仕掛品とは?計上の際の注意点や仕訳例などを解説

2023/08/18更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

仕掛品(しかかりひん)とは、製造に取り掛かってはいるものの、製造途中で完成していない状態の製品のことです。未完成とはいえ製造のためのコストがかかっているため、「仕掛品は費用として計上すべき」と考える方もいるかもしれません。

しかし、仕掛品は棚卸資産として計上すべきものであり、費用に計上することはできません。仕掛品を正しく計上できないと利益を正確に把握できなくなるうえ、税務調査で指摘を受ける可能性もあります。特に、何らかの製品を製造販売する業種においては、仕掛品についてしっかりと理解しておくことが大切です。

ここでは、仕掛品の意味や仕掛品を管理する必要性、仕掛品を勘定に計上する際の注意点、実際の仕訳例などを解説します。

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仕掛品とは製造途中でまだ完成していない状態の製品のこと

仕掛品とは、製造途中でまだ完成していない状態の製品のことです。そのままの状態では出荷・販売ができない製造途中の中間品を会計処理する際に、「仕掛品」の勘定科目を使用します。

仕掛品は、計上する段階では、原材料費や労務費、加工費といったコストだけがかかっている状態です。しかし、仕掛品は将来的に収益を生み出すものであるため、流動資産の1つである棚卸資産とみなされます。それまでかかった原材料費や労務費といった製造原価を所定の方法によって計算し、その金額を「仕掛品」として資産計上します。誤って費用に計上しないように気をつけましょう。

また、仕掛品は業種によって呼び方が変わり、建設業では「未成工事支出金」、造船業では「半成工事」と呼ばれます。勘定科目の名称は違いますが、いずれも、作っている途中のものにかかった費用を一時的に資産計上するという意味では同じです。

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仕掛品と半製品の違い

仕掛品と混同しやすいものに、半製品があります。半製品とは、一定の加工が完了した製品のうち、その製品自体が販売できるものか、もしくは倉庫などに貯蔵できるものを指します。

例えば、缶詰の食品を製造・販売しているケースで考えてみましょう。この場合、加工した食品を缶に詰めて密封したものは、ラベルの貼付や箱詰めがされていなくても販売や貯蔵が可能なので、半製品です。

一方で、仕掛品は、前述したように、それ単独での販売はできません。製造途中でまだ完成していない状態であり、原材料を少しでも加工していれば仕掛品ということになります。

前述した缶詰の食品を製造・販売しているケースで考えると、缶を作るために加工している途中の金属や、まだ缶に詰めていない食品などは、それだけでは販売することができないため、仕掛品となります。

半製品も、仕掛品と同様に棚卸資産に計上されますが、それぞれを区別して管理することが大切です。

仕掛品の在庫管理はなぜ必要?

仕掛品の在庫管理が必要なのはなぜなのでしょうか。ここでは、仕掛品の在庫管理が必要な理由を3つ説明します。

製造原価を把握できるため

仕掛品の在庫管理を行う理由のひとつは、製造原価を把握できる点です。

製造原価とは、単に原材料の仕入費用だけを指すのではありません。製造業においては、原材料費や部品代をはじめ、製造に携わる従業員の労務費、工場の家賃や水道光熱費、機械や設備の費用など、製造にかかったすべてのコストが製造原価となります。つまり、仕掛品を製造する中でも、製造原価がかかっているのです。

そのため、仕掛品の在庫管理を行うことで仕掛品にかかった製造原価を算出でき、製造全体でかかった製造原価を把握できます。

キャッシュフローの改善につながる

キャッシュフローの改善につながる点も、仕掛品の在庫管理を行う理由のひとつです。仕掛品は資産として計上されますが、完成させて販売しなければ現金化することができません。仕掛品が多すぎるということは、それまでかけた材料費や労務費を回収できていない状態です。場合によっては、時間の経過とともに価値が低下したり、劣化して廃棄せざるをえなくなったりするかもしれません。そのため、過剰な仕掛品在庫は、キャッシュフロー悪化を招く要因になってしまいます。

仕掛品は、製造途中の未完成品なので、完成品の在庫に比べて正確な量を把握しづらいものです。また、仕掛品在庫が多すぎると資金繰りに悪影響を及ぼす可能性がありますが、少なすぎても品切れにつながってしまうかもしれません。キャッシュフローを改善するには、仕掛品在庫をしっかりと管理し、適切な量を保つことが大切です。

税金を正しく計算できる

税金を正しく計算できることも、仕掛品の在庫管理を行う理由として挙げられます。製品によっては、製造開始が当期、完成して納品するのが来期になるなど、製造期間が期をまたぐケースがあります。工事などでは、完成・引き渡しが数年後になることもあるでしょう。

そのような場合でも、製品が完成するまでの間には、当然のことながら材料費や労務費などのコストがかかります。しかし、だからといって、かかったコストをその期の費用として計上すると、売上と経費の発生タイミングにずれが生じ、税額を適正に計算できなくなってしまいます。

製造にかかったコストを一時的に仕掛品として計上し、完成して売上が上がってから原価に計上しなおすことで、期をまたぐ製造や工事においても正しく税金を計算することが可能です。

仕掛品を正しく計上するためのポイント

仕掛品を正しく計上できているかどうかは、税務調査でも指摘を受けやすいポイントです。仕掛品を正しく計上するためには、計上のタイミングをあらかじめ決めておくことが大切です。

