入金伝票の役割とは？伝票の書き方や仕訳方法、伝票式会計を解説

監修者： 渋田貴正（税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士）

2025/12/23更新

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入金伝票は、現金の入出金を管理する伝票のひとつです。会社に現金でお金が入ってきた際には、「入金伝票」を起票して取引内容を記録します。入金伝票の取扱方法は比較的シンプルではあるものの、その役割や書き方を正確に理解していないと、作成すべきタイミングや記載事項に迷ってしまいがちです。

本記事では、入金伝票の役割や書き方、仕訳方法、伝票式会計についてわかりやすく解説しています。入金伝票を作成するメリットも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

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入金伝票の役割とは？

入金伝票とは、会社に現金が入ったときに作成（起票）される伝票のことです。いつ、どのような取引が、誰によって行われたかを記録する役割があります。入金伝票の記載内容を参照することで、取引の内容を詳細に確認することが可能です。

また、入金伝票は、現金の取引をその都度記録して、会計ソフトなどへの記帳と組み合わせることで現金の動きを把握しやすくなります。取引ごとの記録を残しておくことで、後から取引内容を正確に振り返ることができ、会計処理の基礎資料としても役立ちます。

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入金伝票を作成するメリット

入金伝票を作成することによって、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主なメリットとして、下記の３点が挙げられます。

複数人での分担が可能

入金伝票を作成する大きなメリットは、記帳業務を複数人で分担できることです。仕訳帳や総勘定元帳は基本的に1冊ずつしかありませんが、紙の伝票なら複数人が同時に作成できます。

入金伝票では、借方の勘定科目は現金と決まっているので、伝票に記入する主な項目は貸方の勘定科目と金額です。複式簿記の知識がなくてもかんたんに起票できるので、例えば、取引の営業担当者などに伝票作成を分担してもらうことも可能になります。経理担当者はそれを集めて仕訳するだけで済むため、業務負担の軽減につなげられるでしょう。

内部証憑として活用可能

取引が行われた日付や取引金額、取引先、入金の理由などを記録できるのが入金伝票です。入金伝票自体は税務署などに提出する正式な書類（法定証憑）ではないものの、社内で取引内容を確認するための裏付け資料（内部証憑）として活用できます。例えば、後から帳簿や通帳の入金明細を見返した際に、入金伝票を確認すれば「どの取引による入金だったのか」や「相手先は誰か」をすぐに把握できるため、記録の確認や照合作業がスムーズになります。

ミスの防止

入金伝票は経理業務のミスの防止にも役立ちます。フォーマット化された伝票に取引を都度記録することで、誤記入や計上漏れが発生するリスクを抑制できるからです。さらに、起票と承認を別の人物が行うようルールを定め、必ず二重チェックを実施すれば、不正が行われるリスクを低減させる効果も期待できます。

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入金伝票を作成するタイミング

入金伝票を作成するタイミングは、会社に現金による入金があったときです。例えば、商品やサービスの代金を現金で受け取った場合や、取引先から売掛金が現金で支払われた場合などが挙げられます。特に、飲食店や小売店のように現金取引を行うことが多い会社や店舗では、入金伝票を用いるケースが多いでしょう。

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伝票で取引を記録する「伝票式会計」とは？主に使う3つの伝票

伝票式会計とは、仕訳帳を使って取引を記録するのではなく、取引内容を簡易に示した伝票を使って記録する会計手法です。仕訳帳や総勘定元帳を作成する前段階で、伝票を用いて取引を仮計上し、それを後で集めて総勘定元帳に転記します。仕訳の仮計上を複数人で行える伝票は、シンプルでありながらも非常に便利なツールだといえるでしょう。

伝票式会計は、利用する伝票の数によって、「1伝票制」「3伝票制」「5伝票制」の大きく3種類に分けられます。中でも、現金取引を中心とした業種で多く取り入れられているのが3伝票制です。3伝票制では、入金伝票の他、出金伝票と振替伝票という伝票を使用します。

