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繰延資産とは?具体例と償却方法、仕訳のやり方について解説

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繰延資産とは、既に支払い済みまたは支払い義務が確定し、サービスや品物の提供を受けていて、その効果が将来にわたって影響を与える費用のことです。貸借対照表の「資産の部」に計上されますが、実際に現金化はできません。

繰延資産は本来「費用」として処理するものですが、「資産」として計上できるため、「わかりにくい」「処理が難しそう」と感じる方もいるかもしれません。しかし、繰延資産を適切に計上すれば、会社経営に役立てることもできます。

ここでは、繰延資産の種類や償却の方法、仕訳のやり方、活用法などについて解説します。

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繰延資産は支出効果が1年以上に及ぶ費用

「繰延資産」は企業や個人事業主が支出した費用のうち、支出したサービスや品物の効果が1年以上に及ぶもので、資産として処理したものを指します。

費用として支払うお金の中には、既に支払い済みまたは支払い義務が確定した後に、長期間収益を生み出し続ける可能性があるものもあるでしょう。このようなものを繰延資産と呼び、開業費や開発費などが該当します。繰延資産は本来、費用に分類・処理されるものですが、将来にわたって効果があることから、一時的に資産として計上することが認められているのです。

繰延資産はいったん資産として計上してから、適切な期間にわたって償却することで費用化していきます。繰延資産の償却に似た方法として減価償却がありますが、減価償却は事業で使用する固定資産を耐用年数に応じて取得価額を分割して経費計上する会計処理の方法です。そして、使用することや時間が経過することで価値が減少する固定資産が「減価償却資産」です。繰延資産は減価償却の対象ではありませんが、「資産として計上し、後で償却して経費に振り替える」という点では、減価償却資産とよく似ています。

繰延資産の償却期間は、種類によっても異なりますが、多くは5年もしくは3年間です。

貸借対照表の資産の部に記載される

繰延資産は貸借対照表の「資産の部」に記載されます。貸借対照表の「資産の部」には、流動資産と固定資産が表示されますが、繰延資産はそのどちらにも該当しません。繰延資産は、いったん貸借対照表に計上してから、少しずつ費用化していく資産になります。

貸借対照表についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

流動資産と固定資産の違い

貸借対照表の「資産の部」は、資産の性質によって、流動資産・固定資産・繰延資産の3つに分類されます。

流動資産とは、1年以内に現金化できる流動性の高い資産です。現金や預金、1年以内に満期となる定期預金、売掛金、有価証券、受取手形、棚卸資産(在庫)、前払金、未収金などが流動資産に該当します。

一方、固定資産とは、会社の資産のうち長期にわたって保有するものや、現金化に1年以上の時間がかかるものです。固定資産には、土地や建物、車などの「有形固定資産」、特許権や施設の使用権、のれん、ソフトウェアなどの「無形固定資産」、投資有価証券や長期預金などの「投資その他の資産」の3種類があります。

流動資産や固定資産についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

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繰延資産の具体例

繰延資産は、会社法における「会計上の繰延資産」と、税法における「税務上の繰延資産」に分類されます。それぞれどのようなものが該当するかを確認していきましょう。

会計上の繰延資産にあたるもの

会計上の繰延資産の対象になるのは、下記の5つです。これらの繰延資産は計上の際に「均等償却」か「任意償却」を選択します。均等償却の場合の償却期間は、創立費、開業費、開発費は5年以内、株式交付費は3年以内、社債発行費は社債の償還期限内となります。

創立費

創立費は会社設立のために支出した費用です。設立登記に必要な登録免許税や、定款作成費、事務所の契約費用、創立総会に関する費用などが該当します。

開業費

開業費は会社の設立から実際に事業を開始するまでにかかった費用です。土地や建物などの賃借料、広告費、名刺作成費などが該当します。

株式交付費

株式交付費は新株発行や自己株式の処分にかかった費用など、株式関連の費用です。株式募集にかかる広告費や、金融機関や証券会社に支払う取扱手数料、変更登記の登録免許税などが該当します。

社債発行費等

社債発行費等は社債を発行するためや新株予約券を発行するために支出した費用です。社債募集にかかる広告費や、金融機関や証券会社に支払う取扱手数料、目論見書や社債債券などの印刷費などが該当します。

開発費

開発費は新技術の開発や新市場の開拓などにかかった費用です。ただし、毎年発生する経常費用を除きます。新技術の開発にかかる費用や、新規市場の開拓のために支出した費用、経営組織の刷新に必要な費用などが該当します。

税務上の繰延資産にあたるもの

税法上認められている繰延資産には、前述した会計上の繰延資産に加え、次のようなものがあります。

公共的施設の設置や改良のために支出する費用

ここで対象となる公共的施設とは、自社が直接的あるいは間接的に便益を受ける施設を指します。このような施設の設置や改良のために支出する費用が該当します。例えば、商店街のアーケードやベンチなどの設置費用です。