仕掛品を計上するタイミングがバラバラだったり、年に1度の決算時だけだったりしては、ミスや漏れが起こりやすくなります。仕掛品を適切に把握するためにも、計上するタイミングを社内でルール化しておきましょう。

仕掛品を計上する時期として一般的なのは、出納帳などの帳簿を作成するタイミングです。毎月、棚卸資産を整理するときに、いっしょに仕掛品を計上するのがおすすめです。毎月決まった時期に計上することで、計上漏れなども防げるうえ、仕掛品の実態を正しく管理しやすくなります。

仕掛品の仕訳例

製造途中の未完成品にかかった材料費や労務費、製造経費は、原価計算を行ったうえで、仕掛品勘定で仕訳します。また、製品が完成した際には、仕掛品勘定から製品勘定へ振り替えます。

ここからは、仕掛品の仕訳例について、具体的に見ていきましょう。

製造のための原材料を出庫した場合

製造のために原材料を出庫したときの仕訳を見ていきましょう。製造のために原材料を出庫した場合は、その原材料の金額を、仕掛品の勘定科目で処理します。

例えば、製品の製造のために、原材料20万円を出庫した場合の仕訳は下記のとおりです。

製造のために原材料を出庫したときの仕訳例
借方 貸方
仕掛品 200,000 原材料 200,000

製造のために労務費と製造経費を使った場合

製造のために労務費と製造経費を使った場合の仕訳を見ていきましょう。

仕掛品の原価計算には、原材料費の他にも、労務費や製造経費が含まれます。労務費とは、製品の製造に携わった従業員の労務費のことです。また製造経費には、工場の家賃や光熱費、機械や設備の減価償却費などが該当します。

例えば、製品の製造のために、労務費150万円と製造経費50万円がかかった場合の仕訳は下記のとおりです。

製造のために労務費と製造経費を使ったときの仕訳例
借方 貸方
仕掛品 2,000,000 労務費 1,500,000
製造経費 500,000

製品が完成した場合

製品が完成した場合の仕訳を見ていきましょう。製品が完成した場合は、仕掛品勘定から製品勘定へ振替る必要があります。

例えば、製造原価に100万円かけた製品が完成した場合の仕訳は、下記のとおりです。

製品が完成した場合の仕訳例
借方 貸方
製品 1,000,000 仕掛品 1,000,000

受注制作のソフトウェアを引き渡した場合

受注制作のソフトウェアを引き渡した場合の仕訳を見ていきましょう。

ここでは、ソフトウェアを受注制作して、制作開始から3年後に完成し、取引先に引き渡し、工事収益総額に30万円、工事原価総額に20万円かかった場合の仕訳例をご紹介します。なお、初年度は6万円、2年目は10万円、3年目は4万円の原価が発生したとします。

この場合、初年度、2年目、3年目に発生した原価を、それぞれ仕掛品として計上します。そして、製品が完成して引き渡したときに、売上および原価に計上します。

このときの仕訳は、それぞれ下記のとおりです。

初年度の原価発生額6万円を仕掛品の勘定に計上した場合の仕訳例
借方 貸方
仕掛品 60,000 現金預金 60,000
2年目の原価発生額10万円を仕掛品の勘定に計上した場合の仕訳例
借方 貸方
仕掛品 100,000 現金預金 100,000
3年目の原価発生額4万円を仕掛品の勘定に計上した場合の仕訳例
借方 貸方
仕掛品 40,000 現金預金 40,000
ソフトウェアが完成して引き渡しを行い、検収が完了した場合の仕訳例
借方 貸方
売掛金(完成工事未収入金) 300,000 売上高 300,000
売上原価 200,000 仕掛品 200,000

また、完成・引き渡し時の売上高は工事収益総額の30万円、売上原価は3年間の制作期間に仕掛品として計上された金額の合計20万円となります。

棚卸評価額を振替した場合

期首には、前期の期末仕掛品棚卸高が、期首仕掛品として存在しています。そこに、仕掛品として計上された原材料費や労務費、製造経費が加わります。そして、製品が完成した分については、仕掛品から製品へと振替ます。残ったものが、当期末仕掛品残高です。

期末には、棚卸評価額の振替が必要です。期首仕掛品や期末仕掛品は、損益計算書や製造原価報告書といった決算書に記載されます。

例えば、棚卸評価額10万円を振替した場合の仕訳は下記のとおりです。

棚卸評価額を振替した場合の仕訳例
借方 貸方
期首仕掛品 100,000 仕掛品 100,000
仕掛品 200,000 期末仕掛品 200,000

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仕掛品の意味をしっかり理解して正しく計上しよう

仕掛品は、製造途中でそのままでは販売できない未完成品を処理するための勘定科目です。製造業をはじめ、何らかの製品を製造・制作する企業にとっては、避けては通れない勘定科目だといえるでしょう。仕掛品は、費用ではなく棚卸資産として計上するため、正しく理解していないと税務調査で指摘を受ける可能性もあります。仕掛品を適切に管理するためにも、毎月決まったタイミングで計上するようにルール化しておくのがおすすめです。

また、仕掛品は、製品が完成した際には原価を算出し、製品勘定へと振替る必要があります。つい忘れてしまいがちな振替仕訳も、「弥生会計 オンライン」などの会計ソフトを活用すればスムースに管理することができます。仕掛品の意味を把握したうえで、正しく計上するようにしましょう。

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この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
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