利益準備金とは?資本準備金との違いや計算方法、仕訳例を解説
監修者: 奥 典久(奥典久税理士事務所)
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経理業務を担当している方の中には、「貸借対照表にある利益準備金とは何か?」「利益準備金と利益剰余金の違いは?」と疑問に思う方が多いかもしれません。利益準備金とは、会社法に基づいて法人に積み立てが義務付けられているものです。会計処理の際には、企業の状況に応じた方法で計算や仕訳を行う必要があります。
本記事では、企業で経理業務を担当する方に向けて、利益準備金の概要と計算方法、経理業務を効率化する方法について詳しく解説します。自社の財務健全性を維持するために、利益準備金について正しく理解しておきましょう。
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利益準備金とは、会社法で規定されている法定準備金の1つ
「利益準備金」とは、会社法第445条に定義されている「法定準備金」の一種です。法定準備金は、法人が用意する義務のある積立金のことであり、利益準備金の他に「資本準備金」があります。
株主に利益剰余金を割り振る(配当を還元する)際、企業は割り振る金額の10分の1を積み立てることが義務とされています。これが利益準備金です。
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参照:e-Gov「会社法(資本金の額及び準備金の額)第四百四十五条4項
」
利益準備金を計上する理由
利益準備金は、企業財産の流出を防ぎ、企業の財務基盤を増強する目的があります。その他にも、株主の権利を守り、債権者(その企業にお金を貸している人)を保護する役割があります。
株主には、配当金を受け取る権利があります。債権者には、契約通りの支払いを求める権利があります。
しかし企業が利益準備金を確保せず、利益剰余金のすべてを株主への配当とした場合、債権者への支払いに影響が及びかねません。株主と債権者双方の権利を守るために、利益準備金の処理は重要な役割を持ちます。
利益準備金で積み立てなければならない金額
利益準備金として積み立てるべき額は、配当金の10分の1です。例えば、1,500万円の配当を行う場合は、150万円を利益準備金として積み立てます。ただし、法定準備金(利益準備金と資本準備金の合計)は、資本金の額の4分の1までと上限が定められています。そのため、既に法定準備金の合計額が資本金の4分の1以上ある場合は、新たに積み立てる必要はありません。
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参照:e-Gov「会社計算規則(法第四百四十五条第四項の規定による準備金の計上)第二十二条
」
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利益準備金と似ている勘定科目との違い
利益準備金と似ている用語に、資本準備金、利益剰余金、繰越利益剰余金などがあります。これらはすべて貸借対照表の純資産に含まれますが、その用途は異なります。それぞれの違いを理解することは、財務報告の正確性や法令遵守に欠かせません。
利益準備金と資本準備金の違い
資本準備金とは、株主から払い込まれた資金のうち、資本金に組み込まれなかった部分の金額です。株式会社の多くは設立する際、株主から資金を確保します。その確保した金額のうち、一定額を資本金に、残額を資本準備金として扱います。
資本準備金は「起業時などに支払われた株主からの出資金」が原資です。これに対し、利益準備金は「事業運営で生じた収益」が原資という違いがあります。
なお、資本準備金の金額は「設立時に株主から払い込まれた資金の、少なくとも半分は資本金、それ以外が資本準備金」(つまり、資本金の1/2以下)と定められています。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
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参照:e-Gov「会社法(資本金の額及び準備金の額)第四百四十五条
」
利益準備金と利益剰余金の違い
利益剰余金とは、事業運営で生じた収益の中で、株主に配当されず積み立てられたお金のことです。内部留保(ないぶりゅうほ)とも呼ばれており、利益剰余金の額が多いと財務が健全であるとされます。企業の規模を確かめるためのバロメーターとも言われています。
なお利益準備金は、利益剰余金の内訳の一種です。原資を利益剰余金とし、株主に配当を実施する際は、利益準備金の積み立てを行わなければなりません。利益準備金は、以下の記事でも詳しく解説しています。
利益準備金と繰越利益剰余金の違い
繰越利益剰余金とは、企業がこれまでの事業運営で積み重ね、翌期以降に繰り越されてきた収益で、使途が決まっていない利益の最終残高です。以前は「前期未処分利益」という名称でした。
利益剰余金は「その他利益剰余金」と「利益準備金」に分類されますが、繰越利益剰余金は「その他利益剰余金」の一種に分類されます。
なお、繰越利益剰余金は企業の累積損益を反映するため、必ずプラスになるわけではありません。赤字経営が続いた場合には、繰越損失としてマイナスになるケースもあります。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
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利益準備金を取り崩すのはどのようなとき?