入金伝票

入金伝票は、会社に現金が入ってきたときに記入する伝票です。内容は現金の入金に限定されるため、総勘定元帳に転記するときは借方が常に「現金」になります。

出金伝票

出金伝票は、会社から現金の出金があったときに記入する伝票です。例えば、交通費や経費などを現金で支払った場合に用いられます。入金伝票とは逆に、総勘定元帳に転記するときは貸方が常に「現金」になります。

振替伝票

3伝票制における振替伝票は、現金以外の取引の際に用いられます。取引内容によって勘定科目が異なるため、仕訳と同じように借方・貸方の両方を記入します。

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入金伝票の書き方

最近では会計ソフトに直接取引内容を入力する会社も増えていますが、ここでは、基本的な紙の入金伝票に起票するときの書き方を説明します。

入金伝票の一般的な記入項目は、「1. 伝票番号」、「2. 日付」、「3. 勘定科目」、「4. 摘要」、「5. 金額」、「6. 係印」、「7. 入金先」、「8. 承認印」です。なお、汎用的な入金伝票の多くは、出金伝票と区別するために文字や罫線が赤色で印刷されています。

1. 伝票番号

伝票番号は、あらかじめ番号が振られている場合は特に記入の必要はありません。番号が印字されていないタイプの伝票に関しては、社内ルールにもとづいて伝票番号を記入します。

伝票番号は、後から内容を追跡するための大切な情報です。重複や抜け番号があると帳簿との照合が難しくなるため、連番管理を徹底するようにしましょう。

2. 日付

日付欄には、現金が入金された日付を記入します。売掛金が入金された場合に記入する日付は、売上が上がった（取引先に商品やサービスを引き渡した）日ではなく、実際に入金があった日です。入金日と伝票作成日がズレるケースもありますが、必ず「入金日」を基準に記入してください。

3. 勘定科目

入金伝票の借方の勘定科目は現金と決まっているため、入金伝票では借方を省略し、貸方の勘定科目だけを記入します。売掛金が入金された場合、勘定科目欄は売掛金になります。勘定科目の選択は仕訳に直結するため、科目の選び間違いに注意しましょう。

4. 摘要

摘要欄には取引の内容を記入します。後で誰が見てもわかりやすいように、簡潔かつできるだけ詳細に記載することが大切です。入金内容・対象期間・取引先を明記すると良いでしょう。

5. 金額

金額欄には、実際に入金があった金額を記入します。入金された現金の金額と金額欄の数字が一致しているかをしっかりと確認しましょう。複数の入金がまとめて行われた場合は、摘要欄で分けて記載します。

6. 係印

担当者の押印は、責任の所在を明確にする役割があります。係印の欄には起票した方の名前を記入もしくは押印します。

7. 入金先

入金伝票の中には、摘要欄とは別に入金先という欄が設けられているものもあります。その場合は入金先欄に入金元の会社名などを記入してください。摘要欄と合わせて「どこからの入金か」を明記しておくことで、誤認防止になります。

8. 承認印

承認者の押印欄がある場合は、上長や経理担当者が押印するのが一般的です。係印の押印者とは別に承認者が必要な業務フロー（ダブルチェック体制）にすることで、ミスの防止につながります。

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入金伝票の仕訳方法

入金伝票の借方科目は現金ですが、記入が省略されています。そのため、仕訳をする際には、借方に現金の勘定科目を補う必要があります。入金伝票を仕訳するときは、借方の勘定科目は必ず現金になると覚えておいてください。以下に、入金伝票の仕訳方法の例をご紹介します。

A社に10万円の商品を販売し、代金を現金で受け取った場合

A社に10万円の商品を販売し、代金を現金で受け取った場合、入金伝票の勘定科目には売上と記入し、金額には販売した金額を記入します。適用にはA社への売上だとわかるように記入しましょう。