建物を借りるための権利金など

資産を賃借するための権利金などは繰延資産の対象になります。例えば、権利金や立退料、礼金などです。敷金や保証金は含みません。

役務の提供を受けるための権利金

役務の提供を受けるための権利金は、企業経営のための情報などを得るための費用が該当します。具体的にはフランチャイズの加盟金やノウハウの提供料などが該当します。

広告宣伝のための資産を贈与したことによる費用

ここで対象となる広告宣伝のための資産には、看板などが該当します。例えば、法人が特約店などに対して、看板やネオンサイン、陳列棚などの資産を贈与した場合の費用が該当します。

上記以外で支出の効果が1年以上に及ぶものの費用

この費用には、支出の効果がその支出の日以降、1年以上に及ぶものが該当します。資産の取得に要した金額および前払費用は対象となりません。スキー場のゲレンデ整備費用、出版権の設定の対価、同業者団体等の加入金、プロスポーツ選手等との専属契約をするために支出する契約金などが該当します。

繰延資産の勘定項目

繰延資産の仕訳に使う勘定科目は、以下の表のとおりです。貸借対照表と損益計算書では使用する勘定科目が違うので注意しましょう。

繰延資産の勘定項目
貸借対照表での勘定科目 損益計算書での勘定科目
企業会計上の繰延資産 繰延資産
  • 創立費、開業費、株式交付費、社債発行費、開発費など
繰延資産償却
  • 開発費は販管費、その他は営業外費用も適用可能
法人税法上の繰延資産 長期前払費用
  • アーケードなどに関する費用、ノウハウ提供の費用など
長期前払費用償却
  • 減価償却費も適用可能

損益計算書についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

繰延資産の償却方法

前述したように、繰延資産の償却方法には「均等償却」と「任意償却(一時償却)」の2種類があります。それぞれについて解説します。

均等償却

均等償却とは、繰延資産の金額を定められた期間で均等に償却することです。定められた償却期間で均等に費用を配分し、毎期同額を費用として処理していきます。

任意償却(一時償却)

任意償却(一時償却)では、償却期間内であればいつでも、また繰延資産の額の範囲内であれば自由に償却できます。繰延資産の額の範囲内の金額が償却費として認められ、その下限は設けられていないので、支出の年に全額償却しても良く、逆にまったく償却しなくても問題ありません。創立費や開業費といった会計上の繰延資産は、償却費を計上するときに、均等償却か任意償却を選ぶことができます。任意償却が可能な繰延資産の未償却残高は、いつでも償却費として必要経費に算入することができます。

繰延資産の仕訳のやり方

ここからは、繰延資産の仕訳のやり方を具体例で紹介していきます。開業費や創立費などの償却について見ていきましょう。

開業費を均等償却する場合

80万円の開業費を均等償却する例を見てみましょう。開業費を均等償却する場合、償却期間は営業開始から5年間です。繰延資産の償却は月割で行うため、毎年の償却費は次の計算式で算出できます。

均等償却する場合の計算式

償却費=(繰延資産の支出額÷償却期間の年数)×(本年中の償却期間の月数÷12か月)

上記の例で、本年中の償却期間の月数が12か月だった場合、償却費は16万円です。このときの仕訳は下記のようになります。

開業費の仕訳例
借方 金額 貸方 金額
開業費 80万円 現金 80万円

創立費を任意償却する場合

開業費や創立費は、均等償却ではなく任意償却(一時償却)を選ぶことも可能です。創立費80万円を、一括で任意償却する場合の仕訳は以下のとおりです。

創立費の仕訳例
借方 金額 貸方 金額
創立費 80万円 現金 80万円

繰延資産の活用方法

会計上の繰延資産は、自社の状況に合わせて償却方法を選択することで、会社経営において有利に活用できます。

例えば、会社を設立した直後は、売上が安定せず赤字になってしまうことも多いものです。そのような場合は、会社設立にあたって発生したさまざまな費用を、創立費や開業費といった繰延資産として計上することで、費用計上額を抑えることができます。

また、創立費や開業費は、償却期間内であれば任意のタイミングで好きな金額を償却することができます。そのため、利益が少なく支出を抑えたいときには償却金額を減らす(またはまったく償却しない)、売上が伸びてきて黒字が確保できるようになったら償却金額を多くする(または未償却残高を一気に経費計上する)といったことも可能です。このように、繰延資産を活用すれば、会社の利益をコントロールすることができます。

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繰延資産を正しく理解して会社経営に活かそう

繰延資産は、「資産」として計上するものの、本来の扱いは「費用」です。少しずつ費用化していく資産という意味をきちんと理解して分析を行う必要があります。繰延資産の中でも、任意償却を選べる創立費や開業費などは、償却方法を適切に選択できれば経営に役立つため、会計ソフトを活用すると良いでしょう。

ただし、繰延資産に該当するかどうか判断が難しい項目もあるため、判断に迷った場合は、税理士などの専門家に相談をおすすめします。

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この記事の監修者税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
「知りたい!」を最優先に、一緒に問題点を紐解き未来に向けた会計をご提案。

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