利益準備金は、切り崩して使用するケースもあります。手続きの基準は厳しく決められているものの、株主総会による普通決議で承認を得られた場合は、切り崩しが可能です。利益準備金の切り崩しを債権者の立場から考えた場合、財産の減少と同等の意味があるため、債権者が切り崩しの中止を求めて申し立てを行うケースもあります。この申し立てをする機会を与える手続きのことを「債権者保護手続」といいます。
累積赤字を補填するとき
利益準備金は、「累積赤字(繰越利益剰余金がマイナスの状態)」を補填するために切り崩すことが可能です。利益準備金を減らして、繰越利益剰余金を補填します。累積赤字の補填を利益準備金で実施する目的は、これまでに生じた赤字を解決し、財務を健全にすることです。ただし、利益剰余金で補填できる場合は、基本的に利益剰余金による補填が優先となります。また累積赤字補填のための切り崩しの際は、株主総会の承認と債権者保護手続を経る必要があります。
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参照:e-Gov「会社法(債権者の異議)第四百四十九条
」
会社の資本金を増やすとき
会社の資本金を増やす目的で利益準備金を切り崩すケースもあります。株主総会を行う必要はあるものの、利益準備金があれば、新たな出資なしで資本金を増やすことが可能です。
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参照:e-Gov「会社法(準備金の額の減少)第四百四十八条
」
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利益準備金の積立金額についての計算方法と仕訳例
株主へ配当を行うためには、次の利益準備金の積立額の計算方法を正確に理解し、適切な利益準備金の積立の仕訳処理を行わなければなりません。違法な配当や財務諸表の誤りを防止するために、必要な知識を身につけておきましょう。
利益準備金の計算方法
利益準備金は、次の2つのうち、少額の方を採用します。
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①資本金 × 4分の1 - (利益準備金 + 資本準備金)
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②配当金 × 10分の1
具体的には、次の手順で算出します。
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1.利益準備金と資本準備金の総額(法定準備金)が、資本金の4分の1以上かどうかを確認する。
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2.資本金の4分の1以上であれば、積み立てられる法定準備金の上限を超えているため、新たに積み立てるべき利益準備金は0円になる。資本金の4分の1未満であれば、資本金の4分の1から利益準備金と資本準備金の総額を減算し、差分を算出する(法定準備金の上限まであといくら積み立てられるかを計算する)。
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3.配当金の10分の1を算出する。
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4.上記で算出したもののうち、少ない方の金額を最低額として利益準備金とする。
例えば、80万円の配当金で原資が利益剰余金であり、資本金が800万円、利益準備金・資本準備金がどちらも80万円のケースでは、以下のようになります。
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1.資本金800万円 × 4分の1 - (利益準備金80万円+資本準備金80万円) = 40万円
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2.配当金80万円 × 10分の1 = 8万円
2で算出した額が少額となるため、利益準備金の積立ては8万円となります。
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参照:e-Gov「会社法(資本金の額及び準備金の額)第四百四十五条4項
」
利益準備金の仕訳例
前項のケースで利益準備金の積立て仕訳をする際は、以下のようになります。
(例)株主配当金80万円を剰余金により実施することとし、決算日時点の資本金は800万円、利益準備金は80万円、資本準備金は80万円の場合。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 繰越利益剰余金 | 88万円 | 未払配当金 | 80万円 |
| 利益準備金 | 8万円 |
- ※源泉所得税を除く
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利益準備金に関するよくある質問
利益準備金の扱いに慣れていない経理担当者の方は、さまざまな疑問を抱くかもしれません。ここでは、利益準備金についてのよくある質問にお答えします。
利益準備金は上限を超えても積み立てられる?
利益準備金の積立ては、配当金の額面の10分の1まで(利益準備金と資本準備金の合算額が資本金の4分の1まで)が最低で、これを超えた金額を積み立てる必要はないとされています。上限基準を満たしていれば、財産の流出を防止し、株主の権利を十分に守っていると認識されます。なお、上限を超えた金額を利益準備金として積み立てることは、禁止されていません。ただし「任意積立金」「利益積立金」など別名で計上したほうが実務上わかりやすく、誤解も防ぐことができます。
利益準備金を積み立てないとどうなる?
利益準備金の会計処理は、会社法第445条4項で明確に規定されています。そのため、利益準備金を積み立てずに配当を実施した場合、違法配当と見なされるおそれがあります。
会社法により定められた義務を守らなかった場合は、会社法第976条に基づいて企業の役員などに過料が科される可能性があります。利益準備金は企業の義務として、正しく準備しなければなりません。
- 参照:e-Gov「会社法(過料に処すべき行為)第九百七十六条
」
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利益準備金のルールを把握して正しく仕訳しよう
利益準備金は、会社法により定められている法定準備金です。法定準備金(利益準備金と資本準備金の合計)が資本金の4分の1に達する場合、さらに積み立てる必要はありません。ただし、未達となる場合には、配当額の10分の1を積み立てます。積み立てた利益準備金は、累積赤字を補填したり資本金に組み入れたりすることも可能ですが、株主総会の普通決議や債権者保護手続が必要です。
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この記事の監修者奥 典久(奥典久税理士事務所)
奥典久税理士事務所 代表
簿記専門学校で税理士講座講師として勤めたのち、会計事務所で勤務。その後独立し、奥典久税理士事務所を開業。相続(贈与)対策や事業承継コンサルティング経営、財務コンサルティングから各種セミナーなど、幅広く税理士業務に従事。