入金伝票への記入方法

この入金伝票を仕訳する際には、仕訳帳に以下のように記入します。

仕訳帳への記入方法

A社に10万円の商品Bを掛取引で販売した場合

商品を現金で販売したとしても、売掛（掛取引）の場合、売上時には入金伝票は使いません。売上時に売上伝票か振替伝票を使って仮計上し、後日現金で入金があったときに入金伝票で売掛金として計上します。
この場合は、売上伝票（または振替伝票）と入金伝票をそれぞれ起票する必要があります。具体例を挙げて見ていきましょう。

まず、売上伝票か振替伝票を起票しますが、今回は売上伝票とします。

売上伝票への記入方法

そして、後日売掛金が現金で入金されたら、入金伝票を起票します。勘定科目は売掛金とし、金額には販売した金額を記入、摘要欄にはA社への売上だということがわかるよう記入します。

入金伝票への記入方法

なお、このような売上伝票と入金伝票を使う方法は、売上と同時に現金で代金を受け取った場合でも可能です。その場合は、まず売掛金で販売したものとして売上伝票で処理し、すぐに入金伝票を起こして現金で回収した形をとります。つまり、実際は商品の受け渡しと同時に現金が入金されていても、書類上は売掛金で販売したことにするのです。

担当者によっては、入金伝票だけで処理するよりも、「売上＝売上伝票」と考えた方がわかりやすいという方もいるかもしれません。どちらでも最終的な仕訳は変わりませんが、手順をよく理解しておくことが大切です。

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入金伝票を紙と会計ソフトで管理する場合は何が違う？

近年はペーパーレス化が進んでいることもあり、入金伝票を用いず会計ソフトに直接取引内容を入力するケースも増えています。紙の入金伝票を使用する場合と、会計ソフトを活用する場合の主なメリット・デメリットは下表のとおりです。

紙と会計ソフトのメリット、デメリット比較

紙の入金伝票は、現場担当者がその場で簡単に起票できるほか、押印のある原票を物理的な社内証憑として残せる点がメリットです。その一方で、会計ソフトに直接入力することで、紙の伝票と同じ役割を果たしつつ転記や保管の手間を削減できます。特に電子帳簿保存法に対応している会計ソフトを活用すれば、紙の伝票を残すことなく証憑として利用できるため、業務効率化にもつながるでしょう。

電子帳簿保存法の対象となる書類や、書類を保存する際に求められる要件に関しては、以下の記事で解説していますので、参考にしてください。

• 【2024年最新】電子帳簿保存法とは？改正点もわかりやすく解説

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仕訳を登録するたびにAIが学習するので、徐々に仕訳の精度が向上します。 

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仕訳の効率化には会計ソフトの利用がおすすめ

入金伝票は、会社に現金が入金された際に作成する伝票です。作成にあたって複式簿記の知識が求められないことに加え、適切に活用すれば記帳業務を複数名で分担できます。帳簿付けは会計業務の基本のため、伝票式会計を採用している企業も少なくありません。その一方で、紙の伝票を帳簿に転記する過程でミスや漏れが生じたり、一連の作業に多くの労力を要したりすることも十分に考えられます。また、紙の伝票は保管場所を必要とする上に、紛失や破損のリスクも付き物です。

経理業務を効率良く進めるには、会計ソフトの利用がおすすめです。会計ソフトを活用すれば、入力した取引データは自動で転記、集計されるため、計算ミスの心配がありません。さらに、クラウド型の会計ソフトなら、インターネット環境さえあれば場所を問わず作業を行えます。経理業務を複数名で分担したり、テレワークを取り入れたりする際にも対応しやすいでしょう。仕訳を正確かつ効率的に行いたい事業者様は、「弥生会計 Next」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修者渋田貴正（税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士）

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。

著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版』

• 起業コンサルV-Spiritsグループ
• 司法書士事務所V-Spirits