際の保管数量や金額にズレがある場合は、速やかに原因を調査し、適切に対応しなければなりません。原因調査には、定期的な棚卸しや内部監査による確認を行うことが望ましいでしょう。
また、日常的な切手の利用状況や記録の管理体制を整えておくことも不可欠です。記録漏れや集計ミスなどのヒューマンエラーを防ぐためには、担当者の注意力だけに頼るのではなく、正確性を担保できる仕組みの整備が求められます。
切手の利用状況や残高の自動集計・記録が可能な仕組みを確立し、管理業務の効率化や正確性の向上を図るには、使いやすい会計ソフトの活用がおすすめです。会計ソフトを導入して、経理担当者の負担を軽減すると共に、正確かつ効率的な切手の管理体制を目指しましょう。
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切手の正しい仕訳方法を理解して適切な会計業務に役立てよう
切手は購入時に「貯蔵品」として資産計上し、使用するたびに「通信費」などの費用勘定へ振り替えるのが原則です。その一方で、実務では切手を購入したらすぐに使用する前提で「通信費」として一括計上しているケースも多く見られます。この場合、期末時点で未使用の切手が残っていれば、「貯蔵品」への振替処理を行わなければなりません。切手の会計処理は、状況やタイミングに応じて勘定科目を使い分ける必要があるため、ミスや見落としが発生しやすい項目の1つといえるでしょう。
こうした誤りを防ぐためには、正しい仕訳方法を理解すると共に、可能な部分は自動化し、業務の負担を軽減することが重要です。経理業務を正確かつ効率的に進めるためにも、自社に合った会計ソフトの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
photo:Thinkstock / Getty Images
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。